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優しく、食べて。狼さん……
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「んっ? これ……なんだ――」
「さぁ、そろそろトランプ大会も終わりにしよう。明日は長旅になるからな、それぞれ部屋で休んだ方がいい!」
突然のセルジュさんの大声に、身体がビクッと震えた。
「そうだな! そうしよう!」
「ああ、ゆっくり休んでおかないとな!」
「じゃあ、俺たちは部屋に戻るよ」
セルジュさんの声にすぐに反応したのは、観月さんと悠木さんと綾城さん。
気づいた時にはささっと理央くんたちを抱きかかえて、パーティールームを出てしまっていた。
あまりの速さにポカンとしてしまったのは、僕だけじゃないはず。
「あ、あの……じゃあ私たちも、そろそろ失礼します」
そう言って腰を上げたのは、周防さんと秀吾さん。
「弓弦くん、また明日ね」
「はい。おやすみなさい」
秀吾さんは優しい笑顔のまま、周防さんと部屋を出ていった。
パーティールームが静かになり、なんだか急に寂しくなる。
「明日にはみんな帰っちゃうんだ……。なんか実感しちゃったな」
「ふふっ。そうですね。でも、これで友人関係が終わるわけじゃないですし、次は日本に行かれるのでしょう?」
「あっ、そうだった! それはすごく楽しみ!」
「わぁ、ユヅル。日本には僕も一緒に行けるよね?」
「もちろん! ミシェルさんも一緒じゃないと、秀吾さんたちが悲しみます」
「ふふっ。セルジュ。一緒に行ってくれるよね?」
「ああ、もちろん。私がミシェルを一人で日本に行かせるわけがないだろう?」
セルジュさんの言葉にミシェルさんは嬉しそうに笑っていた。
「あっ、その時はもう一人の日本人の友人も誘っちゃおうかな?」
「えっ? ミシェルさん。日本にお友達がいるの?」
そんな話聞いたことがなかったから、びっくりしちゃった。
「うーん、一応日本人なんだけど、普段はほとんど海外で過ごしているんだ。だから、日本に行ったからといってすぐに会えるわけじゃなくてね……。だから、前もって連絡しておかなくちゃ! 実は、その子……ピアニストなんだよ」
「ピアニスト?」
「うん。僕がヴァイオリンを弾くときに伴奏してくれる子でね、初めて彼の演奏を聞いたときに一目惚れしちゃったんだ。それで、一緒に演奏したい! って何度もメールを送って、それから年に一度は必ず一緒にコンサートをやる仲になったんだ。すっごく可愛くて良い子なんだよ。きっとユヅルも気にいるはず! ねぇ、セルジュ」
「ああ、ケイならユヅルさまたちとすぐに仲良くなれそうだ」
ケイ、さん……。
一体どんな人なんだろう。
セルジュさんの前でも一目惚れなんて話しても嫉妬しないって、相当信頼されてるんだろうな。
海外で活躍するピアニストさんか……。
やっぱりミシェルさんのお友達ってすごいな。
「ユヅル。私たちも部屋に戻ろう」
「あ、うん。そうだね」
「ははっ。お前も我慢の限界を超えたな。セルジュのおかげで助かったな」
「それはお前だろ」
「どういう意味?」
ジョルジュさんとエヴァンさんの会話の意味がよくわからない。
だけど、リュカはジョルジュさんの隣で顔を真っ赤にしていた。
「リュカ? どうかした?」
「い、いえ。なんでもないです」
「?? そう?」
「ほら、ユヅル。行こうか」
そう言って、今度は僕の返事を聞く前に抱きかかえられる。
もちろん、ブランケットをかけたままで。
「じゃあ、また明日ね。おやすみなさい」
手を振りながらそういうとミシェルさんもリュカも笑顔で手を振って見送ってくれた。
部屋に向かう道すがら、
「ねぇ、さっきのジョルジュさんとの会話……どういう意味だったの?」
と尋ねると、
「こういうことだよ」
と言ってエヴァンさんは嬉しそうに僕にキスをしてくれた。
「膝に乗せたユヅルが可愛すぎて、正直トランプどころじゃなかったよ。その上、あんなことを言われてはな」
「あんなことって……あっ!」
――僕も赤ちゃんみたいな、エヴァンさん見てみたいな……
理央くんに感化されてそう言ったのを思い出した。
「あれは……」
「ふふっ。今日はミヅキに習って、私もユヅルの可愛い胸を堪能させてもらおうか」
口調は優しいけれど、ギラギラとした目が狼の衣装と相まって、なんだか本当に狼に狙われる赤ずきんちゃんになったみたいな気分になってしまう。
「優しく、食べて。狼さん……」
「ぐぉ――っ!!」
ドキドキしながらも赤ずきんちゃんになりきってエヴァンさんの耳元でそう囁いてみると、エヴァンさんは狼のような雄叫びをあげながら、駆け足で僕たちの部屋に向かった。
「さぁ、そろそろトランプ大会も終わりにしよう。明日は長旅になるからな、それぞれ部屋で休んだ方がいい!」
突然のセルジュさんの大声に、身体がビクッと震えた。
「そうだな! そうしよう!」
「ああ、ゆっくり休んでおかないとな!」
「じゃあ、俺たちは部屋に戻るよ」
セルジュさんの声にすぐに反応したのは、観月さんと悠木さんと綾城さん。
気づいた時にはささっと理央くんたちを抱きかかえて、パーティールームを出てしまっていた。
あまりの速さにポカンとしてしまったのは、僕だけじゃないはず。
「あ、あの……じゃあ私たちも、そろそろ失礼します」
そう言って腰を上げたのは、周防さんと秀吾さん。
「弓弦くん、また明日ね」
「はい。おやすみなさい」
秀吾さんは優しい笑顔のまま、周防さんと部屋を出ていった。
パーティールームが静かになり、なんだか急に寂しくなる。
「明日にはみんな帰っちゃうんだ……。なんか実感しちゃったな」
「ふふっ。そうですね。でも、これで友人関係が終わるわけじゃないですし、次は日本に行かれるのでしょう?」
「あっ、そうだった! それはすごく楽しみ!」
「わぁ、ユヅル。日本には僕も一緒に行けるよね?」
「もちろん! ミシェルさんも一緒じゃないと、秀吾さんたちが悲しみます」
「ふふっ。セルジュ。一緒に行ってくれるよね?」
「ああ、もちろん。私がミシェルを一人で日本に行かせるわけがないだろう?」
セルジュさんの言葉にミシェルさんは嬉しそうに笑っていた。
「あっ、その時はもう一人の日本人の友人も誘っちゃおうかな?」
「えっ? ミシェルさん。日本にお友達がいるの?」
そんな話聞いたことがなかったから、びっくりしちゃった。
「うーん、一応日本人なんだけど、普段はほとんど海外で過ごしているんだ。だから、日本に行ったからといってすぐに会えるわけじゃなくてね……。だから、前もって連絡しておかなくちゃ! 実は、その子……ピアニストなんだよ」
「ピアニスト?」
「うん。僕がヴァイオリンを弾くときに伴奏してくれる子でね、初めて彼の演奏を聞いたときに一目惚れしちゃったんだ。それで、一緒に演奏したい! って何度もメールを送って、それから年に一度は必ず一緒にコンサートをやる仲になったんだ。すっごく可愛くて良い子なんだよ。きっとユヅルも気にいるはず! ねぇ、セルジュ」
「ああ、ケイならユヅルさまたちとすぐに仲良くなれそうだ」
ケイ、さん……。
一体どんな人なんだろう。
セルジュさんの前でも一目惚れなんて話しても嫉妬しないって、相当信頼されてるんだろうな。
海外で活躍するピアニストさんか……。
やっぱりミシェルさんのお友達ってすごいな。
「ユヅル。私たちも部屋に戻ろう」
「あ、うん。そうだね」
「ははっ。お前も我慢の限界を超えたな。セルジュのおかげで助かったな」
「それはお前だろ」
「どういう意味?」
ジョルジュさんとエヴァンさんの会話の意味がよくわからない。
だけど、リュカはジョルジュさんの隣で顔を真っ赤にしていた。
「リュカ? どうかした?」
「い、いえ。なんでもないです」
「?? そう?」
「ほら、ユヅル。行こうか」
そう言って、今度は僕の返事を聞く前に抱きかかえられる。
もちろん、ブランケットをかけたままで。
「じゃあ、また明日ね。おやすみなさい」
手を振りながらそういうとミシェルさんもリュカも笑顔で手を振って見送ってくれた。
部屋に向かう道すがら、
「ねぇ、さっきのジョルジュさんとの会話……どういう意味だったの?」
と尋ねると、
「こういうことだよ」
と言ってエヴァンさんは嬉しそうに僕にキスをしてくれた。
「膝に乗せたユヅルが可愛すぎて、正直トランプどころじゃなかったよ。その上、あんなことを言われてはな」
「あんなことって……あっ!」
――僕も赤ちゃんみたいな、エヴァンさん見てみたいな……
理央くんに感化されてそう言ったのを思い出した。
「あれは……」
「ふふっ。今日はミヅキに習って、私もユヅルの可愛い胸を堪能させてもらおうか」
口調は優しいけれど、ギラギラとした目が狼の衣装と相まって、なんだか本当に狼に狙われる赤ずきんちゃんになったみたいな気分になってしまう。
「優しく、食べて。狼さん……」
「ぐぉ――っ!!」
ドキドキしながらも赤ずきんちゃんになりきってエヴァンさんの耳元でそう囁いてみると、エヴァンさんは狼のような雄叫びをあげながら、駆け足で僕たちの部屋に向かった。
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