天涯孤独になった僕をイケメン外国人が甘やかしてくれます

波木真帆

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閑話 大好きな人  <前編>

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リュカとジョルジュの甘い初夜の様子を書きたかったんですが、それだけのために独立させるのもどうかなと思ったので、閑話として間に挟むことにしました。
今までの思い出なんかを詰め込み過ぎて長くなり過ぎたので前後編に分けます。
楽しんでいただけると嬉しいです。

  *   *   *

<sideリュカ>


『無事に結婚式も済んでよかったな』

『ああ、そうだね。ロレーヌ総帥も本当に嬉しそうだった』

『リュカに話は聞いていたが、実際にこの目で二人の様子を見るまでは信じられなかったぞ。あいつがあんなにも尽くしている姿を見ることになるなんてな』

『私も最初こそ驚いたけれど、今はもう二人がいちゃいちゃと過ごしているのが自然にしか思えないよ。なんせ、同じ空間にいるときは常に隣にいらっしゃるのだからな』

『あのエヴァンがこうも変わるとは思わなかったよ』

『ふふっ。寂しい?』

『何言ってるんだ、そんなわけないだろ。親友がようやく最愛を見つけたんだ。嬉しいしかないよ』

『そうだね。本当に良かった』

お城の中庭で写真撮影をして、みんながそれぞれの部屋に向かうのを木のかげでこっそり二人で見守りながら、私たちは幸せな場面に立ち会えた喜びを噛み締めていた。



最愛のパートナーであるジョルジュから、ロレーヌ邸で専属護衛にという話を聞いた時は驚いた。
元々ジョルジュと私はパリ警視庁内にあるロレーヌ家専属警備隊の隊長と副隊長という組織に属していた。
基本はロレーヌ総帥が外出なさる時に護衛をするもので、家の中での護衛は業務には入っていなかった。

そもそもロレーヌ総帥自身もかなりの有段者でもし仮に不審者が屋敷に侵入したとしても返り討ちにするほどの腕はお持ちだ。
そんな彼が室内でも専属護衛をつけようというには、何か恐ろしいものにでも狙われているのだろうか。

そう不思議に思ったけれど、護衛対象がロレーヌ総帥ではなく、成人になったばかりの18歳の男の子だと聞いて驚いた。
この男性はもしかしたら、ロレーヌ総帥の隠し子か? とも思ったけれど、年齢を考えればそれは考えられない。
だとすると、先代の総帥の?

その可能性はなくはないな……。

けれど、ジョルジュから伝えられたのは予想を大きく上回る言葉だった。

――その子はエヴァンが日本で出会った運命の相手だそうだ。それもその子はあのニコラ・ロレーヌと恋人との間に生まれた子どもなのだそうだ。表向きはその日本人の彼にフランス語を教える教師として、そして実際の目的はエヴァンが仕事で家を空けている間の彼の護衛をリュカに頼みたいんだ。

ジョルジュの言葉の情報量が多すぎて理解するのに時間がかかったが、ロレーヌ総帥に最愛が現れたというのは理解できた。
その相手が18歳の男の子でしかも不慮の事故で亡くなったニコラ・ロレーヌの子どもで、その彼にフランス語を教えながら、ロレーヌ総帥がいない間の彼の護衛を私が……。

いやいやいや、なんてものすごい偶然なのだ。
しかも屋敷内にいるのに、護衛を頼むとはどれだけ彼を心配しているのか……。

普段の総帥からは考えられないほどの過保護な要請に驚きしかなかった。

その彼に出会うまでは……。

フランス語教師として彼の前に立って、ロレーヌ総帥があれほど心配になった理由がすぐにわかった。
フランス人と日本人の良いところだけを凝縮したような、ひと目見ただけで虜になるそんな容貌に私も目が釘付けになってしまったからだ。

これは……フランスでは目立って仕方がないだろう。
室内での護衛も含まれていたが、きっと彼が一人で出かけることを心配してのことだったに違いない。

フランスの大富豪であるロレーヌ総帥にこれでもかというほど愛されているにも関わらず、高飛車に振る舞うようなこともなく、誰にでも感謝を述べ、笑顔を向ける。
素直で愛らしい彼・ユヅルさまが私はどんどん好きになった。

ああ、そこには恋愛感情というものは一切ない。
仕事柄、心の荒んだものしか相手にしてこなかった私の心を癒してくれるユヅルさまの存在が好きだったのだ。

それからの数ヶ月、パリ警視庁での怒涛の日々とは違い、ユヅルさまとともに穏やかで充実した日々を過ごしてきた。
ひとつ寂しいことがあるとすれば、仕事中にジョルジュの顔が見えないということくらいだろうか。

それでも、いつも夕方には仕事を終えることができ、家でジョルジュの帰りを夕食を作って待つこともできるようになった。
今が一番幸せなのかもしれない。

そんな時、ロレーヌ総帥とユヅルさまが正式な夫夫となるために結婚式を挙げられることになった。
しかも日本のご友人たちとご一緒にクリスマス休暇の時に。

ユヅルさまは日本人のご友人たちとは直接お会いになったことはほとんどないようだったから最初こそ緊張なさっていたが、ビデオ通話やメッセージで交流を図り、皆様がこちらに来られる前にはすっかり仲良くなっていらした。

今までクリスマスパーティーをしたことがないというユヅルさまやご友人たちのために、盛大なパーティーを催され、ロレーヌ総帥自らが指揮をとり、Père Noëlサンタクロースを出現させ、プレゼントを配る。
もうとうに成人を過ぎている私にもプレゼントが贈られたが、これがジョルジュからの贈り物であることはわかっている。

それでも幼少期、早くに両親を亡くし祖母に育てられた私にとってはとても幸せなクリスマスの贈り物だった。


そんな幸せなクリスマスを過ごした翌日には、誰もが待ち望んでいた結婚式。
幸せに包まれた中で、幸せそうな三組の新郎新夫を見ていると、ジョルジュと挙式した日を思い出す。

あの時から、私は日々幸せを更新し続けている。

結婚式を無事に終え、それぞれが思い思いに大切な初夜を過ごすために部屋へと入っていく。

それを私とジョルジュは見守りながら、最後に私たちの部屋に入った。

私たちの初夜はもうとっくに済んでいるけれど、実はこっそりとドレスの中に昨日ケイトくんから貰ったベビードールを身につけている。

ジョルジュが喜んでくれるか、それとも引かれるか……。
わからないけれど、少しでも興奮してくれたら嬉しい。

もしかしたら、そんなこと自体にならないかもしれないけれど。

なんせジョルジュはこの結婚式を無事に終えられるように気を張っていたのだから。
疲れて眠るかもしれないな。

それでもゆっくりと休んでほしいからいいんだけど。

そう思いながら、部屋の中を進むと後ろから突然ジョルジュに抱きしめられた。

『ジョルジュ? どうしたの?』

『やっと任務が終わった……。あとは俺たちの時間だ』

『えっ? んんっ!!』

急に唇が重ねられ、そのまま抱きかかえられる。
私だってそれなりに筋肉もついていて体重だって重いのに、いつだってジョルジュは私を軽々と抱き上げる。

それがとても嬉しいんだ。

そのまま寝室に連れて行かれる。

『この城に泊まるのは初めてだろう? それなら、俺たちにとっても初夜だ。そうだろう?』

ニヤリと不敵な笑みを浮かべたジョルジュに見つめられるだけで身体の奥が疼いてくる。

『ジョルジュ……好きにして……』

気づけば、私の口からそんな言葉が漏れてしまっていた。
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