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日本旅行編
家族の味
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「エヴァンさん、今のって、どういう意味?」
「いくらアヤシロの妹君だとしても、私のユヅルに勝手に触れて欲しくないからね」
そうか、エヴァンさん……可愛い七海さんに嫉妬してくれたんだ。でも、確かにそうかも。
僕だって七海さんがエヴァンさんとピッタリ寄り添ってたら嫉妬しちゃうかな。
僕と変わらない年齢だからというのもあるのかも……。
「うちのお兄ちゃんも、私が佳都くんに近づくと嫌がるからロレーヌさんもそうだろうなって。やっぱりそうなんですね」
「ははっ。アヤシロもそうなのか。やはり同じだな」
「えっ? でも、七海さんと佳都さんは元々お友達なんですよね? それでも嫌なんですか?」
「そうなの! 私がお兄ちゃんとの仲を取り持ってあげたのに、ひどいでしょう? 弓弦くんがわかってくれて嬉しいわ!」
くるくると表情が変わる子だな。綾城さんはクールな人って感じだけど、性格は全然違うみたい。どちらかというと佳都さんによく似てる。だから、七海さんとお友達になったのかな。
「さぁ、料理ができたよ。みんなテーブルに来てくれ! 七海、母さんたちに声をかけてきて」
「はーい! 行こう、翔太」
綾城さんの声に、七海さんと翔太さんがさっと奥の部屋にかけて行った。そういえば、お母さんたちみんなで何か準備してるって言ってたっけ。もう準備は大丈夫なのかな?
そんなことを考えながら、案内されるままにエヴァンさんとテーブルに向かうと、あまりにも豪華な料理が並んでいて驚いてしまう。
「すごーいっ!!」
僕が驚く横で理央くんは得意げな顔を見せてくれた。
「でしょう? 僕も昨日初めてお正月の料理を食べさせてもらったんだけど、どれもすっごくおいしかったよ。弓弦くん、いっぱい食べてね」
「うん、ありがとう!!」
そうか、昨日は家族での初めての元日を迎えたんだ。理央くん、あんなに嬉しそうな顔をして……相当楽しかったんだな。
僕たちが席に座ると、秀吾さんと佳都さんが来て、僕とミシェルさん、それにリュカに声をかけてくれる。
「ねぇ、お雑煮だけど京都風の白味噌仕立てと、関東風のお澄ましと九州風のお澄ましと三種類あるんだ。どれがいい?」
「ええーっ、どれも初めてだから気になるなぁ。どうしよう……」
エヴァンさんに相談しようと思ったけれど、エヴァンさんこそお雑煮は食べたことないかもだし。どうしようかな?
「悩むけど、食べたことないのにしてみようかな。じゃあ、白味噌仕立てにします! ミシェルさんは何にする?」
「どれもわからないから、カントウフウ? っていうのにしようかな。リュカはどれにする?」
「では私はキューシュウにします」
「みんなでバラバラだね。楽しそう!!」
そんな僕たちの様子を見ていたからか、エヴァンさんたちもバラバラで、エヴァンさんは関東風、セルジュさんは九州風で、ジョルジュさんは京都風にしていた。
「エヴァンさんの一口もらってもいい?」
「ああ、もちろんだよ。二人で分けて食べよう」
「うん、嬉しい!」
こういうのが当然って思ってくれるから嬉しいな。
お餅の数も聞かれたけど、他の料理もいっぱい食べたいから小さいお餅を一個にしておいた。
お雑煮のお餅って本当に美味しいんだよね。うちはお正月でも特別な料理はあまりなかったけど、お雑煮だけは作ってくれてた。あのお雑煮の作り方、母さんに習っておけばよかったな。もう二度と食べられないんだ……。
「ユヅル、どうした?」
「ううん、ちょっと母さんとのお正月を思い出しちゃっただけ。今頃、母さんも楽しい正月を過ごしているよね」
「ああ、きっとニコラと幸せにしてるよ」
母さんのことを考えるとすぐに涙が出てきちゃうけど、いつもすぐにエヴァンさんが気づいてくれるから、僕は一人じゃないって感じられる。
本当にエヴァンさんと出会えてよかったな。
僕たちがお願いした通りに、お雑煮が運ばれてくる。
白味噌自体も食べたことないけど、すっごくいい匂いがしている。ああ、早く食べてみたいな。
「ちなみに、この白味噌のお雑煮はうちのお母さんが作ったんだよ」
秀吾さんが笑顔で教えてくれた。
「えっ? 秀吾さんのお母さんが?」
「うん。うちのお母さん自体は東京出身だけど、おばあちゃんが京都の人で……だから、うちは元日は関東風のお雑煮で、二日は京都風のお雑煮なんだ」
「へぇー、毎年二種類食べられるなんてすごいですね!!」
「将臣のところも同じ東京だけど味は違うから、お雑煮ってほんと奥が深いよね」
同じ東京でも味が違うんだ……!
