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番外編

ドキドキの初対面 <後編> デーヴィッド&レジー

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<sideデーヴィッド>

「あの、兄上。どうしてアシュリー殿下はレイとだけ会うのですか? せっかくならリヒトも一緒に……」

「そうだな、お前にも話しておかないといけないな」

「えっ? なんですか? 何か理由でも?」

「まぁ、アシュリーとレイをみればわかるさ」

兄上の反応に些か不思議な印象を持ちながらも、アシュリー殿下の待つ応接室に向かった。

セスが扉を叩くとすぐに扉が開き、

「待っていたぞ!」

と満面の笑みで迎え入れられた。

いや、正確に言えば迎え入れられたのは保育器に入ったレイだけ。

アシュリー殿下の視界には兄上も私も全く入っていないようだ。

アシュリー殿下はすぐに保育器からレイを抱き上げ中に入って行こうとするが、抱き方もかなり手慣れたものだ。
生まれてそこまで日数が経っているわけでもないのに、なぜだろう。

「あ、兄上……」

「ああ、そうだな。アシュリー、とりあえず私たちも中に入れてくれ」

「なんだ、お前もいたのか。おお、今日はデーヴィッドも一緒か」

どうやら本当に視界には入っていなかったようだ。

中に入り、ソファーに腰をかけるが小さなレイは安心したようにアシュリー殿下の腕の中で眠りについている。
こんなにも懐いているなんて……。

「デーヴィッド、お前にも話しておこう。だが、レジーにはまだ話すな。少し込み入った話なのでな」

「なんですか? 兄上、そんなに難しい話なのですか?」

「実は……このレイは、ルカの生まれ変わりなんだ……」

「……はぁ? どういうことです? ルカさまはさっき部屋でお会いしたばかりではないですか!」

「話せば長くなるが………」

そう言って兄上が語ったものはすぐには信じ難い話だったが、ある日を境にルカさまの性格が変わったというのは聞いていたし、実際に変わったのも見ている。

「ならば、その子が以前のルカさまの……」

「そうだ。そして、アシュリーの許嫁だ」

「えっ?」

またもや思わぬ事実の発覚に頭が混乱してきた。

「あの……それは、まことでございますか?」

「ああ。そうだ。だから、私はこうして毎日のようにここに通い、世話をしているのだよ」

「成人までずっとお待ちになるのですか?」

「ああ。あの時、ルカを失っていたと思えば、成人までの年月などたいした問題ではない。それに愛しいレイの成長を近くで見守り続けられるというのも幸せだぞ」

そう話すアシュリー殿下は本当に幸せそうだった。

こんな愛の形もあるのだな。

それからしばらく歓談していると、応接室の扉が叩かれセスが入ってきた。

「セス、どうした? ルカに何かあったのか?」

「いえ、レジーさまがデーヴィッドさまをお呼びでございます」

「レジーが?」

何かあったのだろうか。
私は急いでレジーの居る部屋に駆け込んだ。

「レジーっ!」

「しーっ、今、リヒトくんが眠ったところですよ」

小声でレジーに諌められ、慌てて口を噤む。

「何かあったのではないのか? レジーが呼んでいると聞いて急いできたのだが」

小声でそう尋ねると、レジーはほんのり頬を染めながら、ルカさまに目を向ける。

一体何があったというのだろう。

「レジーさん。頑張って」

「はい」

レジーは少し震える声で私を見ながら、そっと口を開いた。

「あ、あの……実は、私……子どもが、できたようです……」

「えっ……こ、子どもが……? レジーの、そのお腹に……?」

私の言葉にレジーは小さく頷いてみせた。
まさかこんな嬉しい報告を受けるなんて思っても見なかった。

「――っ、ああ、なんということだ!! レジーっ、ありがとう! 本当にありがとう!! ああ、無理をしてはいけないよ」

私は急いでレジーを抱きかかえた。
まだ安静にしておかなくてはならない。
レジーはすぐに無理をしてしまうからな。

「あの、デーヴ。大丈夫ですよ」

「いいえ、無理をしては身体に触ります。今日からはしっかりと私がお世話をしますから。レジーは穏やかな気持ちで赤ちゃんのことだけ考えていてください。あの、ルカさま。申し訳ありません。今日はこれで失礼します」

「ふふっ。はい。あの、ジョージ先生が一度病院に診察に来るようにと仰ってましたからレジーさんと一緒に行ってあげてください」

「はい。わかりました。ありがとうございます」

私はレジーを抱きかかえたまま、部屋を出た。
急ぎながらも、階段はゆっくり丁寧にだ。

「あの……デーヴ、重くないですか?」

「レジー。あなたと赤子くらい余裕で抱きかかえられますよ。安心してください。ああ、レジー。本当にありがとう。愛してますよ」

「デーヴ……。よかったです。喜んでくれて……」

「もちろんですよ。愛するあなたと家族ができるのですから」

私はこれからの幸せな未来を想像しながら、私たちの自宅へ急いだ。
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