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教え子からの連絡

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ロイヤルウェディングシリーズの
『ロイヤルウエディング ~スイーツな恋に落ちました』
で<恩師への挨拶>のお話を書いてましたが、エリックの祖父がメインで出てくるので
『ロイヤルウエディング ~セクシーボイスに魅せられて』のほうに書けばよかったかなと思い、それならエリックの祖父(アーチー)と恩師(真田教授)の話を独立させることにしました。
書いていたお話に真田教授視点のお話を追加して投稿しています。
楽しんでいただけると嬉しいです♡


   *   *   *

<side透>

『ジェリーさん、両親への挨拶も無事に終わったから明日は洋輔と大学に行ってもいいですか?』

内定をもらっていた会社には申し訳ないと思いつつ、さっき断りを入れた。かなり期待してくれていたようで、辞退する理由を尋ねられたけれどロサラン王国に移住する事になったと言ったら渋々だけど内定を取り消してくれた。
海外支社のある会社だったからロサランに近い支社があったらそっちに行かされるかも……と思ったけれど、かなり離れているところしかなかったみたいでホッとした。
働いてみたいと思って受けた会社だったけれど、ロサラン王国に骨を埋める覚悟を決めたんだ。だからこれからは僕はジェリーさんを支えて生きていきたい。ということで会社の方はもう心配はない。

あとは大学だ。卒業の単位は取れているからこのまま大学に通わなくても卒業資格は取れるけど、やっぱり教授には挨拶をしておきたい。だから、洋輔と二人で挨拶に行こうかなと思ったんだ。

『もちろん構わないが、二人では行かせられない。多分、エリックも同じことを言うだろうが、私も一緒についていこう』

『えっ? でもロサラン王国の王子さまが大学に行っても大丈夫なんですか?』

『ははっ。それは問題ない。第一、私たちはフィアンセだから離れている方がおかしいよ。それに、トールにロサランのことを教えてくれた教授に会いに行くんだろう? 彼のおかげでトールがロサラン王国に興味を持って私と出会わせてくれたんだ。私からもお礼を言わないと気が済まないよ』

『ジェリーさん……。わかりました。一緒に教授に会ってください。僕も教授に運命の相手と出会えたってちゃんと報告したいです』

『トール……嬉しいよ』

ジェリーさんが僕を抱きしめてくれる。その温もりにホッとする。
僕はもうこの温もりを知らない頃には戻れないな。

『教授は明日は大学に来るのか?』

『はい。明日、教授は講義はない日なんですけど、そう言う時は必ず教授室で書き物をしているので大丈夫です。一応教授に連絡してみますね』

僕はすぐにスマホを取り出し、教授にメッセージを送る事にした。
ロサラン旅行から帰ってきたことをまず報告して、教授に大事な話があるから吾妻くんと一緒に明日会いに行きたいと書いて送った。

<大事な話……もしかしたら運命の相手にでも出会ったのかな? 君たちならそれも有り得そうだな。とにかく明日はいつ来てもらっても敵わないよ。元気に帰国した君たちに会えるのを楽しみにしている。真田さなだ友哉ともや

すぐに送られてきた返信には、運命の相手とのことが書かれていてさすが真田教授だと思った。

やっぱりロサランから帰ってきて大事な話なんて言われたら、教授にならわかっちゃうよな。
ちょっと照れくさいけど、報告はしないとね。

でも、さすがの教授も僕と洋輔の二人が運命の相手と出会って、しかもその相手が王太子殿下とあの有名な歌手のお孫さんだなんて知ったら驚くだろうな。

『トール、どうだった?』

『はい。教授に連絡取れました。明日いつでもかまわないそうです』

『そうか、なら私もエリックと連絡を取っておこう』

そう言うが早いか、ジェリーさんはサッとエリックさんに連絡を入れ、待ち合わせの時間を決めていた。
こういう時、みんなが知り合いだと話が早くていい。

午後から出かける事になったと決まり、ジェリーさんは僕をベッドに誘ってきた。

それもあっての午後からの外出だったのかも……と思ったけれど、僕もジェリーさんと愛し合いたかったのだから文句はない。

そのまま僕たちはベッドでたっぷりと愛を確かめ合った。


<side真田さなだ友哉ともや(透と洋輔のゼミの教授)>

小芝こしばくんと吾妻あづまくんが大事な話をしにやってくる。
しかもロサラン王国を訪れた後で……。

わざわざ私に話をしにくるということは、もしかしたら、そういうことなのかもしれない。

ロサラン王国、か……。

私にとっては幸せでもあり、苦しくもある思い出の場所。
この三十年近くもの間、遠く思いを馳せるだけの場所になっている。
何度も忘れようと思っても忘れられない場所。
だから娘の結婚を見届けて、大学での仕事を終えたら、ロサランにもう一度足を踏み入れようと思っていたが、まさかこのタイミングで教え子二人がロサラン王国と縁を繋ぐことになったとは……。

いや、まだ決まったわけじゃないか。

彼らと会い、どんな話が聞けるかを楽しみにするとしようか。

私はそっと古い手帳を開き、懐かしい写真を手に取った。
こっそりと撮った彼の笑顔。

彼は今、何を思っているのだろうな。
もうとっくに私のことなど忘れてしまったとわかっていても彼を思わずにいられなかった。

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