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イケメン社長にお弁当を作ったらデザートに僕も食べられちゃいました
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「よしっ! 今日も上手くできた!!」
社会人一年目の僕・桃山尚の一日は、お弁当作りから始まる。
勤めている会社は大手の外資系企業。
かなり倍率の高い企業だったけれど、担当教授からの推薦もあって早々に内定を取れたことは幸運だった。
僕はそこの秘書課に勤務している。
秘書課というと、女性が多いというイメージを持たれるかもしれなけれど、それは遠い昔の話。
うちの秘書課はどちらかといえば男性の方が多いくらい。
外資系企業だけあって、秘書課に入れる基準はTOEIC880以上。
もしくは海外在住歴三年以上でネイティブ並みに英語が話せることとなっているが、一応僕はそのどちらも当てはまっている。
英語は好きなんだよね。本当に良かった。
僕は社長の第一秘書である、徳井さんに直接指導を受けながら、将来は社長の右腕となれるように日々猛勉強中。
まだまだできないことも多いけれど、社長からは結構信頼されていると思う。
なんせ、たくさんいる秘書の中で、僕が今唯一任されている仕事があるんだから。
それは社長のお弁当を作ること。
一見、秘書の業務には思えないかもしれないけれど、これがかなり重要なんだ。
そもそも僕がそれに任命されることになったきっかけは入社式を終え、本格的に仕事が始まった日。
午前中の仕事を終え、昼休憩に入った僕は休憩スペースに置かれたテーブルに持参したお弁当を広げていると、
「ほお、美味しそうだな」
と突然後ろから声をかけられた。
気を抜いていた僕はそれが社長だと気付かず、
「美味しそうじゃなくて、僕のお弁当は美味しいですよ。食べてみてください」
とお弁当を持って差し出してしまった。
「いいのか? 遠慮なくいただこう」
相手が社長だったことに驚いて身動きできずにいた僕の目の前で、社長はピックに刺さっていたお弁当のおかずを摘んでパクリと食べてしまった。
「わっ、しゃ、社長っ! すみません、こんな庶民的なおかずを……」
慌てて謝りながら頭を下げたけれど、
「なんで謝るんだ? このおかず、すごく美味しいぞ」
と笑顔を見せてくれた。
「えっ……本当、ですか?」
「ああ、これは君の手作りか? それとも別に作ってくれる人でもいるのか?」
「えっ? いえ、僕が作っています。両親が共働きだったので、中学生の時から食事は僕の仕事だったんですよ。大学生の時から一人暮らしをしてますけど毎日自炊してます」
「そうなのか。それは素晴らしいな。私は料理が苦手だから、ほとんど外食ばかりだよ」
「えっ……お忙しいのに、外食ばかりだと身体が持ちませんよ」
「わかっているんだが、なかなか難しくて……ああ、もしよかったら、私の分もお弁当を作ってきてもらえないだろうか?
社長からの思いがけない提案に僕は反応できなかった。
だって、僕が社長のお弁当を作るなんて……。
そんなこと思ってもみなかった。
「ああ、もちろん。特別手当を出そう。それから材料費も出すよ。どうだろう? やってもらえないか?」
「えっ、そんな……っ、大したものを入れているわけじゃないので、特別手当も材料費も要りません。でも、社長が本当に召し上がってくださるなら喜んで作らせていただきます」
「おおっ、そうか。ありがとう! じゃあ、早速明日から頼むよ。さっき食べたものはすごく美味しかったから明日も頼む。ああ、アレルギーも好き嫌いも特にないからなんでも入れてくれていいよ」
「ふふっ。はい。わかりました」
なんだか、遠足前のお母さんのような気持ちになってしまう。
それはきっと社長がワクワクしているように見えたからだろう。
その日の帰りに僕は、雑貨店に行ってお弁当箱を探した。
やっぱり社長は僕のより少し大き目がいいだろうな。
スープジャーも買っておこう。
やっぱり温かいスープもあったほうがお弁当も進むだろうしな。
そんなことを考えながらお弁当箱を選ぶのは本当に楽しかった。
せっかくならと僕もひとまわり小さい同じお弁当箱を揃えて購入して、スーパーで食材を購入して帰った。
その日は夕食を作りながら、お弁当のおかずの仕込みもして、冷蔵庫は久々に食材で潤った。
翌朝、いつもより少し早く起きて、お弁当を作っていく。
栄養バランスを考えながら、おかずを入れる。
社長の好みがわからないから、最初はオーソドックスなものからにしようと思っていた。
卵焼きや唐揚げ、インゲンの胡麻和えに、きんぴらごぼう。
本当に庶民的なお弁当だ。
ご飯を詰めるのとおにぎりはどちらにしようか悩んだけれど、中に具を入れて少し大きめのおにぎりを二つ作った。
おにぎりが苦手な人もいるから、僕はご飯を詰めて、もし社長が食べられなさそうだったら交換したらいい。
スープジャーに出汁をとって作った味噌汁も入れて、今日のお弁当は完成。
お揃いのランチバッグに入れて出勤すると、なんだかウキウキする。
社長は美味しいと言ってくれるだろうか。
人に食べてもらうなんて初めてだからドキドキしちゃうな。
自分のデスクにつくと早々に社長がやってきて、
