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新たなサプライズ
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「わぁーん、後ろ閉められないっ!」
「ふふっ。大丈夫ですよ」
理央くんの声にすぐにリュカが近づいてファスナーをあげてあげる。
まるで兄弟のようなその姿に思わず綻んでしまう。
「リュカさん、僕もお願い」
「ふふっ。いいですよ」
空良くんのファスナーもあげてあげると、二人は並んでリュカにお礼を言った。
可愛らしい二人がお揃いの服を着ていると、本当に双子のように見える。
「あっ、ねぇねぇ。ちょっとやってみたいことがあるんだけど……」
二人の姿を見て、何か面白いことでも思いついたらしい佳都さんが嬉しそうに笑って、僕たちに顔を寄せる。
着替えを終えたミシェルさんや秀吾さんも一緒に話に加わって、
「えー、それ面白そう!」
「流石に難しいんじゃないかな?」
「いや、絶対大丈夫だって」
と、話が盛り上がる。
「ほら、空良くんと理央くんは演奏会でもサプライズはやってないし、ここでやってみようよ。ねっ」
ちょっと不安そうな、でもやってみたいというような表情をしている理央くんが、
「どうする?」
と空良くんに尋ねると、
「ドキドキするけどやってみたい! 絶対寛人さんなら大丈夫!!」
と力強く言い切った。
「うん、そうだね。僕もやってみたい!」
理央くんも賛成したので、みんなで最後の身支度を整えてあげた。
赤いずきんも被せて
「後ろ向いてみて~!」
と声をかけると、二人がくるっと後ろを向く。
ほとんど同じ背丈で、お揃いの衣装。
髪もずきんを被っているから判断できないし、わかるのは洋服から出た手足だけ。
それでも二人とも細いし、色白だしシャッフルされたら僕ならわからないかもしれないな。
「ふふっ。これでわかったら愛だよねぇ~」
そう。佳都さんが考えたサプライズは理央くんと空良くんを後ろ向きで並べて立たせて、観月さんと悠木さんがちゃんと理央くんと空良くんを間違えずに選んでくれるかどうか。
でも、これって本当に難しいと思う。
だって情報量が少なすぎるもん。
「って、弓弦くんの赤ずきん……すっごく似合ってる!!」
佳都さんのその声にみんなの視線が一気に注がれて恥ずかしくなってしまう。
「そうですか? ちょっと短くて恥ずかしいんですけど」
「大丈夫だよ、弓弦くん。足が綺麗だからきっとエヴァンさんも喜ぶよ」
「秀吾さんもすごく似合ってますよ。周防さんが喜びそう」
「うーん、うちは見慣れてるかも」
「えっ? 見慣れてるって? もしかしていつもこんなことを?」
「ああーっ、違うっ。違うっ!」
照れて顔を横に振る秀吾さんがすっごく可愛い。
「違うって何? シュウゴ、教えて」
さっきの演奏も一緒にして、すっかり仲良くなったらしいミシェルさんが秀吾さんのそばに寄り添って
尋ねる。
「ミシェルさん、近いですって。セルジュさんに怒られちゃいます」
「ふふっ。大丈夫だよ、セルジュはそんな心狭くないって」
そう笑うけれど、僕はもちろんみんなの目は違うでしょと訴えているように見えた。
エヴァンさんも結構狭量だけど、セルジュさんはもっと……な気がするんだよね。
って、そう考えたらここにいる人たちみんなそうかも。
ふふっ。観月さんも悠木さんも綾城さんも周防さんも、それにジョルジュさんもみんな同じなのかな。
だからこそ、気が合うのかもしれないけど。
「じゃあ、準備もできたし行こっか。理央くんと空良くんは最後に部屋に入るから最初は我慢してね」
「「はい、わかりました」」
双子のように声を合わせて、にこりと微笑み合う。
ちょっと緊張しているように見えるけど、僕もちょっとドキドキしてきた。
エヴァンさんが僕をみてくれた後の反応も気になるけど、観月さんと悠木さんの反応気になるなぁ。
「そういえば、直己さんたちの狼も気になるよね」
「うんうん、狼すっごくかっこよかった」
「あれ、色の違いってどうやって決めたんですか?」
「うーん、なんとなくイメージ?」
「ふふっ。狼のイメージですか?」
「うん、でも似合ってたでしょ?」
「確かに将臣の茶色の狼はすごく似合ってる感じがしましたね」
「ふふっ。直己さんとお揃いだよ」
僕は本のイメージかな、狼といえば灰色の毛色って思ってたけど、エヴァンさんの黒と灰色が混ざったような色がなんだか王者の風格って感じがして似合ってた。
さすが佳都さん。
それぞれに似合うのを考える天才だな。
「理央くんと空良くんはここで待っててね」
佳都さんの指示通りにコンサバトリーの入り口の端っこに隠れるように立つ二人を残して、僕たちは先に中に入った。
「お待たせ~」
佳都さんの声に、中にいる狼さんたちが一斉に振り向く。
黒っぽい灰色の毛色をした狼さんは三人いたけど、僕の目が瞬時にエヴァンさんを捉える。
そして、エヴァンさんもまた僕の姿を確実に捉えていて、一瞬にして目が合った。
すごいな、なんでだろう。
身体がエヴァンさんしか見えないようになっているのかな?
