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恋は人を愚かにする

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「アシュリーっ!! 私は一体どうしたら良いのだ?!!」

ルカの体調が思わしくないという理由で騎士団を休んでいたウィリアムが3日ぶりに騎士団の詰所に顔を出したかと思えば、血相を変えて副団長室へと飛び込んできた。

「ウィリアム、落ち着けっ! 一体どうしたんだ?」

「ルカが……ルカがっ!!」

「ルカがどうしたんだ? またわがままで凶暴に戻ったとでも言うのか?」

「違うっ!! ルカが可愛すぎるのだっ!!!!!」

「はぁっ??」

「朝起きてから、夜眠るまで……いや、眠っている時でさえ、可愛すぎるのだ。毎日毎日可愛さを超越していくルカのそばにいて私はこのままあと10日、耐えられる気がしない」

朝から何を言っているんだ、こいつは……。

「私はお前が休んでいた分の仕事が溜まっていて忙しいんだ。そんなこと言っている暇があったら、さっさと仕事をしろっ!」

「アシュリー! それは冷たすぎるだろう!! ルカはお前の従兄弟だろう? そして、お前は私の従兄弟でもある。もっと親身になってくれても良いのではないか?」

というか、その物言い……お前は私が王子であることを忘れているのではないか?
それはともかく親身にと言われても正直、私には特に恋愛経験もないのだから参考になることは言えないと思うのだが……。
そう言っても今のウィリアムが聞き分けがよくなるとは思えない。
まぁ話を聞いてやるだけで落ち着くならそれでいいか。

「わかった、わかった。話を聞いてやる。その代わり、聞いてやったらすぐに仕事に取り掛かるんだぞ!」

「さすがアシュリー!! 本当にお前はいい奴だな」

今まで見たことのないような満面の笑みを見せるウィリアムに心の中で驚きの声を上げながら、

「それで、ルカがなんだって? 可愛すぎるって、ルカはお前のつまになるんだ。夫が可愛いならいいことじゃないか。何が問題なんだ?」

と尋ねると、ウィリアムはなぜわからないんだとでも言いたげに

「はぁーーーっ!」

と大きなため息を吐いた。

「問題も問題だよ。朝は私の胸元に擦り寄ってきて口づけを強請ってくるし、着替えを手伝えば、可愛い胸の蕾がぷっくりと膨らんで私に触れて欲しそうに強請ってくる。ルカと片時も離れたくなくて屋敷の中ではずっとルカを抱きかかえているのだが、すぐ近くにルカの顔が見えるとすぐに口づけをしたくなるし、食事の時間には雛鳥のように可愛らしく口を開けて私が料理を運ぶのを楽しそうに待っているルカが可愛くて押し倒したくなる。昼寝をすれば、夢の中でも私のことを探しているのか、『ウィル、好き』と可愛い声で囁いてくるし、風呂に入れば、私に蜜をたくさん飲ませるからと目の前で必死に蜜を出そうと頑張って擦って見せるが、私の手でないと気持ちよくないと言って、私に蜜を出させてと強請ってくるし、蜜が少しでも溢れると勿体無いから全部綺麗に舐め取ってと強請られて……その上、こんなにも可愛いルカと一日中一緒にいながら、私のモノには一切触れさせられない。ルカが寝入ってから、1人で慰める毎日だ……。だが、可愛らしいルカの姿にやられてしまっている愚息は一度や二度では治まらないのだ。ルカの中に挿入できれば、愚息もすぐに落ち着くと思うのだがそれはあと10日は許されない……ああ、私は一体どうやって過ごしたらいいのだ?」

おい、私は一体何を永遠と聞かされているのだ?
これは悩みというより、惚気なのではないか?

