ロイヤルウェディング 〜忘れられない恋をもう一度

波木真帆

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悔いのないように

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ああ、本物のトモヤだ。

そう思った瞬間、画面の向こうからも

『アーチー……ほんもの?』

と震える声で尋ねられる。

やはり私たちは二人で一人なのだとわかる。

その事実を嬉しく思いながら画面のトモヤに笑顔を向けた。

『もちろんだよ。トモヤは全く変わっていないな。私が好きになったあの時と同じだ』

正直に思いを告げたが、トモヤの訝しんだ声が聞こえる。
それはそうだろう。先ほどのトモヤの話を聞けば、私は彼の身体を奪いすぐにその場から姿を消した男なのだから。

それでも私を憎むことなく、私を忘れないでいてくれたんだ。
トモヤに会いたい。その思いが込み上げる。

『すぐに君の元に飛んで行きたいよ。私はこの二十六年、トモヤを忘れたことはなかったよ』

必死に思いを伝えようとするけれど、私も突然のトモヤとの再会にうまく言葉が出てこない。
もっとちゃんと説明したいのに。

トモヤはまだ私の言葉が信じられないようで、画面を見つめたまま何も話そうとしない。

画面にエリックの伴侶のヨースケとシェラルド王子の伴侶のトールが映ったと思ったら、スマホがエリックたちの元に渡った。
後ろではヨースケたちの声がうっすらと聞こえる。
トモヤと話をしているようだ。
私の神経はそちらに向いていたが、エリックから声をかけられた。

『アーチー。彼が話していたのは事実なのか? アーチーは彼と一夜を過ごして逃げ出したというのは本当なのか?』

孫として、祖父がそんな非人道的なことをしていたと知るのは辛いだろう。

『いや、エリック。よく聞いてくれ。私も、そしてトモヤも大きな勘違いをしていたようだ。それも全てあの日、私があの部屋を出て行ったことが問題だったらしい。私があの日、トモヤが目覚めるのを待っていれば……こんなにも長くすれ違うことはなかった』

『アーチー、信じていいんだな?』

『もちろんだ。私は、トモヤを愛している。この二十六年忘れたことは一度もなかったよ。諦めようとしたが、諦められなかったんだ』

『わかった。信じるよ。アーチーはこのまま日本に向かってくれ。もうそろそろ到着するだろう。到着したら、ロードナイトホテルに向かってくれ。私たちは彼をそこに連れて行く。あとは二人でゆっくり話をしてくれ。逃げてはダメだ』

エリックの真剣な表情に私は背筋を正した。

『ああ。日本に着いたらすぐに向かう。おそらくあと一時間で到着するだろう。その間、トモヤを頼む』

『任せてくれ。アーチー、頑張れよ!』

心強い孫の声に私は笑顔で返した。

そこからの一時間は今までトモヤと会えなかった時間よりも長く感じた。

――その口づけが永遠の誓いであったらよかった

トモヤはそう思ってくれていたのに……どうしてあんなことに……。
今更後悔してもこの失われた二十六年は帰ってこない。

だからこそ、これからの日々をトモヤと過ごせるように全力を尽くすだけだ。


必死に自分で自分を落ち着かせながら、空港からホテルに向かうタクシーに乗り込んだ。
タクシーの運転手は私を観光客だと思って話しかけてくれたが、今はそんな相手をする余裕もない。

『これから大事な人に会うんだ。だからその人のことだけを考えたい』

そう告げると、ようやく車内に静寂が広がった。

そしてようやくホテルに到着。支払いを済ませて降りようとした私に、

『きっとうまく行きますよ。悔いのないように!』

と運転手が声をかけてくれた。

悔いのないように、か。
そうだな。もう二度と会えないと思っていた人との再会だ。後悔はしたくない。

『ありがとう!』

私は笑顔で降り、ホテルの中に入った。

すぐにトモヤのいる部屋を伝えられルームキーを渡された。
階段を駆け上がりたいほど気が急いていたが、途中で疲れて会えなくなっては元も子もない。
大人しくエレベーターに乗り込み、彼の待つ部屋に到着した。

今まで感じたことのないほどの早い鼓動を感じながら、ゆっくりとルームキーを差し込み、扉を開けた。

中に入り、リビングへの扉をゆっくりと開けると、ソファーに座っていたトモヤと目があった。

『――っ、ト、モヤ……ッ。会いたかったっ!!』

荷物も何もかもその場に投げ捨てて駆け寄ると、トモヤの目に涙が浮かんでいるのが見える。

『ごめん、辛い思いをさせて本当にごめん。トモヤ、愛してるんだ!』

小さな身体を抱きしめると、彼の腕が私の背中に回るのを感じた。

『アーチー……』

トモヤの口から私の名前を呼んでくれるが来るなんて……今日は本当に最高の日だ。


  *   *   *

話はあまり進んでませんがどうしてもアーチーの気持ちは書いておきたかったので。
続きをどうぞお楽しみに♡
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