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二人の時間の始まり <ノーラン&エルド>
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<sideノーラン>
『まさかエルドの甥っ子がマーカスの運命の相手だったとはな』
『ええ。本当にびっくりしましたよ』
『だが、サトルはエルドによく似ているな。顔だけでなく性格も』
甥っ子ではなく息子と言われても納得するほどエルドとサトルは本当によく似ている。
私とマーカスに出会うまでずっと一人でいてくれたことも全て。
『ふふっ。わかりますか? 昔から実の父親よりそっくりだと言われて……智琉が大学に勤めるようになってから、弟夫婦が事故で亡くなったので余計に本当の息子のように可愛がってきたんですよ』
『そうだったのか……だが、これからは本当の息子になるんだぞ』
『えっ? あっ、そうか、そうですね。ノーランの息子の伴侶になるんですからね。不思議な縁ですね』
『エルド、嬉しいか?』
『ええ。ずっと一人だったのに、一気に家族が増えて……こういうのを幸せって言うんでしょうね』
私がもっと早くにエルドと出会っていれば……いや、学生時代にエルドに思いを伝えていれば、エルドをこの年まで一人にさせることはなかったのかもしれない。
だが、もし私とエルドが幸せな年月を過ごしていたとしたら、マーカスが誕生することもなく、サトルが運命に出会うこともなく一生を一人で過ごすことになったのかもしれない。
そう考えたら、今このタイミングでエルドと出会えたことが誰にとっても幸せだったのだろう。
過ぎ去った時間を後悔するより、これからの第二の人生を今までの分を補うくらい濃密で幸せな時間を過ごせばいいのだ。
『マーカスはサトルが大学での仕事を終えるまでは足繁く日本に通うだろう。そのあとはフランスで新居を構えて暮らすことになるのだろうが、エルドはどうしたい? 私はもちろん、エルドの退役まで待つつもりだ。それまではマーカスと同じくアメリカに通うよ。それか、もう仕事は全部息子たちに任せて、アメリカに移住してもいい』
『ノーラン、本気ですか?』
『もちろんだとも。私はもう人並み以上には働いてきたからな。少しくらい早くリタイヤしても誰からも文句は言われないよ。いい加減、息子たちにシュバリエ家当主の肩書を渡したいと思っていたのだから。もうエルドとの時間だけを考えていたいのだよ』
『ノーラン……それほどまでに私のことを思ってくださって……私は幸せです』
『当然だよ。私はもう君を手放したくないんだ。だから必死にもなるさ。エルドはアメリカとフランス、それとも日本でもいい。どこで暮らしたい?』
私の質問にエルドはしばらく悩んでみせたが、
『私はノーランが生まれ育ったフランスがいいです。私たちの思い出の地でもありますけど、パブリックスクール以外の場所をあまり知らないので、ノーランにいろんなところを案内してもらいたいです。ノーランのお気に入りの場所にも連れて行ってください』
と可愛らしい笑顔を向けてくれる。
愛しい人に自分の生まれ育った町を案内して欲しいと言われて嬉しくないわけがない。
私がエルドに愛されているのだと実感する。
『もちろんだよ。息子たちも誰も知らない私だけの特別な場所にもエルドにだけ案内しよう』
『わぁ! それは嬉しいです!』
無邪気なエルドの表情に興奮する自分がいる。
どれだけ年を重ねても、愛しい人に興奮するのは世の常だ。
『エルド……』
笑みを浮かべていたエルドをそっと抱きしめると、エルドの身体がびくりと震えた。
『私はエルドを怖がらせているか?』
『いえっ! そんなことは絶対にないです。ただ……』
『ただ?』
『機内で、続きは私の家でと言われた時からずっとドキドキしていて……』
『エルド……』
『もう、ここは私たち二人だけの空間ですよ。だから――んんっ!!』
私と愛し合うのをドキドキして待っていてくれたなんて聞かされたらもう抑えられるはずがない。
欲望のままにエルドの唇を奪う。
舌を滑り込ませ歯列をなぞり舌を絡ませる。
甘い唾液をたっぷりと混ぜ合いながら、エルドの口内をたっぷりと堪能した。
ゆっくりと唇を離すと、私が与えた激しいキスにエルドはぐったりと身を預けながら、
『ノーラン、しんしつに、つれていって……』
と甘えた声で強請ってくれる。