というか、従兄弟の甘々で淫らな事情など知りたくもないのだが……。

そもそもこれほどまでに思い詰めているのだから、初夜にルカの中に挿入してウィリアムのソレ・・がすぐに落ち着くとは到底思えん。
おそらくルカは2~3日はベッドから起き上がれないことだろう。
いや、それどころか初夜を2~3日続けるのではないか?
いずれにしても、父上やあの屋敷の有能な執事・セスの怒りを買うことは間違いない。

はぁーーっ。
ウィリアムがこんなにもポンコツに成り下がるとは……。
恋は人を愚かにするというが本当のことなのだな。

とはいえ、このままではさすがにルカが心配になってくる。
あれほど迷惑をかけられた従兄弟と言えども、今のルカがとんでもない目に遭うのをみすみす見過ごすわけにもいかない。

ここは私がひと肌脱ぐしかないか。

「だから、この前私が言っておいただろうが。ルカ相手に少しずつ発散させておいた方が良いと。いい加減覚悟を決めて、お前の途轍もなくデカいソレ・・を見せてやれ。ルカ相手にお前が発散できれば、あと10日くらい我慢できるだろう」

「簡単にいうが、これで怯えられでもしたら初夜すらできなくなる恐れがあるのだぞ」

「だが、必死に初夜まで耐えながらその場で初めて見せて怯えられてできなくなる方が辛いだろうが」

「ぐぅ――! 確かにそれはそうなのだが……」

「いいかげん覚悟を決めろ。今のルカは何も知らないんだろう? お前の巧みな話術で言いくるめれば口でヤラせることくらいできるだろう?」

「お前、人を詐欺師扱いするな!」

「そのようなものだろう。どうせ、屋敷の中で抱きかかえているのも夫夫なら常に一緒にいるべきだとかなんとか言ったのだろう? 風呂で蜜が云々などと言っていたのもお前がうまいこと誑かしたのだろう? そうでもなければ、何も知らないルカが自らそのようなことを強請るわけがない」

私がそう言ってやると、ウィリアムはぐぅーっと息を呑んでその場にしゃがみ込んだ。

「不可抗力だったんだ。最初は触れるだけにしようと思っていたんだ。本当だぞ。だが……勃つことも知らないルカが私に触れられて勃起して……それが病気ではないかと不安そうにしていたから……それは病気ではないと教えるために私が夫として認められた証なのだと教えたのだ。それで処理の方法を純粋に教えようとしただけなのだが、出てきた蜜が……」

「まさか……」

「ああ、そのまさかだ。甘かったんだよ。ルカの蜜が……」

蜜が甘いのは、一番最初の吐精だけ。
しかも、それを他人が舐めることができれば舐めた者の細胞が瞬時に組み替えられ、お互いにいつでも甘く感じるようになるのだ。
そうなったが最後、その者以外との性交渉などできようはずもない。
甘い蜜の誘惑に勝てないのだ。

しかし、通常はあり得ない。
なぜなら初めての吐精を他人と共に迎えるようなことがないからだ。

まさか、以前のルカも含めて本当に初めてだったとは……。
神がウィリアムのためにそうしていてくれたとしか考えられないな。

甘い蜜を舐めたのか……。
それは限界にもなるだろうな。

私はようやくウィリアムの苦悩を思い知ったのだ。

「そうとわかればなおのこと。今日、帰ったら早速お前のモノをルカに見せるんだ。それでうまく口でヤラせるように誘導しろ。ルカが怯えようとも、出てくる蜜が甘いとわかれば今度はルカの方から率先してやってくれるようになるだろう。なんとかそれで10日間耐えるんだ」

「そううまくいくか?」

「やってみないとわからんだろう。これから10日ひとりで耐え忍ぶよりはマシだ」

「確かにそうだな……よし、わかった。早速今夜にでも……いや、早い方がいいか。今からすぐ屋敷に帰って――」
「ウィリアム、仕事はしていけよ! ただでさえ、とんでもない量の仕事が溜まってるんだからな!!」

そう言ってやると、ウィリアムは渋々ながらも

「わかったよ」

といい、急いで仕事に取りかかった。
今日の仕事が過去最速で終わったのはいうまでもない。
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