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番外編

愛おしくてたまらない <デーヴィッド&レジー>

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番外編第2弾はデーヴィッドとレジーの恋の行方です。
あの宴の続きからになります。


  ✳︎          ✳︎           ✳︎



「あ、あの……デーヴィッドさま。そろそろお離しいただけませんか?」

「私に抱きしめられるのはお嫌ですか?」

「い、いえっ! そうではなくて……そろそろ宴も終わりますし、その前に、父にデーヴィッドさまを紹介したくて……」

「ああ。そうですね。お父上にご挨拶を忘れておりました。申し訳ありません、ついあなたに夢中になってしまって……」

「そんな……」

ほんのりと頬を染め、恥じらうレジーが本当に愛おしい。
彼が年上だなんて思えない可愛らしさだな。

「では、お父上の元へ参りましょうか」

彼の腰を抱き立ち上がると

「わっ!」

足を縺れさせ私の胸に飛び込んできた。

「あっ、申し訳ありません」

「ふふっ。大丈夫ですよ。あなたに抱きついてもらえるのなら大歓迎です」

「またそのようなことばっかり……」

「本当ですよ。この3年、あなたに触れたいと思ってずっと過ごしてきましたから……こうやって腕に抱けるなど夢のようです」

本当に……。
抱きしめられるだけでこんなにも幸せなのだ。
まさか、思いが通じるとは夢にも思っていなかったからな。


「デーヴィッドさま……」

「あなたのその柔らかな唇に口付けも許されるならばすぐにでも奪ってしまいたい」

「口づけなら私も……」

「いいえ、口づけだけでは止められないでしょうから、二人っきりになれるまで我慢します」

「――っ!!」

私の言葉にすぐに赤くなるそんな彼を組み敷いたら、どのような声で鳴いてくれるのか……。
純情そうなレジーは私がそんな邪な思いを抱いているとは夢にも思っていないのだろうな。


「ふふっ。レジーは本当に可愛らしい方だ。今日はこのまま私の家に来ていただけますよね?」

「あの……私……その、経験が……」

「それは男と……という意味ですか? それとも?」

「その……デーヴィッドさまもご承知の通り、私は女性と婚約しておりました。ですから、そのいわゆる閨教育は……書物で勉強いたしましたが、実際に触れたことはないのです。どうも潔癖のがあるようで……」

「――っ! で、では、レイラとは……?」

「そのようなことは一度もありません。彼女以外にももちろん。ですから、デーヴィッドさまをご満足させられるか心配で……」

「――っ!!!」

まさか!
まさかレジーが何の経験もないとは……。

ああ、神よ!
ずっと彼だけに貞操を捧げてきた私に素晴らしい贈り物をいただけるとは!!

「あ、あの……デーヴィッド、さま? やはり私など……」

「何を仰っているのです! 私がどれほど喜びに震えているか……。大丈夫、何も心配はいりません。全て私に任せてください」

私はより一層彼をピッタリと抱き寄せ、急いで彼の父上の元へと向かった。


レジーの父上、ジェラール伯爵は私たちの縁を大変驚いていたものの、跡継ぎにも影響はないと知らせると大喜びの様子だった。
三男とはいえ、侯爵家であったのが功を奏したようだな。

ジェラール伯爵に満面の笑みで見送られ、真っ赤な顔で私の馬車に乗るレジーはすぐにでも押し倒したいほど可愛らしかった。

「レジー。お父上への挨拶も済ませたし、これで私たちは正式に婚約者ですね」

「デーヴィッドさま……嬉しいです……」

そっと胸に頭を寄せてくるレジーの仕草に興奮が隠せない。
必死に滾るのを抑えて、屋敷までの道のりをひたすらに耐え続けた。

侯爵家へと到着すると、まだ父上の姿はなかった。
おそらくまだ王城で陛下やフローレス公爵と話でもしているのだろう。
説明する時間も惜しいからちょうどよかった。

「デーヴィッドさま、お帰りなさいませ。今日は騎士団にお泊まりでは?」

「ああ、その予定だったが変更になった。ジェス、彼はレジー・ジェラール。私の婚約者だ」

執事のジェスに手早く説明をすると、いつも冷静なジェスが目を丸くして驚いていた。

「はっ? えっ? ジェラール伯爵さまのご嫡男のレジーさまでいらっしゃいますか?」

「ああ、そうだ。兄上も陛下もご存じだ。今から、部屋に篭るからベルが鳴るまでは入ってくるな」

「デーヴィッドさま、婚礼の儀までは……」

「わかっている」

「……承知いたしました」

私の言葉だけで全てを理解したジェスはそれ以上何も言わなかった。

私は隣で恥じらうレジーを抱きかかえ、足早に寝室へと向かった。
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