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城からの呼び出し状
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<sideマイルズ>
トモキさまが熱を出され、クリスティアーノさまがお世話に勤しんでいらっしゃった頃、アンドレア国王陛下の元に行かれていた旦那さまから火急の呼び出しが届いた。
しかも宛名は私宛。
内容は見なくてもわかっている。
クリスティアーノさまとその運命のお相手についてだ。
旦那さまが良かれと思ってなさったことがクリスティアーノさまと救世主であるトモキさまを引き裂くことになってしまったことで、これ以上刺激をなさらないようにとこの公爵家をお出になっておられるのだ。
それからトモキさまが無事にこちらに来られたことも、無事に交わりを済まされたことも何ひとつお知らせしていないのだから、その後の様子が気になって仕方がないのだろう。
旦那さまはいまだにクリスティアーノさまが書斎に篭られていらっしゃるとお思いかもしれない。
だが、旦那さまのことだ。
トモキさまが現れたと知ったら、すぐにこちらに戻ってこられるのはわかりきっている。
また旦那さまが暴走されて、クリスティアーノさまとトモキさまとの間に亀裂でも入ったら、公爵家は……いえ、もしかしたらこの国ごと終焉を迎えるかもしれない。
それくらい、クリスティアーノさまは慎重になっておられるのだ。
だが、お城から正式に呼び出しがあった以上、無視するわけにはいかない。
私はクリスティアーノさまにご相談に行くことにした。
「マイルズ、どうした? 私はトモキのそばから離れたくないのだが……」
「申し訳ございません。実は旦那さまから私宛にお呼び出しがございまして……」
「なに? 見せてみろ」
お城から届けられた呼び出し状をお渡しすると、クッと眉を顰められた。
「父上がこの家を出られてからの報告を包み隠さずするように、だと……」
「はい。クリスティアーノさまが旦那さまにはまだお話にならないようにと仰っておいででしたし、ニコラス医師からもトモキさまのご体調が回復されるまではクリスティアーノさま以外のお方との接触はなるべく避けられるようにと伺っておりましたので、なにも申し上げていなかったのですが、流石に我慢の限界に達したのかもしれません。旦那さまにはどのように申し上げたら良いでしょう?」
「ふぅ……。そうだな。できればトモキが完全に回復して陛下や父上の前に出られるようになるまではなにも知らせずにおきたかったが、そうもいかないようだな。ならば、仕方がない。本当のことを報告するしかないな」
「本当のこと、でございますか?」
「ああ。トモキが無事に私の元に現れたこと。そして、ニコラスの診察によりしばらくは絶対安静と指示を受けていると伝えておけばいい」
確かに全て本当のことだ。
言葉が足りないのは嘘とは言わない。
きっとこれで納得するだろう。
「心配ならニコラスも同席させたらいい。ニコラスも今、トモキに負担となるようなことは許さないだろうからな」
「承知しました。すぐにニコラス医師に同席いただくようお願いして、旦那さまに報告に行って参ります」
「頼む。父上がどんな様子だったかも報告をしてくれ」
「承知しました」
私はすぐにニコラス医師の元に向かい同席をお願いすると、快く引き受けてくださった。
一緒にお城に向かうと、応接室に通され旦那さまがアンドレア国王陛下と共にお越しになった。
「おお、ようやく来たか。待っておったぞ」
「遅くなりまして申し訳ございません。国王陛下におかれましては――」
「そのような堅苦しい挨拶はいらない。すぐに話を聞かせてくれ。あれから一度も報告がなかったがクリスティアーノはどうなったのだ? まさか、まだ書斎に籠っているのではあるまいな?」
「ご安心くださいませ。実はあれからしばらくしてクリスティアーノさまの運命のお相手がお越しになったのです」
「ま、まことかっ!! ならば、なぜすぐに報告に来ない! 私はずっと待っておったのだぞ!」
「申し訳ございません」
私はただただ頭を下げることしかできなかったが、
「ジュリアーノ、まずは話を聞くのが先決だろう。それで、マイルズ。続きを聞かせてくれ」
「は、はい。その運命のお相手は、クリスティアーノさまと引き裂かれたことにより命の危機になるまでお身体を崩されておられたのです」
「――っ!! なんと――っ」
「そこですぐにニコラス医師をお呼びして診ていただいたのですが、しばらくの間絶対安静とのことでクリスティアーノさまがずっと看病なさっておられるのです」
「クリスティアーノが? まさかっ」
「本当なのです。クリスティアーノさまも運命のお方をお待ちして、ずっと身体を酷使していらっしゃったのでお倒れにならないか心配をしているのですが、決してお世話を辞めようとなさらず、ずっとおそばについていらっしゃるのです。ですから、旦那さまに報告することができずにおりました。申し訳ございません」
「そのようなことが……。全ては、私のせい、なのだな……」
私の話を聞いて旦那さまはひどく項垂れて、その場に膝をつかれた。
旦那さまも旦那さまなりにクリスティアーノさまをご心配になっただけなのだ。
それが今回は悪い方向に進んでしまっただけで、子を思う父の気持ちは痛いほどよくわかる。
わかるからこそ、もうしばらくそっとしておいてあげてほしいのだ。
「旦那さま……もうしばらくお二人をそっとしておいてあげていただけないでしょうか? 少しずつ回復なさっているところなのです。回復なさったら、旦那さまにもアンドレア国王陛下にも御目通りしたいと仰っておいででございました。今しばらくのご猶予をお願いいただけないでしょうか?」
「ニコラス、其方の見立てでは回復までにいかほどかかると思う?」
「そうですね。完全に回復なさるまでは十日ほどお時間をいただければと存じます」
「そうか……ならば、ジュリアーノ。あと十日の辛抱だ。クリスティアーノから連絡が来るまではここで待っておけ」
「兄上……わかりました」
旦那さまはがっくりと肩を落としておられたが、国王陛下のお言葉は絶対だ。
これでクリスティアーノさまもトモキさまも安心して静養できる。
私は一仕事終えた気分で、ニコラス医師と共に帰宅の途に向かった。
トモキさまが熱を出され、クリスティアーノさまがお世話に勤しんでいらっしゃった頃、アンドレア国王陛下の元に行かれていた旦那さまから火急の呼び出しが届いた。
しかも宛名は私宛。
内容は見なくてもわかっている。
クリスティアーノさまとその運命のお相手についてだ。
旦那さまが良かれと思ってなさったことがクリスティアーノさまと救世主であるトモキさまを引き裂くことになってしまったことで、これ以上刺激をなさらないようにとこの公爵家をお出になっておられるのだ。
それからトモキさまが無事にこちらに来られたことも、無事に交わりを済まされたことも何ひとつお知らせしていないのだから、その後の様子が気になって仕方がないのだろう。
旦那さまはいまだにクリスティアーノさまが書斎に篭られていらっしゃるとお思いかもしれない。
だが、旦那さまのことだ。
トモキさまが現れたと知ったら、すぐにこちらに戻ってこられるのはわかりきっている。
また旦那さまが暴走されて、クリスティアーノさまとトモキさまとの間に亀裂でも入ったら、公爵家は……いえ、もしかしたらこの国ごと終焉を迎えるかもしれない。
それくらい、クリスティアーノさまは慎重になっておられるのだ。
だが、お城から正式に呼び出しがあった以上、無視するわけにはいかない。
私はクリスティアーノさまにご相談に行くことにした。
「マイルズ、どうした? 私はトモキのそばから離れたくないのだが……」
「申し訳ございません。実は旦那さまから私宛にお呼び出しがございまして……」
「なに? 見せてみろ」
お城から届けられた呼び出し状をお渡しすると、クッと眉を顰められた。
「父上がこの家を出られてからの報告を包み隠さずするように、だと……」
「はい。クリスティアーノさまが旦那さまにはまだお話にならないようにと仰っておいででしたし、ニコラス医師からもトモキさまのご体調が回復されるまではクリスティアーノさま以外のお方との接触はなるべく避けられるようにと伺っておりましたので、なにも申し上げていなかったのですが、流石に我慢の限界に達したのかもしれません。旦那さまにはどのように申し上げたら良いでしょう?」
