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すごい部屋ばかり
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部屋を見てやっぱり気になるのは本棚。
アパートでもずっと本棚が欲しかったけれど、僕が欲しい専門書はリサイクルチェーンで有名な安い本屋には売っていないことが多く、古書店と呼ばれる店を回ってようやく見つけられるレベルで、値段もとんでもなく高かった。
以前、古書店でアルバイトさせてもらっていた時は空いている時間に読んでもいいと言われていて本当に助かったし嬉しかった。
あくまでも売り物だから白い手袋をつけて折り目もつけないように大切に読まなければいけなくて、仕事以上に気を遣ったけれどそれでもその本が読めることが嬉しかった。
だからあの古書店でアルバイトができなくなった時は、賄いを食べられなくなることよりも、アルバイト先が無くなってしまうことよりも、本を読めなくなることが一番辛かった。
本棚に近づくと、僕が持っていた教科書や参考書と一緒に希少な本がたくさん並べられていることに気づく。
しかもそれらは僕が見たいと思っていた本ばかりだ。
慎一さんが持っていた本を並べてくれたんだろうと思って、
「あっ、これ読みたかった本です! わぁー、ここで見られるなんて!」
と嬉しくなりながら本棚から取り出そうとすると、
「ああ。それね。伊月くんのアパートを片付けた時に、部屋に置かれていた教科書類を見て、必要だなと思うものを揃えておいたんだ」
とサラッと言われて驚いてしまう。
だって、目の前にある本は、圧倒的な蔵書量を誇る桜城大学の図書館ですらかなり希少な部類に入っていて、レポート作成時期や試験の頃にはいつだって奪い合いになるレベルの本だ。
それが一つの欠けもなく並んでいるなんてそれこそ信じられない。
僕が働いていた古書店だって、シリーズのいくつかが欠品しながらも、とんでもない金額で売られていたんだから。
「そこは、まぁ、伝手があるから。大抵のものは用意できるよ」
慎一さんはなんでもないとでもいうようにさらりとそういうけれど、これは本当にすごいことなんだ。慎一さんに対して尊敬しかない。改めて慎一さんの凄さを理解しながら、僕は本当にどうやって恩返ししようか……そのことばかり考えていた。
他の部屋も案内すると言われて、僕は急ぎながらも丁寧に本を元の場所に戻し、慎一さんについていって部屋を出た。
リビングの方に戻りその先にあるキッチンを案内してもらう。
広々とした作業台のあるキッチンにはIHヒーターが置かれ、食洗機もついていて、鍋やフライパンといった大物以外は手洗いはしなくていいらしい。
僕の身長よりもずっと大きい冷蔵庫にはたくさんの食材が入っていて、隣には大きな冷凍庫も別に置いてあってびっくりしてしまう。中には、お肉やお魚など食材が山のように入っていた。
「こんなにいっぱい食材があるんですか?」
「ほとんど貰い物だけどね。だから食べたいものを言ってくれたら大抵のものはいつでも作れるよ」
サラッと言われる言葉の全てが僕にとっては驚きでしかない。
僕の家にも僕の身長よりも小さな冷蔵庫を置いてたけど食材でいっぱいになったことは一度もなかったな……。
「こっちが食品庫ね。食材はこっち。あっちは日用品のストックだよ。切れることがないようにいつもストックしているから、無くなったものがあればここを探してみて」
「わ、わかりました」
そう返事をしつつも、まるでちょっとしたスーパーくらいの品揃えの多さにまたもや驚いてしまっていた。
「ここが脱衣所とお風呂ね。ここにあるボタンと、あとはリビングにも同じボタンがあるんだけど、そこを押したら浴槽のお湯が溜まるからいつでもお風呂溜めて入っていいからね」
ボタンひとつで、しかも5分くらいで浴槽いっぱいにお湯が溜まるシムテムなんだそう。
一人暮らしでは毎日お湯を張るのがもったいなくて、シャワーでささっと洗う程度だったからここではいつでも入っていいと言われて、ある意味カルチャーショックだ。
でも、慎一さんに臭いと言われたくはないから、お風呂はしっかり入らせてもらおうっと。
「こっちはランドリールームだよ」
「ランドリー、ルーム?」
「高層階のマンションは景観を守るためと、危険防止の観点からベランダに洗濯物や布団を干すことが禁じられているんだ。風も強いから洗濯物や布団が飛んで行ったりしら迷惑になってしまうし、それこそ人だって落ちたら危険だしね。だから、部屋の中に洗濯物を干す部屋があるんだよ。大きなガス乾燥機も二台備え付けてあるから、シーツみたいな大物はわざわざ干さなくても乾燥機を使ってくれて構わないよ。他のものも乾燥機を使ってもいいからね。エアコンも完備しているから作業してても暑かったり寒かったりはしないはずだよ」
洗濯物を干す部屋があることにもびっくりだけど、確かに外に干すのは怖いかも。
乾燥機を使っていいと言われたけど、できるだけ僕が干したいな。
全ての部屋を見終わって感想を聞かれて、特にすごかった食品庫とランドリールームの話をすると慎一さんは笑っていた。
でもあんなに広いランドリールームなのに忙しいから干さずにクリーニングに出すことも多いらしい。
これからは僕が毎日ちゃんと干せるから、その点で言えば役に立てるかな。
ひとつでも慎一さんの役に立てることがあってよかった。
「最後に寝室を案内するよ」
ああ、そうだ! そこは見てなかったけど、そんなプライベートな場所を僕なんかが案内してもらってもいいんだろうかと不安になる。
正直に、見せてもらってもいいのかと尋ねてみると、
「もちろんだよ。二人の寝室になるんだからね」
と思いがけない言葉が返ってきた。
えっ? 二人の寝室って、何? どういうこと?
