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日本旅行編

嬉しい再会!

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「あ、みてみて! あれ。僕の通ってる大学だよ」

「うわぁー! すごく立派ですね!!」
 
「かなり古くからある建物らしいからね。大きい図書館が三つもあって、それぞれ学部ごとに分かれてるんだよ。あ、みて! あっちの赤い三角屋根のお店は、美味しいケーキ屋さんで……」

空港から観月さんのご実家までは佳都さんがこうして目につくものを次々と説明してくれるから、僕もミシェルさんもリュカも飽きることなくドライブを楽しめた。

そのおかげであっという間に目的地に到着したみたいだ。

「ここが観月さんと理央くんの実家だよ」

「わっ! おっきなお家」

フランスで僕たちが住んでいる煉瓦造りの洋館とは違って、観月さんたちの実家はおしゃれな白壁の近代的な建物。
僕が日本に住んでいた田舎の家は古い木造の平屋だったし、周りも同じような木造の平屋の家ばかりだったからこういう家は見慣れないしかっこいい。
周りのお家もどれもデザインに富んでいて、かっこいい家ばかりだからこういう土地柄なのかもしれない。

「日本のお家っておしゃれだね」

「ええ、本当に。それにどこの庭も綺麗に手入れがされていて街並みが美しいです」

日本に住んでいた僕も驚いてしまうくらいだから、ミシェルさんもリュカもそりゃあ驚いちゃうよね。

驚く僕たちをよそに車は止まることなく、そのまま地下の駐車場に入って行った。
先にエヴァンさんたちが降りて行って、僕たちをエスコートしてくれる。

「頭をぶつけないように気をつけて」

「はーい」

優しい声をかけられて、車を降りると広い駐車場にものすごい数の車が止められているのが見えた。
まるでロレーヌ家の駐車場みたい。

「車がいっぱいですね」

「ああ、それも希少な車ばかりだ。よほどの車好きのようだな」

「さすがだな、ロレーヌ。観月の親父さんは趣味が車らしくてね。用途に合わせてその都度車を変えているそうだよ。まぁ、うちの親父も悠木のところも揃って車が趣味みたいなものだからな。親友同士、会うたびによく車の話で盛り上がっているよ」

「そうなのか。そういう友人がいるのも楽しいだろうな」

「ああ。もう数十年の仲だからな。さぁ、みんなが待っているから行こうか。そこのエレベーターから上がってくれと言われているから、そっちから行くぞ。佳都、おいで。みんなもついてきてくれ」

綾城さんと佳都さんに案内されて、エレベーターに向かう。

「ほお、自宅にエレベーターがあるというのも面白いものだな」

たしかにあの広いお屋敷にならあっても良さそうだけど、洋館にはちょっと似合わない気もする。
まぁ、僕の場合はいつもエヴァンさんが抱きかかえて階段を歩いてくれるからエレベーターがあってもなくてもあまり変わらないかもしれない。

その大きなエレベーターに綾城さんと佳都さんが乗り込み、ジョルジュさんとリュカ、セルジュさんとミシェルさん、そしてパピー。最後に僕たちが乗った。

これだけ乗ってもまだ余裕があるのだからすごい。きっと家具とかもこのエレベーターで運んだりするんだろうな。

静かにエレベーターが動き、ポーンという音と共に静かに止まった。
あまりにも早すぎて本当に動いたのかもわからないくらいだ。

ゆっくりと扉が開いた瞬間、パーン、パーン。パーン! と華やかな音が聞こえたと思ったら、ひらひらとたくさんの紙が舞い散るなか、

「あけましておめでとう! 日本にようこそ!!」

と聞き慣れた声が耳に飛び込んできた。
僕の目に映るのは、嬉しそうな理央くん、空良くん、秀吾さんの笑顔。

「わぁっ!!」

僕はあまりにも突然のことにびっくりしてしまったけれど、それは嬉しい驚きだ。

嬉しすぎてエレベーターから外に出ると、

「弓弦くん! 会えて嬉しい!!」

と理央くんと空良くんが抱きついてくる。

ほんの一週間くらい離れていただけなのに、なんだかものすごく懐かしくて嬉しくてたまらない。

「理央くん! 空良くん! 僕も会いたかったよ!」

「「弓弦くん!!」」

ぎゅーっと三人で抱き合っていると、突然大きな腕が僕たちの間に現れてふわりと僕の身体が浮かんだかと思ったら、いつもの優しい匂いに包まれる。

「ユヅル、それくらいでいいだろう?」

「エヴァンさんったら」

きっと僕たちが抱き合っていたから嫉妬したんだろう。僕はあっという間にエヴァンさんの腕に抱きかかえられていた。
もう本当に僕のことに関しては子どもみたいにすぐ嫉妬してしまう。
けれど、それを嬉しいと思ってしまう僕も相当エヴァンさんのことが好きなんだろう。

見れば、理央くんも空良くんも、観月さんと悠木さんに抱きかかえられている。
やっぱり僕たちはよく似ているのかもしれない。
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