突然やってきたイケメン騎士団長と甘々同棲生活始まりました

波木真帆

文字の大きさ
上 下
55 / 81

城からの呼び出し状

しおりを挟む
<sideマイルズ>

トモキさまが熱を出され、クリスティアーノさまがお世話に勤しんでいらっしゃった頃、アンドレア国王陛下の元に行かれていた旦那さまから火急の呼び出しが届いた。

しかも宛名は私宛。

内容は見なくてもわかっている。
クリスティアーノさまとその運命のお相手についてだ。

旦那さまが良かれと思ってなさったことがクリスティアーノさまと救世主であるトモキさまを引き裂くことになってしまったことで、これ以上刺激をなさらないようにとこの公爵家をお出になっておられるのだ。
それからトモキさまが無事にこちらに来られたことも、無事に交わりを済まされたことも何ひとつお知らせしていないのだから、その後の様子が気になって仕方がないのだろう。

旦那さまはいまだにクリスティアーノさまが書斎に篭られていらっしゃるとお思いかもしれない。

だが、旦那さまのことだ。
トモキさまが現れたと知ったら、すぐにこちらに戻ってこられるのはわかりきっている。
また旦那さまが暴走されて、クリスティアーノさまとトモキさまとの間に亀裂でも入ったら、公爵家は……いえ、もしかしたらこの国ごと終焉を迎えるかもしれない。

それくらい、クリスティアーノさまは慎重になっておられるのだ。

だが、お城から正式に呼び出しがあった以上、無視するわけにはいかない。

私はクリスティアーノさまにご相談に行くことにした。


「マイルズ、どうした? 私はトモキのそばから離れたくないのだが……」

「申し訳ございません。実は旦那さまから私宛にお呼び出しがございまして……」

「なに? 見せてみろ」

お城から届けられた呼び出し状をお渡しすると、クッと眉を顰められた。

「父上がこの家を出られてからの報告を包み隠さずするように、だと……」

「はい。クリスティアーノさまが旦那さまにはまだお話にならないようにと仰っておいででしたし、ニコラス医師からもトモキさまのご体調が回復されるまではクリスティアーノさま以外のお方との接触はなるべく避けられるようにと伺っておりましたので、なにも申し上げていなかったのですが、流石に我慢の限界に達したのかもしれません。旦那さまにはどのように申し上げたら良いでしょう?」

「ふぅ……。そうだな。できればトモキが完全に回復して陛下や父上の前に出られるようになるまではなにも知らせずにおきたかったが、そうもいかないようだな。ならば、仕方がない。本当のことを報告するしかないな」

「本当のこと、でございますか?」

「ああ。トモキが無事に私の元に現れたこと。そして、ニコラスの診察によりしばらくは絶対安静と指示を受けていると伝えておけばいい」

確かに全て本当のことだ。
言葉が足りないのは嘘とは言わない。

きっとこれで納得するだろう。

「心配ならニコラスも同席させたらいい。ニコラスも今、トモキに負担となるようなことは許さないだろうからな」

「承知しました。すぐにニコラス医師に同席いただくようお願いして、旦那さまに報告に行って参ります」

「頼む。父上がどんな様子だったかも報告をしてくれ」

「承知しました」

私はすぐにニコラス医師の元に向かい同席をお願いすると、快く引き受けてくださった。

一緒にお城に向かうと、応接室に通され旦那さまがアンドレア国王陛下と共にお越しになった。


「おお、ようやく来たか。待っておったぞ」

「遅くなりまして申し訳ございません。国王陛下におかれましては――」
「そのような堅苦しい挨拶はいらない。すぐに話を聞かせてくれ。あれから一度も報告がなかったがクリスティアーノはどうなったのだ? まさか、まだ書斎に籠っているのではあるまいな?」

「ご安心くださいませ。実はあれからしばらくしてクリスティアーノさまの運命のお相手がお越しになったのです」

「ま、まことかっ!! ならば、なぜすぐに報告に来ない! 私はずっと待っておったのだぞ!」

「申し訳ございません」

私はただただ頭を下げることしかできなかったが、

「ジュリアーノ、まずは話を聞くのが先決だろう。それで、マイルズ。続きを聞かせてくれ」

「は、はい。その運命のお相手は、クリスティアーノさまと引き裂かれたことにより命の危機になるまでお身体を崩されておられたのです」

「――っ!! なんと――っ」

「そこですぐにニコラス医師をお呼びして診ていただいたのですが、しばらくの間絶対安静とのことでクリスティアーノさまがずっと看病なさっておられるのです」

「クリスティアーノが? まさかっ」

「本当なのです。クリスティアーノさまも運命のお方をお待ちして、ずっと身体を酷使していらっしゃったのでお倒れにならないか心配をしているのですが、決してお世話を辞めようとなさらず、ずっとおそばについていらっしゃるのです。ですから、旦那さまに報告することができずにおりました。申し訳ございません」

「そのようなことが……。全ては、私のせい、なのだな……」

私の話を聞いて旦那さまはひどく項垂れて、その場に膝をつかれた。
旦那さまも旦那さまなりにクリスティアーノさまをご心配になっただけなのだ。

それが今回は悪い方向に進んでしまっただけで、子を思う父の気持ちは痛いほどよくわかる。
わかるからこそ、もうしばらくそっとしておいてあげてほしいのだ。

「旦那さま……もうしばらくお二人をそっとしておいてあげていただけないでしょうか? 少しずつ回復なさっているところなのです。回復なさったら、旦那さまにもアンドレア国王陛下にも御目通りしたいと仰っておいででございました。今しばらくのご猶予をお願いいただけないでしょうか?」

「ニコラス、其方の見立てでは回復までにいかほどかかると思う?」

「そうですね。完全に回復なさるまでは十日ほどお時間をいただければと存じます」

「そうか……ならば、ジュリアーノ。あと十日の辛抱だ。クリスティアーノから連絡が来るまではここで待っておけ」

「兄上……わかりました」

旦那さまはがっくりと肩を落としておられたが、国王陛下のお言葉は絶対だ。
これでクリスティアーノさまもトモキさまも安心して静養できる。

私は一仕事終えた気分で、ニコラス医師と共に帰宅の途に向かった。
しおりを挟む
感想 45

あなたにおすすめの小説

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

【完結】第三王子は、自由に踊りたい。〜豹の獣人と、第一王子に言い寄られてますが、僕は一体どうすればいいでしょうか?〜

N2O
BL
気弱で不憫属性の第三王子が、二人の男から寵愛を受けるはなし。 表紙絵 ⇨元素 様 X(@10loveeeyy) ※独自設定、ご都合主義です。 ※ハーレム要素を予定しています。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

【完結】冷血孤高と噂に聞く竜人は、俺の前じゃどうも言動が伴わない様子。

N2O
BL
愛想皆無の竜人 × 竜の言葉がわかる人間 ファンタジーしてます。 攻めが出てくるのは中盤から。 結局執着を抑えられなくなっちゃう竜人の話です。 表紙絵 ⇨ろくずやこ 様 X(@Us4kBPHU0m63101) 挿絵『0 琥』 ⇨からさね 様 X (@karasane03) 挿絵『34 森』 ⇨くすなし 様 X(@cuth_masi) ◎独自設定、ご都合主義、素人作品です。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】

紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。 相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。 超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。 失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。 彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。 ※番外編を公開しました(10/21) 生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。 ※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。 ※4月18日、完結しました。ありがとうございました。

精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる

風見鶏ーKazamidoriー
BL
 秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。  ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。 ※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。

処理中です...