本当にそれぞれの家の味なんだな。それなら、僕もエヴァンさんとの新しいお雑煮を作るのもいいかもしれないな。なんて、そんなことを考えてしまう自分がいた。
「いくらアヤシロの妹君だとしても、私のユヅルに勝手に触れて欲しくないからね」
そうか、エヴァンさん……可愛い七海さんに嫉妬してくれたんだ。でも、確かにそうかも。
僕だって七海さんがエヴァンさんとピッタリ寄り添ってたら嫉妬しちゃうかな。
僕と変わらない年齢だからというのもあるのかも……。
「うちのお兄ちゃんも、私が佳都くんに近づくと嫌がるからロレーヌさんもそうだろうなって。やっぱりそうなんですね」
「ははっ。アヤシロもそうなのか。やはり同じだな」
「えっ? でも、七海さんと佳都さんは元々お友達なんですよね? それでも嫌なんですか?」
「そうなの! 私がお兄ちゃんとの仲を取り持ってあげたのに、ひどいでしょう? 弓弦くんがわかってくれて嬉しいわ!」
くるくると表情が変わる子だな。綾城さんはクールな人って感じだけど、性格は全然違うみたい。どちらかというと佳都さんによく似てる。だから、七海さんとお友達になったのかな。
「さぁ、料理ができたよ。みんなテーブルに来てくれ! 七海、母さんたちに声をかけてきて」
「はーい! 行こう、翔太」
綾城さんの声に、七海さんと翔太さんがさっと奥の部屋にかけて行った。そういえば、お母さんたちみんなで何か準備してるって言ってたっけ。もう準備は大丈夫なのかな?
そんなことを考えながら、案内されるままにエヴァンさんとテーブルに向かうと、あまりにも豪華な料理が並んでいて驚いてしまう。
「すごーいっ!!」
僕が驚く横で理央くんは得意げな顔を見せてくれた。
「でしょう? 僕も昨日初めてお正月の料理を食べさせてもらったんだけど、どれもすっごくおいしかったよ。弓弦くん、いっぱい食べてね」
「うん、ありがとう!!」
そうか、昨日は家族での初めての元日を迎えたんだ。理央くん、あんなに嬉しそうな顔をして……相当楽しかったんだな。
僕たちが席に座ると、秀吾さんと佳都さんが来て、僕とミシェルさん、それにリュカに声をかけてくれる。
「ねぇ、お雑煮だけど京都風の白味噌仕立てと、関東風のお澄ましと九州風のお澄ましと三種類あるんだ。どれがいい?」
「ええーっ、どれも初めてだから気になるなぁ。どうしよう……」
エヴァンさんに相談しようと思ったけれど、エヴァンさんこそお雑煮は食べたことないかもだし。どうしようかな?
「悩むけど、食べたことないのにしてみようかな。じゃあ、白味噌仕立てにします! ミシェルさんは何にする?」
「どれもわからないから、カントウフウ? っていうのにしようかな。リュカはどれにする?」
「では私はキューシュウにします」
「みんなでバラバラだね。楽しそう!!」
そんな僕たちの様子を見ていたからか、エヴァンさんたちもバラバラで、エヴァンさんは関東風、セルジュさんは九州風で、ジョルジュさんは京都風にしていた。
「エヴァンさんの一口もらってもいい?」
「ああ、もちろんだよ。二人で分けて食べよう」
「うん、嬉しい!」
こういうのが当然って思ってくれるから嬉しいな。
お餅の数も聞かれたけど、他の料理もいっぱい食べたいから小さいお餅を一個にしておいた。
お雑煮のお餅って本当に美味しいんだよね。うちはお正月でも特別な料理はあまりなかったけど、お雑煮だけは作ってくれてた。あのお雑煮の作り方、母さんに習っておけばよかったな。もう二度と食べられないんだ……。
「ユヅル、どうした?」
「ううん、ちょっと母さんとのお正月を思い出しちゃっただけ。今頃、母さんも楽しい正月を過ごしているよね」
「ああ、きっとニコラと幸せにしてるよ」
母さんのことを考えるとすぐに涙が出てきちゃうけど、いつもすぐにエヴァンさんが気づいてくれるから、僕は一人じゃないって感じられる。
本当にエヴァンさんと出会えてよかったな。
僕たちがお願いした通りに、お雑煮が運ばれてくる。
白味噌自体も食べたことないけど、すっごくいい匂いがしている。ああ、早く食べてみたいな。
「ちなみに、この白味噌のお雑煮はうちのお母さんが作ったんだよ」
秀吾さんが笑顔で教えてくれた。
「えっ? 秀吾さんのお母さんが?」
「うん。うちのお母さん自体は東京出身だけど、おばあちゃんが京都の人で……だから、うちは元日は関東風のお雑煮で、二日は京都風のお雑煮なんだ」
「へぇー、毎年二種類食べられるなんてすごいですね!!」
「将臣のところも同じ東京だけど味は違うから、お雑煮ってほんと奥が深いよね」
同じ東京でも味が違うんだ……!
本当にそれぞれの家の味なんだな。それなら、僕もエヴァンさんとの新しいお雑煮を作るのもいいかもしれないな。なんて、そんなことを考えてしまう自分がいた。
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