天涯孤独になった僕をイケメン外国人が甘やかしてくれます

波木真帆

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花嫁の支度

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「クララ、支度を頼む」

「畏まりました」

クララさんを部屋の中に呼び寄せると、今日着る予定のドレスを見て

Qu’estなんて ce que c’estしいのか beauしら!』

とさっきまでの冷静な姿が一変して、その場で踊り出しそうなほどはしゃいでいた。
あまりにもさっきまでの姿と違いすぎてびっくりしてしまう。
でも、なんかこういうのっていいな。

「クララ、そんなに褒めてくれるのは嬉しいが、ユヅルが驚いている」

「――っ、し、失礼いたしました。こんなにも素敵なドレスを初めて拝見しましたので、つい……」

真っ赤な顔で必死に頭を下げるクララさんがなんだか可愛い。
まるで母さんを見ているみたいだ。
見た目も母さんくらいの年齢っぽいし、なんだか親近感が湧くな。

「エヴァンさんが僕のために作ってくれたドレスをそんなに褒めていただいて、とっても嬉しいです。今日はよろしくお願いします」

「はい。このドレスにぴったりなヘアメイクをさせていただきますね」

ふふっ。
やっぱりクララさん、いい人そう。

「では、こちらにどうぞ」

鏡の前に案内され、自分を見ると到底ドレスには似合いそうもない僕の短い髪が見える。

「あ、あの……こんな短い髪でもヘアセットできますか? やっぱり、えっとなんていうのかな……カツラ? つけ毛? とか必要ですか?」

結婚式を挙げることになって、少しでも長いほうがいいのかもと思い、整える程度で切ってはいなかったけれど、それでもイメージのお姫さまとは雲泥の差だ。
やっぱり自分の髪じゃ無理なのかな……?

別に合わないなら仕方がないけど、エヴァンさんと、そしてお父さんと同じ髪色のままがよかったなという気持ちが拭えない。

「もちろんご希望であれば、つけ毛もウィッグもご用意できますが、せっかくこんなにお美しい髪をお持ちなのですから、この髪でヘアセットさせていただきますよ」

「えっ! 本当ですかっ! わぁっ、お願いします!!」

思っても見ないクララさんの返答に僕は胸が高鳴っていた。

そこからのクララさんはまるで魔法使いのように見えた。

カールアイロンとかいうやつで僕の短い髪がふわふわになっていく。

「ユヅルさまの髪は本当にお美しいですね。髪色もユヅルさまの柔らかな印象にピッタリです」

「ありがとうございます。僕……エヴァンさんと出会うまではこの髪色でずっといじめられてたんです。だから、鏡見るたびに嫌だったんですけど……でも、エヴァンさんと、そしてお父さんと同じ色だって知って、それからこの髪が大好きになったんです。だから、クララさんに褒めてもらえてとっても嬉しいです」

「ユヅル……」

少し離れた場所で自分の支度をしていたエヴァンさんが、僕のそばに近づいてきてくれる。

「この髪、私と一緒だから好きになってくれたのか?」

「はい。だって、エヴァンさんとお揃いですもんね。お父さんの息子だって証でもあるし、僕……幸せです」

「ああ。私も幸せだよ」

僕たちがそんな会話をするのをクララさんはずっと嬉しそうに笑顔で聞いてくれていた。

「あっ! エヴァンさん、僕……あのティアラもつけたいです!」

「ああ、そうだったな。クララ、これをユヅルにつけてくれ」

「承知いたしました――ええっ!!! こ、これ……っ」

クララさんは渡されたケースを開け、中を見た途端、驚きの声を上げた。

「あ、し、失礼いたしました」

「いや、驚くのも無理はない。私がユヅルのために作った世界にたった一つのクラウンティアラだからな。どうだ? 素晴らしいだろう?」

「ええ。とっても素晴らしいです。こんな素敵なクラウンティアラを間近で拝見できるなんて……ありがとうございます」

クララさんは何度も感嘆のため息を漏らしながら、僕の頭上にティアラをつけてくれた。

ふわふわの髪とキラキラと輝くティアラがなんとも綺麗に合わさっている。

「素敵ーつ!!」

「ふふっ。本当にお美しいですよ。では続いてメイクをいたしましょう。と言っても、ユヅルさまは素肌が大変色白で綺麗でいらっしゃいますから、そちらを活かすようにナチュラルメイクにしておきますね」

元も色が白かったけど、こっちに来てあんまり外にも出ないせいか、さらに白くなった気がする。
でも日焼けしているより、白いほうがドレスには合いそうだからいいか。

こうやってみると、なんか本当に母さんそっくりになってきたな。
鏡に映る自分の姿を見ていると、なんだか母さんを見ているような気になってきた。

なんだか不思議な気分だな。

そんなことを思っている間に、目の周りやら、唇やらちょこちょこと何かされて、

「さぁ、できましたよ」

と見せられた時には、いつもの1.5倍くらいパッチリした目と、艶々の唇になっていて驚いた。

「こ、これが……僕?」

「はい。でも、ほとんど手を加えていないのですよ。元がお美しくていらっしゃるから」

「エヴァンさん、どう、ですか?」

「ユヅルっ! ああ、本当に美しいよ。いつも可愛らしいが、今日は一段と美しい」

「ふふっ。ありがとうございます」

「それでは、次はドレスをお召しいただきますので、ロレーヌ総帥。お手伝いいただけますか?」

「ああ、もちろんだ。任せてくれ!!」

クララさんの言葉に驚きつつも、エヴァンさんは何故か嬉しそうにやる気にみなぎっているように見えた。
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