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誓いのキスと結婚証明書
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「ソレデハ、ちかいの、キスを」
柔らかなミシェルさんの演奏と佳都さんのピアノの演奏が流れる中、観月さんは嬉しそうな表情で理央くんのベールをあげると、背伸びする理央くんの唇に軽く当てた。
微笑みあう二人がとても素敵だ。
悠木さんは長いベールをそっと広げながら、空良くんの唇にちゅっと押し当てた。
なんだか観月さんより少し長い時間重なっていた気がする。
ふふっ。空良くん、少し顔が赤くなってる。
「ユヅル」
嬉しそうなエヴァンさんがぼくのベールをそっとあげると、今までよりも鮮明にエヴァンさんの表情が見えた。
『Je t’aime.』
僕にしか聞こえないくらいの小さな声で愛を囁きながら、唇に重ね合わせた。
唇からエヴァンさんの心からの愛が伝わってくる。
僕は今、最高に幸せだ。
その後、結婚証明書にサインをすることになった。
これで僕たちが正式な夫夫として認められるんだと思うと、緊張で文字が震えそうになる。
「あの、エヴァンさん…‥ここは、漢字で書くの? それともフランスのアルファベで書くべき?」
どっちで書いたらいいのかわからなくて小声で尋ねてみると、
「ユヅルの好きな方で構わないよ。私は天音が考えたあのユヅルという漢字は好きだけどね」
佳都さんと初めて出会った時に、僕の名前の漢字の意味を知って母さんが僕の名前に込めた思いを感じてくれたんだったな。
「僕も自分の漢字は大好きです。じゃあ、僕……漢字にします」
「ああ。これからユヅルが漢字名を使うことは減るだろうから、これは素晴らしい記念になるな」
そう言われればそうだ。
もう今日から僕はユヅル・ロレーヌになるのだから。
江波弓弦として、綺麗に書かなきゃ!!
ふぅと深呼吸して、エヴァンさんの下に自分の名前を書く。
うん。
思った以上に綺麗に書けたかも。
僕が悩んでいる間に理央くんも、空良くんも書き終わったみたいだ。
証明書を書いたら終わりだからってエヴァンさんに聞いていたからこれで無事に終了かな。
そう思っていると、司祭さまがフランス語で何かを言った途端、ずっと見守ってくれていた秀吾さんたちが一斉に立ち上がった。
「えっ? 何?」
僕はもちろん、理央くんも空良くんも驚いている。
「結婚式の証人としてサインしてもらうんだよ」
エヴァンさんがそう教えてくれた。
僕たちの前にはセルジュさんとミシェルさんが。
理央くんと観月さんの前には秀吾さんと将臣さんが。
そして、空良くんと悠木さんの前には佳都さんと綾城さんがそれぞれ並んだ。
「ユヅル、本当に綺麗! おめでとう。幸せになってね」
「ありがとうございます、ミシェルさん」
ミシェルさんは自分のことのように嬉しそうに僕たちの結婚証明書の証人欄に名前を書いてくれた。
セルジュさんもエヴァンさんと言葉を交わした後、流れるような綺麗なサインを書いてくれた。
ミシェルさんが感極まった様子で、僕をぎゅっと抱きしめてくれたけれど、今日だけはエヴァンさんも止めなかった。
とはいえ、少ししたら引き離されちゃったけど。
そんなところも含めてエヴァンさんが大好きなんだ、僕は。
無事に挙式を終え、礼拝堂からお庭に出て写真撮影をしてもらうことになった。
「ねぇ、ユヅルのドレス。本当に素敵! 撮影はどこでしたの?」
「えっと、おっきな階段のところと、あと舞踏室とこのお庭と、それからギャラリーも行きました」
「わぁ、そんなに行ったんだ! 出来上がりが楽しみだね」
「そうなんです! 僕もいつどんなのを撮られているのか分からなくて……すごく楽しみです」
ミシェルさんは僕がエヴァンさんに抱っこされていても変わらずに話しかけてくれて嬉しい。
だって、このドレス……裾が長くてヒールも履いているから一人で庭なんて歩けないんだもん。
「ミシェルさんのドレスもすっごく素敵。佳都さんたちとお揃いなんですね」
「ふふっ。僕もこんなに素敵なドレスだなんて思わなかったから、着られて嬉しいんだ。今度自分の演奏会でも着ようかなって思ってるよ」
「ああー! それ素敵ですね!!」
「でしょう? 考えてみたらこんなに綺麗な空色のドレス、持ってなかったなって」
きゃっきゃと話をしていると、さっとセルジュさんがミシェルさんのそばに寄ってきて、
「ダメだよ、ミシェル。こんなにも素敵なドレスで演奏したら、みんなドレスに夢中になってしまうよ。演奏会のドレスは私が作るよ」
と言われていた。
確かに前にミシェルさんの演奏会の映像を見せてもらったことがあるけれど、ここまで肩や腕が出ているドレスじゃなかった気がする。
そっか、あのドレスはセルジュさんが選んでいたんだな。
って、今、セルジュさん……作るって言ってなかった?
注文するってことなのかな?
もしかして手作りってことはないよね?