「桃山くん。お弁当作って来てくれたか?」
と尋ねられる。
「は、はい。僕のと同じですが作って来ました」
「ああ、楽しみだな」
こんなにも楽しみにしてくれているなんて思わなかったな。
昼休憩の時間になると、
「桃山くん、こっちで一緒に食べよう」
と誘われてドキドキしながら社長室に入る。
仕事以外で入ることがないからドキドキしてしまう。
僕がお弁当を並べている間に、社長が温かいお茶を淹れてくれた。
「どうぞ」
「あっ、すみません。僕が淹れないといけなかったのに」
「何を言っているんだ。今は仕事時間じゃないから対等だよ。いや、私の方がお弁当を作ってもらっているんだからお茶くらい淹れて当然だ」
そんなふうに言ってくれる社長がこの日本にどれだけいるだろう。
というか僕が作る庶民的なお弁当を楽しみにしてくれる社長がそもそも少ないだろう。
「じゃあ、いただこう」
嬉しそうにお弁当を開け、満面の笑みを浮かべながらおかずに手を伸ばす社長を見ていると、僕まで楽しくなってくる。
「うん! これは美味しいな!」
「おお、俺はおにぎりか? 具が入っている!!」
「こっちのおかずも美味しいな!」
一口食べるごとに嬉しい言葉を言ってくれる社長を見ながら、僕もお弁当を食べ終えた。
良かった、おにぎりでも問題ないみたいだ。
「ああー、本当に美味しかったな。いつもの昼食よりずっとずっといい」
満足そうに言ってくれる社長を見ていると、こんなにも喜んでくれるなら僕の方からお願いして毎日作りたいと思ってしまう。
そこからは毎日おかず作りが楽しくなって、三ヶ月も経つころには社長の好みは全て把握できるようになっていた。
「桃山くん。今日のおかずはなんだ?」
「今日は社長の好きな鰆の西京焼きを入れてますよ」
「おお、そうか。桃山くんの西京焼きを食べるとよそのが物足りなく感じるようになったよ」
「ふふっ。隠し味が入ってます」
「それはなんだ?」
「内緒です」
「えー、教えてくれよ」
「ふふっ」
そんな会話も楽しめるようになって、充実した日々を過ごしていると、
「桃山くんのおかげで、社長も柔らかくなったし話しやすくなったよ」
先輩秘書さんから話しかけられた。
「えっ? そうなんですか?」
「ああ、あんなふうにこっちに来て話しかけに来てくださることなんてなかったからね」
そんな言葉に驚くばかりだ。
そんなある日。
アメリカ本社から、会長の孫だという女性が日本支社にやってきた。
表向きは勉強のためということになっているけれど、実際には社長との縁談だと噂されていた。
金髪ストレートで長身の美しい女性。
イケメンな社長とはお似合いだ。
彼女は僕のいる秘書課にやって来てすぐに
『あなたがタクマに毎日ランチを作っている社員ね?』
と僕に声をかけてきた。
『は、はい。そうです』
『へぇー、あなたがね。そう。今までご苦労さま。でも今日からはあなたのお弁当はいらないわ』
『えっ? どうしてですか?』
『わからないの? タクマは私の作ったものが食べたいの。だからあなたのお弁当は必要ないわ』
『あっ……そう、なんですね……わかりました』
僕のデスクには社長に渡すためのランチバッグが並んで置いてあるのに、もうこれは食べてもらえないんだ……。
あんなに美味しいと言って食べてくれていた社長の顔をもう見られないんだ……。
途端に寂しくなってくる。
このやり場のない寂しさを埋めるように仕事に没頭し、僕は昼休憩の時間になったらランチバッグを二つ持って逃げるように屋上に向かった。
そこでお弁当を二つ広げて、泣きながら食べていると
「それは私のじゃないのか?」
と声が聞こえる。
「えっ? なんで……っ、社長が、ここに?」
「なんでって、昼を一緒に食べようと声をかけに行ったらいなかったから、探し回ったんだよ。どうして、ここで一人で食べているんだ?」
「だって……あの、社長がエバさんのが食べたいって。だから僕のは要らないって……」
「誰がそんなこと言ったんだ? 私はそんなこと言ってないぞ! 大体、私はあんな女性が作ったものは食べられないんだ」
「えっ? それって……どういうことですか?」
「あ、いや……私は、少し潔癖なところがあって、素人の手作りは食べられないんだ」
「えっ、でも……僕のは食べてくれましたよね?」
「ああ、だから、桃山くんのしか食べられないんだ」
「どうして、ですか?」
「まだわからないか? 私は、桃山くんが……いや、尚が好きなんだよ。だから、君に料理を作って欲しかった」
「えっ……」
思いがけない社長の言葉に、一瞬時が止まった気がした。
「それって、何かの……冗談、ですか?」
「こんなことで嘘をつくわけないだろう! 私は本気なんだ。君は覚えていないだろうけど、10年前にアメリカの公園で私にお弁当をくれたんだ」
「えっ? 僕が、社長に?」
「ああ、アメリカ本社に長期出張に行っていた時、毎日毎日アメリカの食事で飽き飽きしていたんだ。だが、自炊もできなくて、日本食に飢えていた。どこか美味しい日本食を食べられるところはないかと探していた時、通りがかった公園でお弁当を広げている君を見つけた。その美味しそうな匂いに誘われるように近づくと、君は食べますか? と声をかけてくれたんだ。聞けば、今日はお弁当は要らなかったのに持って行ってしまって、勿体無いから自宅の前にある公園で景色を見ながらピクニック気分で食べていたと教えてくれた。そのお弁当があまりにも美味しそうで、食べさせてもらったんだ。それがものすごく美味しくてね」
