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蕩けるメルヴェイユ
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小さいけれど僕の口には少し大きいそれを口に入れると
「んんっ!!!」
ふわっとした甘いものが口の中で夢のように蕩けていく。
「なに、これ! すごいっ! 美味しいっ!!」
僕は初めての食感に興奮しきりだ。
僕と佳都さんの反応を見て、理央くんと空良くんが
「せぇの」
と一緒にタイミングを合わせて口の中に放り込んで、顔を見合わせて目を丸くする。
「んんっ!! 美味しいっ!」
「溶けて無くなっちゃったっ!!」
その二人の可愛い反応に笑顔を見せながら秀吾さんとミシェルさんもパクリと口に入れる。
「ふふっ。本当に蕩けていきますね」
「うん、いちごすっごく美味しいっ!!」
「ホワイトチョコも最高ですよ!」
「わぁ、次はそれにしよう!」
そんな話をしながら二つ目のメルヴェイユに手が伸びていく。
軽くて甘くてすっごく美味しいから何個でも食べられそう。
ここが外で周りの騒めきなんかも全て忘れちゃうくらい、メルヴェイユの美味しさにすっかり嵌まってしまっていた。
「ユヅル、気に入ったか?」
「うん、すっごく美味しくてびっくりしちゃった! こんな食感初めて!!」
「そうか、ならもっと買ってきてもいいぞ。ジョルジュ!」
そう言ってジョルジュさんとエヴァンさんが話をしていると、少し離れた場所から誰かがずっとこっちを窺っているのが僕の視界に入ってきた。
最初見つけた時はちょっと怖いと思ってしまったけれど、何か用事でもあるようなそんな気配がしてすぐにエヴァンさんに伝えた。
「エヴァンさんっ、あの人……」
「んっ? どうした?」
そう尋ねながら、僕の視線の先を見たエヴァンさんはハッと顔色を変えて、すぐにジョルジュさんにその人の元に行かせ僕を抱きしめた。
守ってくれるのは嬉しいけれど、悪そうな人には見えないんだよね。
ジョルジュさんが近づいても逃げようともしてなかったし。
しばらくその人と話をしたジョルジュさんがその場にその人を待たせて戻ってきた。
そして、エヴァンさんとフランス語で何やら話をしている。
二人の滑らかすぎるフランス語は僕には全く聞き取れないけれど、『メルヴェイユ』という単語だけは耳に入ったような気がした。
すっごく美味しかったから聞き間違いかな?
なんて思っていると、ジョルジュさんはエヴァンさんと話を終えて、あの人の元に戻っていった。
「エヴァンさん、何があったの?」
「ふふっ。何も心配は要らなかったよ。お礼だったんだ」
「お礼? それって、メルヴェイユが関係あるの?」
「なんだ、聞き取れていたのか?」
「ううん、それだけ耳に入ってきたような気がして……でも聞き間違いかなって思ってました。でも、メルヴェイユがなんだったんですか?」
「それがな……」
といいながら、エヴァンさんは理央くんや、空良くん、秀吾さんたちにもぐるっと視線を向けて、
「ユヅルたちがメルヴェイユを食べている姿があまりにも美味しそうで、メルヴェイユの店に人が殺到して完売してしまったそうだ」
「えーーっ!!!」
僕だけでなく、理央くんたちもみんな驚きの表情をしている。
けれど、観月さんたちは
「ははっ、それはわかるな。あんなにも可愛い顔で美味しそうに食べているところを見たら、食べたくなるのも無理はないな」
「ふふっ。確かに」
と納得の表情で話をしている。
「エヴァンさんもそう思いました?」
「ああ、あんなにも美味しそうにメルヴェイユを食べるのを見たことがないよ。私も食べたくなったくらいだからな。ユヅルたちのおかげで早々に完売したから、お礼を言いたくてやってきたらしい。あの人はメルヴェイユの店員だったんだよ。クリスマスマーケットで完売するほど売れるというのは本当にすごいことだからな」
エヴァンさんのその言葉にちらっとさっきの人に視線を送ると、
『Mille mercis.』
と大声で叫んでくれているのが聞こえて、僕は嬉しくなって笑顔で手を振ると、今まで騒がしかった周りが一瞬で静かになり、あの人は地面に倒れてしまっていた。
「え、エヴァンさん……っ」
「大丈夫、気にしなくていいと言っただろう? みんなユヅルの可愛さに心を奪われてるんだ。誰にも渡さないけどね」
「エヴァンさんったら」
「ほら、私にもメルヴェイユを食べさせてくれ」
エヴァンさんからそう言われて、僕はメルヴェイユを一つ掴みエヴァンさんの口に運んだ。
パクリと僕の指まで咥えられて、指にエヴァンさんの温もりが伝わってくる。
「んんっ!」
「ふふっ。本当に甘いな。美味しいよ」
そう言ってくれるエヴァンさんはとっても優しくて、メルヴェイユのようにとろける笑顔を見せてくれた。
「んんっ!!!」
ふわっとした甘いものが口の中で夢のように蕩けていく。
「なに、これ! すごいっ! 美味しいっ!!」
僕は初めての食感に興奮しきりだ。
僕と佳都さんの反応を見て、理央くんと空良くんが
「せぇの」
と一緒にタイミングを合わせて口の中に放り込んで、顔を見合わせて目を丸くする。
「んんっ!! 美味しいっ!」
「溶けて無くなっちゃったっ!!」
その二人の可愛い反応に笑顔を見せながら秀吾さんとミシェルさんもパクリと口に入れる。
「ふふっ。本当に蕩けていきますね」
「うん、いちごすっごく美味しいっ!!」
「ホワイトチョコも最高ですよ!」
「わぁ、次はそれにしよう!」
そんな話をしながら二つ目のメルヴェイユに手が伸びていく。
軽くて甘くてすっごく美味しいから何個でも食べられそう。
ここが外で周りの騒めきなんかも全て忘れちゃうくらい、メルヴェイユの美味しさにすっかり嵌まってしまっていた。
「ユヅル、気に入ったか?」
「うん、すっごく美味しくてびっくりしちゃった! こんな食感初めて!!」
「そうか、ならもっと買ってきてもいいぞ。ジョルジュ!」
そう言ってジョルジュさんとエヴァンさんが話をしていると、少し離れた場所から誰かがずっとこっちを窺っているのが僕の視界に入ってきた。
最初見つけた時はちょっと怖いと思ってしまったけれど、何か用事でもあるようなそんな気配がしてすぐにエヴァンさんに伝えた。
「エヴァンさんっ、あの人……」
「んっ? どうした?」
そう尋ねながら、僕の視線の先を見たエヴァンさんはハッと顔色を変えて、すぐにジョルジュさんにその人の元に行かせ僕を抱きしめた。
守ってくれるのは嬉しいけれど、悪そうな人には見えないんだよね。
ジョルジュさんが近づいても逃げようともしてなかったし。
しばらくその人と話をしたジョルジュさんがその場にその人を待たせて戻ってきた。
そして、エヴァンさんとフランス語で何やら話をしている。
二人の滑らかすぎるフランス語は僕には全く聞き取れないけれど、『メルヴェイユ』という単語だけは耳に入ったような気がした。
すっごく美味しかったから聞き間違いかな?
なんて思っていると、ジョルジュさんはエヴァンさんと話を終えて、あの人の元に戻っていった。
「エヴァンさん、何があったの?」
「ふふっ。何も心配は要らなかったよ。お礼だったんだ」
「お礼? それって、メルヴェイユが関係あるの?」
「なんだ、聞き取れていたのか?」
「ううん、それだけ耳に入ってきたような気がして……でも聞き間違いかなって思ってました。でも、メルヴェイユがなんだったんですか?」
「それがな……」
といいながら、エヴァンさんは理央くんや、空良くん、秀吾さんたちにもぐるっと視線を向けて、
「ユヅルたちがメルヴェイユを食べている姿があまりにも美味しそうで、メルヴェイユの店に人が殺到して完売してしまったそうだ」
「えーーっ!!!」
僕だけでなく、理央くんたちもみんな驚きの表情をしている。
けれど、観月さんたちは
「ははっ、それはわかるな。あんなにも可愛い顔で美味しそうに食べているところを見たら、食べたくなるのも無理はないな」
「ふふっ。確かに」
と納得の表情で話をしている。
「エヴァンさんもそう思いました?」
「ああ、あんなにも美味しそうにメルヴェイユを食べるのを見たことがないよ。私も食べたくなったくらいだからな。ユヅルたちのおかげで早々に完売したから、お礼を言いたくてやってきたらしい。あの人はメルヴェイユの店員だったんだよ。クリスマスマーケットで完売するほど売れるというのは本当にすごいことだからな」
エヴァンさんのその言葉にちらっとさっきの人に視線を送ると、
『Mille mercis.』
と大声で叫んでくれているのが聞こえて、僕は嬉しくなって笑顔で手を振ると、今まで騒がしかった周りが一瞬で静かになり、あの人は地面に倒れてしまっていた。
「え、エヴァンさん……っ」
「大丈夫、気にしなくていいと言っただろう? みんなユヅルの可愛さに心を奪われてるんだ。誰にも渡さないけどね」
「エヴァンさんったら」
「ほら、私にもメルヴェイユを食べさせてくれ」
エヴァンさんからそう言われて、僕はメルヴェイユを一つ掴みエヴァンさんの口に運んだ。
パクリと僕の指まで咥えられて、指にエヴァンさんの温もりが伝わってくる。
「んんっ!」
「ふふっ。本当に甘いな。美味しいよ」
そう言ってくれるエヴァンさんはとっても優しくて、メルヴェイユのようにとろける笑顔を見せてくれた。
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