もし、本当に手作りならセルジュさん……凄すぎるなぁ。
柔らかなミシェルさんの演奏と佳都さんのピアノの演奏が流れる中、観月さんは嬉しそうな表情で理央くんのベールをあげると、背伸びする理央くんの唇に軽く当てた。
微笑みあう二人がとても素敵だ。
悠木さんは長いベールをそっと広げながら、空良くんの唇にちゅっと押し当てた。
なんだか観月さんより少し長い時間重なっていた気がする。
ふふっ。空良くん、少し顔が赤くなってる。
「ユヅル」
嬉しそうなエヴァンさんがぼくのベールをそっとあげると、今までよりも鮮明にエヴァンさんの表情が見えた。
『Je t’aime.』
僕にしか聞こえないくらいの小さな声で愛を囁きながら、唇に重ね合わせた。
唇からエヴァンさんの心からの愛が伝わってくる。
僕は今、最高に幸せだ。
その後、結婚証明書にサインをすることになった。
これで僕たちが正式な夫夫として認められるんだと思うと、緊張で文字が震えそうになる。
「あの、エヴァンさん…‥ここは、漢字で書くの? それともフランスのアルファベで書くべき?」
どっちで書いたらいいのかわからなくて小声で尋ねてみると、
「ユヅルの好きな方で構わないよ。私は天音が考えたあのユヅルという漢字は好きだけどね」
佳都さんと初めて出会った時に、僕の名前の漢字の意味を知って母さんが僕の名前に込めた思いを感じてくれたんだったな。
「僕も自分の漢字は大好きです。じゃあ、僕……漢字にします」
「ああ。これからユヅルが漢字名を使うことは減るだろうから、これは素晴らしい記念になるな」
そう言われればそうだ。
もう今日から僕はユヅル・ロレーヌになるのだから。
江波弓弦として、綺麗に書かなきゃ!!
ふぅと深呼吸して、エヴァンさんの下に自分の名前を書く。
うん。
思った以上に綺麗に書けたかも。
僕が悩んでいる間に理央くんも、空良くんも書き終わったみたいだ。
証明書を書いたら終わりだからってエヴァンさんに聞いていたからこれで無事に終了かな。
そう思っていると、司祭さまがフランス語で何かを言った途端、ずっと見守ってくれていた秀吾さんたちが一斉に立ち上がった。
「えっ? 何?」
僕はもちろん、理央くんも空良くんも驚いている。
「結婚式の証人としてサインしてもらうんだよ」
エヴァンさんがそう教えてくれた。
僕たちの前にはセルジュさんとミシェルさんが。
理央くんと観月さんの前には秀吾さんと将臣さんが。
そして、空良くんと悠木さんの前には佳都さんと綾城さんがそれぞれ並んだ。
「ユヅル、本当に綺麗! おめでとう。幸せになってね」
「ありがとうございます、ミシェルさん」
ミシェルさんは自分のことのように嬉しそうに僕たちの結婚証明書の証人欄に名前を書いてくれた。
セルジュさんもエヴァンさんと言葉を交わした後、流れるような綺麗なサインを書いてくれた。
ミシェルさんが感極まった様子で、僕をぎゅっと抱きしめてくれたけれど、今日だけはエヴァンさんも止めなかった。
とはいえ、少ししたら引き離されちゃったけど。
そんなところも含めてエヴァンさんが大好きなんだ、僕は。
無事に挙式を終え、礼拝堂からお庭に出て写真撮影をしてもらうことになった。
「ねぇ、ユヅルのドレス。本当に素敵! 撮影はどこでしたの?」
「えっと、おっきな階段のところと、あと舞踏室とこのお庭と、それからギャラリーも行きました」
「わぁ、そんなに行ったんだ! 出来上がりが楽しみだね」
「そうなんです! 僕もいつどんなのを撮られているのか分からなくて……すごく楽しみです」
ミシェルさんは僕がエヴァンさんに抱っこされていても変わらずに話しかけてくれて嬉しい。
だって、このドレス……裾が長くてヒールも履いているから一人で庭なんて歩けないんだもん。
「ミシェルさんのドレスもすっごく素敵。佳都さんたちとお揃いなんですね」
「ふふっ。僕もこんなに素敵なドレスだなんて思わなかったから、着られて嬉しいんだ。今度自分の演奏会でも着ようかなって思ってるよ」
「ああー! それ素敵ですね!!」
「でしょう? 考えてみたらこんなに綺麗な空色のドレス、持ってなかったなって」
きゃっきゃと話をしていると、さっとセルジュさんがミシェルさんのそばに寄ってきて、
「ダメだよ、ミシェル。こんなにも素敵なドレスで演奏したら、みんなドレスに夢中になってしまうよ。演奏会のドレスは私が作るよ」
と言われていた。
確かに前にミシェルさんの演奏会の映像を見せてもらったことがあるけれど、ここまで肩や腕が出ているドレスじゃなかった気がする。
そっか、あのドレスはセルジュさんが選んでいたんだな。
って、今、セルジュさん……作るって言ってなかった?
注文するってことなのかな?
もしかして手作りってことはないよね?
もし、本当に手作りならセルジュさん……凄すぎるなぁ。
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