「あっ、あの時の……っ!! 思い出しました!! すごく美味しそうに食べてくれる人だなと思ってましたけど、まさか社長だったなんて!!」
「素人が作ったものなんて食べられなかったのに、君のお弁当だけは食べられた。しかも、君の手作りだと聞いて驚いたんだ。だから、私にとって君だけが特別なんだって思った。それからずっと君のことを探していたんだよ」
「あっ、じゃあ僕がこの会社を受けるきっかけになったのも……」
「ああ、私が大学に働きかけた。教授は私の恩師だったから、協力してくれたよ」
まさかそんな時から始まっていたなんて思いもしなかった。
「尚にお弁当を頼んだのは食べたかったからというのもあるが、作っているうちにあのことを思い出してくれるんじゃないかって期待していたんだ。でもまさか、あいつが尚に余計なことをいうなんて思わなかった。あの女性のことは気にしないでいい。すぐに本社に帰すと約束する。仕事もやる気がないようだからな」
「だって、もともと社長と結婚するために来られたんでしょう?」
「そんなことあるわけないだろう。私がゲイなことは我が社では周知の事実なんだから」
「そ、そうなんですか?」
「私は10年前から尚のことしか見えていないよ。信じてくれないのか?」
あんな小さな思い出を10年も大切に覚えていてくれた社長の言葉を信じないわけがない。
「あの、でも僕は……好きとか、よくわからなくて……」
「大丈夫。私が好きにならせてみせるよ。でも……もう私のことを好きだと思うよ」
「えっ……」
「だって、そうでもなければ泣きながらこんなところでお弁当を食べたりしないだろう? 私をあの女に取られると思って辛かったんじゃないか?」
「――っ!!」
確かにそうだ。
お弁当を食べてもらえないのも辛かったけれど、あの笑顔をもう見られなくなるのが辛かったんだ。
「少しは意識してくれたようだな。今日はこのまま休みをもらっている。私の家に行こう」
「えっ……わぁっ!!」
あまりの展開の速さに驚いている間に、軽々と抱きかかえられ、社長専用のエレベータで一気に地下まで連れて行かれて、そのまま車に乗せられた。
そして、気づけば大きな家の地下駐車場に車が止められていた。
「あの、ここ……」
「自宅だって言っただろう? 今日からは尚の家になるよ」
「えっ……それって……?」
社長は僕の言葉に笑顔で返して、そのまま僕を抱きかかえてエレベーターに乗り込み、あっという間に部屋に連れて行かれた。
「わっ、ベッド……」
「ああ、もう一分一秒も待っていられない」
いつも見ていた余裕のある社長の表情はどこかに消えていて、僕の目の前にはギラギラとした瞳で僕を見つめる獣のような社長の姿があった。
「嫌なら、今言ってくれ。今ならまだ留まれる。でもいいと言ってくれたらもう抑えられないよ」
そう告げる社長の視線に身体の奥がゾクゾクと震える。
「そんなの、ずるい……っ」
「ずるくてもいい、尚が欲しいんだ」
こんなイケメンで誰からも好意を持たれるような社長が、こんなにも僕を欲しがってくれている。
それだけでもう僕の気持ちが決まっていた。
「いい、ですよ……社長の、ものにしてください……」
「――っ、ああっ! 尚っ!! もう絶対に離さないよ!!」
「社長っ!!」
「琢磨と呼んでくれ!」
「たくま、さん……っ」
「尚っ!!」
「んんっ!!」
名前を呼んだ瞬間、感極まった表情で僕の唇を奪った。
溶けてしまいそうなくらい熱い唇に唇を開くと、スッと肉厚な舌が滑り込んできた。
これ、ディープキスってやつ……?
すごい、僕の口の中で琢磨さんの舌が動き回ってる。
激しくも優しく絡みつかれて、おかしくなりそうだ。
キスってこんなに気持ちいものだったんだな。
もっともっとして欲しいのに、どんどん苦しくなっていく。
うーん、もう限界……と思った瞬間、琢磨さんの舌が離れていった。
苦しさは無くなったけれど、寂しさが募る。
なんだ、僕……もう十分琢磨さんのことが好きなんじゃないか。
そう思ったら、スッと気持ちが楽になった。
「たくま、さん……もっと、キスしたいです……」
「――っ!! 尚っ!」
噛み付くようなキスをされて、それがとてつもなく嬉しい。
そのまま離れた唇が、首筋、鎖骨に下りていく。
ちくっ、ちくっと小さな痛みを与えられ、ピクッと身体を震わせると
「痛かったか?」
と優しい声がかけられる。
「だい、じょうぶ……もっと、して……」
「ああもうっ! 可愛すぎるっ!!」
思いを告げると、どんどん琢磨さんの思いをぶつけられる。
パクッと乳首を咥えられ、舌先で転がされるだけで身体が跳ねてしまうくらい気持ちがいい。
「ああっ、だめぇ……おか、しくなっちゃう……っ」
初めての快感に身悶えていると、琢磨さんの大きな手が僕のソレに触れる。
「ひゃあっ!!」
こんなところ、人に触れられたのは初めてだ。
でも……すごく気持ちがいい。
僕のささやかなモノは琢磨さんの手にすっぽりとおさまって、軽く動かされるだけで自分でするよりも何倍も気持ちがいい。
「ああっ、やぁ――っ、イくっ、イっちゃうっ!!」
もう少しでイってしまいそう!
