60 / 85
番外編
ルカの懐妊の知らせ <陛下&アシュリー編>
しおりを挟む
たくさんの皆さんに読んでいただいているので、ちょっとした小話を書きました。
楽しんでいただけると嬉しいです。
次はデーヴィッド&レジーの予定です♡
✳︎ ✳︎ ✳︎
「父上、お呼びでございますか?」
「ああ、アシュリー!」
「そんなに慌ててどうかなさったのですか?」
「これが慌てずにいられるものか!! ルカが……ルカが懐妊したようだ」
「――っ!!! まことでございますか?」
ウィリアムとルカに子ができた……ということは、以前のルカの生まれ変わりに出会えるということだ。
ルカ……従兄弟ながらいつもわがままばかりでどうしようもないと思っていたがどうも気になる存在だった。
だから、ウィリアムとの結婚の話を聞いたときはすぐにでも破談にしてやろうと思うくらいに心が騒ついたものだ。
ウィリアムは淡々とそれを受け入れていたが、本当はルカのことを愛しているのではないかと思うと落ち着かない感情はあった。
おそらく私はルカに惹かれていたのだ。
だから、ルカが自分の意志でないとはいえ、ウィリアムのものになることが本音では許せなかったんだ。
だから反対するふりして、ルカからウィリアムを遠ざけようとしていたのだろう。
訓練場でルカと出会ったあのとき、あまりにも急速に仲を深めた二人の様子に嫉妬したが、私の目の前で許しを請いながらない涙をボロボロと零すルカの姿に、これは私の惹かれたルカでないと安堵したのだ。
そして、ウィリアムとルカの子が以前のルカの生まれ変わりだと聞いて、またいつかあのルカに会えるのだと心踊った。
そのときはまだ再会できる喜びしかなかったが、父上がウィリアムとルカの子を私の伴侶にと言い出したとき、そうか……その手があったかと目の前が開けた気がした。
それからずっとこの報告を待っていた。
とうとうあのルカに出会えるのだな……。
ルカ……今度こそ、私はお前を手放しはしない。
生まれたときから私の存在を思い知らせてやる!
そう心に誓った。
そんな幸福にも満ちた気持ちでいっぱいの中、父上が申し訳なさそうに話し始めた。
「……それでな、アシュリー。医師にも今はルカは安静第一だと言われたそうで、ウィリアムはしばらく騎士団を休ませるとイアンから連絡があった」
「ああ、それは仕方がないでしょうね。秘薬を使っての男の出産はそう数は多くないですから、ルカも心配でしょうし、ウィリアムは傍についていてあげるべきです。多少騎士団は忙しくなりますが、デーヴィッドもおりますし、問題はないでしょう」
そういうと、父上はさらに申し訳なさそうな表情を浮かべた。
「そ、それがな……明後日デーヴィッドはレジーと婚礼の儀を迎えて、そのまま初夜ごもりに入る……。1週間は出て来れぬだろうから、しばらくは騎士団はお前一人でまとめてもらうことになるのだ」
「え――っ? わ、私が一人で……騎士団を?」
「そうだ、悪いが頑張ってくれ!」
「いやいや、父上。それはあまりにも――」
「お前の気持ちは十分わかるがどうしようもないのだ」
「デーヴィッドを説得したら良いでしょう? ウィリアムが騎士団に出て来られるまで、婚礼の儀を延期するとか父上が仰ればデーヴィッドも納得しますよ」
「……いや、そうもいかぬ。今、デーヴィッドにそんなことを伝えれば、騎士団自体を辞めるといいかねん。それくらい、レジーとの初夜ごもりを待っているのだ。騎士団にとってデーヴィッドに今、抜けられるのは痛手だろう? だから、なんとか堪えてくれ! 頼む!」
父上の切実な願いに私はもうため息を吐く事しかできなかった。
はぁーっ。
もしかしてこの国はオルグレン兄弟で保っているのか?
私はこれからの怒涛の日々を想像しながら、重い足を引きずり部屋を出た。
楽しんでいただけると嬉しいです。
次はデーヴィッド&レジーの予定です♡
✳︎ ✳︎ ✳︎
「父上、お呼びでございますか?」
「ああ、アシュリー!」
「そんなに慌ててどうかなさったのですか?」
「これが慌てずにいられるものか!! ルカが……ルカが懐妊したようだ」
「――っ!!! まことでございますか?」
ウィリアムとルカに子ができた……ということは、以前のルカの生まれ変わりに出会えるということだ。
ルカ……従兄弟ながらいつもわがままばかりでどうしようもないと思っていたがどうも気になる存在だった。
だから、ウィリアムとの結婚の話を聞いたときはすぐにでも破談にしてやろうと思うくらいに心が騒ついたものだ。
ウィリアムは淡々とそれを受け入れていたが、本当はルカのことを愛しているのではないかと思うと落ち着かない感情はあった。
おそらく私はルカに惹かれていたのだ。
だから、ルカが自分の意志でないとはいえ、ウィリアムのものになることが本音では許せなかったんだ。
だから反対するふりして、ルカからウィリアムを遠ざけようとしていたのだろう。
訓練場でルカと出会ったあのとき、あまりにも急速に仲を深めた二人の様子に嫉妬したが、私の目の前で許しを請いながらない涙をボロボロと零すルカの姿に、これは私の惹かれたルカでないと安堵したのだ。
そして、ウィリアムとルカの子が以前のルカの生まれ変わりだと聞いて、またいつかあのルカに会えるのだと心踊った。
そのときはまだ再会できる喜びしかなかったが、父上がウィリアムとルカの子を私の伴侶にと言い出したとき、そうか……その手があったかと目の前が開けた気がした。
それからずっとこの報告を待っていた。
とうとうあのルカに出会えるのだな……。
ルカ……今度こそ、私はお前を手放しはしない。
生まれたときから私の存在を思い知らせてやる!
