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ご褒美はキスと……
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「ねぇ、凌也さん。僕もシュートやってみたいな」
エヴァンさんがコートを着る手伝いをしていると、そんな声が隣から聞こえてくる。
「ロレーヌ、まだ少し時間はありますか?」
「ああ、まだ使えるはずだ。リオにさせるのか?」
「ええ。少しシュートでもやらせてみようかと」
「ははっ。それはいい。リオ、ミヅキが教えてくれるからきっとシュートできるようになるぞ」
「はい。頑張ります!」
エヴァンさんの優しい声かけに、理央くんは嬉しそうに笑って観月さんと一緒にバスケットコートの中央に歩いて行った。
「ねぇ、理央くん。できるかな? 前に体育はお休みばかりしてたからあまり運動はしたことがないって言ってたけど…
」
「ふふっ。大丈夫だよ。観月さん、教え方上手そうだし」
心配そうな空良くんに言葉を返すと、
「それもそうだね」
と嬉しそうに笑っていた。
ビデオ通話で話していた時も、運動はやったことがなくて苦手だって言ってたもんね。
あの時は単純にそうなんだと思っていたけど、体育をお休みしてたんならやる機会すらなかったってことなのかな。
何も経験もない理央くんから想像すると、きっと体操服とか用意してもらえなくて体育はお休みさせられていたのかも……。
僕も裕福な生活をしていたわけではなかったけれど、理央くんの話を聞くたびに自分は幸せだったんだと思い知らされる。
だからこそ、今理央くんが観月さんと出会って幸せになっていることが嬉しくてたまらないんだ。
「ユヅルもやってみるか?」
「ふふっ。僕、意外とバスケットは上手だったんですよ。エヴァンさんほどじゃないですけど……」
「そうなのか? ニコラも運動は得意だったから、似たのかもしれないな」
「そうなんですか? お父さんも……ふふっ。なんか嬉しいな」
「ニコラはヴァイオリニストだったから、手を怪我するような競技は避けていたが、足も速かったし子どもの頃はサッカーが好きだったと言っていたな」
「サッカー、エヴァンさんと一緒ですね」
「そうだな。フランスはサッカーも人気だから子どもの頃はよくしたものだ。セルジュと庭で遊んだこともあるぞ」
そんなエヴァンさんの思い出話を聞くだけで楽しい。
「わっ、バスケットボールって結構重いんですね」
理央くんはバスケットボールの感触を楽しんでいるみたいだ。
ぽんぽんと上手にドリブル姿が様になっている。
意外と練習したら上手になるかもね。
「ほら、理央。あの角を目掛けてボールを投げてごらん」
理央くんは言われた通りにボールを投げてみるけれど、力が足りなくてなかなか当たらない。
後ろから観月さんが支えて一緒にボールを投げると、ボールは吸い込まれるようにゴールにスポッと入った。
「わぁー! 入った!」
「理央くん、すごいすごい!!」
「本当! 上手だったよ!!」
僕たちだけでなく、公園の外から見ている人たちからも声がかけられたり、拍手されたりして理央くんは恥ずかしそうにしながらもとっても嬉しそうだ。
「ありがとう!」
僕たちにお礼を言った後で、理央くんは観月さんに何か耳打ちされている。
理央くんは嬉しそうに笑いながら、公園の外にいる人たちに向かって、
『めるしぃー!』
と言いながら手を振ると、キャーキャーとものすごい声が返ってきた。
あまりにも多すぎて何を言っているのか僕には全くわからない。
「ねぇ、エヴァンさん。あの人たち、何て言ってるの?」
「んっ? そうだな。声が入り混じっていて私にもよく聞き取れないが、リオが可愛いと言っているようだよ。理央は小さいから、小さな子がシュートを決めていたら思わず声をかけたくなるだろう?」
「ふふっ。確かに。理央くん、とっても可愛いもんね」
「私にはユヅルしか見えないがな」
「ふふっ。エヴァンさんったら……」
「さっきバスケットで買ったご褒美はもらえないか?」
そう言って僕を抱きしめる。
僕はちゅっとエヴァンさんにキスをして、朝のことを思い出しながら
「続きは夜にね」
と笑顔でいうと、エヴァンさんは嬉しそうに頬を緩めて
「ああ、楽しみにしているよ」
と言ってキスを返してくれた。
ああ、なんか夜のことを考えたらドキドキしちゃうな。
「エヴァン、そろそろ……」
ジョルジュさんに声をかけられて、僕たちは公園をあとにする。
「バスケットかっこよかったね」
「うん! ロレーヌさんチームに負けちゃったけどね」
「でも接戦だったよ」
「だね。あの、奥でバスケットしてた人たち驚いてたよ」
「本当?」
「うん。でもびっくりしちゃうよね。急に大人の人が真剣にバスケット対決やり始めたら」
「ふふっ。そうだね。でも本当かっこよかったなぁ……」
もうこの一言に尽きる。
こんな人たちが僕たちの旦那さまなんて……嬉しくなっちゃうよね。
「あ、でも周防さんは審判だったから……秀吾さんも周防さんがシュート打つところ見たかったんじゃないですか?」
「うーん、まぁ、見たくないと言えば嘘になるけど、審判してる将臣もかっこよかったからいいかな」
「ふふっ。そうですね」
そんな話をしながら理央くんや秀吾さんたちと集まって歩いていると、
「ほら、もう公園から出るから私から離れて歩いてはダメだぞ」
とエヴァンさんに抱き寄せられる。
見れば、みんなそれぞれの旦那さまに抱き寄せられていた。
「エッフェル塔までこのままだからな」