そう思った瞬間、突然琢磨さんの手の感触がなくなってしまった。
「えっ……?」
あまりの快感に朦朧する中、声をあげると
「初めては一緒にイきたいんだ」
と言われ、琢磨さんはいつの間にか手にしていたボトルの中身を手のひらに溢した。
「それ……っ」
「大丈夫。尚を傷つけないためのものだよ」
そう言って、ぬるぬるになった指で僕の後孔に触れた。
「ああっん! そこ……っ」
「大丈夫、痛くしない。優しくするから」
琢磨さんの優しい声に落ち着かされながら、後孔を撫でられる。
プツリと中に指が入ってきて、中をかき混ぜられる。
「ああっ、やぁん……なん、かへん……っ」
「ここかな?」
「ひゃあっん!!!」
グチュグチュと中をかき混ぜられていると、中の指がある一点を掠めた途端、今まで感じたことのないような刺激が全身を駆け巡った。
「ここが尚のいいところだよ」
「そ、こ……っ、だめぇ」
重点的に擦られてもうおかしくなってしまいそう。
「はや、くぅ……たくま、さんの、ほしぃ……っ」
「くっ! ああっ、挿入てあげるよ」
必死にねだると、指が引き抜かれ、代わりに熱くて大きなものがあてがわれる。
「挿入るよ」
その言葉と同時に、ググッと大きなモノが押し込まれていく。
「ああっ、おっきぃ……っ、こ、われちゃう……っ」
「大丈夫。ゆっくり挿入るから」
「ああっ……んっ……」
ゆっくりじわじわと押し広げられながら中に入ってくるけれど、思ったより痛みはない。
それどころか、もっと奥まで入って欲しくてウズウズしてしまう。
「も、っとぉ、おく……っ、ほしぃ……っ!!」
「ぐぅ――っ、ああっ!!!」
「ひゃあぁーっん!!!」
心の声が漏れた瞬間、熱くて硬いモノで奥までグチュンと音をたてて一気に貫かれた。
まるで頭からつま先まで電流が走ったような衝撃に身体の震えが止まらない。
ピクピク震えながら、いつの間にか僕は蜜を溢していた。
「ああっ、尚っ! 可愛いっ! 可愛いっ!!」
そんな言葉をずっと囁かれながら、身体ごと揺り動かされて、身体の奥をゴリゴリと擦られて、気持ち良すぎておかしくなってしまいそうだ。
「た、くまさん……す、きぃっ」
「くっ!! ああっ!!」
苦しげな琢磨さんの声が聞こえたと思ったら、身体の奥に熱いものが広がっていく。
そうか、琢磨さんもイったんだ。
そうおもったら嬉しくてたまらなかった。
「し、あわせぇ……っ」
心の中でそう呟いた瞬間、中にまた圧迫感を感じる。
「えっ? な、んで……?」
「今のは、可愛すぎる尚が悪い。責任とってもらうからな」
「えっ、ひゃああっ!!」
よくわからないままに身体を激しく揺り動かされて、僕はそのまま意識を失った。
気がつくと僕は琢磨さんの腕の中にいた。
「あ、あの……」
「ああ、目覚めたか? 悪い、最初からこんなに激しくするつもりじゃなかったが、あまりにも尚が可愛くて手放せなかった。私のことを嫌いになっていないか?」
「そんな……嫌いになるなんて……」
「ああっ、尚っ!! ありがとう! 愛しているよ」
心の底から嬉しそうな琢磨さんの声に思わず笑みがこぼれる。
「尚、今日からここで暮らすのは覚えている?」
「本当にいいんですか?」
「ああ、もちろんだ。もう絶対に離さないって言ったろう?」
「琢磨さん、僕嬉しいっ! ったた!」
「ああ、無理しないでくれ。私が激しくしすぎたから、責任もって世話をするからな」
ちょうど週末になったので、二日間至れり尽くせり介護してもらって、週明けの月曜日。
琢磨さんと一緒に仕事に向かった。
二ヶ月はいる予定だと聞いていたエバさんは本当にいなくなっていて、なぜか社長のこれからの予定に、<尚と過ごす時間>というスケジュールが新たに組まれていた。
「尚、これを食べさせてくれ」
「はい」
「食後に尚も食べさせてくれるか?」
「ふふっ。いいですよ」
今日もまた楽しいランチタイムが続く。
社会人一年目の僕・桃山尚の一日は、お弁当作りから始まる。
勤めている会社は大手の外資系企業。
かなり倍率の高い企業だったけれど、担当教授からの推薦もあって早々に内定を取れたことは幸運だった。
僕はそこの秘書課に勤務している。
秘書課というと、女性が多いというイメージを持たれるかもしれなけれど、それは遠い昔の話。
うちの秘書課はどちらかといえば男性の方が多いくらい。
外資系企業だけあって、秘書課に入れる基準はTOEIC880以上。
もしくは海外在住歴三年以上でネイティブ並みに英語が話せることとなっているが、一応僕はそのどちらも当てはまっている。
英語は好きなんだよね。本当に良かった。
僕は社長の第一秘書である、徳井さんに直接指導を受けながら、将来は社長の右腕となれるように日々猛勉強中。
まだまだできないことも多いけれど、社長からは結構信頼されていると思う。
なんせ、たくさんいる秘書の中で、僕が今唯一任されている仕事があるんだから。
それは社長のお弁当を作ること。
一見、秘書の業務には思えないかもしれないけれど、これがかなり重要なんだ。
そもそも僕がそれに任命されることになったきっかけは入社式を終え、本格的に仕事が始まった日。
午前中の仕事を終え、昼休憩に入った僕は休憩スペースに置かれたテーブルに持参したお弁当を広げていると、
「ほお、美味しそうだな」
と突然後ろから声をかけられた。
気を抜いていた僕はそれが社長だと気付かず、
「美味しそうじゃなくて、僕のお弁当は美味しいですよ。食べてみてください」
とお弁当を持って差し出してしまった。
「いいのか? 遠慮なくいただこう」
相手が社長だったことに驚いて身動きできずにいた僕の目の前で、社長はピックに刺さっていたお弁当のおかずを摘んでパクリと食べてしまった。
「わっ、しゃ、社長っ! すみません、こんな庶民的なおかずを……」
慌てて謝りながら頭を下げたけれど、
「なんで謝るんだ? このおかず、すごく美味しいぞ」
と笑顔を見せてくれた。
「えっ……本当、ですか?」
「ああ、これは君の手作りか? それとも別に作ってくれる人でもいるのか?」
「えっ? いえ、僕が作っています。両親が共働きだったので、中学生の時から食事は僕の仕事だったんですよ。大学生の時から一人暮らしをしてますけど毎日自炊してます」
「そうなのか。それは素晴らしいな。私は料理が苦手だから、ほとんど外食ばかりだよ」
「えっ……お忙しいのに、外食ばかりだと身体が持ちませんよ」
「わかっているんだが、なかなか難しくて……ああ、もしよかったら、私の分もお弁当を作ってきてもらえないだろうか?
社長からの思いがけない提案に僕は反応できなかった。
だって、僕が社長のお弁当を作るなんて……。
そんなこと思ってもみなかった。
「ああ、もちろん。特別手当を出そう。それから材料費も出すよ。どうだろう? やってもらえないか?」
「えっ、そんな……っ、大したものを入れているわけじゃないので、特別手当も材料費も要りません。でも、社長が本当に召し上がってくださるなら喜んで作らせていただきます」
「おおっ、そうか。ありがとう! じゃあ、早速明日から頼むよ。さっき食べたものはすごく美味しかったから明日も頼む。ああ、アレルギーも好き嫌いも特にないからなんでも入れてくれていいよ」
「ふふっ。はい。わかりました」
なんだか、遠足前のお母さんのような気持ちになってしまう。
それはきっと社長がワクワクしているように見えたからだろう。
その日の帰りに僕は、雑貨店に行ってお弁当箱を探した。
やっぱり社長は僕のより少し大き目がいいだろうな。
スープジャーも買っておこう。
やっぱり温かいスープもあったほうがお弁当も進むだろうしな。
そんなことを考えながらお弁当箱を選ぶのは本当に楽しかった。
せっかくならと僕もひとまわり小さい同じお弁当箱を揃えて購入して、スーパーで食材を購入して帰った。
その日は夕食を作りながら、お弁当のおかずの仕込みもして、冷蔵庫は久々に食材で潤った。
翌朝、いつもより少し早く起きて、お弁当を作っていく。
栄養バランスを考えながら、おかずを入れる。
社長の好みがわからないから、最初はオーソドックスなものからにしようと思っていた。
卵焼きや唐揚げ、インゲンの胡麻和えに、きんぴらごぼう。
本当に庶民的なお弁当だ。
ご飯を詰めるのとおにぎりはどちらにしようか悩んだけれど、中に具を入れて少し大きめのおにぎりを二つ作った。
おにぎりが苦手な人もいるから、僕はご飯を詰めて、もし社長が食べられなさそうだったら交換したらいい。
スープジャーに出汁をとって作った味噌汁も入れて、今日のお弁当は完成。
お揃いのランチバッグに入れて出勤すると、なんだかウキウキする。
社長は美味しいと言ってくれるだろうか。
人に食べてもらうなんて初めてだからドキドキしちゃうな。
自分のデスクにつくと早々に社長がやってきて、
「桃山くん。お弁当作って来てくれたか?」
と尋ねられる。
「は、はい。僕のと同じですが作って来ました」
「ああ、楽しみだな」
こんなにも楽しみにしてくれているなんて思わなかったな。
昼休憩の時間になると、
「桃山くん、こっちで一緒に食べよう」
と誘われてドキドキしながら社長室に入る。
仕事以外で入ることがないからドキドキしてしまう。
僕がお弁当を並べている間に、社長が温かいお茶を淹れてくれた。
「どうぞ」
「あっ、すみません。僕が淹れないといけなかったのに」
「何を言っているんだ。今は仕事時間じゃないから対等だよ。いや、私の方がお弁当を作ってもらっているんだからお茶くらい淹れて当然だ」
そんなふうに言ってくれる社長がこの日本にどれだけいるだろう。
というか僕が作る庶民的なお弁当を楽しみにしてくれる社長がそもそも少ないだろう。
「じゃあ、いただこう」
嬉しそうにお弁当を開け、満面の笑みを浮かべながらおかずに手を伸ばす社長を見ていると、僕まで楽しくなってくる。
「うん! これは美味しいな!」
「おお、俺はおにぎりか? 具が入っている!!」
「こっちのおかずも美味しいな!」
一口食べるごとに嬉しい言葉を言ってくれる社長を見ながら、僕もお弁当を食べ終えた。
良かった、おにぎりでも問題ないみたいだ。
「ああー、本当に美味しかったな。いつもの昼食よりずっとずっといい」
満足そうに言ってくれる社長を見ていると、こんなにも喜んでくれるなら僕の方からお願いして毎日作りたいと思ってしまう。
そこからは毎日おかず作りが楽しくなって、三ヶ月も経つころには社長の好みは全て把握できるようになっていた。
「桃山くん。今日のおかずはなんだ?」
「今日は社長の好きな鰆の西京焼きを入れてますよ」
「おお、そうか。桃山くんの西京焼きを食べるとよそのが物足りなく感じるようになったよ」
「ふふっ。隠し味が入ってます」
「それはなんだ?」
「内緒です」
「えー、教えてくれよ」
「ふふっ」
そんな会話も楽しめるようになって、充実した日々を過ごしていると、
「桃山くんのおかげで、社長も柔らかくなったし話しやすくなったよ」
先輩秘書さんから話しかけられた。
「えっ? そうなんですか?」
「ああ、あんなふうにこっちに来て話しかけに来てくださることなんてなかったからね」
そんな言葉に驚くばかりだ。
そんなある日。
アメリカ本社から、会長の孫だという女性が日本支社にやってきた。
表向きは勉強のためということになっているけれど、実際には社長との縁談だと噂されていた。
金髪ストレートで長身の美しい女性。
イケメンな社長とはお似合いだ。
彼女は僕のいる秘書課にやって来てすぐに
『あなたがタクマに毎日ランチを作っている社員ね?』
と僕に声をかけてきた。
『は、はい。そうです』
『へぇー、あなたがね。そう。今までご苦労さま。でも今日からはあなたのお弁当はいらないわ』
『えっ? どうしてですか?』
『わからないの? タクマは私の作ったものが食べたいの。だからあなたのお弁当は必要ないわ』
『あっ……そう、なんですね……わかりました』
僕のデスクには社長に渡すためのランチバッグが並んで置いてあるのに、もうこれは食べてもらえないんだ……。
あんなに美味しいと言って食べてくれていた社長の顔をもう見られないんだ……。
途端に寂しくなってくる。
このやり場のない寂しさを埋めるように仕事に没頭し、僕は昼休憩の時間になったらランチバッグを二つ持って逃げるように屋上に向かった。
そこでお弁当を二つ広げて、泣きながら食べていると
「それは私のじゃないのか?」
と声が聞こえる。
「えっ? なんで……っ、社長が、ここに?」
「なんでって、昼を一緒に食べようと声をかけに行ったらいなかったから、探し回ったんだよ。どうして、ここで一人で食べているんだ?」
「だって……あの、社長がエバさんのが食べたいって。だから僕のは要らないって……」
「誰がそんなこと言ったんだ? 私はそんなこと言ってないぞ! 大体、私はあんな女性が作ったものは食べられないんだ」
「えっ? それって……どういうことですか?」
「あ、いや……私は、少し潔癖なところがあって、素人の手作りは食べられないんだ」
「えっ、でも……僕のは食べてくれましたよね?」
「ああ、だから、桃山くんのしか食べられないんだ」
「どうして、ですか?」
「まだわからないか? 私は、桃山くんが……いや、尚が好きなんだよ。だから、君に料理を作って欲しかった」
「えっ……」
思いがけない社長の言葉に、一瞬時が止まった気がした。
「それって、何かの……冗談、ですか?」
「こんなことで嘘をつくわけないだろう! 私は本気なんだ。君は覚えていないだろうけど、10年前にアメリカの公園で私にお弁当をくれたんだ」
「えっ? 僕が、社長に?」
「ああ、アメリカ本社に長期出張に行っていた時、毎日毎日アメリカの食事で飽き飽きしていたんだ。だが、自炊もできなくて、日本食に飢えていた。どこか美味しい日本食を食べられるところはないかと探していた時、通りがかった公園でお弁当を広げている君を見つけた。その美味しそうな匂いに誘われるように近づくと、君は食べますか? と声をかけてくれたんだ。聞けば、今日はお弁当は要らなかったのに持って行ってしまって、勿体無いから自宅の前にある公園で景色を見ながらピクニック気分で食べていたと教えてくれた。そのお弁当があまりにも美味しそうで、食べさせてもらったんだ。それがものすごく美味しくてね」
「あっ、あの時の……っ!! 思い出しました!! すごく美味しそうに食べてくれる人だなと思ってましたけど、まさか社長だったなんて!!」
