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日本旅行編
再会までもう少し
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「さぁ、ユヅル。そろそろ機内に入ろうか」
「はーい」
ラウンジを出ると、少し離れた他の入り口にはたくさんの人が待っているのが見える。
僕たちのところにはスタッフさんたちしかいなくて不思議な感じがする。
「エヴァンさんは、普通の飛行機に乗ったりもするんですか?」
「そうだな。急遽行かなくてはいけなくなった時は乗ることもあるよ」
「じゃあ、あそこでエヴァンさんも一緒に待っているの?」
「いや、待つところは変わらないよ。乗り込む時間になったら声を掛けてくれることになっているからね」
「そうなんですね」
ということは僕がエヴァンさんと普通の飛行機に乗る時も、他の乗客と一緒に待つことはないってことか。
同じ旅先に行く人みんなでワイワイって感じにはならないのはちょっと寂しそうな気もするけど、多分それが安全を守るってことなんだろうな。
「ユヅルと出かける時に民間機に乗ることはおそらくないから安心していいよ。じゃあ、入ろうか」
そう言われて、一緒に通路を通り飛行機の中に入ると想像よりもずっとずっと広いことに驚く。
エヴァンさんは、この飛行機の個室は狭いと話していたけれど、部屋がたくさんある分、座席もいっぱいあって、僕たちが乗ってきた飛行機よりもずっと大きな気がする。
「安定飛行に入るまではこっちで座っておこう」
窓のある広々とした二人掛けの椅子にエヴァンさんと腰を下ろすと、反対側の窓のある椅子にセルジュさんとミシェルさん、座席を全て見渡せる位置にある椅子にジョルジュさんとリュカ、そして、僕たちの対角線にある席にパピーが座った。
「ほら、離陸するよ」
エヴァンさんの言葉と同時に窓の景色が流れていく。
前に飛行機に乗った時は、初めての海外、しかもお父さんの故郷でエヴァンさんが住んでいるフランスに行くということで緊張しまくりだった気がする。
あんな田舎に住んでいた僕が、あんなすごい飛行機に乗って海外に行くことがまだ信じられずにいたんだ。
ふわっと機体が浮き上がって、あっという間にさっきまでいたパリが小さくなっていくのが見える。
日本の景色が小さくなっていくのを見た時はなんとなく寂しさもあったけれど、今日はまた一週間後ねと気楽な気持ちで見ることができている。
僕、フランスにいたこの数ヶ月で、随分と気持ちも変わったんだな。
少し大人になってっていうことなのかも。
「あ、みて! エヴァンさん! あれ、僕たちのお家ですよね?」
「んっ? ああ、そうだな。ユヅル、よく見つけられたな」
「前にエッフェル塔から見た時とまた違って見えますね。楽しい」
「ああ、私も楽しいよ。ユヅルとこうしていられる時間はどこにいても何をしてても最高だ」
「エヴァンさん……」
そっと唇が重なって、エヴァンさんの蕩けるような甘いキスに酔いしれている間に、シートベルトの着用サインが消えた。
「ユヅル、あっちで休もうか」
「はーい」
当然のようにエヴァンさんに抱っこされて、ソファーに向かうと同じようにミシェルさんも抱っこされてソファーにやってきた。
リュカは抱っこじゃなかったのは残念だったけど、恥ずかしかったのかな?
『皆さまに紅茶をお淹れしましょうね』
『わぁー、パピーの紅茶好きっ!』
そういうとパピーは嬉しそうに紅茶を入れてくれた。
カップに注いだ瞬間、そこらじゅうに紅茶のいい香りが漂って落ち着く。
「佳都くんたちもパピーの紅茶楽しみにしているんですよね」
「ああ、特に母君がな。ジュールの紅茶を楽しみにしているようだよ。フランス紅茶はなかなか楽しむ機会がないようだからな」
「そうなんだ」
日本にいるときは紅茶を飲む機会もなかったからわからないけど、そんな僕でもパピーの紅茶が最高だってことはわかる。
美味しいクッキーと一緒に紅茶を味わいながら、日本旅行の話で盛り上がる。
「そういえば、日本ではどこに泊まるんですか?」
「ああ、それなら常駐宿があるから気にしないでいい。ほら、ユヅルと前に泊まったホテルだよ」
「あのホテル! ケーキがすっごくおいしかったですよね」
「ははっ。じゃあ今回も食べるとしよう」
「わーい。嬉しいです!! 理央くんたちも一緒に食べられたらいいなぁ」
「そうか、ならミヅキたちに話しておこう」
「わぁー、エヴァンさん大好き!!」
そういうとエヴァンさんがギュッと抱きしめてくれるのが嬉しい。
「日本の皆さん、ユヅルさんたちをどこに連れていくか、何を食べさせるかものすごく盛り上がっていましたから、楽しみですね」
そうだ、リュカは理央くんたちを見送ってきたんだもんね。
みんなが僕たちのために考えてくれるのが嬉しいな。
もうワクワクドキドキが止まらない。
だからかな、十何時間の空の旅もあっという間に到着した。
「わぁー、もう日本なんだ! 不思議!!」
「ユヅル、日本でも先日の結婚発表でユヅルの顔は知られているから、私から絶対に離れないようにな」
「わかりました」
日本を出る時には誰も僕のことなんか知らなかったのに、今度はみんなが僕を知っている。
本当、人生って何が起こるかわからないものだな。
* * *
みんなとの再会まで書きたかったんですが次回に持ち越し。
次はようやく再会です。
どうぞお楽しみに♡
「はーい」
ラウンジを出ると、少し離れた他の入り口にはたくさんの人が待っているのが見える。
僕たちのところにはスタッフさんたちしかいなくて不思議な感じがする。
「エヴァンさんは、普通の飛行機に乗ったりもするんですか?」
「そうだな。急遽行かなくてはいけなくなった時は乗ることもあるよ」
「じゃあ、あそこでエヴァンさんも一緒に待っているの?」
「いや、待つところは変わらないよ。乗り込む時間になったら声を掛けてくれることになっているからね」
「そうなんですね」
ということは僕がエヴァンさんと普通の飛行機に乗る時も、他の乗客と一緒に待つことはないってことか。
同じ旅先に行く人みんなでワイワイって感じにはならないのはちょっと寂しそうな気もするけど、多分それが安全を守るってことなんだろうな。
「ユヅルと出かける時に民間機に乗ることはおそらくないから安心していいよ。じゃあ、入ろうか」
そう言われて、一緒に通路を通り飛行機の中に入ると想像よりもずっとずっと広いことに驚く。
エヴァンさんは、この飛行機の個室は狭いと話していたけれど、部屋がたくさんある分、座席もいっぱいあって、僕たちが乗ってきた飛行機よりもずっと大きな気がする。
「安定飛行に入るまではこっちで座っておこう」
窓のある広々とした二人掛けの椅子にエヴァンさんと腰を下ろすと、反対側の窓のある椅子にセルジュさんとミシェルさん、座席を全て見渡せる位置にある椅子にジョルジュさんとリュカ、そして、僕たちの対角線にある席にパピーが座った。
「ほら、離陸するよ」
エヴァンさんの言葉と同時に窓の景色が流れていく。
前に飛行機に乗った時は、初めての海外、しかもお父さんの故郷でエヴァンさんが住んでいるフランスに行くということで緊張しまくりだった気がする。
あんな田舎に住んでいた僕が、あんなすごい飛行機に乗って海外に行くことがまだ信じられずにいたんだ。
ふわっと機体が浮き上がって、あっという間にさっきまでいたパリが小さくなっていくのが見える。
日本の景色が小さくなっていくのを見た時はなんとなく寂しさもあったけれど、今日はまた一週間後ねと気楽な気持ちで見ることができている。
僕、フランスにいたこの数ヶ月で、随分と気持ちも変わったんだな。
少し大人になってっていうことなのかも。
「あ、みて! エヴァンさん! あれ、僕たちのお家ですよね?」
「んっ? ああ、そうだな。ユヅル、よく見つけられたな」
「前にエッフェル塔から見た時とまた違って見えますね。楽しい」
「ああ、私も楽しいよ。ユヅルとこうしていられる時間はどこにいても何をしてても最高だ」
「エヴァンさん……」
そっと唇が重なって、エヴァンさんの蕩けるような甘いキスに酔いしれている間に、シートベルトの着用サインが消えた。
「ユヅル、あっちで休もうか」
「はーい」
当然のようにエヴァンさんに抱っこされて、ソファーに向かうと同じようにミシェルさんも抱っこされてソファーにやってきた。
リュカは抱っこじゃなかったのは残念だったけど、恥ずかしかったのかな?
『皆さまに紅茶をお淹れしましょうね』
『わぁー、パピーの紅茶好きっ!』
そういうとパピーは嬉しそうに紅茶を入れてくれた。
カップに注いだ瞬間、そこらじゅうに紅茶のいい香りが漂って落ち着く。
「佳都くんたちもパピーの紅茶楽しみにしているんですよね」
「ああ、特に母君がな。ジュールの紅茶を楽しみにしているようだよ。フランス紅茶はなかなか楽しむ機会がないようだからな」
「そうなんだ」
日本にいるときは紅茶を飲む機会もなかったからわからないけど、そんな僕でもパピーの紅茶が最高だってことはわかる。
美味しいクッキーと一緒に紅茶を味わいながら、日本旅行の話で盛り上がる。
「そういえば、日本ではどこに泊まるんですか?」
「ああ、それなら常駐宿があるから気にしないでいい。ほら、ユヅルと前に泊まったホテルだよ」
「あのホテル! ケーキがすっごくおいしかったですよね」
「ははっ。じゃあ今回も食べるとしよう」
「わーい。嬉しいです!! 理央くんたちも一緒に食べられたらいいなぁ」
「そうか、ならミヅキたちに話しておこう」
「わぁー、エヴァンさん大好き!!」
そういうとエヴァンさんがギュッと抱きしめてくれるのが嬉しい。
「日本の皆さん、ユヅルさんたちをどこに連れていくか、何を食べさせるかものすごく盛り上がっていましたから、楽しみですね」
そうだ、リュカは理央くんたちを見送ってきたんだもんね。
みんなが僕たちのために考えてくれるのが嬉しいな。
もうワクワクドキドキが止まらない。
だからかな、十何時間の空の旅もあっという間に到着した。
「わぁー、もう日本なんだ! 不思議!!」
「ユヅル、日本でも先日の結婚発表でユヅルの顔は知られているから、私から絶対に離れないようにな」
「わかりました」
日本を出る時には誰も僕のことなんか知らなかったのに、今度はみんなが僕を知っている。
本当、人生って何が起こるかわからないものだな。
* * *
みんなとの再会まで書きたかったんですが次回に持ち越し。
次はようやく再会です。
どうぞお楽しみに♡
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