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あなたに想いを伝えたい
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途中で視点が変わります。
✳︎ ✳︎ ✳︎
「ルカさま。兄上をよろしくお願いいたします」
「はい。でも僕の方がウィル……いえ、ウィリアムさまにはいつもお世話になりっぱなしで……」
「そんなことはない。ルカがいてくれるだけで私は幸せになれるのだよ」
「ウィル……」
ルカさまに挨拶をして帰ろうと思っていたのに、目の前で甘いイチャイチャが始まってしまった。
さっさとレジー殿と話をしたいというのに。
「あー、ゔぉっほん。あの、レジー殿もお疲れだと思いますので先に失礼いたします」
さっさと声をかけ、レジー殿を連れその場から立ち去った。
大広間から中庭に連れ出し、近くの東屋に行きましょうと声をかけると、レジー殿はあれから一言も言葉を発しないが私の誘いには乗ってくれた。
夜でも美しい花の香りに覆われた東屋は、大広間から溢れた光のおかげで仄かな明るさが広がっている。
「レジー殿。お加減はいかがですか?」
「えっ。あっ、はい。おかげさまでもうすっかり。お気遣いいただきありがとうございます」
「それはよかった」
「あ、あの……陛下とオルグレン騎士団長が仰っていたことですが……」
彼の目に少し戸惑いの様子が見えるが、ここで隠すわけにはいかない。
「はい。私はあなたをお慕いしています。3年前のあの日からずっと……」
「あの日から? まさか……だって、私はあんなにも無様な姿を晒したというのに」
「そんなことはありませんよ。あなたは婚約者を守るために大勢の前で土下座をされたのです。誰にでもできることではありませんよ。自分の愛するものを守ろうとするあなたの必死な姿に私は惹かれたのです。あなたの婚約が解消になったと聞いて、私はその元婚約者の女に対する怒りと共に、あなたが誰のものでもなくなったことを喜んでしまったのも事実です。あなたが辛い思いをしていらっしゃったというのに申し訳ありません」
「そんな……あの、私に敬語など……侯爵家のお方とは知らず、無礼な言葉遣いをしてしまいまして申し訳ございません」
「レジー殿。私は侯爵家とはいえ三男で、それに今は騎士です。身分など考えずに私の話を聞いていただけませんか?」
そういうと、彼は一瞬躊躇ったものの小さく頷いてくれた。
「私はあの日からあなたに釣り合いの取れる人間になろうと必死に勉強し、身体を鍛え騎士団に入りました。ところが今回、兄上とルカさまが結婚なさることになり、私はあなたとの結婚を一度は諦めようとしました」
「えっ? どうしてですか?」
「兄上とルカさまが結婚されるということはルカさまが私の義兄になるということです。あなたに愛を打ち明けたところで、あなたがルカさまと因縁を持ったまま姻族になるのをよしとはしないでしょう?」
「確かに……その、通りです」
「ですが、ふとしたことからあなたとルカさまのあの事件の真相が浮かび上がってきたのです。あなたとルカさまの因縁めいたものが消えるのならば、私との結婚も少しは考えてくれるのではと思い、あなたへの思いに蓋をするのをやめました。アシュリー副団長、いえ、アシュリー王子殿下のおかげであの時の事件の真相もわかりました。あなたのルカさまに対する気持ちが変わったのなら……今日こそあなたに思いを伝えたいのです」
「デーヴィッド、さま……」
「私はあなたを愛しています。私の夫となっていただけませんか?」
レジー殿の手を握り、目を見つめながら真剣に思いを伝えると、
「あ、あの……私は、今までこんなにも真剣に愛を伝えていただいたのは初めてで……どうして良いのかわからないのですが……あの、素直に嬉しいと思っています。ですが……私は伯爵家を継がねばならぬ身。私以外に兄弟はおりませんし、跡継ぎのことを思うと、すぐには了承し難く……」
と一生懸命答えてくれた。
「それは私のことは嫌いではないということですか?」
「嫌いでないなんて……あの、好き……だと思います。でも……」
「ああっ!! レジー!! ならば問題ありません。ぜひ私の夫になってください」
「でも、跡継ぎが……」
「大丈夫です、兄上も仰っていたでしょう? 跡継ぎのことなら問題ないと」
「そういえば……ですが、どうするのです?」
ほんのりと頬を染めているのは私が抱きしめたせいか。
本当に可愛らしい。
年上だというのに、守ってあげたくなる。
「王家には代々伝わる秘薬があるのです。それを使えば男同士でも子は出来るのだそうですよ。兄上とルカさまもその秘薬で跡継ぎを設ける予定なのですよ」
「そんな秘薬が?」
「ええ。王家とそれに準ずる血筋しか使えない秘薬なのですが、私も侯爵家三男とはいえ、王家に準ずる血筋ですからね。使わせていただけるそうですよ。ですから跡継ぎは問題ありません」
そういうと、レジーはホッとしたようにようやく笑顔を見せてくれた。
「レジー。私の愛を受け入れてもらえますか?」
「は、はい。私でよければ喜んで……」
「レジー!!! 愛しています」
私は3年思い続けた初恋の相手をもう手放さないと誓いながらしばらくの間、抱きしめ続けていた。
✳︎ ✳︎ ✳︎
「さて、お前たちにはこれからしっかりと罰を受けてもらうとしよう」
「ひぃーーっ、お助けを! どうか、どうかお許しください」
レジーに無様な姿をなどと言って罵ったレイラは今、自分があの時のレジー以上に無様な姿を晒し床に這いつくばっている。
さぁて、こいつらをどうしてやろうか……。
あとでじっくりとウィリアムと相談だな。
「こいつらを地下牢に連れて行け!」
「はっ」
ネイハムとレイラを大広間から連れ出し、これで一段落だ。
玉座に座る父上と、そして隣に見えるウィリアムに目で合図を送ると二人とも安堵の表情を浮かべているのが見えた。
その後の宴は余計なものがいなくなったからか、それともルカの誤解が解けたからか、あっという間に和やかな雰囲気を取り戻した。
「ウィリアムさまとルカさまのダンスを見せていただけませんか?」
どこからともなくそんな声がかかり、二人は恥ずかしそうにしながらも玉座の場から下りてきた。
ウィリアムはともかく、今のルカにダンスは踊れるのだろうか?
大広間の真ん中で二人向き合って手を取り合って立っているが、ルカは少し緊張しているように見える。
醜態を晒す前にやめさせた方がいいのではないかと思っている間にとうとうダンスの曲が始まってしまった。
✳︎ ✳︎ ✳︎
「ルカさま。兄上をよろしくお願いいたします」
「はい。でも僕の方がウィル……いえ、ウィリアムさまにはいつもお世話になりっぱなしで……」
「そんなことはない。ルカがいてくれるだけで私は幸せになれるのだよ」
「ウィル……」
ルカさまに挨拶をして帰ろうと思っていたのに、目の前で甘いイチャイチャが始まってしまった。
さっさとレジー殿と話をしたいというのに。
「あー、ゔぉっほん。あの、レジー殿もお疲れだと思いますので先に失礼いたします」
さっさと声をかけ、レジー殿を連れその場から立ち去った。
大広間から中庭に連れ出し、近くの東屋に行きましょうと声をかけると、レジー殿はあれから一言も言葉を発しないが私の誘いには乗ってくれた。
夜でも美しい花の香りに覆われた東屋は、大広間から溢れた光のおかげで仄かな明るさが広がっている。
「レジー殿。お加減はいかがですか?」
「えっ。あっ、はい。おかげさまでもうすっかり。お気遣いいただきありがとうございます」
「それはよかった」
「あ、あの……陛下とオルグレン騎士団長が仰っていたことですが……」
彼の目に少し戸惑いの様子が見えるが、ここで隠すわけにはいかない。
「はい。私はあなたをお慕いしています。3年前のあの日からずっと……」
「あの日から? まさか……だって、私はあんなにも無様な姿を晒したというのに」
「そんなことはありませんよ。あなたは婚約者を守るために大勢の前で土下座をされたのです。誰にでもできることではありませんよ。自分の愛するものを守ろうとするあなたの必死な姿に私は惹かれたのです。あなたの婚約が解消になったと聞いて、私はその元婚約者の女に対する怒りと共に、あなたが誰のものでもなくなったことを喜んでしまったのも事実です。あなたが辛い思いをしていらっしゃったというのに申し訳ありません」
「そんな……あの、私に敬語など……侯爵家のお方とは知らず、無礼な言葉遣いをしてしまいまして申し訳ございません」
「レジー殿。私は侯爵家とはいえ三男で、それに今は騎士です。身分など考えずに私の話を聞いていただけませんか?」
