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日本旅行編
懐かしい匂い
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飛行機を降りると、風に乗って懐かしい匂いがする。
フランスではあまり感じることのない匂いかもしれない。
「ユヅル? どうした?」
「あ、なんか匂いが……」
「ああ、それはきっと日本食の匂いだよ」
「日本食?」
「ああ、味噌や醤油、それに出汁のいい匂いがするだろう? どれもフランスではなかなか感じられない匂いだからな。ユヅルが今まで味わってきた匂いが呼び起こされたんじゃないか」
だから懐かしく感じたんだ。
フランスでの生活を始めた頃は、日本食が割と食卓に出ていた気がするけれど、ここしばらくはだいぶ少なくなっていた気がする。
それを寂しいとも思わなかったけれど、日本に着いてみると一気に思い出したのかもしれない。
「久しぶりに和食が食べたくなっちゃいました」
「そうか、ならアヤシロに美味しい日本食の店を教えてもらおうか」
「わぁー、楽しみです!」
これでまた一つ、日本での楽しみが増えたな。
到着口まで歩く間、他の飛行機から降りてきた人たちが僕たちを見て驚きの表情を見せる。
さっきエヴァンさんに言われた通り、僕の顔も知られているってことなんだろう。
でも、僕とエヴァンさんはフランス人で、フランスという国で認められた正式な夫夫。
誰にも迷惑をかけているわけでもないし、エヴァンさんのそばから絶対に離れないで堂々としていればいいんだよね。
「エヴァンさん……っ、僕、ちゃんとくっついてますね」
「ああ、いい子だな」
腕にギュッと絡みつくと、エヴァンさんが嬉しそうに笑う。
僕はエヴァンさんが隣にいてくれるから、周りの視線なんか気にしないでいられるんだ。
「もうみんな待ってるのかな?」
「ああ、到着口で待っているって連絡が来ていた。目立つから代表でアヤシロとケイトだけで待っていると言っていたよ」
「えっ、そうなんですね……」
てっきりみんな待ってくれていると思ってた。
でもそういえばみんながフランスに来てくれた日、空港でちょっと騒ぎになっちゃってたっけ。
きっとエヴァンさんもセルジュさんもあの時のことを覚えていたんだろう。
「みんなにもすぐに会えるよ」
「うん!」
そんな話をしていると、トンと軽い衝撃が背中に走った。
ミシェルさんだ。
「ねぇ、ユヅルー。なんだかドキドキするね」
「うん。あ、到着口見えてきたよ!」
「本当だ!」
駆け出したくなるのを必死に抑えて、ジョルジュさんを先頭にエヴァンさんと一緒に到着ゲートを出る。
そのすぐ後ろから、セルジュさんとミシェルさん。そしてパピーとリュカが出てきた。
どこだろうと探す前に、
「弓弦くーん! ここだよ!」
と佳都さんにしては控え目の声が聞こえる。
きっと騒がないように言われたのかな。隣にいる綾城さんが頭を優しく撫でているのが見える。
「ユヅル、行こうか」
「はーい!」
エヴァンさんと一緒に二人の元に向かう。
後ろからミシェルさんたちもきている音がする。
「佳都さん!」
「弓弦くん。ミシェルさん、それにリュカさんも元気そうで嬉しい!」
「佳都さんも! また会えて嬉しい!!」
「もうみんなと離れてから寂しくて……。でもみんなでまた会えるからって我慢してたんだ。今日が待ち遠しかったよ」
ふわっとした優しい笑顔を見せてくれる。
お別れした時と全然違う、笑顔で会えるって嬉しい。
「みんなお迎えに来たいって言ってたんだけどね。ごめんね、僕たちだけで」
「ううん、来てくれるだけで嬉しいです。それで、理央くんたちはどこで待っているんですか?」
「理央くんと観月さんの実家なんだよ」
「えっ、そこに行っていいんですか?」
「うん。みんなで最初はどこに行くって相談したんだけど、観月さんのお母さんがどうしても一番最初にうちに来てほしいって言ってね。それで決まったんだ。美味しいお雑煮とおせち料理を用意してくれているみたいだよ」
「わぁー! 食べたいと思ってたんです。ねぇ、ミシェルさん」
「うんうん。初日から夢が叶うのって嬉しい!」
ミシェルさんはよっぽど食べたかったんだろう。
その場で嬉しそうにジャンプしている。
そんな子どもみたいな可愛い姿を見ていると、世界中で有名なヴァイオリニストには見えないな。
「ユヅル、そろそろ移動しようか」
「はーい」
綾城さんと佳都さんの案内で駐車場に着くと、一際大きな車が止まっているのが見える。
「みんなで乗るから、親父の車を借りてきたんだ」
そう言って、綾城さんが運転席に乗り込み、道順を覚えるためと言ってパピーが助手席に座ることになりあとは全員で後ろに座った。
エヴァンさんの家にもあったような大きな車だから、余裕で全員が乗れる。
「弓弦くん、ミシェルさん。リュカさんもこっちに座ろう」
