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幸せの飲み物

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「ああ、もうすっかり日も落ちたからな。ユヅル、大丈夫か?」

「エヴァンさんのコートの中に入ってもいいですか?」

抱きかかえられている方がエヴァンさんと顔が近くて嬉しいけど、コートの中に入って歩くのはあったかくていい。

「わかった、だが絶対に離れないようにな」

「はい。大丈夫です」

理央くんが迷子になった話を聞いたら、ちょっと怖くなってしまったから僕は絶対にエヴァンさんから離れない。

だって、こんな場所で一人になっちゃったら絶対にパニックになる自信がある。

エヴァンさんは僕をそっと腕からおろし、ロングコートの中にスッポリと入れてくれたので僕は絶対に離れないように中でエヴァンさんの腰に両手を回して抱きついた。

「ふふっ。あったかい」

「そうか、それなら良かった。そろそろみんな買い物も一段落したようだから、少し休憩がてら何か食べようか」

「わぁー! ショコラショー飲みたいです!」

「ふふっ。本当にユヅルはショコラショーが好きだな」

「だって、エヴァンさんが僕に愛してるって言ってくれた朝に飲ませてもらったから、僕にとっては幸せの飲み物なんです」

「――っ!!! ユヅルっ!! そんなふうに思っていてくれたのか?」

「だって、僕の大切な思い出ですから」

「ああ、もう! なんて可愛いことを言ってくれるんだろうな!」

「んっ!」

突然エヴァンさんが屈んだと思ったら、僕の唇にエヴァンさんの唇が重なった。
こんな大勢の人がいる中でキスなんて……恥ずかしいけど嬉しい。

「ユヅル……今日は寝かせられないかもしれないな」

「ひゃっ!」

そんなことを耳元で囁かれて力が抜けそうになってしまう。

「ふふっ。本当にユヅルは可愛い」

エヴァンさんは嬉しそうに笑って僕をギュッと抱きしめたまま、僕の髪にキスを落とした。


「弓弦くんっ!! お待たせっ!!」

嬉しそうな笑顔で理央くんが観月さんと一緒に駆けてきた。
どうやらさっきのキスは理央くんには見られてなかったみたい。
多分顔も赤くなっているだろうけど、この薄暗い中じゃ気づかれないかな。
良かった。

「いい飾り見つかった?」

「うん、見てみて!!」

そう言って、理央くんは買ったばかりの飾り物をいくつか出して見せてくれた。
天使やサンタさんの飾り物。
そのほかもキラキラと輝いていてどれも可愛い。

「たくさんあるね」

「うん、お父さんたちのお土産の分も買ったんだ。これなら毎年飾ってもらえるかなって」

「ああ、いいアイディアだね。あっ、これ!」

「ふふっ。そう! ユヅルくんのとお揃いの星見つけたんだ! あれ、ツリーのてっぺんですごく綺麗だったから印象に残ってたの」

理央くんの手のひらよりも大きな星。
これが理央くんたちの家で輝くんだ。
本当に距離があってもずっと繋がっていられる気がする。

「お揃いの飾り、とっても嬉しい!」

そういうと、理央くんも嬉しそうに笑っていた。


「弓弦くん! 理央くん!」

次に駆け寄ってきたのは空良くんと悠木さん。

「いいの見つかった?」

「うん、すごく綺麗なカップばかりで悩んじゃったけど、見つかったよ!」

「ねぇ、空良くん! 僕にもその店教えて! 皐月先生と絢斗先生のプレゼントにしたい!」

「ううん、いいよ! ねぇ、弓弦くん!」

「うん、後で一緒に行こう。先にちょっと休憩しようか、エヴァンさんとショコラショーの話してたんだ」

「ああー、そういえばお腹も空いてきた気がする」

「ふふっ。楽しいことしてると飲んだり食べたりするのって忘れちゃうよね」

そう言って笑っていると、秀吾さんや佳都さんも集まってきた。
手にはいっぱい袋を持っている。

「わぁー、いっぱい買いましたね」

「うん、もう可愛いのがいっぱいで悩んじゃった」

「僕は母さんたちにストールを。とっても手触りが良くて素敵なものばかりでしたよ」

やっぱり二人とも買い物上手だな。
僕はいつも悩んじゃうから、尊敬しちゃうな。

「あとは、ミシェルさんとセルジュさんかな」

ジョルジュさんとリュカはずっと僕たちの近くにいてくれているし、ミシェルさんたちはどこだろうなとキョロキョロしていると、

「ユヅルーっ!!」

と少し離れた場所で手を振っているのが見える。

「行こうか」

エヴァンさんにそう言われて、みんなでミシェルさんたちの元に向かうと、そこは飲食エリア。
僕たちが座って食べられるように席を取ってくれていたらしい。

「ありがとう、ミシェルさん」

「ふふっ。そろそろ食べる頃かなと思ったんだ。ねぇ、注文しに行こう!」

「うん、行こう! 行こう!」

あっ、そう言えば理央くんが観月さんのために注文するって言っていたよね。
上手くできるかな。
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