可愛いおねだりに抗う理由などなく、私はエルドを抱きかかえて急いで寝室に連れて行った。
『まさかエルドの甥っ子がマーカスの運命の相手だったとはな』
『ええ。本当にびっくりしましたよ』
『だが、サトルはエルドによく似ているな。顔だけでなく性格も』
甥っ子ではなく息子と言われても納得するほどエルドとサトルは本当によく似ている。
私とマーカスに出会うまでずっと一人でいてくれたことも全て。
『ふふっ。わかりますか? 昔から実の父親よりそっくりだと言われて……智琉が大学に勤めるようになってから、弟夫婦が事故で亡くなったので余計に本当の息子のように可愛がってきたんですよ』
『そうだったのか……だが、これからは本当の息子になるんだぞ』
『えっ? あっ、そうか、そうですね。ノーランの息子の伴侶になるんですからね。不思議な縁ですね』
『エルド、嬉しいか?』
『ええ。ずっと一人だったのに、一気に家族が増えて……こういうのを幸せって言うんでしょうね』
私がもっと早くにエルドと出会っていれば……いや、学生時代にエルドに思いを伝えていれば、エルドをこの年まで一人にさせることはなかったのかもしれない。
だが、もし私とエルドが幸せな年月を過ごしていたとしたら、マーカスが誕生することもなく、サトルが運命に出会うこともなく一生を一人で過ごすことになったのかもしれない。
そう考えたら、今このタイミングでエルドと出会えたことが誰にとっても幸せだったのだろう。
過ぎ去った時間を後悔するより、これからの第二の人生を今までの分を補うくらい濃密で幸せな時間を過ごせばいいのだ。
『マーカスはサトルが大学での仕事を終えるまでは足繁く日本に通うだろう。そのあとはフランスで新居を構えて暮らすことになるのだろうが、エルドはどうしたい? 私はもちろん、エルドの退役まで待つつもりだ。それまではマーカスと同じくアメリカに通うよ。それか、もう仕事は全部息子たちに任せて、アメリカに移住してもいい』
『ノーラン、本気ですか?』
『もちろんだとも。私はもう人並み以上には働いてきたからな。少しくらい早くリタイヤしても誰からも文句は言われないよ。いい加減、息子たちにシュバリエ家当主の肩書を渡したいと思っていたのだから。もうエルドとの時間だけを考えていたいのだよ』
『ノーラン……それほどまでに私のことを思ってくださって……私は幸せです』
『当然だよ。私はもう君を手放したくないんだ。だから必死にもなるさ。エルドはアメリカとフランス、それとも日本でもいい。どこで暮らしたい?』
私の質問にエルドはしばらく悩んでみせたが、
『私はノーランが生まれ育ったフランスがいいです。私たちの思い出の地でもありますけど、パブリックスクール以外の場所をあまり知らないので、ノーランにいろんなところを案内してもらいたいです。ノーランのお気に入りの場所にも連れて行ってください』
と可愛らしい笑顔を向けてくれる。
愛しい人に自分の生まれ育った町を案内して欲しいと言われて嬉しくないわけがない。
私がエルドに愛されているのだと実感する。
『もちろんだよ。息子たちも誰も知らない私だけの特別な場所にもエルドにだけ案内しよう』
『わぁ! それは嬉しいです!』
無邪気なエルドの表情に興奮する自分がいる。
どれだけ年を重ねても、愛しい人に興奮するのは世の常だ。
『エルド……』
笑みを浮かべていたエルドをそっと抱きしめると、エルドの身体がびくりと震えた。
『私はエルドを怖がらせているか?』
『いえっ! そんなことは絶対にないです。ただ……』
『ただ?』
『機内で、続きは私の家でと言われた時からずっとドキドキしていて……』
『エルド……』
『もう、ここは私たち二人だけの空間ですよ。だから――んんっ!!』
私と愛し合うのをドキドキして待っていてくれたなんて聞かされたらもう抑えられるはずがない。
欲望のままにエルドの唇を奪う。
舌を滑り込ませ歯列をなぞり舌を絡ませる。
甘い唾液をたっぷりと混ぜ合いながら、エルドの口内をたっぷりと堪能した。
ゆっくりと唇を離すと、私が与えた激しいキスにエルドはぐったりと身を預けながら、
『ノーラン、しんしつに、つれていって……』
と甘えた声で強請ってくれる。
可愛いおねだりに抗う理由などなく、私はエルドを抱きかかえて急いで寝室に連れて行った。
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