僕の隣には佳都さんが座ったけれど、考えてみたら車の中で佳都さんと横並びで座るのは初めてかも……。
なんだか新鮮だな。
フランスではあまり感じることのない匂いかもしれない。
「ユヅル? どうした?」
「あ、なんか匂いが……」
「ああ、それはきっと日本食の匂いだよ」
「日本食?」
「ああ、味噌や醤油、それに出汁のいい匂いがするだろう? どれもフランスではなかなか感じられない匂いだからな。ユヅルが今まで味わってきた匂いが呼び起こされたんじゃないか」
だから懐かしく感じたんだ。
フランスでの生活を始めた頃は、日本食が割と食卓に出ていた気がするけれど、ここしばらくはだいぶ少なくなっていた気がする。
それを寂しいとも思わなかったけれど、日本に着いてみると一気に思い出したのかもしれない。
「久しぶりに和食が食べたくなっちゃいました」
「そうか、ならアヤシロに美味しい日本食の店を教えてもらおうか」
「わぁー、楽しみです!」
これでまた一つ、日本での楽しみが増えたな。
到着口まで歩く間、他の飛行機から降りてきた人たちが僕たちを見て驚きの表情を見せる。
さっきエヴァンさんに言われた通り、僕の顔も知られているってことなんだろう。
でも、僕とエヴァンさんはフランス人で、フランスという国で認められた正式な夫夫。
誰にも迷惑をかけているわけでもないし、エヴァンさんのそばから絶対に離れないで堂々としていればいいんだよね。
「エヴァンさん……っ、僕、ちゃんとくっついてますね」
「ああ、いい子だな」
腕にギュッと絡みつくと、エヴァンさんが嬉しそうに笑う。
僕はエヴァンさんが隣にいてくれるから、周りの視線なんか気にしないでいられるんだ。
「もうみんな待ってるのかな?」
「ああ、到着口で待っているって連絡が来ていた。目立つから代表でアヤシロとケイトだけで待っていると言っていたよ」
「えっ、そうなんですね……」
てっきりみんな待ってくれていると思ってた。
でもそういえばみんながフランスに来てくれた日、空港でちょっと騒ぎになっちゃってたっけ。
きっとエヴァンさんもセルジュさんもあの時のことを覚えていたんだろう。
「みんなにもすぐに会えるよ」
「うん!」
そんな話をしていると、トンと軽い衝撃が背中に走った。
ミシェルさんだ。
「ねぇ、ユヅルー。なんだかドキドキするね」
「うん。あ、到着口見えてきたよ!」
「本当だ!」
駆け出したくなるのを必死に抑えて、ジョルジュさんを先頭にエヴァンさんと一緒に到着ゲートを出る。
そのすぐ後ろから、セルジュさんとミシェルさん。そしてパピーとリュカが出てきた。
どこだろうと探す前に、
「弓弦くーん! ここだよ!」
と佳都さんにしては控え目の声が聞こえる。
きっと騒がないように言われたのかな。隣にいる綾城さんが頭を優しく撫でているのが見える。
「ユヅル、行こうか」
「はーい!」
エヴァンさんと一緒に二人の元に向かう。
後ろからミシェルさんたちもきている音がする。
「佳都さん!」
「弓弦くん。ミシェルさん、それにリュカさんも元気そうで嬉しい!」
「佳都さんも! また会えて嬉しい!!」
「もうみんなと離れてから寂しくて……。でもみんなでまた会えるからって我慢してたんだ。今日が待ち遠しかったよ」
ふわっとした優しい笑顔を見せてくれる。
お別れした時と全然違う、笑顔で会えるって嬉しい。
「みんなお迎えに来たいって言ってたんだけどね。ごめんね、僕たちだけで」
「ううん、来てくれるだけで嬉しいです。それで、理央くんたちはどこで待っているんですか?」
「理央くんと観月さんの実家なんだよ」
「えっ、そこに行っていいんですか?」
「うん。みんなで最初はどこに行くって相談したんだけど、観月さんのお母さんがどうしても一番最初にうちに来てほしいって言ってね。それで決まったんだ。美味しいお雑煮とおせち料理を用意してくれているみたいだよ」
「わぁー! 食べたいと思ってたんです。ねぇ、ミシェルさん」
「うんうん。初日から夢が叶うのって嬉しい!」
ミシェルさんはよっぽど食べたかったんだろう。
その場で嬉しそうにジャンプしている。
そんな子どもみたいな可愛い姿を見ていると、世界中で有名なヴァイオリニストには見えないな。
「ユヅル、そろそろ移動しようか」
「はーい」
綾城さんと佳都さんの案内で駐車場に着くと、一際大きな車が止まっているのが見える。
「みんなで乗るから、親父の車を借りてきたんだ」
そう言って、綾城さんが運転席に乗り込み、道順を覚えるためと言ってパピーが助手席に座ることになりあとは全員で後ろに座った。
エヴァンさんの家にもあったような大きな車だから、余裕で全員が乗れる。
「弓弦くん、ミシェルさん。リュカさんもこっちに座ろう」
僕の隣には佳都さんが座ったけれど、考えてみたら車の中で佳都さんと横並びで座るのは初めてかも……。
なんだか新鮮だな。
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