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番外編
ルカの懐妊の知らせ <陛下&アシュリー編>
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たくさんの皆さんに読んでいただいているので、ちょっとした小話を書きました。
楽しんでいただけると嬉しいです。
次はデーヴィッド&レジーの予定です♡
✳︎ ✳︎ ✳︎
「父上、お呼びでございますか?」
「ああ、アシュリー!」
「そんなに慌ててどうかなさったのですか?」
「これが慌てずにいられるものか!! ルカが……ルカが懐妊したようだ」
「――っ!!! まことでございますか?」
ウィリアムとルカに子ができた……ということは、以前のルカの生まれ変わりに出会えるということだ。
ルカ……従兄弟ながらいつもわがままばかりでどうしようもないと思っていたがどうも気になる存在だった。
だから、ウィリアムとの結婚の話を聞いたときはすぐにでも破談にしてやろうと思うくらいに心が騒ついたものだ。
ウィリアムは淡々とそれを受け入れていたが、本当はルカのことを愛しているのではないかと思うと落ち着かない感情はあった。
おそらく私はルカに惹かれていたのだ。
だから、ルカが自分の意志でないとはいえ、ウィリアムのものになることが本音では許せなかったんだ。
だから反対するふりして、ルカからウィリアムを遠ざけようとしていたのだろう。
訓練場でルカと出会ったあのとき、あまりにも急速に仲を深めた二人の様子に嫉妬したが、私の目の前で許しを請いながらない涙をボロボロと零すルカの姿に、これは私の惹かれたルカでないと安堵したのだ。
そして、ウィリアムとルカの子が以前のルカの生まれ変わりだと聞いて、またいつかあのルカに会えるのだと心踊った。
そのときはまだ再会できる喜びしかなかったが、父上がウィリアムとルカの子を私の伴侶にと言い出したとき、そうか……その手があったかと目の前が開けた気がした。
それからずっとこの報告を待っていた。
とうとうあのルカに出会えるのだな……。
ルカ……今度こそ、私はお前を手放しはしない。
生まれたときから私の存在を思い知らせてやる!
そう心に誓った。
そんな幸福にも満ちた気持ちでいっぱいの中、父上が申し訳なさそうに話し始めた。
「……それでな、アシュリー。医師にも今はルカは安静第一だと言われたそうで、ウィリアムはしばらく騎士団を休ませるとイアンから連絡があった」
「ああ、それは仕方がないでしょうね。秘薬を使っての男の出産はそう数は多くないですから、ルカも心配でしょうし、ウィリアムは傍についていてあげるべきです。多少騎士団は忙しくなりますが、デーヴィッドもおりますし、問題はないでしょう」
そういうと、父上はさらに申し訳なさそうな表情を浮かべた。
「そ、それがな……明後日デーヴィッドはレジーと婚礼の儀を迎えて、そのまま初夜ごもりに入る……。1週間は出て来れぬだろうから、しばらくは騎士団はお前一人でまとめてもらうことになるのだ」
「え――っ? わ、私が一人で……騎士団を?」
「そうだ、悪いが頑張ってくれ!」
「いやいや、父上。それはあまりにも――」
「お前の気持ちは十分わかるがどうしようもないのだ」
「デーヴィッドを説得したら良いでしょう? ウィリアムが騎士団に出て来られるまで、婚礼の儀を延期するとか父上が仰ればデーヴィッドも納得しますよ」
「……いや、そうもいかぬ。今、デーヴィッドにそんなことを伝えれば、騎士団自体を辞めるといいかねん。それくらい、レジーとの初夜ごもりを待っているのだ。騎士団にとってデーヴィッドに今、抜けられるのは痛手だろう? だから、なんとか堪えてくれ! 頼む!」
父上の切実な願いに私はもうため息を吐く事しかできなかった。
はぁーっ。
もしかしてこの国はオルグレン兄弟で保っているのか?