そういうと、彼は一瞬躊躇ったものの小さく頷いてくれた。
「私はあの日からあなたに釣り合いの取れる人間になろうと必死に勉強し、身体を鍛え騎士団に入りました。ところが今回、兄上とルカさまが結婚なさることになり、私はあなたとの結婚を一度は諦めようとしました」
「えっ? どうしてですか?」
「兄上とルカさまが結婚されるということはルカさまが私の義兄になるということです。あなたに愛を打ち明けたところで、あなたがルカさまと因縁を持ったまま姻族になるのをよしとはしないでしょう?」
「確かに……その、通りです」
「ですが、ふとしたことからあなたとルカさまのあの事件の真相が浮かび上がってきたのです。あなたとルカさまの因縁めいたものが消えるのならば、私との結婚も少しは考えてくれるのではと思い、あなたへの思いに蓋をするのをやめました。アシュリー副団長、いえ、アシュリー王子殿下のおかげであの時の事件の真相もわかりました。あなたのルカさまに対する気持ちが変わったのなら……今日こそあなたに思いを伝えたいのです」
「デーヴィッド、さま……」
「私はあなたを愛しています。私の夫となっていただけませんか?」
レジー殿の手を握り、目を見つめながら真剣に思いを伝えると、
「あ、あの……私は、今までこんなにも真剣に愛を伝えていただいたのは初めてで……どうして良いのかわからないのですが……あの、素直に嬉しいと思っています。ですが……私は伯爵家を継がねばならぬ身。私以外に兄弟はおりませんし、跡継ぎのことを思うと、すぐには了承し難く……」
と一生懸命答えてくれた。
「それは私のことは嫌いではないということですか?」
「嫌いでないなんて……あの、好き……だと思います。でも……」
「ああっ!! レジー!! ならば問題ありません。ぜひ私の夫になってください」
「でも、跡継ぎが……」
「大丈夫です、兄上も仰っていたでしょう? 跡継ぎのことなら問題ないと」
「そういえば……ですが、どうするのです?」
ほんのりと頬を染めているのは私が抱きしめたせいか。
本当に可愛らしい。
年上だというのに、守ってあげたくなる。
「王家には代々伝わる秘薬があるのです。それを使えば男同士でも子は出来るのだそうですよ。兄上とルカさまもその秘薬で跡継ぎを設ける予定なのですよ」
「そんな秘薬が?」
「ええ。王家とそれに準ずる血筋しか使えない秘薬なのですが、私も侯爵家三男とはいえ、王家に準ずる血筋ですからね。使わせていただけるそうですよ。ですから跡継ぎは問題ありません」
そういうと、レジーはホッとしたようにようやく笑顔を見せてくれた。
「レジー。私の愛を受け入れてもらえますか?」
「は、はい。私でよければ喜んで……」
「レジー!!! 愛しています」
私は3年思い続けた初恋の相手をもう手放さないと誓いながらしばらくの間、抱きしめ続けていた。
✳︎ ✳︎ ✳︎
「さて、お前たちにはこれからしっかりと罰を受けてもらうとしよう」
「ひぃーーっ、お助けを! どうか、どうかお許しください」
レジーに無様な姿をなどと言って罵ったレイラは今、自分があの時のレジー以上に無様な姿を晒し床に這いつくばっている。
さぁて、こいつらをどうしてやろうか……。
あとでじっくりとウィリアムと相談だな。
「こいつらを地下牢に連れて行け!」
「はっ」
ネイハムとレイラを大広間から連れ出し、これで一段落だ。
玉座に座る父上と、そして隣に見えるウィリアムに目で合図を送ると二人とも安堵の表情を浮かべているのが見えた。
その後の宴は余計なものがいなくなったからか、それともルカの誤解が解けたからか、あっという間に和やかな雰囲気を取り戻した。
「ウィリアムさまとルカさまのダンスを見せていただけませんか?」
どこからともなくそんな声がかかり、二人は恥ずかしそうにしながらも玉座の場から下りてきた。
ウィリアムはともかく、今のルカにダンスは踊れるのだろうか?
大広間の真ん中で二人向き合って手を取り合って立っているが、ルカは少し緊張しているように見える。
醜態を晒す前にやめさせた方がいいのではないかと思っている間にとうとうダンスの曲が始まってしまった。
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