そう心に誓った。
そんな幸福にも満ちた気持ちでいっぱいの中、父上が申し訳なさそうに話し始めた。
「……それでな、アシュリー。医師にも今はルカは安静第一だと言われたそうで、ウィリアムはしばらく騎士団を休ませるとイアンから連絡があった」
「ああ、それは仕方がないでしょうね。秘薬を使っての男の出産はそう数は多くないですから、ルカも心配でしょうし、ウィリアムは傍についていてあげるべきです。多少騎士団は忙しくなりますが、デーヴィッドもおりますし、問題はないでしょう」
そういうと、父上はさらに申し訳なさそうな表情を浮かべた。
「そ、それがな……明後日デーヴィッドはレジーと婚礼の儀を迎えて、そのまま初夜ごもりに入る……。1週間は出て来れぬだろうから、しばらくは騎士団はお前一人でまとめてもらうことになるのだ」
「え――っ? わ、私が一人で……騎士団を?」
「そうだ、悪いが頑張ってくれ!」
「いやいや、父上。それはあまりにも――」
「お前の気持ちは十分わかるがどうしようもないのだ」
「デーヴィッドを説得したら良いでしょう? ウィリアムが騎士団に出て来られるまで、婚礼の儀を延期するとか父上が仰ればデーヴィッドも納得しますよ」
「……いや、そうもいかぬ。今、デーヴィッドにそんなことを伝えれば、騎士団自体を辞めるといいかねん。それくらい、レジーとの初夜ごもりを待っているのだ。騎士団にとってデーヴィッドに今、抜けられるのは痛手だろう? だから、なんとか堪えてくれ! 頼む!」
父上の切実な願いに私はもうため息を吐く事しかできなかった。
はぁーっ。
もしかしてこの国はオルグレン兄弟で保っているのか?
私はこれからの怒涛の日々を想像しながら、重い足を引きずり部屋を出た。
294
お気に入りに追加
5,615
あなたにおすすめの小説
転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!
音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに!
え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!!
調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします。……やっぱり狙われちゃう感じ?
み馬
BL
※ 完結しました。お読みくださった方々、誠にありがとうございました!
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、とある加護を受けた8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 独自設定、造語、下ネタあり。出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる
風見鶏ーKazamidoriー
BL
秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。
ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。
※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。
【完結】白い塔の、小さな世界。〜監禁から自由になったら、溺愛されるなんて聞いてません〜
N2O
BL
溺愛が止まらない騎士団長(虎獣人)×浄化ができる黒髪少年(人間)
ハーレム要素あります。
苦手な方はご注意ください。
※タイトルの ◎ は視点が変わります
※ヒト→獣人、人→人間、で表記してます
※ご都合主義です、あしからず
エロゲ世界のモブに転生したオレの一生のお願い!
たまむし
BL
大学受験に失敗して引きこもりニートになっていた湯島秋央は、二階の自室から転落して死んだ……はずが、直前までプレイしていたR18ゲームの世界に転移してしまった!
せっかくの異世界なのに、アキオは主人公のイケメン騎士でもヒロインでもなく、ゲーム序盤で退場するモブになっていて、いきなり投獄されてしまう。
失意の中、アキオは自分の身体から大事なもの(ち●ちん)がなくなっていることに気付く。
「オレは大事なものを取り戻して、エロゲの世界で女の子とエッチなことをする!」
アキオは固い決意を胸に、獄中で知り合った男と協力して牢を抜け出し、冒険の旅に出る。
でも、なぜかお色気イベントは全部男相手に発生するし、モブのはずが世界の命運を変えるアイテムを手にしてしまう。
ちん●んと世界、男と女、どっちを選ぶ? どうする、アキオ!?
完結済み番外編、連載中続編があります。「ファタリタ物語」でタグ検索していただければ出てきますので、そちらもどうぞ!
※同一内容をムーンライトノベルズにも投稿しています※
pixivリクエストボックスでイメージイラストを依頼して描いていただきました。
https://www.pixiv.net/artworks/105819552
悪役側のモブになっても推しを拝みたい。【完結】
瑳来
BL
大学生でホストでオタクの如月杏樹はホストの仕事をした帰り道、自分のお客に刺されてしまう。
そして、気がついたら自分の夢中になっていたBLゲームのモブキャラになっていた!
……ま、推しを拝めるからいっか! てな感じで、ほのぼのと生きていこうと心に決めたのであった。
ウィル様のおまけにて完結致しました。
長い間お付き合い頂きありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる