ロイヤルウェディング 〜忘れられない恋をもう一度

波木真帆

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幸せならば

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ーあなたの父であるトモヤさんの運命の相手は、私の祖父であるアーチーです。

ーえっ……

はっきりと言い切ると、電話の向こうで彼女が息を呑むのを感じた。
異性と結婚式を挙げたばかりの彼女にとっては、ずっと育ててきてくれた父が愛する人に選んだのが男だとは信じられないだろう。

ーあなたはそれでも、トモヤさんを応援できますか?

幸せな二人を傷つけたくない。
アリサさんが二人を応援できないのであれば、その旨を私たちが伝えて顔を合わせないようにしてやりたい。
これまでずっと悲しみを味わってきた二人には、これから先は幸せだけを感じていてほしい。

ー父はイケメンで優しいから街に出れば必ず声をかけられて……でも、上手く躱して絶対に誘いには乗らなかったんです。だから、私のことは気にしないで、好きな人ができたら結婚してって言っても、忘れられない人がいるから結婚するつもりは一生ないってずっと言っていて……他の人に興味を持てないくらいその人のことを愛しているんだろうなと思っていました。

アーチーのことをずっと思い続けて一人で過ごすつもりだったんだな。
アーチーと同じだ。いつも結婚するつもりはないって言っていたからな。

ーその忘れられない人と再会して父が幸せなら何も言うことはありません。私は……父が幸せになることが一番の望みですから、相手が男性だろうと、父が本気で愛する人と幸せになるなら応援します。

アリサさんの言葉に、私の隣にいたヨウスケもジェラルドに抱きしめられているトールも涙を流している。

ー良かった……アリサさんのその気持ちがトモヤさんには一番嬉しいと思います。私たちは今、ロードナイトホテルにいますが、多分、明日の夜にはアーチーとトモヤさんと会えると思います。アリサさんも明日こちらに来られませんか? アーチーもトモヤさんもきっとアリサさんと直接話したいと思うんです。

ー私も直接会ってお話しがしたいですが、夜なら夫も一緒に伺ってもよろしいですか?

ーそれはもちろん! ご夫婦でお越しください。

ーありがとうございます。それじゃあ明日の十八時ごろ伺います。

丁寧な口調のままアリサさんとの電話は終わった。

『良かった……教授、これで幸せになれるね』

『ああ、有沙さんもさすが教授の娘だけあって話がわかるいい人だったな』

涙を拭いながら、トールとヨウスケが話をしているのをみて、私も胸が熱くなる。
こんなにも教え子に慕われるトモヤさんは人として本当に素晴らしい人なんだろう。
二人はきっとうまく行っている。それは二人のあの様子を見ても明らかだ。
長い間アーチーだけを見つめていてくれたトモヤさんがアーチーのそばに一生いてくれるなんて……孫として、こんなにも嬉しいことはない。

あとは幸せになった二人の姿を見て、安心するだけだ。

きっと一日は出てこないだろうと思って、アリサさんと約束を取り付けたが、私の予想通り、部屋を出てきたアーチーから連絡が来たのは、二人で部屋に入ってから丸一日経った、夕方の五時を回ったところだった。

<sideアーチー>

愛しいトモヤと幸せな時間を過ごし、丸一日経ってエリックに連絡を入れた。
トモヤと愛し合った部屋にエリックたちを呼び寄せるのは憚られて、別の部屋を用意してもらい、そこに移動することにした。

『なんだか少し照れる』

『可愛いトモヤをエリックたちに見せられて私は幸せだよ』


トモヤは教え子たちに会うのに少し緊張している様子だったが、私が腰に腕を回すと恥ずかしそうにしながらもそのままでいてくれた。

エリックたちの部屋に到着し、中に入るとすぐに教え子二人がトモヤの元に駆け寄ってきた。

『教授、幸せですか?』

『ああ、小芝くん。吾妻くん、本当にありがとう。君たちのおかげだよ』

もし、二人がロサランに来てくれなければずっとトモヤのことを思い続けながら勇気を出せないまま、一生を終えていたかもしれない。本当に二人のおかげだ。

『そんな僕たちは……』

『いや、本当に君たちのおかげだよ。私からも礼を言う』

頭を下げると二人は恐縮していたが、

『幸せになってもらえたならそれで僕たちも嬉しいです』

と嬉しい言葉を返してくれた。

『それでアーチー。これからはどうするんだ?』

『ああ。トモヤが私と一緒にロサランで暮らしたいと言ってくれたから、それに向けて動く予定だ』

大学を辞める準備もあるし、何よりトモヤの大事な一人娘にも挨拶をしないといけないから、まだ先は長いが、できれば彼女にはトモヤのためにも祝福してもらいたい。

それだけが願いだ。


  *   *   *


次回で完結です。どうぞお楽しみに♡
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