「ふぅ……。そうだな。できればトモキが完全に回復して陛下や父上の前に出られるようになるまではなにも知らせずにおきたかったが、そうもいかないようだな。ならば、仕方がない。本当のことを報告するしかないな」
「本当のこと、でございますか?」
「ああ。トモキが無事に私の元に現れたこと。そして、ニコラスの診察によりしばらくは絶対安静と指示を受けていると伝えておけばいい」
確かに全て本当のことだ。
言葉が足りないのは嘘とは言わない。
きっとこれで納得するだろう。
「心配ならニコラスも同席させたらいい。ニコラスも今、トモキに負担となるようなことは許さないだろうからな」
「承知しました。すぐにニコラス医師に同席いただくようお願いして、旦那さまに報告に行って参ります」
「頼む。父上がどんな様子だったかも報告をしてくれ」
「承知しました」
私はすぐにニコラス医師の元に向かい同席をお願いすると、快く引き受けてくださった。
一緒にお城に向かうと、応接室に通され旦那さまがアンドレア国王陛下と共にお越しになった。
「おお、ようやく来たか。待っておったぞ」
「遅くなりまして申し訳ございません。国王陛下におかれましては――」
「そのような堅苦しい挨拶はいらない。すぐに話を聞かせてくれ。あれから一度も報告がなかったがクリスティアーノはどうなったのだ? まさか、まだ書斎に籠っているのではあるまいな?」
「ご安心くださいませ。実はあれからしばらくしてクリスティアーノさまの運命のお相手がお越しになったのです」
「ま、まことかっ!! ならば、なぜすぐに報告に来ない! 私はずっと待っておったのだぞ!」
「申し訳ございません」
私はただただ頭を下げることしかできなかったが、
「ジュリアーノ、まずは話を聞くのが先決だろう。それで、マイルズ。続きを聞かせてくれ」
「は、はい。その運命のお相手は、クリスティアーノさまと引き裂かれたことにより命の危機になるまでお身体を崩されておられたのです」
「――っ!! なんと――っ」
「そこですぐにニコラス医師をお呼びして診ていただいたのですが、しばらくの間絶対安静とのことでクリスティアーノさまがずっと看病なさっておられるのです」
「クリスティアーノが? まさかっ」
「本当なのです。クリスティアーノさまも運命のお方をお待ちして、ずっと身体を酷使していらっしゃったのでお倒れにならないか心配をしているのですが、決してお世話を辞めようとなさらず、ずっとおそばについていらっしゃるのです。ですから、旦那さまに報告することができずにおりました。申し訳ございません」
「そのようなことが……。全ては、私のせい、なのだな……」
私の話を聞いて旦那さまはひどく項垂れて、その場に膝をつかれた。
旦那さまも旦那さまなりにクリスティアーノさまをご心配になっただけなのだ。
それが今回は悪い方向に進んでしまっただけで、子を思う父の気持ちは痛いほどよくわかる。
わかるからこそ、もうしばらくそっとしておいてあげてほしいのだ。
「旦那さま……もうしばらくお二人をそっとしておいてあげていただけないでしょうか? 少しずつ回復なさっているところなのです。回復なさったら、旦那さまにもアンドレア国王陛下にも御目通りしたいと仰っておいででございました。今しばらくのご猶予をお願いいただけないでしょうか?」
「ニコラス、其方の見立てでは回復までにいかほどかかると思う?」
「そうですね。完全に回復なさるまでは十日ほどお時間をいただければと存じます」
「そうか……ならば、ジュリアーノ。あと十日の辛抱だ。クリスティアーノから連絡が来るまではここで待っておけ」
「兄上……わかりました」
旦那さまはがっくりと肩を落としておられたが、国王陛下のお言葉は絶対だ。
これでクリスティアーノさまもトモキさまも安心して静養できる。
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