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朝のお気に入り

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「あ、れ……?」

「ふふっ。もう朝だよ。おはよう、ユヅル」

ギュッと抱きしめられながら、ちゅっと唇を重ねられる。
ああ、エヴァンさんの温もりと笑顔が心地いい。

「おはよう、エヴァンさん。僕……結局、寝ちゃったんだ……」

「ああ、可愛かったぞ。私と少し離れると、嫌だと寝言を言っていたし……」

「えっ、本当?」

「ああ、ユヅルが無意識でも私を望んでくれていると思って嬉しかった」

「エヴァンさん……」

「さぁ、身支度を整えて朝食にしようか。今日はみんなで出かけるのだろう?」

「ああ、そうだった!! 時間は大丈夫かな?」

心配して時計を探したけれど、エヴァンさんは笑って僕に時計を見せた。

「まだ8時前、のんびり準備しても十分間に合うよ」

「よかったぁ」

「ユヅル、今日の朝食は何がいい?」

「僕、あのレーズンとカスタードが入ったパンがいいです」

「ああ、Painパン aux raisinsレザンか。じゃあ、それを頼んでこよう」

そういうと、エヴァンさんは僕の唇にちゅっとキスをして、ベッドを下りた。

「わっ!」

綺麗なエヴァンさんの裸のお尻が見えてどきっとする。
なんかこれ……カッコ良過ぎていつまで経っても慣れないな。

ガウンをカッコよく羽織って寝室を出ていくエヴァンさんを見送りながら、僕はそっと布団を捲ると自分が服を着ていたことにホッとする。
エヴァンさんが裸だったから、ちょっと心配しちゃった。

でも、これ……エヴァンさんの服だ。
ふふっ。いい匂いがする。

これだけで朝から幸せな気分になれるな。

「どうした? 私がいないのにやけに嬉しそうだな」

「わっ、エヴァンさん……っ」

戻ってきていたことにも気づかないなんて……恥ずかしい。

エヴァンさんはベッドに腰を下ろすと、僕を抱き起こして、軽々と膝の上に座らせた。

「何をしていたんだ?」

ああ、これは絶対言わないと終わらないやつだ。
恥ずかしいけど、言った方が良いよね。

「あの……エヴァンさんの、服だったから……その、嬉しいなって……良い匂いだなって思ってました」

わぁ、なんか口にすると僕、変態っぽい……。
エヴァンさん呆れてないかな?

ちょっと心配になってしまったけれど、そっとエヴァンさんを見ると嬉しそうに笑っている。

「ああ、朝からユヅルの愛を感じられて幸せだよ」

「んん……っ」

さっきより少し深くキスをされて、ドキドキする。
けれど、すぐに離されて物足りない。

「ふふっ。物足りないのは私も同じだが続きは夜だ。出かける準備をしなければな」

「――っ!!!」

僕の考えが全て筒抜けみたいで恥ずかしい。
でも、なんでも理解してもらえるって嬉しいな。
だから、エヴァンさんのガウンの袖を引っ張りながら、

「約束ですよ、続き……夜にしてくださいね」

というと、今まで余裕ぽかったエヴァンさんの顔が一気に赤くなった。

「エヴァンさん?」

「ああ、もう……ユヅルには一生勝てんな」

そう言いながら、ちゅっと軽いキスをしてくれた。

洗面を済ませ、エヴァンさんに選んでもらった服に着替えて、リビングに出るとちょうどパピーが朝食の支度をしてくれていた。
焼きたての香ばしいパンの匂いにレーズンとカスタードの匂いが鼻腔をくすぐる。

Wowわぁça sent bon美味しそう!!  Merci papy』

『Avec plaisどういたしましてir』

食事の度にこの言葉を言っているおかげで、この言葉だけはすっかり上手になったみたい。
でも、本当に毎回美味しそうだから、お礼が言いたくなるよね。

フランスの甘い朝食はすっかり僕のお気に入りだ。

甘いカフェオレと、パンオレザン、そしてフルーツとサラダを食べる。
もちろん、これもエヴァンさんに食べさせてもらうのが僕の一日の始まり。

ああ、今日も朝から幸せだ。

お腹がいっぱいになった後は、のんびりとソファーで寛ぎながら、今日の観光地の話を聞く。

考えてみれば僕もほとんど行ってないんだよね。
車では何度も通ってるけど、外を歩いたのはほとんどない。

出かけたといえば、デパートとか母さんたちのいる庭園とか、それこそクリスマスマーケットとか。
後は空港にお迎えに行った時か。

だから、今日の観光地巡りは僕も楽しみなんだ。

「まず最初はどこにいくんですか?」

「そうだな、やっぱり凱旋門からだな。凱旋門の上からパリの街並みとエッフェル塔が綺麗に見えるから壮観だぞ。そのあとでエッフェル塔に登ったほうがより楽しめるだろう? 」

「わぁ、凱旋門って人が登れるんですね。門なのに、なんだか不思議」

「ははっ。そうだな。確かに日本の門は登れないからな」

こんなところで日本との違いに気づく。
こういうのも楽しい。

「ユヅル、そろそろしたのリビングで待っていようか」

「はーい」

僕たちはホストだから、先に待っていないとね。
当然のようにエヴァンさんは僕を抱きかかえて、下のリビングに向かった。
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