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撮影に行こう!
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「ユヅル、挙式前に撮影に行こう」
「わぁーっ、エヴァンさん! かっこ良い!!!」
椅子に座ってエヴァンさんの準備が整うのを待っていると、あっという間に準備を終えたらしいエヴァンさんがカーテンの向こうから出てきた。
僕の目の前に現れたのは、本物の王子さまみたいな格好をしたエヴァンさん。
「これ、結婚式用の服ですか?」
「これはロレーヌ家当主だけが着ることを許されている伝統的な宮廷服だよ。この服を着た私といるだけで、ユヅルはロレーヌ家当主の伴侶として認められるんだ」
「うわぁ、すごい服なんですね!! 本当にかっこ良いです!」
本当にあまりの格好良さに魅入ってしまうほどだ。
「ユヅルがそんなに気に入ってくれて嬉しいよ。ならば、今日はたっぷりと撮影してこの姿を残しておくとしよう」
「わぁー、嬉しいです!」
「じゃあ行こうか」
そういってエヴァンさんが取り出したのは、綺麗な箱の中に入っていたのは少しヒールのある白い靴。
ドレスに合わせて用意してくれたんだとすぐに分かったけれど、こんなにヒールのある靴を履いたことがない。
足元が覚束なさそうけど大丈夫かなと心配している僕を横目に、エヴァンさんは椅子に座っている僕の前にさっと片膝をついた。
そして、僕の片足を優しく膝に乗せ、その白い靴を履かせてくれた。
その王子さまのような仕草にまるで本当に自分がお姫さまになったかのような気分になってしまう。
なんだか照れるけど、嬉しい。
「わっ!」
履かせてもらった靴の吸い付くようなその履き心地に驚く。
まるで、足に合わせて作ったかのようになにもかもがぴったりだ。
「ふふっ。どうだ?」
「すごいです! この靴!」
「ヒールのある靴は慣れないだろうから、少しでも履きやすくなるようにユヅルの足の形に合わせて作ったんだ」
まさかそんなところまで考慮してくれているなんて思わなかった。
「ありがとうございます、エヴァンさん」
両足とも履かせてもらってゆっくりと立ちあがると、普段より数センチエヴァンさんが近くに見える。
それだけでなんとなく視界が広がったような気分にワクワクしている自分がいた。
早速一歩踏み出そうとすると、慣れないヒールと長いドレスに思わず転けそうになってしまった。
「わっ!」
「おっと!」
エヴァンさんがすかさず抱き止めてくれて、大事には至らずに済んだ。
「ユヅルのドレスは裾も長いから転ぶと大変だ。私が抱いて歩くとしよう」
エヴァンさんは僕の長いドレスの裾を手にかけてからさっと僕を抱き上げる。
ふわりと身体が浮いて、かっこいいエヴァンさんの顔が近づいてくる。
僕はそっとエヴァンさんの首に腕を回した。
「ああ、これでいいな」
嬉しそうなエヴァンさんと一緒に部屋を出ると、クララさんとたくさんの荷物を持った男性が待ち構えていた。
「エヴァンさん、あの人は?」
「ああ、紹介しておこう。彼は我々の専属カメラマンのトリスタンだよ。『トリスタン、今日は頼むぞ。特に私の可愛い伴侶の美しさに負けないような写真を撮ってくれ』」
『おおっ! なんて美しいんだ! こんなに美しい花嫁を見たのは生まれて初めてです!! ロレーヌ総帥、これは腕がな鳴りますね』「とりすたん、デス。よろしく、オネゴイ、シマス」
興奮気味にフランス語を話したと思ったら、今度は辿々しい日本語で挨拶してくれた。
どうやらトリスタンさんは日本語をあまり話せないみたい。
きっと一生懸命僕のために日本語の挨拶を覚えてくれたんだろう。
すごく優しい人だな。
『初めまして、トリスタンさん! 僕は弓弦と言います。今日はよろしくお願いします!』
拙いながらもなんとかフランス語で挨拶すると、トリスタンさんは
『おおっ! 素晴らしいフランス語ですね!! 小鳥の囀りのような美しい声で私の名前を呼んでくれて嬉しいです』
と褒めてくれる。
といっても後半はあまり分からなくて、すぐにエヴァンさんが通訳してくれたんだけど。
ふふっ。こんなに褒めてくれると照れちゃうな。
エヴァンさんはトリスタンさんとこれからの撮影場所について話をしてから、僕に教えてくれた。
「ミヅキたちと撮影場所が被らないように決めていたんだ。私たちは大階段からの撮影にしよう」
「大階段って、さっきの入り口の近くにあった階段ですか?」
「ああ、そうだ。ユヅルの長いトレーンが一番映えるからな」
「トレーン?」
「そのドレスの裾のことだよ。昔はトレーンが長ければ長いほど身分が高く、そして美しさの象徴だと言われていたんだ」
「だからこんなに長いんですか?」
「ああ、ユヅルは私の花嫁だからな。世界で一番美しい花嫁にぴったりのトレーンだろう?」
満足そうに話すエヴァンさんを見て、僕も嬉しくなっていた。
