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煌めくイルミネーション
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「ごめんね、心配かけて……でも、本当にもう大丈夫だよ」
「そっか……それならよかった」
理央くんはまだ潤んだ瞳で優しい笑顔を見せてくれる。
「理央。ほら、こっちにおいで」
上着も着ずに走ってきた理央くんの身体を温めるように、理央くんを抱き上げて自分のコートの中で抱きしめながら
「弓弦くんのことを心配していたから、なんともなくてよかった」
と観月さんも優しくそう言ってくれた。
その優しさに心が温かくなる。
「心配をかけたがもう大丈夫だ。さぁ、これから最後の目的地に向かうとしよう」
エヴァンさんがそういうと、理央くんは嬉しそうに観月さんに抱きついていた。
車に乗り込んだけれど、エヴァンさんは僕を膝に乗せたまま下ろそうとしない。
「車の中は大丈夫だよ」
「いや、私が離れたくないんだ。いいだろう?」
縋るような目で見つめられたらダメだなんて言えるはずもない。
僕がお父さんと母さんに会えて嬉しい時間を過ごしていた間、エヴァンさんは僕の意識がないのを不安に思いながら苦しい時間を過ごしていたのだから。
「はい。じゃあ、もっとぎゅってしてください」
「――っ、ユヅルっ!!」
エヴァンさんが抱きしめてくれるその力が心地良い。
そっと理央くんに視線を向けると、理央くんもまた同じように観月さんに抱きしめられて嬉しそうに微笑みあっていた。
車はしばらく走り続け、見覚えのあるイルミネーションが見え始めた。
「わぁ、だいぶ暗くなったからイルミネーションが綺麗に見える!! ほら、理央くんみえる? リュカもみてー!」
僕の声に観月さんが理央くんを抱きかかえたまま、僕たちの方に移動してくる。
そして窓に顔を近づけると、理央くんは嬉しそうな声をあげた。
「わぁー!! 綺麗っ!! ねぇ、凌也さんも見える?」
「ああ、見えるよ。綺麗だな」
「うん、とっても綺麗!!」
理央くんは夜あまり出歩かないから、自宅とお父さんたちのいるお家に飾られたイルミネーションくらいしかみたことがないって言っていた。
僕も日本にいる時は商店街でちょこっとやっている程度のイルミネーションくらいしかみたことがなかったから、こっちにきてあまりの綺麗さに感動してしまった。
フランスは元々、店が立ち並ぶ場所であっても夜は薄暗いらしいけど、クリスマスのこの時期はイルミネーションで彩られていて明るくて心が弾む。
前にエヴァンさんと一緒にクリスマスマーケットに来た時は今の理央くんと同じように驚いたんだよね。
ふふっ。懐かしい。
「この時期のパリは本当に綺麗で私でもはしゃいでしまいますよ」
リュカがそういうと、
「うん、はしゃいじゃう気持ちすっごくわかる!!」
と理央くんも同意していた。
クリスマスマーケットの入り口に車が停まり、リュカたちと理央くんたちが下りた後、エヴァンさんが僕を抱きかかえたまま下りてくれる。
「ここではずっとユヅルを抱きかかえていたい。いいか?」
「うん。だって人がいっぱいだもんね。迷子になっちゃうと怖いし」
「そうか、良い子だな」
理央くんも空良くんも僕と同じだ。
佳都さんや秀吾さんは腕を組んで歩いてる。
やっぱり大人って感じがするよね。
「わぁー、間近でみても本当に綺麗!!」
「ほんと、絵本の世界にいるみたい!!」
キラキラと輝くこの不思議な空間が理央くんには絵本の世界に思えるみたい。
理央くんは王子さまに抱っこされたお姫さまか……うん、すごくよく似合う。
「理央くん、抱っこされてると安心だよね」
「うん。僕……前に迷子になったことがあってね。あの時、すっごく怖かったからもう絶対に一人になりたくないんだ」
「えっ? そうなの?」
「うん。前に秀吾さんと周防さんに、凌也さんが行ってた大学に連れて行ってもらったことがあったんだけど、トイレから出てきたら誰の姿も見えなくて、それでパニックになって、わぁーって走ってたら全然知らない場所に着いちゃってね……本当、怖かったんだ」
「それでどうしたの?」
「すぐにとっても優しい先生が僕のことを見つけてくれて、秀吾さんたちがいる場所まで連れて行ってくれたんだよ。ねぇ、凌也さん」
理央くんが見上げると、観月さんはその時のことを思い出していたのか少し不安げな表情に見えた。
「ああ、あの時は心配したよ」
「でも凌也さんがお仕事が早く終わって会いに来てくれて……嬉しかったなぁ……」
「そっか、そんなことがあったんなら人混みは怖いよね。その時は観月さんも一緒だったんですか?」
「いや、榊くんと周防くんに理央を任せていたんだ」
「あ、そうなんですね。あれ? でもどうして理央くんがいなくなったってわかったんですか?」
「えっ?」
「あっ、そういえば……凌也さん、どうしてわかったんですか?」
僕の素朴な疑問に理央くんも気になったみたいで観月さんに尋ねていた。
「んっ? ああ、確か周防くんに連絡をもらったんだったな。理央がいなくなったって。それよりも、理央は鳴宮教授と緑川教授にもお土産買っていくんだろう? おしゃべりもいいがプレゼントを探した方がいいんじゃないか?」
「ああ! そうだった! 皐月先生も絢斗先生も可愛いのが好きって言ってたから可愛いの探しに行きたいです!! 弓弦くんも一緒に見にいこう! 空良くんも!!」
