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日本旅行編

ドキドキの対面

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「そろそろいいかしら?」

そんな優しい声が聞こえてきて振り向くと、綺麗な着物姿の女性が立っていた。

「あっ、えっと……」

「驚かせてごめんなさいね。私は麗花れいか。理央と凌也の母です」

笑顔で僕に挨拶をしてくれてそのまま理央くんを後ろから抱きしめるように立った。観月さんのお母さんだけど、理央くんと本当の親子みたいだ。後ろを振り返り、笑顔で見つめ合う理央くんがすごく嬉しそう。

「到着早々、我が家まで来ていただいてお疲れになったでしょう。さぁさぁ、どうぞ中にお入りください」

「は、はい。お邪魔します」

理央くんの手を取って、綺麗な姿勢で歩いていく麗花さんの姿に思わず見惚れてしまう。普段でもずっと着物を着ていそうなくらいに着慣れている感じがする。とっても綺麗だな。
エヴァンさんと手を繋いで麗花さんの後ろについていくと、広々としたリビングに大勢の人が集まっているのが見えた。

「わっ! いっぱい!」

思わず心の声が漏れてしまう。
麗花さんは笑顔で振り返りながら、

「弓弦くんたちに会いたくて集まったの。さぁ、どうぞ」

と声をかけてくれた。

広々とした大きなソファーは、僕たちの家にあるのとよく似ていて座り心地がいい。それにしてもすごく広いリビングだ。

僕たちが全員ソファーに座ったところで、麗花さんが同じく着物姿の女の人に声をかけた。
わぁ、綺麗な着物姿の女性が集まるとまるで花畑にいるみたいに明るく見える。その中の一人がスッと前に出てきてゆっくりと口を開いた。

「私は茜音あかね。空良と寛人の母よ」

この人が空良くんと悠木さんのお母さん……。ふわりとした優しい笑顔を僕たちに向けると、さっと空良くんの後ろに立ち愛おしそうに抱きしめた。空良くんも嬉しそう。本当に愛されているんだなって気がする。

「私は清佳きよか。佳都と直己の母です。弓弦くんたちに会えて嬉しいわ」

笑顔で佳都さんに近づくと、嬉しそうに顔を見合わせた。こっちも本当の親子みたいだ。

「ねぇ、花織さんは後の方がいいでしょう? 私が先に自己紹介するわ」

「ええ。そうしましょう」

そんな声が聞こえて、そっちに視線を向けるとスッと一人が僕たちの前にやってきて笑顔を向けた。

「私は愛子あいこ。将臣の母です。みなさんに会えて嬉しいわ。そして、彼女が……」

将臣さんのお母さんはまだ挨拶をしていない最後の一人を前に押し出した。

「弓弦くん、会えて嬉しいわ。私、秀吾の母の花織かおりです」

その笑顔に秀吾さんの面影が見える。

「――っ、秀吾さんの! じゃあ、僕の両親の……」

「ええ。喜んでくれたようで嬉しかったわ」

「僕! ずっとお礼が言いたくて!! ありがとうございます!!」

秀吾さんのお母さんの優しい微笑みに、僕は母さんの面影を感じたような気がして、あまりの嬉しさにその場から飛び出して抱きついてしまった。

けれど、秀吾さんのお母さんは僕の突然の行動に驚くでもなく、

「弓弦くんのその気持ちだけでとっても嬉しいわ」

と優しく声をかけながら、抱きしめてくれた。

「あの……僕、もらった映像を毎日見てます。両親が揃っているのを見られるのが嬉しくて……」

「よかったわ。あの時は無我夢中だったけれど、きっとこうなる運命だったのね。弓弦くんに見せることができて本当に良かったわ」

「本当に、ありがとうございます」

秀吾さんのお母さんにもう一度お礼を言っていると、後ろから

「私からもお礼を言います。素晴らしい映像をユヅルに託してくれて本当にありがとう」

とエヴァンさんの声が聞こえた。と同時に僕の身体が秀吾さんのお母さんからスッと離されていつの間にかエヴァンさんにピッタリと寄り添っていた。

「エヴァンさん……」

「きっとニコラさんも天音さんも喜んでいらっしゃるわ。あなた方が幸せで……」

秀吾さんのお母さんはそういうと、秀吾さんと顔を見合わせて微笑んだ。

そのあと、お母さんたちがそれぞれ旦那さまたちを紹介してくれた。この広いリビングに総勢25名が集まって壮観だ。それでもかなり広々と感じるのだから、本当に広いリビングだ。

「まだ上に二人いるから、下りてきたら紹介するわね」

「二人、ですか?」

「ええ。娘の七海とその彼氏の翔太くんが着替えをしているの。ちょっと時間がかかっているみたいね」

「着替え……」

「七海ちゃんがお義母さんの着物を見て、私も着たいって言ってね。今、上で着替えてるんだよ。翔太はそれの手伝いをしているみたい」

ああ、そういえば綾城さんの妹の彼氏さんと佳都さん、お友達だって言ってたっけ。
綾城さんの妹さんって、あの着ぐるみパジャマとかベビードールとかメイド服とか教えてくれた人だよね。その人に会えるのかぁ……。なんだかドキドキしちゃうな。
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