「素人が作ったものなんて食べられなかったのに、君のお弁当だけは食べられた。しかも、君の手作りだと聞いて驚いたんだ。だから、私にとって君だけが特別なんだって思った。それからずっと君のことを探していたんだよ」
「あっ、じゃあ僕がこの会社を受けるきっかけになったのも……」
「ああ、私が大学に働きかけた。教授は私の恩師だったから、協力してくれたよ」
まさかそんな時から始まっていたなんて思いもしなかった。
「尚にお弁当を頼んだのは食べたかったからというのもあるが、作っているうちにあのことを思い出してくれるんじゃないかって期待していたんだ。でもまさか、あいつが尚に余計なことをいうなんて思わなかった。あの女性のことは気にしないでいい。すぐに本社に帰すと約束する。仕事もやる気がないようだからな」
「だって、もともと社長と結婚するために来られたんでしょう?」
「そんなことあるわけないだろう。私がゲイなことは我が社では周知の事実なんだから」
「そ、そうなんですか?」
「私は10年前から尚のことしか見えていないよ。信じてくれないのか?」
あんな小さな思い出を10年も大切に覚えていてくれた社長の言葉を信じないわけがない。
「あの、でも僕は……好きとか、よくわからなくて……」
「大丈夫。私が好きにならせてみせるよ。でも……もう私のことを好きだと思うよ」
「えっ……」
「だって、そうでもなければ泣きながらこんなところでお弁当を食べたりしないだろう? 私をあの女に取られると思って辛かったんじゃないか?」
「――っ!!」
確かにそうだ。
お弁当を食べてもらえないのも辛かったけれど、あの笑顔をもう見られなくなるのが辛かったんだ。
「少しは意識してくれたようだな。今日はこのまま休みをもらっている。私の家に行こう」
「えっ……わぁっ!!」
あまりの展開の速さに驚いている間に、軽々と抱きかかえられ、社長専用のエレベータで一気に地下まで連れて行かれて、そのまま車に乗せられた。
そして、気づけば大きな家の地下駐車場に車が止められていた。
「あの、ここ……」
「自宅だって言っただろう? 今日からは尚の家になるよ」
「えっ……それって……?」
社長は僕の言葉に笑顔で返して、そのまま僕を抱きかかえてエレベーターに乗り込み、あっという間に部屋に連れて行かれた。
「わっ、ベッド……」
「ああ、もう一分一秒も待っていられない」
いつも見ていた余裕のある社長の表情はどこかに消えていて、僕の目の前にはギラギラとした瞳で僕を見つめる獣のような社長の姿があった。
「嫌なら、今言ってくれ。今ならまだ留まれる。でもいいと言ってくれたらもう抑えられないよ」
そう告げる社長の視線に身体の奥がゾクゾクと震える。
「そんなの、ずるい……っ」
「ずるくてもいい、尚が欲しいんだ」
こんなイケメンで誰からも好意を持たれるような社長が、こんなにも僕を欲しがってくれている。
それだけでもう僕の気持ちが決まっていた。
「いい、ですよ……社長の、ものにしてください……」
「――っ、ああっ! 尚っ!! もう絶対に離さないよ!!」
「社長っ!!」
「琢磨と呼んでくれ!」
「たくま、さん……っ」
「尚っ!!」
「んんっ!!」
名前を呼んだ瞬間、感極まった表情で僕の唇を奪った。
溶けてしまいそうなくらい熱い唇に唇を開くと、スッと肉厚な舌が滑り込んできた。
これ、ディープキスってやつ……?
すごい、僕の口の中で琢磨さんの舌が動き回ってる。
激しくも優しく絡みつかれて、おかしくなりそうだ。
キスってこんなに気持ちいものだったんだな。
もっともっとして欲しいのに、どんどん苦しくなっていく。
うーん、もう限界……と思った瞬間、琢磨さんの舌が離れていった。
苦しさは無くなったけれど、寂しさが募る。
なんだ、僕……もう十分琢磨さんのことが好きなんじゃないか。
そう思ったら、スッと気持ちが楽になった。
「たくま、さん……もっと、キスしたいです……」
「――っ!! 尚っ!」
噛み付くようなキスをされて、それがとてつもなく嬉しい。
そのまま離れた唇が、首筋、鎖骨に下りていく。
ちくっ、ちくっと小さな痛みを与えられ、ピクッと身体を震わせると
「痛かったか?」
と優しい声がかけられる。
「だい、じょうぶ……もっと、して……」
「ああもうっ! 可愛すぎるっ!!」
思いを告げると、どんどん琢磨さんの思いをぶつけられる。
パクッと乳首を咥えられ、舌先で転がされるだけで身体が跳ねてしまうくらい気持ちがいい。
「ああっ、だめぇ……おか、しくなっちゃう……っ」
初めての快感に身悶えていると、琢磨さんの大きな手が僕のソレに触れる。
「ひゃあっ!!」
こんなところ、人に触れられたのは初めてだ。
でも……すごく気持ちがいい。
僕のささやかなモノは琢磨さんの手にすっぽりとおさまって、軽く動かされるだけで自分でするよりも何倍も気持ちがいい。
「ああっ、やぁ――っ、イくっ、イっちゃうっ!!」
もう少しでイってしまいそう!
そう思った瞬間、突然琢磨さんの手の感触がなくなってしまった。
「えっ……?」
あまりの快感に朦朧する中、声をあげると
「初めては一緒にイきたいんだ」
と言われ、琢磨さんはいつの間にか手にしていたボトルの中身を手のひらに溢した。
「それ……っ」
「大丈夫。尚を傷つけないためのものだよ」
そう言って、ぬるぬるになった指で僕の後孔に触れた。
「ああっん! そこ……っ」
「大丈夫、痛くしない。優しくするから」
琢磨さんの優しい声に落ち着かされながら、後孔を撫でられる。
プツリと中に指が入ってきて、中をかき混ぜられる。
「ああっ、やぁん……なん、かへん……っ」
「ここかな?」
「ひゃあっん!!!」
グチュグチュと中をかき混ぜられていると、中の指がある一点を掠めた途端、今まで感じたことのないような刺激が全身を駆け巡った。
「ここが尚のいいところだよ」
「そ、こ……っ、だめぇ」
重点的に擦られてもうおかしくなってしまいそう。
「はや、くぅ……たくま、さんの、ほしぃ……っ」
「くっ! ああっ、挿入てあげるよ」
必死にねだると、指が引き抜かれ、代わりに熱くて大きなものがあてがわれる。
「挿入るよ」
その言葉と同時に、ググッと大きなモノが押し込まれていく。
「ああっ、おっきぃ……っ、こ、われちゃう……っ」
「大丈夫。ゆっくり挿入るから」
「ああっ……んっ……」
ゆっくりじわじわと押し広げられながら中に入ってくるけれど、思ったより痛みはない。
それどころか、もっと奥まで入って欲しくてウズウズしてしまう。
「も、っとぉ、おく……っ、ほしぃ……っ!!」
「ぐぅ――っ、ああっ!!!」
「ひゃあぁーっん!!!」
心の声が漏れた瞬間、熱くて硬いモノで奥までグチュンと音をたてて一気に貫かれた。
まるで頭からつま先まで電流が走ったような衝撃に身体の震えが止まらない。
ピクピク震えながら、いつの間にか僕は蜜を溢していた。
「ああっ、尚っ! 可愛いっ! 可愛いっ!!」
そんな言葉をずっと囁かれながら、身体ごと揺り動かされて、身体の奥をゴリゴリと擦られて、気持ち良すぎておかしくなってしまいそうだ。
「た、くまさん……す、きぃっ」
「くっ!! ああっ!!」
苦しげな琢磨さんの声が聞こえたと思ったら、身体の奥に熱いものが広がっていく。
そうか、琢磨さんもイったんだ。
そうおもったら嬉しくてたまらなかった。
「し、あわせぇ……っ」
心の中でそう呟いた瞬間、中にまた圧迫感を感じる。
「えっ? な、んで……?」
「今のは、可愛すぎる尚が悪い。責任とってもらうからな」
「えっ、ひゃああっ!!」
よくわからないままに身体を激しく揺り動かされて、僕はそのまま意識を失った。
気がつくと僕は琢磨さんの腕の中にいた。
「あ、あの……」
「ああ、目覚めたか? 悪い、最初からこんなに激しくするつもりじゃなかったが、あまりにも尚が可愛くて手放せなかった。私のことを嫌いになっていないか?」
「そんな……嫌いになるなんて……」
「ああっ、尚っ!! ありがとう! 愛しているよ」
心の底から嬉しそうな琢磨さんの声に思わず笑みがこぼれる。
「尚、今日からここで暮らすのは覚えている?」
「本当にいいんですか?」
「ああ、もちろんだ。もう絶対に離さないって言ったろう?」
「琢磨さん、僕嬉しいっ! ったた!」
「ああ、無理しないでくれ。私が激しくしすぎたから、責任もって世話をするからな」
ちょうど週末になったので、二日間至れり尽くせり介護してもらって、週明けの月曜日。
琢磨さんと一緒に仕事に向かった。
二ヶ月はいる予定だと聞いていたエバさんは本当にいなくなっていて、なぜか社長のこれからの予定に、<尚と過ごす時間>というスケジュールが新たに組まれていた。
「尚、これを食べさせてくれ」
「はい」
「食後に尚も食べさせてくれるか?」
「ふふっ。いいですよ」
今日もまた楽しいランチタイムが続く。
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いぬぞ〜さま。コメントありがとうございます!
久々お料理上手なニャンコ登場です。
本当にお邪魔虫でしかなかったですが、まぁそれきっかけで早く結ばれたんでよかったですかね。
それでも尚を泣かせた罪は重いのでかなりの報復があったでしょうが(笑)
潔癖だと素人のお弁当はなかなか食べられないものですね。
かくいう私も人のおにぎりは食べられないのでもっぱら自分で作るのみですがそれくらいですかね。
桃ちゃん可愛いですよねぇ。
今度は桃がつく名前にしようかな❤️
桃太郎じゃちょっとなんで(笑)桃だけでもいいかな🤭