すぐにエヴァンさんの方から駆け寄ってきてくれる。
かっこいい狼が駆け寄ってきてくれるのはなんだかとっても嬉しい。
「ユヅル! なんて可愛いんだ!! ああ、もう可愛すぎるな」
「ふふっ。気に入ってくれましたか? エヴァンさんもすっごくかっこいいですよ」
その声に嬉しそうに抱きしめてくれるエヴァンさんの後ろで観月さんと悠木さんが声を上げた。
「あれ? 理央と空良くんは?」
「どうして入ってこないんだ?」
そんな二人の声に佳都さんが嬉しそうに告げる。
「観月さん、悠木さん。目を瞑ってそこに立っててください」
「なんだ? 何が始まるんだ?」
「一体どうしたんだ?」
二人は何が何だかわからないと言った様子だったけれど、
「今から理央くんと空良くんが出てくるので、自分の恋人だと思う方に近づいてくださいね」
というと、なんとなく状況を理解したらしく、
「なるほど。そういうことか。それなら大丈夫だよ。なぁ悠木」
「ああ、俺が空良をわからないわけがないだろう」
そう自信満々に言い切った。
「じゃあ、しっかり目を瞑ってください」
佳都さんの声に二人が静かに目を閉じる。
ふふっ。狼さんな二人が目を閉じているのはなんとなく面白い。
二人が閉じたのを確認して、理央くんと空良くんが入り口から入ってきた。
「これはまた……」
ボソリとエヴァンさんが呟く。
やっぱりエヴァンさんからみてもそっくりに見えるのかもしれない。
どうかな?
観月さんと悠木さんは二人の後ろ姿だけで気づくだろうか?
なんだか僕までドキドキしてきちゃったな。
「ふふっ。大丈夫ですよ」
理央くんの声にすぐにリュカが近づいてファスナーをあげてあげる。
まるで兄弟のようなその姿に思わず綻んでしまう。
「リュカさん、僕もお願い」
「ふふっ。いいですよ」
空良くんのファスナーもあげてあげると、二人は並んでリュカにお礼を言った。
可愛らしい二人がお揃いの服を着ていると、本当に双子のように見える。
「あっ、ねぇねぇ。ちょっとやってみたいことがあるんだけど……」
二人の姿を見て、何か面白いことでも思いついたらしい佳都さんが嬉しそうに笑って、僕たちに顔を寄せる。
着替えを終えたミシェルさんや秀吾さんも一緒に話に加わって、
「えー、それ面白そう!」
「流石に難しいんじゃないかな?」
「いや、絶対大丈夫だって」
と、話が盛り上がる。
「ほら、空良くんと理央くんは演奏会でもサプライズはやってないし、ここでやってみようよ。ねっ」
ちょっと不安そうな、でもやってみたいというような表情をしている理央くんが、
「どうする?」
と空良くんに尋ねると、
「ドキドキするけどやってみたい! 絶対寛人さんなら大丈夫!!」
と力強く言い切った。
「うん、そうだね。僕もやってみたい!」
理央くんも賛成したので、みんなで最後の身支度を整えてあげた。
赤いずきんも被せて
「後ろ向いてみて~!」
と声をかけると、二人がくるっと後ろを向く。
ほとんど同じ背丈で、お揃いの衣装。
髪もずきんを被っているから判断できないし、わかるのは洋服から出た手足だけ。
それでも二人とも細いし、色白だしシャッフルされたら僕ならわからないかもしれないな。
「ふふっ。これでわかったら愛だよねぇ~」
そう。佳都さんが考えたサプライズは理央くんと空良くんを後ろ向きで並べて立たせて、観月さんと悠木さんがちゃんと理央くんと空良くんを間違えずに選んでくれるかどうか。
でも、これって本当に難しいと思う。
だって情報量が少なすぎるもん。
「って、弓弦くんの赤ずきん……すっごく似合ってる!!」
佳都さんのその声にみんなの視線が一気に注がれて恥ずかしくなってしまう。
「そうですか? ちょっと短くて恥ずかしいんですけど」
「大丈夫だよ、弓弦くん。足が綺麗だからきっとエヴァンさんも喜ぶよ」
「秀吾さんもすごく似合ってますよ。周防さんが喜びそう」
「うーん、うちは見慣れてるかも」
「えっ? 見慣れてるって? もしかしていつもこんなことを?」
「ああーっ、違うっ。違うっ!」
