天涯孤独になった僕をイケメン外国人が甘やかしてくれます

波木真帆

文字の大きさ
上 下
139 / 204

À tes yeux!

しおりを挟む
戦意を喪失した兵士達を見てダルクとナオトは表面上は落ち着いていたが、内心は彼等が襲ってこないのかと不安を抱く。どうにかハッタリで誤魔化す事は出来たが、流石に1万の兵士を相手にするのはダルク達でも不可能である。こちらにユニコーンが居たとしてもそれを操るダルクは只の人間のため、彼女が狙われたらひとたまりもない。


(な、ナオ様……この後はどうするのですか?)
(えっと……ちょっと待って、カンペ見ますから)


ダルクが若干涙目でナオトに次の行動を尋ねると、掌に事前に書き込んでいた文字を確認し、ナオトは兵士達に指示を与えた。


「お前達の探している将軍と隊長達は我々が捕縛している!!もしも街の住民や他の村の人間に危害を加えれば彼等を殺す!!」
「な、何だと!?」
「これがその証拠の将軍の兜だ!!確かめろ!!」


空間魔法を発動させてナオトは兜を放り投げると、慌てて兵士達はギルス将軍の装備している兜だと気づき、顔色を青くさせる。まさか本当に将軍が捕まっているとは思わず、よりにもよって自分達を指揮する立場の人物を人質に取られた事を理解した。

彼等は将軍の指示を受けてここまで行動してきたが、その指示を与える将軍が居なくなれば自分達はどのように行動すればよいのか分からない。普通ならば将軍の次に偉い役職の人間が役目を引き継ぐのだが、一般兵以外の上の立場の人間は全員が先にダルクとナオトが捕獲している。


「さあ、お前達は自分の国へ帰れ!!このまま退散するというのならば我々も危害は加えない!!将軍達も国へ送り返そう!!」
「そ、それは無理だ!!このままみすみすと引き返せば俺達は処罰されるんだ!!」
「そうだ!!将軍が捕まって逃げ帰ったなんて報告すれば俺達は殺されちまう!!」


流石に将軍を人質に取られてもこのまま引き返す事は巨人軍も出来ず、何の成果も上げないうちに国へ引き返せば厳罰は免れない。そんな彼等の返答は予想済みなのでナオトはリーリスから教えて貰った対処法を行う。


「ならばお前達の協力者であるノーズ公爵の元へ戻るがいい!!そしてこう伝えろ、帝国は全てお前達の行動をお見通しだとな!!」
「な、何だって!?」
「どうしてノーズ公爵の事まで……」
「ノーズ公爵が帝国を裏切り、貴方達を引き寄せたのは既に調査済みです。後日、この地に100万の帝国兵が押し寄せるでしょう!!」
「ひゃ、百万だって!?」


ダルクの言葉に巨人軍は震えあがり、いくら自分達が最強の軍隊だと自覚していても流石に100万人という言葉を聞けば焦りを隠せない。実際には今の帝国にそれほど数の兵士を動かす余裕はないが、既にノーズ公爵の存在が知られている事を知った巨人軍はダルクとナオトの言葉が真実だと信じた。


「ど、どうすればいいんだよ……100万なんて数、俺達だけでどうしようも出来ねえぞ?」
「う、うろたえるな!!そんな数の兵士が現れるはずがないだろ!?」
「でも、こいつらはノーズ公爵が俺達に手を貸している事を知ってるぞ?それにこんな得体の知れない魔法使いやユニコーンを操る女騎士がいるなんて聞いてねえぞ……」
「そこ!!聞こえてますよ!!口を慎みなさい!!」
「ひいっ!?すいません!!」


こそこそと内緒話を行う兵士達にダルクが注意すると、ナオトは彼等が素直に従ってくれない事に焦り、反対の掌に書いていたリーリスの考えた対処法を実行する。


「ノーズ公爵の元に戻るというのであれば我々は街へ引き返そう。だが、もしも約束を破って街に攻め入ろうとしたら将軍を含めた捕虜を全員処刑する!!そうなればお前達は国へ戻っても厳罰は免れないぞ!!」
「そ、それだけは……!!」
「頼む、止めてくれ!!あの人に俺達は一生ついて行く事を誓ったんだ!?」


将軍が処刑されるかもしれないという不安に駆られた忠誠心の厚い兵士達は跪く。この軍隊の中には長年の間、ギルスの元で働いていた兵士も多く、ギルスの人望を利用してナオトは指示に従う様に命じた。


「ならばさっさと公爵の元へ戻れ!!そして公爵に伝えろ、大人しく降伏するのならば今回限りはお前の首だけで許してやる。但し、これ以上に反抗する気ならば一族郎党全員を処刑するとな!!」
「ナオト様、流石にそれは酷いのでは……」
「いや、書いてあるのを呼んでいるだけですから……ごほんっ!!さ、さあ、早く行動しろ!!」
『…………』


ナオトの発言にダルクの方が不安を抱いてしまうが、あくまでもナオトの言葉はリーリスが考えた作戦であるため、彼の本意ではない。ナオトに命令された兵士達は黙り込み、やがて一人の兵士が前に出る。


「分かった……お前の指示に従う。そうすれば将軍達は解放してくれるのか?」
「約束しよう。但し、お前達の行動は我々が常に監視している事を忘れるな。もしも街や村に近付こうとすれば捕まえた捕虜を処刑するぞ!!その事を忘れるな!!」


兵士の承諾を得たナオは即座に空間魔法を発動させ、黒渦の中に魔獣達を移動させる。最後にユニコーンに乗ったままダルクと共にナオトも姿を消すと、残された兵士達は自分達の目の前で消えてしまった彼等を見て呆然とした表情を浮かべる。
しおりを挟む
感想 166

あなたにおすすめの小説

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

夫から「用済み」と言われ追い出されましたけれども

神々廻
恋愛
2人でいつも通り朝食をとっていたら、「お前はもう用済みだ。門の前に最低限の荷物をまとめさせた。朝食をとったら出ていけ」 と言われてしまいました。夫とは恋愛結婚だと思っていたのですが違ったようです。 大人しく出ていきますが、後悔しないで下さいね。 文字数が少ないのでサクッと読めます。お気に入り登録、コメントください!

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

卒業パーティーで魅了されている連中がいたから、助けてやった。えっ、どうやって?帝国真拳奥義を使ってな

しげむろ ゆうき
恋愛
 卒業パーティーに呼ばれた俺はピンク頭に魅了された連中に気づく  しかも、魅了された連中は令嬢に向かって婚約破棄をするだの色々と暴言を吐いたのだ  おそらく本意ではないのだろうと思った俺はそいつらを助けることにしたのだ

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

私の庇護欲を掻き立てるのです

まめ
BL
ぼんやりとした受けが、よく分からないうちに攻めに囲われていく話。

処理中です...