私はこれからの怒涛の日々を想像しながら、重い足を引きずり部屋を出た。
楽しんでいただけると嬉しいです。
次はデーヴィッド&レジーの予定です♡
✳︎ ✳︎ ✳︎
「父上、お呼びでございますか?」
「ああ、アシュリー!」
「そんなに慌ててどうかなさったのですか?」
「これが慌てずにいられるものか!! ルカが……ルカが懐妊したようだ」
「――っ!!! まことでございますか?」
ウィリアムとルカに子ができた……ということは、以前のルカの生まれ変わりに出会えるということだ。
ルカ……従兄弟ながらいつもわがままばかりでどうしようもないと思っていたがどうも気になる存在だった。
だから、ウィリアムとの結婚の話を聞いたときはすぐにでも破談にしてやろうと思うくらいに心が騒ついたものだ。
ウィリアムは淡々とそれを受け入れていたが、本当はルカのことを愛しているのではないかと思うと落ち着かない感情はあった。
おそらく私はルカに惹かれていたのだ。
だから、ルカが自分の意志でないとはいえ、ウィリアムのものになることが本音では許せなかったんだ。
だから反対するふりして、ルカからウィリアムを遠ざけようとしていたのだろう。
訓練場でルカと出会ったあのとき、あまりにも急速に仲を深めた二人の様子に嫉妬したが、私の目の前で許しを請いながらない涙をボロボロと零すルカの姿に、これは私の惹かれたルカでないと安堵したのだ。
そして、ウィリアムとルカの子が以前のルカの生まれ変わりだと聞いて、またいつかあのルカに会えるのだと心踊った。
そのときはまだ再会できる喜びしかなかったが、父上がウィリアムとルカの子を私の伴侶にと言い出したとき、そうか……その手があったかと目の前が開けた気がした。
それからずっとこの報告を待っていた。
とうとうあのルカに出会えるのだな……。
ルカ……今度こそ、私はお前を手放しはしない。
生まれたときから私の存在を思い知らせてやる!
そう心に誓った。
そんな幸福にも満ちた気持ちでいっぱいの中、父上が申し訳なさそうに話し始めた。
「……それでな、アシュリー。医師にも今はルカは安静第一だと言われたそうで、ウィリアムはしばらく騎士団を休ませるとイアンから連絡があった」
「ああ、それは仕方がないでしょうね。秘薬を使っての男の出産はそう数は多くないですから、ルカも心配でしょうし、ウィリアムは傍についていてあげるべきです。多少騎士団は忙しくなりますが、デーヴィッドもおりますし、問題はないでしょう」
そういうと、父上はさらに申し訳なさそうな表情を浮かべた。
「そ、それがな……明後日デーヴィッドはレジーと婚礼の儀を迎えて、そのまま初夜ごもりに入る……。1週間は出て来れぬだろうから、しばらくは騎士団はお前一人でまとめてもらうことになるのだ」
「え――っ? わ、私が一人で……騎士団を?」
「そうだ、悪いが頑張ってくれ!」
「いやいや、父上。それはあまりにも――」
「お前の気持ちは十分わかるがどうしようもないのだ」
「デーヴィッドを説得したら良いでしょう? ウィリアムが騎士団に出て来られるまで、婚礼の儀を延期するとか父上が仰ればデーヴィッドも納得しますよ」
「……いや、そうもいかぬ。今、デーヴィッドにそんなことを伝えれば、騎士団自体を辞めるといいかねん。それくらい、レジーとの初夜ごもりを待っているのだ。騎士団にとってデーヴィッドに今、抜けられるのは痛手だろう? だから、なんとか堪えてくれ! 頼む!」
父上の切実な願いに私はもうため息を吐く事しかできなかった。
はぁーっ。
もしかしてこの国はオルグレン兄弟で保っているのか?
私はこれからの怒涛の日々を想像しながら、重い足を引きずり部屋を出た。
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