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これって、普通?
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「そうか、砂川くんか」
「はい。退院したらお祝いしたいって言ってくれて……すごく嬉しいです」
「田淵くんにとって、砂川くんは大切な友人なんだね」
「はい。砂川くんがいなかったら僕……大学生活をこんなに頑張れなかったかもしれません」
入学して自分から話しかけられずに戸惑っていた僕に声をかけてくれた優しい人。
だからこそ、自分のせいで砂川くんに迷惑をかけてしまって申し訳ないと思ってた。
それでも僕を責めることなく友人でいてくれていることがすごく嬉しいんだ。
「ねぇ、砂川くんに送ったスタンプ……俺にも送ってくれないかな?」
「えっ? スタンプって……これ、ですか?」
さっきの画面に出ていたスタンプといえばこれしかないけど……これでいいのかな?
「ああ、これ! 可愛いから俺にメッセージ送る時も写真と一緒にスタンプ欲しいなって」
「河北さんって、そういうのが好きなんですね。僕もスタンプ送ってみたかったんですけどどんなのが好きかわからなくて遠慮してたんです。リクエストしてもらってよかったです」
「そうか、じゃあ、今夜から楽しみにしてるね。あ、そうそう今日のお土産と明日のお菓子だけど……」
ご機嫌な様子でお土産を渡してくれる河北さんを可愛いなと思いながら、僕はもらったお土産のシュークリームに胸を高鳴らせていた。
カスタードクリームと生クリームが入ったシュークリームを頬張ると、
「田淵くん。クリームがついてるよ」
と河北さんが指で唇を拭ってくれた。食べ方が下手で恥ずかしい。
「ありがとうございます」
急いでティッシュを渡そうとすると、河北さんはその指を当たり前のように口に運び、
「ああ、カスタードも美味しいね」
と笑った。
「あ、あの……」
「ほら、俺のは抹茶クリームなんだよ。こっちも食べてみて。美味しいよ」
驚いている間に河北さんが持っていた、まだ食べてないシュークリームを僕の口元に持ってくる。
条件反射のように口を開け、パクッと食べるとほろ苦いけど美味しい抹茶の味が口いっぱいに広がった。
「んっ! 美味しいです!!」
「よかった」
河北さんは嬉しそうに笑うと、僕が齧ったそのシュークリームをパクッと食べた。
「あっ!」
「うん。抹茶も美味しいね」
僕の食べかけ……。
前にも一度、僕が割ったお饅頭を河北さんが食べたことがあったけど、あれは直接口にしたわけじゃなかった。
でも今回のシュークリームは、完全に僕の食べかけ……。
これって、普通なのかな?
砂川くんと一つのデザートを半分こすることはあったけど、フォークやスプーンでちゃんと半分に分けてから食べてたし、直接食べることはなかった気がする。
「どうかした?」
「あ、いえ。なんでもないです」
こういうのが普通なのか聞いてみようかと思ったけれど、これで河北さんが僕の食べかけを食べてくれることがなくなるのが嫌だと思ってしまった。
だって、気にしないで食べてくれるって嬉しかったんだ。
その後も何度かお互いのものを食べあったりして、大満足のままにシュークリームを食べ終わった。
* * *
「リハビリもあと三回で終わりだね。伊月くんが頑張ったからもうすっかり歩けるようになったし、僕もすごく嬉しいよ」
いつものようにリハビリを終えてのお茶タイム。最初の頃と違うのは、僕が普通にベンチに座れるようになったことだ。
「事故に遭ってすぐはもうこうやって歩けないんじゃないかって不安だったよ。本当に尚孝くんと山野辺先生のおかげだよ」
「ううん。リハビリはあくまでもお手伝い。患者さん自身にやる気がなかったらなかなか成果は出ないんだよ。伊月くんが歩けるようになりたいって頑張った証拠だよ。あ、でも歩けるようになったからって無理は禁物だからね」
「うん。分かってる。尚孝くんと知り合えて本当に良かったな」
「うん。僕もだよ。伊月くんが初めての患者さんで本当に良かった」
出会った頃はまだまだ日差しが強かった空も、だいぶ過ごしやすくなってきた。まだまだ暑いけど、時が流れているのがよくわかる。
もしかしたら、尚孝くんとの縁はこれで終わりなのかもしれない。
それは僕にとっては本当に辛いことだけど、プライベートなことを聞いてはいけないから仕方がない。
尚孝くんが叱られるようなことになるのは嫌だもんね。
それからあっという間に、最後のリハビリを明日に控えた。
いつも話を聞いてくれていた尚孝くんに河北さんを紹介したいという気持ちが抑えられない。河北さんは仕事で忙しいから、僕がリハビリをしている時間に来てもらうのは難しいかもしれないけれど、頼むだけ頼んでみようかな。
いつもの時間に河北さんが来てくれて、僕は緊張しながら
「あの、河北さん……。明日の僕の最後のリハビリに一緒に行ってもらえませんか?」
とお願いしてみた。
無理と言われるかも……と思ったけれど、見に行っていいの? と予想外の言葉が返ってきて驚いた。
ああ、やっぱり河北さんって優しい。
「はい。退院したらお祝いしたいって言ってくれて……すごく嬉しいです」
「田淵くんにとって、砂川くんは大切な友人なんだね」
「はい。砂川くんがいなかったら僕……大学生活をこんなに頑張れなかったかもしれません」
入学して自分から話しかけられずに戸惑っていた僕に声をかけてくれた優しい人。
だからこそ、自分のせいで砂川くんに迷惑をかけてしまって申し訳ないと思ってた。
それでも僕を責めることなく友人でいてくれていることがすごく嬉しいんだ。
「ねぇ、砂川くんに送ったスタンプ……俺にも送ってくれないかな?」
「えっ? スタンプって……これ、ですか?」
さっきの画面に出ていたスタンプといえばこれしかないけど……これでいいのかな?
