上 下
20 / 42
番外編

ルカの懐妊の知らせ <陛下&アシュリー編>

しおりを挟む
たくさんの皆さんに読んでいただいているので、ちょっとした小話を書きました。
楽しんでいただけると嬉しいです。
次はデーヴィッド&レジーの予定です♡


  ✳︎          ✳︎         ✳︎



「父上、お呼びでございますか?」

「ああ、アシュリー!」

「そんなに慌ててどうかなさったのですか?」

「これが慌てずにいられるものか!! ルカが……ルカが懐妊したようだ」

「――っ!!! まことでございますか?」

ウィリアムとルカに子ができた……ということは、以前のルカの生まれ変わりに出会えるということだ。

ルカ……従兄弟ながらいつもわがままばかりでどうしようもないと思っていたがどうも気になる存在だった。
だから、ウィリアムとの結婚の話を聞いたときはすぐにでも破談にしてやろうと思うくらいに心が騒ついたものだ。
ウィリアムは淡々とそれを受け入れていたが、本当はルカのことを愛しているのではないかと思うと落ち着かない感情はあった。

おそらく私はルカに惹かれていたのだ。
だから、ルカが自分の意志でないとはいえ、ウィリアムのものになることが本音では許せなかったんだ。
だから反対するふりして、ルカからウィリアムを遠ざけようとしていたのだろう。

訓練場でルカと出会ったあのとき、あまりにも急速に仲を深めた二人の様子に嫉妬したが、私の目の前で許しを請いながらない涙をボロボロと零すルカの姿に、これは私の惹かれたルカでないと安堵したのだ。

そして、ウィリアムとルカの子が以前のルカの生まれ変わりだと聞いて、またいつかあのルカに会えるのだと心踊った。

そのときはまだ再会できる喜びしかなかったが、父上がウィリアムとルカの子を私の伴侶にと言い出したとき、そうか……その手があったかと目の前が開けた気がした。

それからずっとこの報告を待っていた。
とうとうあのルカに出会えるのだな……。

ルカ……今度こそ、私はお前を手放しはしない。
生まれたときから私の存在を思い知らせてやる!

そう心に誓った。


そんな幸福にも満ちた気持ちでいっぱいの中、父上が申し訳なさそうに話し始めた。


「……それでな、アシュリー。医師にも今はルカは安静第一だと言われたそうで、ウィリアムはしばらく騎士団を休ませるとイアンから連絡があった」

「ああ、それは仕方がないでしょうね。秘薬を使っての男の出産はそう数は多くないですから、ルカも心配でしょうし、ウィリアムは傍についていてあげるべきです。多少騎士団は忙しくなりますが、デーヴィッドもおりますし、問題はないでしょう」

そういうと、父上はさらに申し訳なさそうな表情を浮かべた。

「そ、それがな……明後日デーヴィッドはレジーと婚礼の儀を迎えて、そのまま初夜ごもりに入る……。1週間は出て来れぬだろうから、しばらくは騎士団はお前一人でまとめてもらうことになるのだ」

「え――っ? わ、私が一人で……騎士団を?」

「そうだ、悪いが頑張ってくれ!」

「いやいや、父上。それはあまりにも――」
「お前の気持ちは十分わかるがどうしようもないのだ」

「デーヴィッドを説得したら良いでしょう? ウィリアムが騎士団に出て来られるまで、婚礼の儀を延期するとか父上が仰ればデーヴィッドも納得しますよ」

「……いや、そうもいかぬ。今、デーヴィッドにそんなことを伝えれば、騎士団自体を辞めるといいかねん。それくらい、レジーとの初夜ごもりを待っているのだ。騎士団にとってデーヴィッドに今、抜けられるのは痛手だろう? だから、なんとか堪えてくれ! 頼む!」

父上の切実な願いに私はもうため息を吐く事しかできなかった。

はぁーっ。
もしかしてこの国はオルグレン兄弟で保っているのか?

私はこれからの怒涛の日々を想像しながら、重い足を引きずり部屋を出た。
しおりを挟む
感想 109

あなたにおすすめの小説

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。 ▼毎日18時投稿予定

僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました

楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。 ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。 喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。   「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」 契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。 エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。

求職令嬢は恋愛禁止な竜騎士団に、子竜守メイドとして採用されました。

待鳥園子
恋愛
グレンジャー伯爵令嬢ウェンディは父が友人に裏切られ、社交界デビューを目前にして無一文になってしまった。 父は異国へと一人出稼ぎに行ってしまい、行く宛てのない姉を心配する弟を安心させるために、以前邸で働いていた竜騎士を頼ることに。 彼が働くアレイスター竜騎士団は『恋愛禁止』という厳格な規則があり、そのため若い女性は働いていない。しかし、ウェンディは竜力を持つ貴族の血を引く女性にしかなれないという『子竜守』として特別に採用されることになり……。 子竜守として働くことになった没落貴族令嬢が、不器用だけどとても優しい団長と恋愛禁止な竜騎士団で働くために秘密の契約結婚をすることなってしまう、ほのぼの子竜育てありな可愛い恋物語。 ※完結まで毎日更新です。

転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!

音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに! え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!! 調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! 時々おまけを更新しています。

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

急に運命の番と言われても。夜会で永遠の愛を誓われ駆け落ちし、数年後ぽい捨てされた母を持つ平民娘は、氷の騎士の甘い求婚を冷たく拒む。

石河 翠
恋愛
ルビーの花屋に、隣国の氷の騎士ディランが現れた。 雪豹の獣人である彼は番の匂いを追いかけていたらしい。ところが花屋に着いたとたんに、手がかりを失ってしまったというのだ。 一時的に鼻が詰まった人間並みの嗅覚になったディランだが、番が見つかるまでは帰らないと言い張る始末。ルビーは彼の世話をする羽目に。 ルビーと喧嘩をしつつ、人間についての理解を深めていくディラン。 その後嗅覚を取り戻したディランは番の正体に歓喜し、公衆の面前で結婚を申し込むが冷たく拒まれる。ルビーが求婚を断ったのには理由があって……。 愛されることが怖い臆病なヒロインと、彼女のためならすべてを捨てる一途でだだ甘なヒーローの恋物語。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 扉絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(ID25481643)をお借りしています。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。