照れて顔を横に振る秀吾さんがすっごく可愛い。
「違うって何? シュウゴ、教えて」
さっきの演奏も一緒にして、すっかり仲良くなったらしいミシェルさんが秀吾さんのそばに寄り添って
尋ねる。
「ミシェルさん、近いですって。セルジュさんに怒られちゃいます」
「ふふっ。大丈夫だよ、セルジュはそんな心狭くないって」
そう笑うけれど、僕はもちろんみんなの目は違うでしょと訴えているように見えた。
エヴァンさんも結構狭量だけど、セルジュさんはもっと……な気がするんだよね。
って、そう考えたらここにいる人たちみんなそうかも。
ふふっ。観月さんも悠木さんも綾城さんも周防さんも、それにジョルジュさんもみんな同じなのかな。
だからこそ、気が合うのかもしれないけど。
「じゃあ、準備もできたし行こっか。理央くんと空良くんは最後に部屋に入るから最初は我慢してね」
「「はい、わかりました」」
双子のように声を合わせて、にこりと微笑み合う。
ちょっと緊張しているように見えるけど、僕もちょっとドキドキしてきた。
エヴァンさんが僕をみてくれた後の反応も気になるけど、観月さんと悠木さんの反応気になるなぁ。
「そういえば、直己さんたちの狼も気になるよね」
「うんうん、狼すっごくかっこよかった」
「あれ、色の違いってどうやって決めたんですか?」
「うーん、なんとなくイメージ?」
「ふふっ。狼のイメージですか?」
「うん、でも似合ってたでしょ?」
「確かに将臣の茶色の狼はすごく似合ってる感じがしましたね」
「ふふっ。直己さんとお揃いだよ」
僕は本のイメージかな、狼といえば灰色の毛色って思ってたけど、エヴァンさんの黒と灰色が混ざったような色がなんだか王者の風格って感じがして似合ってた。
さすが佳都さん。
それぞれに似合うのを考える天才だな。
「理央くんと空良くんはここで待っててね」
佳都さんの指示通りにコンサバトリーの入り口の端っこに隠れるように立つ二人を残して、僕たちは先に中に入った。
「お待たせ~」
佳都さんの声に、中にいる狼さんたちが一斉に振り向く。
黒っぽい灰色の毛色をした狼さんは三人いたけど、僕の目が瞬時にエヴァンさんを捉える。
そして、エヴァンさんもまた僕の姿を確実に捉えていて、一瞬にして目が合った。
すごいな、なんでだろう。
身体がエヴァンさんしか見えないようになっているのかな?
すぐにエヴァンさんの方から駆け寄ってきてくれる。
かっこいい狼が駆け寄ってきてくれるのはなんだかとっても嬉しい。
「ユヅル! なんて可愛いんだ!! ああ、もう可愛すぎるな」
「ふふっ。気に入ってくれましたか? エヴァンさんもすっごくかっこいいですよ」
その声に嬉しそうに抱きしめてくれるエヴァンさんの後ろで観月さんと悠木さんが声を上げた。
「あれ? 理央と空良くんは?」
「どうして入ってこないんだ?」
そんな二人の声に佳都さんが嬉しそうに告げる。
「観月さん、悠木さん。目を瞑ってそこに立っててください」
「なんだ? 何が始まるんだ?」
「一体どうしたんだ?」
二人は何が何だかわからないと言った様子だったけれど、
「今から理央くんと空良くんが出てくるので、自分の恋人だと思う方に近づいてくださいね」
というと、なんとなく状況を理解したらしく、
「なるほど。そういうことか。それなら大丈夫だよ。なぁ悠木」
「ああ、俺が空良をわからないわけがないだろう」
そう自信満々に言い切った。
「じゃあ、しっかり目を瞑ってください」
佳都さんの声に二人が静かに目を閉じる。
ふふっ。狼さんな二人が目を閉じているのはなんとなく面白い。
二人が閉じたのを確認して、理央くんと空良くんが入り口から入ってきた。
「これはまた……」
ボソリとエヴァンさんが呟く。
やっぱりエヴァンさんからみてもそっくりに見えるのかもしれない。
どうかな?
観月さんと悠木さんは二人の後ろ姿だけで気づくだろうか?
なんだか僕までドキドキしてきちゃったな。
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