「ああ、これ! 可愛いから俺にメッセージ送る時も写真と一緒にスタンプ欲しいなって」
「河北さんって、そういうのが好きなんですね。僕もスタンプ送ってみたかったんですけどどんなのが好きかわからなくて遠慮してたんです。リクエストしてもらってよかったです」
「そうか、じゃあ、今夜から楽しみにしてるね。あ、そうそう今日のお土産と明日のお菓子だけど……」
ご機嫌な様子でお土産を渡してくれる河北さんを可愛いなと思いながら、僕はもらったお土産のシュークリームに胸を高鳴らせていた。
カスタードクリームと生クリームが入ったシュークリームを頬張ると、
「田淵くん。クリームがついてるよ」
と河北さんが指で唇を拭ってくれた。食べ方が下手で恥ずかしい。
「ありがとうございます」
急いでティッシュを渡そうとすると、河北さんはその指を当たり前のように口に運び、
「ああ、カスタードも美味しいね」
と笑った。
「あ、あの……」
「ほら、俺のは抹茶クリームなんだよ。こっちも食べてみて。美味しいよ」
驚いている間に河北さんが持っていた、まだ食べてないシュークリームを僕の口元に持ってくる。
条件反射のように口を開け、パクッと食べるとほろ苦いけど美味しい抹茶の味が口いっぱいに広がった。
「んっ! 美味しいです!!」
「よかった」
河北さんは嬉しそうに笑うと、僕が齧ったそのシュークリームをパクッと食べた。
「あっ!」
「うん。抹茶も美味しいね」
僕の食べかけ……。
前にも一度、僕が割ったお饅頭を河北さんが食べたことがあったけど、あれは直接口にしたわけじゃなかった。
でも今回のシュークリームは、完全に僕の食べかけ……。
これって、普通なのかな?
砂川くんと一つのデザートを半分こすることはあったけど、フォークやスプーンでちゃんと半分に分けてから食べてたし、直接食べることはなかった気がする。
「どうかした?」
「あ、いえ。なんでもないです」
こういうのが普通なのか聞いてみようかと思ったけれど、これで河北さんが僕の食べかけを食べてくれることがなくなるのが嫌だと思ってしまった。
だって、気にしないで食べてくれるって嬉しかったんだ。
その後も何度かお互いのものを食べあったりして、大満足のままにシュークリームを食べ終わった。
* * *
「リハビリもあと三回で終わりだね。伊月くんが頑張ったからもうすっかり歩けるようになったし、僕もすごく嬉しいよ」
いつものようにリハビリを終えてのお茶タイム。最初の頃と違うのは、僕が普通にベンチに座れるようになったことだ。
「事故に遭ってすぐはもうこうやって歩けないんじゃないかって不安だったよ。本当に尚孝くんと山野辺先生のおかげだよ」
「ううん。リハビリはあくまでもお手伝い。患者さん自身にやる気がなかったらなかなか成果は出ないんだよ。伊月くんが歩けるようになりたいって頑張った証拠だよ。あ、でも歩けるようになったからって無理は禁物だからね」
「うん。分かってる。尚孝くんと知り合えて本当に良かったな」
「うん。僕もだよ。伊月くんが初めての患者さんで本当に良かった」
出会った頃はまだまだ日差しが強かった空も、だいぶ過ごしやすくなってきた。まだまだ暑いけど、時が流れているのがよくわかる。
もしかしたら、尚孝くんとの縁はこれで終わりなのかもしれない。
それは僕にとっては本当に辛いことだけど、プライベートなことを聞いてはいけないから仕方がない。
尚孝くんが叱られるようなことになるのは嫌だもんね。
それからあっという間に、最後のリハビリを明日に控えた。
いつも話を聞いてくれていた尚孝くんに河北さんを紹介したいという気持ちが抑えられない。河北さんは仕事で忙しいから、僕がリハビリをしている時間に来てもらうのは難しいかもしれないけれど、頼むだけ頼んでみようかな。
いつもの時間に河北さんが来てくれて、僕は緊張しながら
「あの、河北さん……。明日の僕の最後のリハビリに一緒に行ってもらえませんか?」
とお願いしてみた。
無理と言われるかも……と思ったけれど、見に行っていいの? と予想外の言葉が返ってきて驚いた。
ああ、やっぱり河北さんって優しい。
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