世界で一番美しい花嫁……まさか自分がそんなことを言われる日が来るなんて……母さんに似て良かったのかも。
「わぁーっ、エヴァンさん! かっこ良い!!!」
椅子に座ってエヴァンさんの準備が整うのを待っていると、あっという間に準備を終えたらしいエヴァンさんがカーテンの向こうから出てきた。
僕の目の前に現れたのは、本物の王子さまみたいな格好をしたエヴァンさん。
「これ、結婚式用の服ですか?」
「これはロレーヌ家当主だけが着ることを許されている伝統的な宮廷服だよ。この服を着た私といるだけで、ユヅルはロレーヌ家当主の伴侶として認められるんだ」
「うわぁ、すごい服なんですね!! 本当にかっこ良いです!」
本当にあまりの格好良さに魅入ってしまうほどだ。
「ユヅルがそんなに気に入ってくれて嬉しいよ。ならば、今日はたっぷりと撮影してこの姿を残しておくとしよう」
「わぁー、嬉しいです!」
「じゃあ行こうか」
そういってエヴァンさんが取り出したのは、綺麗な箱の中に入っていたのは少しヒールのある白い靴。
ドレスに合わせて用意してくれたんだとすぐに分かったけれど、こんなにヒールのある靴を履いたことがない。
足元が覚束なさそうけど大丈夫かなと心配している僕を横目に、エヴァンさんは椅子に座っている僕の前にさっと片膝をついた。
そして、僕の片足を優しく膝に乗せ、その白い靴を履かせてくれた。
その王子さまのような仕草にまるで本当に自分がお姫さまになったかのような気分になってしまう。
なんだか照れるけど、嬉しい。
「わっ!」
履かせてもらった靴の吸い付くようなその履き心地に驚く。
まるで、足に合わせて作ったかのようになにもかもがぴったりだ。
「ふふっ。どうだ?」
「すごいです! この靴!」
「ヒールのある靴は慣れないだろうから、少しでも履きやすくなるようにユヅルの足の形に合わせて作ったんだ」
まさかそんなところまで考慮してくれているなんて思わなかった。
「ありがとうございます、エヴァンさん」
両足とも履かせてもらってゆっくりと立ちあがると、普段より数センチエヴァンさんが近くに見える。
それだけでなんとなく視界が広がったような気分にワクワクしている自分がいた。
早速一歩踏み出そうとすると、慣れないヒールと長いドレスに思わず転けそうになってしまった。
「わっ!」
「おっと!」
エヴァンさんがすかさず抱き止めてくれて、大事には至らずに済んだ。
「ユヅルのドレスは裾も長いから転ぶと大変だ。私が抱いて歩くとしよう」
エヴァンさんは僕の長いドレスの裾を手にかけてからさっと僕を抱き上げる。
ふわりと身体が浮いて、かっこいいエヴァンさんの顔が近づいてくる。
僕はそっとエヴァンさんの首に腕を回した。
「ああ、これでいいな」
嬉しそうなエヴァンさんと一緒に部屋を出ると、クララさんとたくさんの荷物を持った男性が待ち構えていた。
「エヴァンさん、あの人は?」
「ああ、紹介しておこう。彼は我々の専属カメラマンのトリスタンだよ。『トリスタン、今日は頼むぞ。特に私の可愛い伴侶の美しさに負けないような写真を撮ってくれ』」
『おおっ! なんて美しいんだ! こんなに美しい花嫁を見たのは生まれて初めてです!! ロレーヌ総帥、これは腕がな鳴りますね』「とりすたん、デス。よろしく、オネゴイ、シマス」
興奮気味にフランス語を話したと思ったら、今度は辿々しい日本語で挨拶してくれた。
どうやらトリスタンさんは日本語をあまり話せないみたい。
きっと一生懸命僕のために日本語の挨拶を覚えてくれたんだろう。
すごく優しい人だな。
『初めまして、トリスタンさん! 僕は弓弦と言います。今日はよろしくお願いします!』
拙いながらもなんとかフランス語で挨拶すると、トリスタンさんは
『おおっ! 素晴らしいフランス語ですね!! 小鳥の囀りのような美しい声で私の名前を呼んでくれて嬉しいです』
と褒めてくれる。
といっても後半はあまり分からなくて、すぐにエヴァンさんが通訳してくれたんだけど。
ふふっ。こんなに褒めてくれると照れちゃうな。
エヴァンさんはトリスタンさんとこれからの撮影場所について話をしてから、僕に教えてくれた。
「ミヅキたちと撮影場所が被らないように決めていたんだ。私たちは大階段からの撮影にしよう」
「大階段って、さっきの入り口の近くにあった階段ですか?」
「ああ、そうだ。ユヅルの長いトレーンが一番映えるからな」
「トレーン?」
「そのドレスの裾のことだよ。昔はトレーンが長ければ長いほど身分が高く、そして美しさの象徴だと言われていたんだ」
「だからこんなに長いんですか?」
「ああ、ユヅルは私の花嫁だからな。世界で一番美しい花嫁にぴったりのトレーンだろう?」
満足そうに話すエヴァンさんを見て、僕も嬉しくなっていた。
世界で一番美しい花嫁……まさか自分がそんなことを言われる日が来るなんて……母さんに似て良かったのかも。
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