天涯孤独になった僕をイケメン外国人が甘やかしてくれます

波木真帆

文字の大きさ
上 下
157 / 204

数日ぶりの我が家

しおりを挟む
数日ぶりにエヴァンさんのお屋敷に着く。
お城も素敵だったけれど、ここに帰ってくるとなんだかホッとする。
気づかない間にここがもう自分の家だって認識しているのかもしれない。

僕たちが車から降りていると、すぐに佳都さんたちが乗った車も到着して、いの一番に空良くんが降りてこっちにやってきた。

「弓弦くん! さっきの演奏すっごく綺麗だった!!」

「ふふっ。ありがとう。ミシェルさんはやっぱりプロだよねぇ。秀吾さんもすっごく上手で……その中で演奏できて楽しかったよ」

「いやいや、弓弦くんの演奏もすごかったよ!! 僕、隣で鳥肌立ってたよ。ねぇ、ミシェルさん」

僕が空良くんと話を話をしていると、秀吾さんも話に加わってきた。

「うん、ユヅル。すごかったよ。もちろんシュウゴも! またこの三人で演奏したいって思っちゃった」

「うわぁー、ミシェルさんにそう言ってもらえるだけで感激です!!」

秀吾さんは元々ミシェルさんのファンだと言っていたし、すごく嬉しそう。
正直、突然大勢の前で演奏することになって困っただろうなと思っていたけれど、秀吾さんにとってはいい思い出になったのかな。

「演奏の時の話も後でゆっくり聞かせて! とりあえず、中に入ってこれからパジャマパーティーだよ!!」

ウキウキした声で僕たちに駆け寄ってきたのは、もちろん佳都さん!

そうだ、これからパジャマパーティーだったんだ!

ふふっ。自分が何を着るかも楽しみだけど、何よりエヴァンさんが何を着てくれるのかが楽しみだな。
あの白いわんこは見られずじまいだったもんね。

「わぁー、ケイト! 早くパジャマ見たい!」

「僕も! 見たいー!!」

ミシェルさんの声にさっきまで泣いていた理央くんも嬉しそうに賛同する。

「ふふっ。僕たちの部屋に置いてあるから取ってくるね。あのお茶したところで待ってて!」

「うん、じゃあ弓弦くん。先に行って待ってようよ」

「行こう、行こう!」

空良くんと理央くんに手を引かれて、お家の中に入る。
後ろからエヴァンさんや観月さんたちが僕たちを呼ぶ声がうっすら聞こえたような気がしたけれど、楽しい夜を過ごす気満々の僕たちはわいわいとはしゃいでいて気にする余裕もなかった。

コンサバトリーに着くと、部屋はちょうどいい温度に温められていてホッとする。

「ここ、やっぱり過ごしやすいね。お花も植物もいっぱい置いてあって、なんか落ち着く」

「うん。だから僕もここお気に入りなんだ!」

自分のお気に入りの場所を褒められるのがこんなに嬉しいなんて……。
やっぱり友達っていいな。

『紅茶をお淹れしますね』

いつの間にか一緒に来てくれていたパピーが紅茶の支度を始めた途端、コンサバトリーに紅茶のいい香りが漂ってくる。

「この香りもなんだか落ち着くよね」

「ふふっ。そうだね。空良くんもパピーの紅茶気に入ったんだ?」

「うん。すっごく好き。特にお花の香りがするのが好きだよ」

「ああ、わかるー!! なんか飲むだけじゃなくて香りでも楽しめるよね」

「そう! それにお菓子とすっごく合うし!」

「ふふっ。お菓子も美味しいよね。パピーにお菓子も用意してもらおうね」

「なんか僕、食いしん坊みたい」

「ふふっ。そんなことないよ。紅茶とお菓子ってフランスでは絶対に必要な組み合わせだもん」

「へぇ、そうなんだ」

そんな話をしていると、

「ユヅル、楽しそうだな」

とエヴァンさんの声が聞こえた。

「あっ、エヴァンさん。今ね、パピーが紅茶を淹れてくれているから、それに合うお菓子も欲しいなって空良くんと話してたんです。エヴァンさん……パピーにお菓子をお願いしてくれますか?」

「ふふっ。ああ、もちろんだよ」

そういうと、エヴァンさんはすぐにパピーのところに行き話をしてくれた。

「大丈夫、みんなの好きなお菓子を用意してくれているようだよ」

「わぁ、よかったね。空良くん!」

「ほら、ユヅル。座って待っていよう。みんなも座ってくれ」

エヴァンさんの声かけにコンサバトリーにある大きなテーブルにみんな集まった。

当然のようにエヴァンさんは僕を膝に乗せて席に着く。
そして、みんなも同じだ。

もうそれが当たり前のことになりすぎて、恥ずかしさもない。
それどころか、ずっとそこにいたくなる。

こういうのを自然にできるって幸せだな。

目の前にパピーの淹れてくれた紅茶が置かれる。
今日は薔薇の香りがする紅茶だ。

うーん、いい香り。

一緒に食べるお菓子は理央くんの大好きなマカロンとミシェルさんの好きなウイークエンドシトロン。
それに美味しい焼き菓子も揃っている。

さっき、クリスマスマーケットでご飯を食べたばかりだけど、演奏して緊張したからかな。
身体が甘いものを欲しがっている気がする。

秀吾さんもすぐにケーキを口にしているから、きっと同じなんだろう。
演奏って体力も消耗するんだよね。
感情を目一杯入れたからかもしれないな。

「ユヅル、どれから食べる?」

「じゃあ、ケーキから」

そういうと、エヴァンさんは甘い砂糖がついたウイークエンドシトロンを一口食べさせてくれた。
しおりを挟む
感想 166

あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

紹介なんてされたくありません!

mahiro
BL
普通ならば「家族に紹介したい」と言われたら、嬉しいものなのだと思う。 けれど僕は男で目の前で平然と言ってのけたこの人物も男なわけで。 断りの言葉を言いかけた瞬間、来客を知らせるインターフォンが鳴り響き……?

とある文官のひとりごと

きりか
BL
貧乏な弱小子爵家出身のノア・マキシム。 アシュリー王国の花形騎士団の文官として、日々頑張っているが、学生の頃からやたらと絡んでくるイケメン部隊長であるアベル・エメを大の苦手というか、天敵認定をしていた。しかし、ある日、父の借金が判明して…。 基本コメディで、少しだけシリアス? エチシーンところか、チュッどまりで申し訳ございません(土下座) ムーンライト様でも公開しております。

家族になろうか

わこ
BL
金持ち若社長に可愛がられる少年の話。 かつて自サイトに載せていたお話です。 表紙画像はぱくたそ様(www.pakutaso.com)よりお借りしています。

帰宅

pAp1Ko
BL
遊んでばかりいた養子の長男と実子の双子の次男たち。 双子を庇い、拐われた長男のその後のおはなし。 書きたいところだけ書いた。作者が読みたいだけです。

Take On Me

マン太
BL
 親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。  初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。  岳とも次第に打ち解ける様になり…。    軽いノリのお話しを目指しています。  ※BLに分類していますが軽めです。  ※他サイトへも掲載しています。

どうも。チートαの運命の番、やらせてもらってます。

Q.➽
BL
アラフォーおっさんΩの一人語りで話が進みます。 典型的、屑には天誅話。 突発的な手慰みショートショート。

処理中です...