100 / 200
Je t’aime
しおりを挟む
やっとドレスだ! と思っていると、クララさんは
「それでは私はしばらく外に出ておりますので、お召し替えが終わりましたらお声がけください」
と言って出ていった。
「てっきりクララさんが着せてくれるのかと思ってました」
「もちろん、普通はそうなんだが私が着替えさせると言っておいたんだ」
「えっ? エヴァンさんが?」
「ああ。着替えとはいえ、ユヅルのこの美しい肌を見て良いのは私だけだからな。クララには悪いが、そうしてもらった。元々、そのために私でもユヅルを着替えさせやすいように仕立てを頼んでいるからな。だから、心配しなくていい。私でも十分綺麗に着させられる」
「エヴァンさん……」
着替えにまで嫉妬するなんて……僕はどれだけ愛されているんだろう。
「嬉しいですよ。僕もちょっと恥ずかしいなと思ってたので、エヴァンさんだけなら安心です」
「――っ、ユヅルっ! ああ、ユヅルは本当に優しいな」
「ふふっ。優しいのはエヴァンさんですよ。僕のためにそんなにまでしてくれて……ドレスなんて着るのは生まれて初めてですから、正直着るのが難しそうだなって思ってたんです」
「一生に一度のウェディングドレスだから、かなり張り切って作ったんだ。じゃあ、ユヅル。こっちにおいで」
そう言って、ドレスの近くに呼び寄せられると、エヴァンさんは
「まずはこれからだな」
とドレスのそばに置かれていた小さな箱を持ってきた。
なんだろうと思っていると、中に入っていたのは折り畳まれた小さな布切れ。
「これ……」
手で取り出すと、柔らかな生地はするりと広がった。
「――っ!! も、しかして……」
「ああ、ドレス用の下着だ。それに見合うものをつけないと外からドレス以外のものが薄らでも見えると恥ずかしいからな」
今穿いている下着は、エヴァンさんが買ってくれたグレーのボクサーパンツ。
流石にこの下着だと、確かにドレスを着た時に透けて見えるかもしれない。
そうなるとせっかくのドレスが台無しだ。
それはよくわかるんだけど……流石にこの布きれだけみたいな下着はなんだか心許ない気がするのは気のせいか?
「女性なら、みんなこのような下着を普段でも身につけているんだぞ。ほら、持っていてあげるから服を脱いで」
そうなんだ……女の人ってみんなこんな薄い下着を日常的につけているんだ。
知らなかったな。
母さんの下着はどうだったっけ……うーん、よく覚えてないな。
そもそも洗濯は母さんの仕事だってやらせてもらえてなかったし。
その分、僕は掃除係だったんだけど……って、今はそんなことどうでもいい。
にっこりと微笑みながら、僕に着るのを促すエヴァンさんを見ながら、
「わ、わかりました……」
と言うしかなかった。
ドキドキしながら、服を脱いでいる時からずっとエヴァンさんの視線を感じる。
そして、全部脱ぎ終わってからドレス用の下着をエヴァンさんから受け取ろうと視線を向けると、
「ユヅル……お前は本当にどこもかしこも美しいな」
と恍惚とした表情で言われた。
そういえば、こんなに明るい場所で僕だけが裸になるなんてシチュエーションなかなかないよね。
全てを見尽くされているのに、それでもなんとなく恥ずかしい。
「あんまり、見ないで……」
「あ、ああ。悪い。あまりにも美しすぎて目が離せなかった」
そういうとエヴァンさんは気持ちを切り替えたのか、下着を穿くのを手伝ってくれた。
「わぁっ!」
ただの布切れっぽく見えていたのに、なんだかとても着心地がいい。
締め付けがないのに守ってくれているようなそんな感覚があって、心許ないと思っていたのが嘘みたいだ。
意外とこの下着クセになりそう。
「気に入ってくれたようだな?」
