何もできない僕が甘えてもいい? 〜イケメンな彼の優しさに戸惑っています

波木真帆

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お礼がしたい!

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予約投稿忘れてました(汗)
楽しんでいただけると嬉しいです♡

   *   *   *

――ただいま。ちゃんと帰ってきたからね。

「かわきたさん……っ」

就寝時間になってもなかなか寝付けなかったけれど、優しい河北さんの声が聞こえたような気がしていつの間にか眠れていたんだと気づいた。なぜか河北さんがそばにいてくれるような、安心する匂いがして僕は深い眠りについていた。

いつもよりぐっすりと寝た気がする。だからかな、頭がスッキリしてる。きっと河北さんの夢を見られたからだろう。

今日はまだ名古屋にいるのかな……。朝の挨拶とか送っちゃダメかな?

<河北さんの夢を見たのでぐっすり眠れました>

って報告したらびっくりさせちゃうかな。

なんて思いながら、ベッドの横にある棚に置いていたもふもふのわんわんケースに入ったスマホを取ろうと手を伸ばすと、

「あっ……」

昨日寝る時には確かになかったはずの小さな紙袋が置かれていた。

「これ、なんだろう?」

スマホを枕元に置き、紙袋を取って紐に結ばれていたリボンを外して中を見ると、個包装された美味しそうなお菓子がいくつも入っていた。

「これ……」

――名古屋にも有名な焼き菓子があるからお土産にするね

まさか、河北さん?

ちゃんと帰ってきたからねって……あれは夢じゃなかった?

信じられない気持ちでいると、紙袋の中に小さな紙が入っているのが見える。

<田淵くん。これはお土産だよ。今日もリハビリ頑張って!>

「――っ!!」

やっぱり河北さんだ! これを夜中にわざわざ僕のために届けにきてくれたってこと?
名古屋から帰ってきて疲れているだろうに、わざわざ僕のところに届けてくれるなんて……。

「河北さん……っ」

どうして、僕にこんなにもしてくれるんだろう……。僕は紙袋を崩さないように抱きしめながら、涙が止まらなかった。

これは絶対にお礼を言わなきゃ!! 夜に来てくれていたなら、今日は疲れて来られないかもしれない。それに来てくれるまでお礼を待つなんてできない。

急いでスマホを手に取ってメッセージを書いた。

<河北さん。おはようございます。起きたら素敵なプレゼントが置いてあって、サンタさんが来てくれたのかと思いました。美味しそうなお菓子で今日もリハビリ頑張れそうです!! ありがとうございます!! 今度お礼をさせてくださいね。あと、河北さんが無事に帰ってきたのがわかって安心しました。伊月>

メッセージはこれでいいとして……。本当に受け取ったか、見てもらったほうがいいかな?

うん、それがいいよね。
僕はお菓子が入っていた紙袋が入るようにスマホで自撮りして、それをメッセージと一緒に河北さんに送信した。

送った後で、寝起きの顔でしかも寝巻き姿を送ってしまったことに気づいてしまったけど、送信完了してしまっているからどうしようもない。しかももう既読されちゃってるし。

<すみません、プレゼントが嬉しすぎて寝起きで寝巻き姿を送っちゃいました。後で写真を撮り直すので、削除しておいてください!! 伊月>

このメッセージを送るとすぐに既読がついた。でも返信はない。
きっと呆れられているのかもしれない。

「はぁーーっ。もう、だめだ……」

自分のやらかし加減に恥ずかしくなる。

すると、ポン! と通知音が聞こえた。
恐る恐る画面を見ると、河北さんからの返信が来たみたいだ。

<田淵くん、おはよう。お土産そんなに喜んでもらえて嬉しいよ。お礼は可愛い田淵くんの写真がもらえたからそれで十分だよ>

可愛いなんて書かれていてちょっと恥ずかしくなる。でも、嫌だと思われてないだけよかったかな?


リハビリの時間に、河北さんからもらったお菓子を持っていくと、

「あっ! これ、すごく有名なお店のだね」

と紙袋を見て尚孝くんがすぐに気づいてくれた。

「河北さんの名古屋のお土産なんだよ」

「そうそう、名古屋。美味しいけど名古屋に行かないと食べられないものだから貴重だね」

「そんなにすごいものなんだ!」

「うん、毎日行列ができるらしいよ」

「行列……」

お仕事で行ってるのに、僕のために……。本当に何かお礼しなくちゃな。

「ねぇ、尚孝くん。河北さんに何かお礼したいんだけど、どんなのが喜ばれるかな?」

「うーん、そうだね……なんだろう?」

二人で悩んでいると、

「どうかしたかな?」

と山野辺先生が声をかけてくれた。

「あ、山野辺先生。伊月くん、山野辺先生に聞いてみてもいい?」

「うん。山野辺先生ならいいアイディア教えてくれそう!」

「だよね!!」

「アイディア? なんだ?」

僕たちの会話に不思議そうな表情を浮かべた山野辺先生に尚孝くんが説明をすると、

「ああ、なるほど。それで悩んでいたのか」

と笑顔を見せてくれた。

「先生、河北さんへのお礼……何がいいと思いますか?」

「ははっ。それはね……」

「はい!!」

僕も尚孝くんも期待に胸を膨らませて尋ねたけれど、

「本人に直接聞いたほうがいいよ」

という言葉が返ってきて、ちょっとびっくりしてしまった。

「えー、先生。それじゃ答えにならないですよ」

「ははっ。そうかな? だが、一番喜ぶものは本人に聞くのが一番だよ。まぁ、河北くんなら田淵くんがお礼をするならなんでも喜びそうだけどね」

山野辺先生にそう言われて、

――俺は田淵くんが願う通りにしたいだけだよ

と河北さんに言われたことを思い出す。
確かにあんなふうに言ってくれた河北さんならなんでも喜んでくれそうだ。
だからこそ、やっぱり本人に来たほうがいいのかもしれない。

「先生、僕……河北さんに聞いてみます」

「ああ。きっと河北くんも喜ぶよ」

「伊月くん、頑張って!」

尚孝くんの応援に嬉しくなりながら、僕は河北さんが来てくれるのを待った。
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