少し風が出てきて寒さを感じた僕は、エヴァンさんのコートの中に入って、エッフェル塔を目指し歩き始めた。
エヴァンさんがコートを着る手伝いをしていると、そんな声が隣から聞こえてくる。
「ロレーヌ、まだ少し時間はありますか?」
「ああ、まだ使えるはずだ。リオにさせるのか?」
「ええ。少しシュートでもやらせてみようかと」
「ははっ。それはいい。リオ、ミヅキが教えてくれるからきっとシュートできるようになるぞ」
「はい。頑張ります!」
エヴァンさんの優しい声かけに、理央くんは嬉しそうに笑って観月さんと一緒にバスケットコートの中央に歩いて行った。
「ねぇ、理央くん。できるかな? 前に体育はお休みばかりしてたからあまり運動はしたことがないって言ってたけど…
」
「ふふっ。大丈夫だよ。観月さん、教え方上手そうだし」
心配そうな空良くんに言葉を返すと、
「それもそうだね」
と嬉しそうに笑っていた。
ビデオ通話で話していた時も、運動はやったことがなくて苦手だって言ってたもんね。
あの時は単純にそうなんだと思っていたけど、体育をお休みしてたんならやる機会すらなかったってことなのかな。
何も経験もない理央くんから想像すると、きっと体操服とか用意してもらえなくて体育はお休みさせられていたのかも……。
僕も裕福な生活をしていたわけではなかったけれど、理央くんの話を聞くたびに自分は幸せだったんだと思い知らされる。
だからこそ、今理央くんが観月さんと出会って幸せになっていることが嬉しくてたまらないんだ。
「ユヅルもやってみるか?」
「ふふっ。僕、意外とバスケットは上手だったんですよ。エヴァンさんほどじゃないですけど……」
「そうなのか? ニコラも運動は得意だったから、似たのかもしれないな」
「そうなんですか? お父さんも……ふふっ。なんか嬉しいな」
「ニコラはヴァイオリニストだったから、手を怪我するような競技は避けていたが、足も速かったし子どもの頃はサッカーが好きだったと言っていたな」
「サッカー、エヴァンさんと一緒ですね」
「そうだな。フランスはサッカーも人気だから子どもの頃はよくしたものだ。セルジュと庭で遊んだこともあるぞ」
そんなエヴァンさんの思い出話を聞くだけで楽しい。
「わっ、バスケットボールって結構重いんですね」
理央くんはバスケットボールの感触を楽しんでいるみたいだ。
ぽんぽんと上手にドリブル姿が様になっている。
意外と練習したら上手になるかもね。
「ほら、理央。あの角を目掛けてボールを投げてごらん」
理央くんは言われた通りにボールを投げてみるけれど、力が足りなくてなかなか当たらない。
後ろから観月さんが支えて一緒にボールを投げると、ボールは吸い込まれるようにゴールにスポッと入った。
「わぁー! 入った!」
「理央くん、すごいすごい!!」
「本当! 上手だったよ!!」
僕たちだけでなく、公園の外から見ている人たちからも声がかけられたり、拍手されたりして理央くんは恥ずかしそうにしながらもとっても嬉しそうだ。
「ありがとう!」
僕たちにお礼を言った後で、理央くんは観月さんに何か耳打ちされている。
理央くんは嬉しそうに笑いながら、公園の外にいる人たちに向かって、
『めるしぃー!』
と言いながら手を振ると、キャーキャーとものすごい声が返ってきた。
あまりにも多すぎて何を言っているのか僕には全くわからない。
「ねぇ、エヴァンさん。あの人たち、何て言ってるの?」
「んっ? そうだな。声が入り混じっていて私にもよく聞き取れないが、リオが可愛いと言っているようだよ。理央は小さいから、小さな子がシュートを決めていたら思わず声をかけたくなるだろう?」
「ふふっ。確かに。理央くん、とっても可愛いもんね」
「私にはユヅルしか見えないがな」
「ふふっ。エヴァンさんったら……」
「さっきバスケットで買ったご褒美はもらえないか?」
そう言って僕を抱きしめる。
僕はちゅっとエヴァンさんにキスをして、朝のことを思い出しながら
「続きは夜にね」
と笑顔でいうと、エヴァンさんは嬉しそうに頬を緩めて
「ああ、楽しみにしているよ」
と言ってキスを返してくれた。
ああ、なんか夜のことを考えたらドキドキしちゃうな。
「エヴァン、そろそろ……」
ジョルジュさんに声をかけられて、僕たちは公園をあとにする。
「バスケットかっこよかったね」
「うん! ロレーヌさんチームに負けちゃったけどね」
「でも接戦だったよ」
「だね。あの、奥でバスケットしてた人たち驚いてたよ」
「本当?」
「うん。でもびっくりしちゃうよね。急に大人の人が真剣にバスケット対決やり始めたら」
「ふふっ。そうだね。でも本当かっこよかったなぁ……」
もうこの一言に尽きる。
こんな人たちが僕たちの旦那さまなんて……嬉しくなっちゃうよね。
「あ、でも周防さんは審判だったから……秀吾さんも周防さんがシュート打つところ見たかったんじゃないですか?」
「うーん、まぁ、見たくないと言えば嘘になるけど、審判してる将臣もかっこよかったからいいかな」
「ふふっ。そうですね」
そんな話をしながら理央くんや秀吾さんたちと集まって歩いていると、
「ほら、もう公園から出るから私から離れて歩いてはダメだぞ」
とエヴァンさんに抱き寄せられる。
見れば、みんなそれぞれの旦那さまに抱き寄せられていた。
「エッフェル塔までこのままだからな」
少し風が出てきて寒さを感じた僕は、エヴァンさんのコートの中に入って、エッフェル塔を目指し歩き始めた。
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