頭が全く働かないまま、僕は慎一さんに手を引かれて扉の前に連れて行かれた。
アパートでもずっと本棚が欲しかったけれど、僕が欲しい専門書はリサイクルチェーンで有名な安い本屋には売っていないことが多く、古書店と呼ばれる店を回ってようやく見つけられるレベルで、値段もとんでもなく高かった。
以前、古書店でアルバイトさせてもらっていた時は空いている時間に読んでもいいと言われていて本当に助かったし嬉しかった。
あくまでも売り物だから白い手袋をつけて折り目もつけないように大切に読まなければいけなくて、仕事以上に気を遣ったけれどそれでもその本が読めることが嬉しかった。
だからあの古書店でアルバイトができなくなった時は、賄いを食べられなくなることよりも、アルバイト先が無くなってしまうことよりも、本を読めなくなることが一番辛かった。
本棚に近づくと、僕が持っていた教科書や参考書と一緒に希少な本がたくさん並べられていることに気づく。
しかもそれらは僕が見たいと思っていた本ばかりだ。
慎一さんが持っていた本を並べてくれたんだろうと思って、
「あっ、これ読みたかった本です! わぁー、ここで見られるなんて!」
と嬉しくなりながら本棚から取り出そうとすると、
「ああ。それね。伊月くんのアパートを片付けた時に、部屋に置かれていた教科書類を見て、必要だなと思うものを揃えておいたんだ」
とサラッと言われて驚いてしまう。
だって、目の前にある本は、圧倒的な蔵書量を誇る桜城大学の図書館ですらかなり希少な部類に入っていて、レポート作成時期や試験の頃にはいつだって奪い合いになるレベルの本だ。
それが一つの欠けもなく並んでいるなんてそれこそ信じられない。
僕が働いていた古書店だって、シリーズのいくつかが欠品しながらも、とんでもない金額で売られていたんだから。
「そこは、まぁ、伝手があるから。大抵のものは用意できるよ」
慎一さんはなんでもないとでもいうようにさらりとそういうけれど、これは本当にすごいことなんだ。慎一さんに対して尊敬しかない。改めて慎一さんの凄さを理解しながら、僕は本当にどうやって恩返ししようか……そのことばかり考えていた。
他の部屋も案内すると言われて、僕は急ぎながらも丁寧に本を元の場所に戻し、慎一さんについていって部屋を出た。
リビングの方に戻りその先にあるキッチンを案内してもらう。
広々とした作業台のあるキッチンにはIHヒーターが置かれ、食洗機もついていて、鍋やフライパンといった大物以外は手洗いはしなくていいらしい。
僕の身長よりもずっと大きい冷蔵庫にはたくさんの食材が入っていて、隣には大きな冷凍庫も別に置いてあってびっくりしてしまう。中には、お肉やお魚など食材が山のように入っていた。
「こんなにいっぱい食材があるんですか?」
「ほとんど貰い物だけどね。だから食べたいものを言ってくれたら大抵のものはいつでも作れるよ」
サラッと言われる言葉の全てが僕にとっては驚きでしかない。
僕の家にも僕の身長よりも小さな冷蔵庫を置いてたけど食材でいっぱいになったことは一度もなかったな……。
「こっちが食品庫ね。食材はこっち。あっちは日用品のストックだよ。切れることがないようにいつもストックしているから、無くなったものがあればここを探してみて」
「わ、わかりました」
そう返事をしつつも、まるでちょっとしたスーパーくらいの品揃えの多さにまたもや驚いてしまっていた。
「ここが脱衣所とお風呂ね。ここにあるボタンと、あとはリビングにも同じボタンがあるんだけど、そこを押したら浴槽のお湯が溜まるからいつでもお風呂溜めて入っていいからね」
ボタンひとつで、しかも5分くらいで浴槽いっぱいにお湯が溜まるシムテムなんだそう。
一人暮らしでは毎日お湯を張るのがもったいなくて、シャワーでささっと洗う程度だったからここではいつでも入っていいと言われて、ある意味カルチャーショックだ。
でも、慎一さんに臭いと言われたくはないから、お風呂はしっかり入らせてもらおうっと。
「こっちはランドリールームだよ」
「ランドリー、ルーム?」
「高層階のマンションは景観を守るためと、危険防止の観点からベランダに洗濯物や布団を干すことが禁じられているんだ。風も強いから洗濯物や布団が飛んで行ったりしら迷惑になってしまうし、それこそ人だって落ちたら危険だしね。だから、部屋の中に洗濯物を干す部屋があるんだよ。大きなガス乾燥機も二台備え付けてあるから、シーツみたいな大物はわざわざ干さなくても乾燥機を使ってくれて構わないよ。他のものも乾燥機を使ってもいいからね。エアコンも完備しているから作業してても暑かったり寒かったりはしないはずだよ」
洗濯物を干す部屋があることにもびっくりだけど、確かに外に干すのは怖いかも。
乾燥機を使っていいと言われたけど、できるだけ僕が干したいな。
全ての部屋を見終わって感想を聞かれて、特にすごかった食品庫とランドリールームの話をすると慎一さんは笑っていた。
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ひとつでも慎一さんの役に立てることがあってよかった。
「最後に寝室を案内するよ」
ああ、そうだ! そこは見てなかったけど、そんなプライベートな場所を僕なんかが案内してもらってもいいんだろうかと不安になる。
正直に、見せてもらってもいいのかと尋ねてみると、
「もちろんだよ。二人の寝室になるんだからね」
と思いがけない言葉が返ってきた。
えっ? 二人の寝室って、何? どういうこと?
頭が全く働かないまま、僕は慎一さんに手を引かれて扉の前に連れて行かれた。
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