「はい。びっくりしましたけど、すごく着やすいです」
「ならよかった」
その後、薄い靴下みたいなやつを穿いて、それがズレないようにするためのガーターベルトとか言うのもつけてもらった。
すごいなぁ。
男ならパンツ一枚穿くだけで終わりなのに、女性って毎日こんなにいっぱいつけているんだ……。
なんか尊敬する。
上半身にも、ドレスが綺麗に見えるようにと胸から下の下着、ビスチェっていうらしい。
それをつけてもらった。
少しコルセットみたいで締められている感じがしたけれど、苦しくはなかった。
「これで下着は完成だ。ああ……っ、ユヅル。これだけでも十分美しいな」
「そんな……恥ずかしいですっ。早くドレス、着せてください」
「ああ、悪い」
エヴァンさんは手慣れた様子でドレスをハンガーから外すと、
「この中に入ってごらん」
と言われた。
その後も言われた通りに腕を入れ、後ろをキュッとリボンで締められるとようやくドレスの着替えが終わった。
「どうだ? ユヅル」
「――っ、す、すごくて……っ、言葉が出ません」
「ふふっ。私はユヅルの美しさに言葉が出ないよ。ああ、私の花嫁。
『Je t’aime pour toujours.』」
「エヴァンさん……『Tu es l’amour de ma vie. Je t’aime」
「――っ!!! ユヅルっ!!!」
エヴァンさんに初めて伝えた、僕の思いがたっぷりと詰まったこの言葉。
絶対に今日言おうと思ってずっと練習してた。
やっと綺麗な発音で言えたかな。
エヴァンさんが覚えてくれているか心配だったけど、エヴァンさんのこの反応を見るとあの時のことを覚えてくれているみたい。
ああ……本当に幸せだな。
「それでは私はしばらく外に出ておりますので、お召し替えが終わりましたらお声がけください」
と言って出ていった。
「てっきりクララさんが着せてくれるのかと思ってました」
「もちろん、普通はそうなんだが私が着替えさせると言っておいたんだ」
「えっ? エヴァンさんが?」
「ああ。着替えとはいえ、ユヅルのこの美しい肌を見て良いのは私だけだからな。クララには悪いが、そうしてもらった。元々、そのために私でもユヅルを着替えさせやすいように仕立てを頼んでいるからな。だから、心配しなくていい。私でも十分綺麗に着させられる」
「エヴァンさん……」
着替えにまで嫉妬するなんて……僕はどれだけ愛されているんだろう。
「嬉しいですよ。僕もちょっと恥ずかしいなと思ってたので、エヴァンさんだけなら安心です」
「――っ、ユヅルっ! ああ、ユヅルは本当に優しいな」
「ふふっ。優しいのはエヴァンさんですよ。僕のためにそんなにまでしてくれて……ドレスなんて着るのは生まれて初めてですから、正直着るのが難しそうだなって思ってたんです」
「一生に一度のウェディングドレスだから、かなり張り切って作ったんだ。じゃあ、ユヅル。こっちにおいで」
そう言って、ドレスの近くに呼び寄せられると、エヴァンさんは
「まずはこれからだな」
とドレスのそばに置かれていた小さな箱を持ってきた。
なんだろうと思っていると、中に入っていたのは折り畳まれた小さな布切れ。
「これ……」
手で取り出すと、柔らかな生地はするりと広がった。
「――っ!! も、しかして……」
「ああ、ドレス用の下着だ。それに見合うものをつけないと外からドレス以外のものが薄らでも見えると恥ずかしいからな」
今穿いている下着は、エヴァンさんが買ってくれたグレーのボクサーパンツ。
流石にこの下着だと、確かにドレスを着た時に透けて見えるかもしれない。
そうなるとせっかくのドレスが台無しだ。
それはよくわかるんだけど……流石にこの布きれだけみたいな下着はなんだか心許ない気がするのは気のせいか?
