天涯孤独になった僕をイケメン外国人が甘やかしてくれます

波木真帆

文字の大きさ
上 下
98 / 204

最高のドレス

しおりを挟む
「ミヅキたちの支度部屋はあの部屋、ユウキたちはその向かいの部屋。そして、我々は一番奥の部屋だ。『ミア、エミリー、クララ』

部屋の案内の後で、エヴァンさんが声をかけるとそれぞれの部屋の前に立っていた女性が駆け寄ってきた。

「彼女たちはこの日のために来てもらったヘアメイクのプロだ。必要であれば、声をかけてくれ。三人とも日常会話程度には日本語を理解しているから、意思疎通に問題はないはずだ。何か困ったことがあれば、内線でジュールを呼んだらいい。君たち、今日の新郎新夫だ。挨拶をしてくれ」

エヴァンさんの声に一番左に立っていた女性から挨拶を始めた。

「ミヅキさま、リオさまのお支度をお手伝いさせていただきますミアです。よろしくお願いします」

笑顔が優しそう。
彼女なら理央くんも大丈夫そうかな。

そっと理央くんに目を向けると、自分からミアさんに挨拶しているのが見える。
ふふっ。良かった。
理央くんも気に入ったみたいだ。

「ユウキさま、ソラさまのお支度をお手伝いさせていただきますエミリーです。よろしくお願いします」

うん、彼女も優しそうでいいな。
空良くんも安心しているみたい。
ちゃんと挨拶できてるし。

「ロレーヌ総帥、並びにユヅルさまのお支度をお手伝いさせていただきますクララでございます。どうぞよろしくお願い致します」

わぁ、この人すっごく丁寧だな。
やっぱりエヴァンさんが相手だと緊張しちゃうのかな。
なんだか僕も緊張してきちゃった。

「あ、あの、えっと……ユヅルです。今日はよろしくお願いします」

ちょっとモゴモゴしちゃったけど、なんとか挨拶もできたよね。

「ミヅキ、ユウキ。式までは2時間あるから有意義に使ってくれ」

「「はい。ありがとうございます」」

観月さんたちはそのままそれぞれの部屋に入っていった。

「ユヅル、私たちも中に入ろうか。クララ、声をかけるまで少し外にいてくれ」

「承知しました」

頭を下げるクララさんをその場に残し、エヴァンさんは僕の手を引いて部屋の中に入った。

「ユヅル、疲れていないか?」

「ふふっ。大丈夫です。今から楽しみでしかないですよ」

「なら、良かった。ユヅルに先に今日の衣装を見せておこう」

「わぁっ! 嬉しいですっ!!」

エヴァンさんは満面の笑みを浮かべながら、奥の部屋の扉を開けた。

部屋の中に部屋があるって、ここにきてだいぶ慣れたけど……考えてみたらすごいことだよね。
それだけ広いってことだもん。

扉を開けると、壁に大きな鏡が設置されていて思わず驚いてしまった。

「ここで全身いろいろな角度から自分の姿を確認できるぞ」

「すごいですね。こんなに自分の姿を見るなんて……緊張しそう」

「ふふっ。大丈夫だ。ユヅルは美しいのだからな」

「エヴァンさん……」

チュッと優しく唇が重なり合う。
エヴァンさんとキスすると、緊張がおさまっていくなんて……変な感じだ。
前はキスするだけでもドキドキして胸が震えていたのに。
でも……きっと、それだけずっと一緒にいるって証なんだろうな。


「ユヅル、これがユヅルのために私が仕立てた今日のためのドレスだ」

部屋を分けるように閉じられていたカーテンを開けると、

「わぁーっ!! すごいっ!!!」

ふわふわの生地がたっぷりと使われたそのドレスは腰からスカートにかけてふんわりと大きく膨らんでいて、本当に僕の頭の中にあるドレスのイメージにぴったりだった。

上半身のデザインは正直ドキドキしていた。
だって、僕は男だし、胸もないし、綺麗に着こなせるか心配だったけれど、薄いレースの生地が首まで覆い尽くしていて、袖も肘より少し長いくらいありそうだ。
サンタさんからのブレスレットも綺麗に見えるのがいい。

「エヴァンさんっ! 僕、このドレス気に入りました!! 首も腕も隠れてるから安心して着られそう」

「言っておくが、ユヅルが男でそれを隠したいからこんなデザインにしたのではないぞ。ユヅルの肌を極力見せないようにしたのは、私がミヅキたちにユヅルの肌を見られたくなかったからだ。ユヅルの肌は全て私だけのものだからな」

「エヴァンさん……」

「ユヅル、呆れたか? 一生に一度のドレスでもこんなに狭量な私を嫌になってはいないか?」

ああ、もうなんでエヴァンさんはこんなに可愛いんだろう。
いつもは頼り甲斐があって紳士的で、ものすごく大人なのに……。
僕のことになると途端に子どもっぽく独占してしまう。

でもね、僕……エヴァンさんが嫉妬してくれたり、独り占めしてくれたり……それがすごく嬉しくてたまらないんだ。
しおりを挟む
感想 166

あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

悩める文官のひとりごと

きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。 そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。 エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。 ムーンライト様にも掲載しております。 

一日だけの魔法

うりぼう
BL
一日だけの魔法をかけた。 彼が自分を好きになってくれる魔法。 禁忌とされている、たった一日しか持たない魔法。 彼は魔法にかかり、自分に夢中になってくれた。 俺の名を呼び、俺に微笑みかけ、俺だけを好きだと言ってくれる。 嬉しいはずなのに、これを望んでいたはずなのに…… ※いきなり始まりいきなり終わる ※エセファンタジー ※エセ魔法 ※二重人格もどき ※細かいツッコミはなしで

とある文官のひとりごと

きりか
BL
貧乏な弱小子爵家出身のノア・マキシム。 アシュリー王国の花形騎士団の文官として、日々頑張っているが、学生の頃からやたらと絡んでくるイケメン部隊長であるアベル・エメを大の苦手というか、天敵認定をしていた。しかし、ある日、父の借金が判明して…。 基本コメディで、少しだけシリアス? エチシーンところか、チュッどまりで申し訳ございません(土下座) ムーンライト様でも公開しております。

上手に啼いて

紺色橙
BL
■聡は10歳の初めての発情期の際、大輝に噛まれ番となった。それ以来関係を継続しているが、愛ではなく都合と情で続いている現状はそろそろ終わりが見えていた。 ■注意*独自オメガバース設定。■『それは愛か本能か』と同じ世界設定です。関係は一切なし。

成り行き番の溺愛生活

アオ
BL
タイトルそのままです 成り行きで番になってしまったら溺愛生活が待っていたというありきたりな話です 始めて投稿するので変なところが多々あると思いますがそこは勘弁してください オメガバースで独自の設定があるかもです 27歳×16歳のカップルです この小説の世界では法律上大丈夫です  オメガバの世界だからね それでもよければ読んでくださるとうれしいです

帰宅

pAp1Ko
BL
遊んでばかりいた養子の長男と実子の双子の次男たち。 双子を庇い、拐われた長男のその後のおはなし。 書きたいところだけ書いた。作者が読みたいだけです。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

処理中です...