「うん、いこういこう!」
僕たちは理央くんに誘われるようにかわいい雑貨が並んだお店に向かった。
「そっか……それならよかった」
理央くんはまだ潤んだ瞳で優しい笑顔を見せてくれる。
「理央。ほら、こっちにおいで」
上着も着ずに走ってきた理央くんの身体を温めるように、理央くんを抱き上げて自分のコートの中で抱きしめながら
「弓弦くんのことを心配していたから、なんともなくてよかった」
と観月さんも優しくそう言ってくれた。
その優しさに心が温かくなる。
「心配をかけたがもう大丈夫だ。さぁ、これから最後の目的地に向かうとしよう」
エヴァンさんがそういうと、理央くんは嬉しそうに観月さんに抱きついていた。
車に乗り込んだけれど、エヴァンさんは僕を膝に乗せたまま下ろそうとしない。
「車の中は大丈夫だよ」
「いや、私が離れたくないんだ。いいだろう?」
縋るような目で見つめられたらダメだなんて言えるはずもない。
僕がお父さんと母さんに会えて嬉しい時間を過ごしていた間、エヴァンさんは僕の意識がないのを不安に思いながら苦しい時間を過ごしていたのだから。
「はい。じゃあ、もっとぎゅってしてください」
「――っ、ユヅルっ!!」
エヴァンさんが抱きしめてくれるその力が心地良い。
そっと理央くんに視線を向けると、理央くんもまた同じように観月さんに抱きしめられて嬉しそうに微笑みあっていた。
車はしばらく走り続け、見覚えのあるイルミネーションが見え始めた。
「わぁ、だいぶ暗くなったからイルミネーションが綺麗に見える!! ほら、理央くんみえる? リュカもみてー!」
僕の声に観月さんが理央くんを抱きかかえたまま、僕たちの方に移動してくる。
そして窓に顔を近づけると、理央くんは嬉しそうな声をあげた。
「わぁー!! 綺麗っ!! ねぇ、凌也さんも見える?」
「ああ、見えるよ。綺麗だな」
「うん、とっても綺麗!!」
理央くんは夜あまり出歩かないから、自宅とお父さんたちのいるお家に飾られたイルミネーションくらいしかみたことがないって言っていた。
僕も日本にいる時は商店街でちょこっとやっている程度のイルミネーションくらいしかみたことがなかったから、こっちにきてあまりの綺麗さに感動してしまった。
フランスは元々、店が立ち並ぶ場所であっても夜は薄暗いらしいけど、クリスマスのこの時期はイルミネーションで彩られていて明るくて心が弾む。
前にエヴァンさんと一緒にクリスマスマーケットに来た時は今の理央くんと同じように驚いたんだよね。
ふふっ。懐かしい。
「この時期のパリは本当に綺麗で私でもはしゃいでしまいますよ」
リュカがそういうと、
「うん、はしゃいじゃう気持ちすっごくわかる!!」
と理央くんも同意していた。
クリスマスマーケットの入り口に車が停まり、リュカたちと理央くんたちが下りた後、エヴァンさんが僕を抱きかかえたまま下りてくれる。
「ここではずっとユヅルを抱きかかえていたい。いいか?」
「うん。だって人がいっぱいだもんね。迷子になっちゃうと怖いし」
「そうか、良い子だな」
理央くんも空良くんも僕と同じだ。
佳都さんや秀吾さんは腕を組んで歩いてる。
やっぱり大人って感じがするよね。
「わぁー、間近でみても本当に綺麗!!」
「ほんと、絵本の世界にいるみたい!!」
キラキラと輝くこの不思議な空間が理央くんには絵本の世界に思えるみたい。
理央くんは王子さまに抱っこされたお姫さまか……うん、すごくよく似合う。
「理央くん、抱っこされてると安心だよね」
「うん。僕……前に迷子になったことがあってね。あの時、すっごく怖かったからもう絶対に一人になりたくないんだ」
「えっ? そうなの?」
「うん。前に秀吾さんと周防さんに、凌也さんが行ってた大学に連れて行ってもらったことがあったんだけど、トイレから出てきたら誰の姿も見えなくて、それでパニックになって、わぁーって走ってたら全然知らない場所に着いちゃってね……本当、怖かったんだ」
「それでどうしたの?」
「すぐにとっても優しい先生が僕のことを見つけてくれて、秀吾さんたちがいる場所まで連れて行ってくれたんだよ。ねぇ、凌也さん」
理央くんが見上げると、観月さんはその時のことを思い出していたのか少し不安げな表情に見えた。
「ああ、あの時は心配したよ」
「でも凌也さんがお仕事が早く終わって会いに来てくれて……嬉しかったなぁ……」
「そっか、そんなことがあったんなら人混みは怖いよね。その時は観月さんも一緒だったんですか?」
「いや、榊くんと周防くんに理央を任せていたんだ」
「あ、そうなんですね。あれ? でもどうして理央くんがいなくなったってわかったんですか?」
「えっ?」
「あっ、そういえば……凌也さん、どうしてわかったんですか?」
僕の素朴な疑問に理央くんも気になったみたいで観月さんに尋ねていた。
「んっ? ああ、確か周防くんに連絡をもらったんだったな。理央がいなくなったって。それよりも、理央は鳴宮教授と緑川教授にもお土産買っていくんだろう? おしゃべりもいいがプレゼントを探した方がいいんじゃないか?」
「ああ! そうだった! 皐月先生も絢斗先生も可愛いのが好きって言ってたから可愛いの探しに行きたいです!! 弓弦くんも一緒に見にいこう! 空良くんも!!」
「うん、いこういこう!」
僕たちは理央くんに誘われるようにかわいい雑貨が並んだお店に向かった。
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