天涯孤独になった僕をイケメン外国人が甘やかしてくれます

波木真帆

文字の大きさ
上 下
195 / 204
日本旅行編

生まれて初めての

しおりを挟む
「ふぅー、美味しかった!」

お昼もたっぷり食べたのに、ケーキも食べて夜ご飯もこんなに……。
日本に帰ってきたからかな? いつも以上に食が進んだ気がする。

フランスでも美味しいものをいつも食べているんだけどな。久しぶりだからかな。

「炊き込みご飯もお雑煮も、お料理も全部美味しかったです」

「そう言ってもらえると嬉しいよ」

笑顔の理央くんのお父さんは、やっぱり観月さんに似ている。やっぱり親子なんだな。

「弓弦くん、空良くん。僕の部屋に行こう!」

「もう行っていいの?」

「だってもうご飯食べたし。ねぇ、凌也さん。いいでしょう?」

「ああ。だが、理央。無理はしないように」

「あっ! はい、わかりました」

観月さんの言葉に理央くんは何かを思い出したように声が小さくなっていった。
どうしたんだろう?
観月さんはそんな理央くんの耳元で何か囁くと理央くんはまた笑顔に戻っていき、嬉しそうに頷いていた。

「弓弦くん、空良くん。行こう!」

「あ、うん。じゃあエヴァンさん。行ってくるね」

「ああ。11時になったら部屋に迎えにいくからな。何かあったら声をかけてくれ」

「はーい」

僕は理央くんの後をついていって、理央くんの部屋に戻ってきた。

「ねぇねぇ、さっき観月さんに何を言われてたの?」

「あー、うん。あのね、凌也さん。僕たちが編み物を始めたの知ってるって」

「えっ? バレちゃった? もしかして、エヴァンさんたちにも?」

「ううん。凌也さんと一緒に毛糸を選んだし、ここに並べたからきっと始めたんじゃないかって。ほら、僕たち二時間も集中して出てこなかったでしょう?」

「あ、そっか。観月さんはそりゃあわかるよね」

一緒に準備してくれたんだもんね。それは当然だ。

「弓弦くんと空良くんが編み物を好きになってくれてよかったなって。僕の教え方は上手だから無理しなくても今日中にはできると思うよって言ってくれたんだ」

「えっ? 今日中に、できる?」

「うん。最後の編んでいるところを見た感じ、僕もできそうだなって思ったよ」

「わぁー! 絶対に無理だと思ってた! じゃあ、僕頑張る!!」

「うん。でも無理はしちゃダメだよ。僕が時々休憩を入れるからね」

「わかったー!」

僕は空良くんと顔を見合わせて笑った。
まさか今日中にできるなんて……!

もしかしたら明日の初詣につけてもらえるかもしれない。そう思うと、僕はたまらなく嬉しくなっていた。


みんなでまたラグに座って、さっきの続きを始める。

「弓弦くんは裏編みからだよ。空良くんは表編みだね」

「理央くんが教えてくれるから助かる! 僕、もうどっちかわかんなくなってた」

「うん、僕もー!」

さっと見ただけで次がどれかわかるなんて本当にすごい。
理央くんのおかげで僕たちはスムーズにさっきの続きから始めることができた。

理央くんはどこに目があるんだろうと思うくらい、僕のも空良くんのもしっかりと見てくれる。
僕たちが間違う前に正しい編み方を教えてくれるから本当に助かる。

理央くんは僕たちのを見ながら自分でも何かを編み始めた。
紙袋に入っていた深い赤色の毛糸で、さっき試しに少し編んでくれたものの続きから編んでいるみたい。

「理央くん、それ……マフラー? 誰のを編むの?」

観月さんか、パパママのどちらかかな? なんて思いながら声をかけた。

「これ、パピーのだよ。パピーにも使ってほしいなって」

「えーっ、パピーの? わぁ、すっごくいい色だね。きっと気にいるよ!! ねぇ、空良くん」

「うん! すっごく綺麗! なんか、赤ワインの色って感じ!」

「そうそう! それそれ! すごくいい色」

「そうかな? パピーのイメージで選んだから弓弦くんにそう言ってもらえると嬉しい」

パピーはたまにこういう色のベストとか着ているし、よく似合うと思う。
理央くんは色を選ぶ才能もあるんだな。

僕たちは黙々とそれぞれの編み物に集中しながら、時折理央くんに教えてもらい編み進めていった。

「ちょっと休憩しようか」

「はーい」

疲れたかなというタイミングで声がかかる。

「疲れた時にはこれがいいんだよ」

理央くんがテーブルの上に置いていた可愛い陶器の蓋を開けた。

「これ、金平糖っていうんだって。甘くて美味しいよ」

「わぁー、可愛い!」

トゲトゲした形の小さな粒。その一つ一つに色がついていて可愛い。

「食べちゃうの勿体無いくらいだね」

「うん。わかる」

ドキドキしながら三人で一緒に口に入れると、優しい甘さが広がった。

「おいしーい!!」

「これなら疲れも吹き飛んじゃうね」

「うん、続きも頑張ろう!」

その金平糖が本当に元気にしてくれたように、僕たちはそれぞれまた編み物を始めた。

理央くんに言われた通り、ずっと同じことの繰り返してだいぶ指が覚えてくれたのが一段編むのもだいぶ早くなってきた。
気づけばもうかなりの長さになっている。

「理央くん、どう?」

「わぁー、すごい。もうすぐ完成だよ」

「でも、もっと長い方がいいんじゃない?」

「今は首にかけられるくらいできてれば大丈夫。長いのがいいなってなったら後でまた増やせるし。明日使ってもらえたら嬉しいでしょう?」

「後で増やすなんてできるの?」

「もちろん! 僕がちゃんと教えるよ」

やっぱり理央くんがいると心強い。

「11時まであと30分か……。この分なら、二人とも完成できそうだね」

首に何重も巻くことはできないけれど、コートと合わせてつけてもらえるなら十分な長さにまでは編むことができた。

理央くんのおかげで穴が開くこともなく、綺麗な柄も作れたし気分は最高だ。

時間ギリギリまで長さを編んで、最後の止めるところを教えてもらう。

「わぁー!! できたーーっ!!」

「僕もーー!! できたーーっ!!」

生まれて初めての手作りマフラー。なんだか嬉しすぎて感動しちゃったな。
しおりを挟む
感想 166

あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

夫から「用済み」と言われ追い出されましたけれども

神々廻
恋愛
2人でいつも通り朝食をとっていたら、「お前はもう用済みだ。門の前に最低限の荷物をまとめさせた。朝食をとったら出ていけ」 と言われてしまいました。夫とは恋愛結婚だと思っていたのですが違ったようです。 大人しく出ていきますが、後悔しないで下さいね。 文字数が少ないのでサクッと読めます。お気に入り登録、コメントください!

私の庇護欲を掻き立てるのです

まめ
BL
ぼんやりとした受けが、よく分からないうちに攻めに囲われていく話。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

卒業パーティーで魅了されている連中がいたから、助けてやった。えっ、どうやって?帝国真拳奥義を使ってな

しげむろ ゆうき
恋愛
 卒業パーティーに呼ばれた俺はピンク頭に魅了された連中に気づく  しかも、魅了された連中は令嬢に向かって婚約破棄をするだの色々と暴言を吐いたのだ  おそらく本意ではないのだろうと思った俺はそいつらを助けることにしたのだ

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

処理中です...