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番外編

3年越しの成就  <デーヴィッド&レジー>

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デーヴとレジーの初夜ごもりのお話ですが今回は婚礼の儀まで……。
次回から初夜ごもり(R18)になります。


  ✳︎        ✳︎        ✳︎


「レジー、ようやくこの日が来ましたね」

「デーヴ……私、本当に夢みたいで……」

「夢じゃありませんよ」

レジーの頬に手を添えて、チュッと唇を重ねて

「ほら、現実でしょう?」

にっこりと笑顔を見せると、レジーは頬を赤く染めて

「デーヴったら……」

と可愛い声で呟いた。

年上だというのに、こんなにも可愛らしく恥じらうレジーが愛おしくてたまらない。

今思えばレジーが家に引き篭もってくれていて本当によかった。
レジーを狙う狼どもの手に落ちる前に私の手をとってくれて本当によかった。

「レジー、そろそろ行きましょうか」

小さくて可愛らしいレジーの手をとり、広間へと向かう。

開け放たれた扉の先には陛下のお姿がある。
兄上の時はその後に宴があったから、大広間に国内の貴族が勢揃いしていたが今日はごくごく身内だけの厳かな婚礼の儀だ。


ゆっくりと歩調を合わせながら陛下の元へ向かう。
コツコツと音が響き、陛下のお姿が近づくと少し緊張してきた。

私としたことが緊張など……と思っていると、レジーがキュッと私の指を握った。
パッとレジーに顔を向けると、穏やかな笑顔を浮かべて微笑んでいた。
その優しい微笑みに緊張がほぐれていく。

ああ、さすがだ。
こういうところにレジーが年上なのだと感じさせられる。
レジーの優しさにホッとしながら、私たちは無事に陛下の前にたどり着くことができた。

二人揃って陛下に深々と頭を下げ、その場に跪いた。

私たちの頭上で陛下の威厳ある声が響き渡る。

「オルグレン侯爵家デーヴィッド・オルグレン。其方はジェラール伯爵家に入り、レジー・ジェラールをつまとし、その命のあるかぎり固く貞操を守り、レジーへの永遠の愛を誓うか?」

「はい、誓います」

私が大きくはっきりと宣言すると、レジーが嬉しそうに微笑んだのがわかった。

「ジェラール伯爵家レジー・ジェラール。其方はデーヴィッド・オルグレンを夫とし、その命のあるかぎり固く貞操を守り、デーヴィッドへの永遠の愛を誓うか?」

「はい。誓います」

レジーの宣言に、広間にいた者から『おおっ』と感嘆の声が漏れた。
おそらく今の声は兄上。
ルカさまのことがあるから今日は来ないだろうと予測していたが、来てくれたのだな。

私がレジーに惹かれていると真っ先に気付いたのは兄上だった。
レジーを守ろうと私が騎士団に入ってすぐに兄上に気づかれた。

それからは私を応援してくれていたがルカさまと婚約が決まり、断るという選択肢などなかった兄上はルカさまとの婚約を了承した上で私に謝罪したのだ。

兄上とルカさまが結婚すれば、私とルカさまが義兄弟になる。
当時、ルカさまとの因縁を持っていたレジーは私が愛を告白してもきっと頷いてはくれないだろう……そう思ってレジーへの思いを諦めることにしたのだ。

だが、事態は大きく好転し、レジーとルカさまとの因縁は無くなった。
それどころか、レジーとルカさまは仲良くなり義兄弟としてうまくやれている。

それもこれも兄上たちがレジーとルカさまの誤解を解いてくれたおかげだ。

そのおかげで私は今、最高の幸せを掴もうとしている。

「対のペンダントを二人に授けよう」

私たちに揃いのペンダントが与えられ、

「これを以て二人の婚姻は揺るぎないものとなった。皆のもの、其方たちは二人の婚姻の証人となったのだ。新しく夫夫となった二人に祝福の拍手を贈ってくれ」

私たちの幸せを願ってくれる家族の祝福の拍手を浴びながら、私たちはこれで永遠を共にする夫夫となったのだ。


「わぁっ!! デ、デーヴ!」

私はその場でレジーをお姫さまのように抱き上げ、来てくれた人たちに聞こえるように大きな声で、

「それでは私たちはこれから愛を育んで参ります。私たちの元にも麗しい天使がやってくるようにお祈りいただければ幸いです。失礼いたします」

と頭を下げ、足早に広間を出た。

「デーヴ、そんなに焦らなくても……」

「もう3年も我慢していたのです。これ以上は理性が持ちそうにありません。レジー、我慢の効かない私を嫌いになっていませんか?」

自分でも焦りすぎだとはわかっている。
それでも我慢などもう疾うの昔に消えてしまっている。
ほんの少しの理性でここまでやってきたのだ。

レジーを見ると、まるで女神のような美しい笑顔で近づいてきて、

「デーヴ。私がデーヴを嫌いになることなんてありませんから……いっぱい愛してくださいね」

と耳元で囁いた。

私の中でプチッと何かが切れる音がして、私は急いで初夜ごもりのために整えられた部屋へ駆けて行った。
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