「女性なら、みんなこのような下着を普段でも身につけているんだぞ。ほら、持っていてあげるから服を脱いで」
そうなんだ……女の人ってみんなこんな薄い下着を日常的につけているんだ。
知らなかったな。
母さんの下着はどうだったっけ……うーん、よく覚えてないな。
そもそも洗濯は母さんの仕事だってやらせてもらえてなかったし。
その分、僕は掃除係だったんだけど……って、今はそんなことどうでもいい。
にっこりと微笑みながら、僕に着るのを促すエヴァンさんを見ながら、
「わ、わかりました……」
と言うしかなかった。
ドキドキしながら、服を脱いでいる時からずっとエヴァンさんの視線を感じる。
そして、全部脱ぎ終わってからドレス用の下着をエヴァンさんから受け取ろうと視線を向けると、
「ユヅル……お前は本当にどこもかしこも美しいな」
と恍惚とした表情で言われた。
そういえば、こんなに明るい場所で僕だけが裸になるなんてシチュエーションなかなかないよね。
全てを見尽くされているのに、それでもなんとなく恥ずかしい。
「あんまり、見ないで……」
「あ、ああ。悪い。あまりにも美しすぎて目が離せなかった」
そういうとエヴァンさんは気持ちを切り替えたのか、下着を穿くのを手伝ってくれた。
「わぁっ!」
ただの布切れっぽく見えていたのに、なんだかとても着心地がいい。
締め付けがないのに守ってくれているようなそんな感覚があって、心許ないと思っていたのが嘘みたいだ。
意外とこの下着クセになりそう。
「気に入ってくれたようだな?」
「はい。びっくりしましたけど、すごく着やすいです」
「ならよかった」
その後、薄い靴下みたいなやつを穿いて、それがズレないようにするためのガーターベルトとか言うのもつけてもらった。
すごいなぁ。
男ならパンツ一枚穿くだけで終わりなのに、女性って毎日こんなにいっぱいつけているんだ……。
なんか尊敬する。
上半身にも、ドレスが綺麗に見えるようにと胸から下の下着、ビスチェっていうらしい。
それをつけてもらった。
少しコルセットみたいで締められている感じがしたけれど、苦しくはなかった。
「これで下着は完成だ。ああ……っ、ユヅル。これだけでも十分美しいな」
「そんな……恥ずかしいですっ。早くドレス、着せてください」
「ああ、悪い」
エヴァンさんは手慣れた様子でドレスをハンガーから外すと、
「この中に入ってごらん」
と言われた。
その後も言われた通りに腕を入れ、後ろをキュッとリボンで締められるとようやくドレスの着替えが終わった。
「どうだ? ユヅル」
「――っ、す、すごくて……っ、言葉が出ません」
「ふふっ。私はユヅルの美しさに言葉が出ないよ。ああ、私の花嫁。
『Je t’aime pour toujours.』」
「エヴァンさん……『Tu es l’amour de ma vie. Je t’aime」
「――っ!!! ユヅルっ!!!」
エヴァンさんに初めて伝えた、僕の思いがたっぷりと詰まったこの言葉。
絶対に今日言おうと思ってずっと練習してた。
やっと綺麗な発音で言えたかな。
エヴァンさんが覚えてくれているか心配だったけど、エヴァンさんのこの反応を見るとあの時のことを覚えてくれているみたい。
ああ……本当に幸せだな。
97
お気に入りに追加
2,883
あなたにおすすめの小説
『別れても好きな人』
設樂理沙
ライト文芸
大好きな夫から好きな女性ができたから別れて欲しいと言われ、離婚した。
夫の想い人はとても美しく、自分など到底敵わないと思ったから。
ほんとうは別れたくなどなかった。
この先もずっと夫と一緒にいたかった……だけど世の中には
どうしようもないことがあるのだ。
自分で選択できないことがある。
悲しいけれど……。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
登場人物紹介
戸田貴理子 40才
戸田正義 44才
青木誠二 28才
嘉島優子 33才
小田聖也 35才
2024.4.11 ―― プロット作成日
💛イラストはAI生成自作画像
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
俺の義兄弟が凄いんだが
kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・
初投稿です。感想などお待ちしています。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる