88 / 206
père noëlからの贈り物
しおりを挟む
「わぁっ!」
真っ暗闇になった途端、僕は大きなものに包まれた。
その匂いにすぐにエヴァンさんだとわかる。
「大丈夫だよ、怖がらなくていい」
僕が真っ暗闇に怯えていると思ったのかもしれない。
確かに少し怖かったけれど、エヴァンさんがそばにいてくれるだけで僕は何も怖くなくなるんだ。
数分も経たないうちに大広間に電気が灯った。
「ついた!」
「あっ、サンタさんは?」
「あっ、いないっ!」
僕は理央くんと急いで庭の見える大きな窓に向かったけれど、そこにはあの橇もトナカイの姿もなく、あの大きな大きなクリスマスツリーだけがたくさんの飾り物と一緒に煌々と輝いていた。
「もう……帰っちゃったんだ……」
「そうだね、だってサンタさんは大忙しだもん。僕たちみたいにサンタさんに会いたがっている人のところに行かないとね!」
「あっ! そっか、そうだよね。僕たちだけのサンタさんじゃないもんね」
「うん。でも……会えて良かったね」
「うん!! 本当に嬉しかった!!」
理央くんはサンタさんからもらったプレゼントの箱を胸にぎゅっと抱きしめた。
僕と理央くんにとって、最初で最後のサンタさんからの贈り物。
僕……一生大切にする。
「ねぇ、弓弦くん! 理央くん! サンタさんからもらったプレゼント、開けてみようよ!!」
空良くんが目を輝かせて僕たちのそばに駆けてくる。
「うん、そうだね! 開けてみよう!」
僕たちはゆっくりと窓を閉め、暖炉の前に向かった。
「ユヅル、コートは脱いだほうがいい。汗をかくと風邪を引いてしまうぞ」
「あっ、ありがとうございます」
そっとコートを脱がしてもらっていたら、理央くんたちもみんな脱がしてもらっていた。
うん、やっぱりみんな一緒で優しいんだな。
「ユヅル、私にも『père noël』からの贈り物を見せてくれないか?」
「はい! やっぱりエヴァンさんも気になりますよね。サンタさんが何をくれたのかって」
「ははっ。まぁな」
暖炉の前に行くと
「ほら、こっちにおいで」
と、僕はエヴァンさんの胡座のなかに座るように言われて、後からぎゅっと抱きしめられて座った。
すると、理央くんや空良くん、佳都さんたちもみんな同じように後ろから抱きしめられて座っていた。
やっぱりみんなサンタさんからの贈り物が気になるから一緒にみたいんだろうな。
だって、エヴァンさんたちにはサンタさんからのプレゼントがなかったんだもんね。
あっ……そういえば、クリスマスツリーの下に置かれていたたくさんの贈り物もエヴァンさんたちのはなかった。
僕たちはプレゼント交換もして、いっぱいいろんな人たちからもらった上にサンタさんにまで貰ったっていうのに……。
「あの、エヴァンさん……」
「んっ? どうした?」
首を後ろに回して尋ねると、すぐ近くにエヴァンさんの顔が下りてくる。
このままキスでもしてしまいそうな距離感にドキドキしながら、
「あの……エヴァンさんは観月さんたちとプレゼント交換はしなくて良かったんですか?」
「はっ? えっ? ミヅキたちと? ど、どうして、そんなことを思ったんだ?」
「えっ? だって、僕たちばっかりプレゼント貰ってばかりだったなって……今更だけど、思ってしまって……」
「ふふっ。そうか。私たちがプレゼントを何ももらえてないと思って申し訳ないと思ったか?」
エヴァンさんの言葉に頷くと、エヴァンさんは笑って僕の頭を優しく撫でてくれた。
「プレゼントならもうたくさん貰っているから心配しなくていい」
「えっ? たくさん?」
「ああ、この屋敷ではもう何年もクリスパスパーティーなどしたことがなかったし、こうやって皆で集まることもなかった。クリスマスはただのんびりと過ごすだけの時間だったんだ。だが、今年はユヅルのおかげで、こんなにも楽しいパーティーができた。友人と酒を酌み交わし、ユヅルたちの嬉しそうな表情を見て、それにユヅルたちの演奏も聞けた。ユヅルのおかげで私の人生はこんなにも明るく幸せなものになったんだ。これ以上の贈り物はないだろう?」
「エヴァンさん……」
「贈り物は形あるものだけじゃない。こういう思い出の一つ一つが素晴らしい贈り物なんだよ。だから気にしなくていい」
エヴァンさんのいう通りだ。
たくさんの贈り物に囲まれてとっても嬉しかった。
その気持ちに嘘はない。
でも、それも全てお友達と楽しい時間を共有できたからこそだ。
「さぁ、素敵な思い出の一つ、père noëlからの贈り物を見せてくれ」
「はい」
サンタさんから貰った小さな箱の包装紙に手をかけると、理央くんもゆっくりと包装紙を開け始めた。
一体なんだろう?
ドキドキしながら、箱を開けると、
「わぁっ!! 綺麗っ!!!」
「ほぉっ、これは美しいな」
中には細くて綺麗な鎖に宝石が付いているアクセサリーだった。
「エヴァンさん、これ……」
「ああ、どうやらブレスレットのようだな。手を出してごらん、私がつけてあげよう」
「は、はい」
僕が左手を差し出すとエヴァンさんは嬉しそうにそれをつけてくれた。
「père noëlからの贈り物は一生物だ。これは肌身離さずつけておくんだぞ」
「はい、わかりました」
僕は左の手首にキラキラと輝くブレスレットを心ときめかせながらしばらく魅入っていた。
真っ暗闇になった途端、僕は大きなものに包まれた。
その匂いにすぐにエヴァンさんだとわかる。
「大丈夫だよ、怖がらなくていい」
僕が真っ暗闇に怯えていると思ったのかもしれない。
確かに少し怖かったけれど、エヴァンさんがそばにいてくれるだけで僕は何も怖くなくなるんだ。
数分も経たないうちに大広間に電気が灯った。
「ついた!」
「あっ、サンタさんは?」
「あっ、いないっ!」
僕は理央くんと急いで庭の見える大きな窓に向かったけれど、そこにはあの橇もトナカイの姿もなく、あの大きな大きなクリスマスツリーだけがたくさんの飾り物と一緒に煌々と輝いていた。
「もう……帰っちゃったんだ……」
「そうだね、だってサンタさんは大忙しだもん。僕たちみたいにサンタさんに会いたがっている人のところに行かないとね!」
「あっ! そっか、そうだよね。僕たちだけのサンタさんじゃないもんね」
「うん。でも……会えて良かったね」
「うん!! 本当に嬉しかった!!」
理央くんはサンタさんからもらったプレゼントの箱を胸にぎゅっと抱きしめた。
僕と理央くんにとって、最初で最後のサンタさんからの贈り物。
僕……一生大切にする。
「ねぇ、弓弦くん! 理央くん! サンタさんからもらったプレゼント、開けてみようよ!!」
空良くんが目を輝かせて僕たちのそばに駆けてくる。
「うん、そうだね! 開けてみよう!」
僕たちはゆっくりと窓を閉め、暖炉の前に向かった。
「ユヅル、コートは脱いだほうがいい。汗をかくと風邪を引いてしまうぞ」
「あっ、ありがとうございます」
そっとコートを脱がしてもらっていたら、理央くんたちもみんな脱がしてもらっていた。
うん、やっぱりみんな一緒で優しいんだな。
「ユヅル、私にも『père noël』からの贈り物を見せてくれないか?」
「はい! やっぱりエヴァンさんも気になりますよね。サンタさんが何をくれたのかって」
「ははっ。まぁな」
暖炉の前に行くと
「ほら、こっちにおいで」
と、僕はエヴァンさんの胡座のなかに座るように言われて、後からぎゅっと抱きしめられて座った。
すると、理央くんや空良くん、佳都さんたちもみんな同じように後ろから抱きしめられて座っていた。
やっぱりみんなサンタさんからの贈り物が気になるから一緒にみたいんだろうな。
だって、エヴァンさんたちにはサンタさんからのプレゼントがなかったんだもんね。
あっ……そういえば、クリスマスツリーの下に置かれていたたくさんの贈り物もエヴァンさんたちのはなかった。
僕たちはプレゼント交換もして、いっぱいいろんな人たちからもらった上にサンタさんにまで貰ったっていうのに……。
「あの、エヴァンさん……」
「んっ? どうした?」
首を後ろに回して尋ねると、すぐ近くにエヴァンさんの顔が下りてくる。
このままキスでもしてしまいそうな距離感にドキドキしながら、
「あの……エヴァンさんは観月さんたちとプレゼント交換はしなくて良かったんですか?」
「はっ? えっ? ミヅキたちと? ど、どうして、そんなことを思ったんだ?」
「えっ? だって、僕たちばっかりプレゼント貰ってばかりだったなって……今更だけど、思ってしまって……」
「ふふっ。そうか。私たちがプレゼントを何ももらえてないと思って申し訳ないと思ったか?」
エヴァンさんの言葉に頷くと、エヴァンさんは笑って僕の頭を優しく撫でてくれた。
「プレゼントならもうたくさん貰っているから心配しなくていい」
「えっ? たくさん?」
「ああ、この屋敷ではもう何年もクリスパスパーティーなどしたことがなかったし、こうやって皆で集まることもなかった。クリスマスはただのんびりと過ごすだけの時間だったんだ。だが、今年はユヅルのおかげで、こんなにも楽しいパーティーができた。友人と酒を酌み交わし、ユヅルたちの嬉しそうな表情を見て、それにユヅルたちの演奏も聞けた。ユヅルのおかげで私の人生はこんなにも明るく幸せなものになったんだ。これ以上の贈り物はないだろう?」
「エヴァンさん……」
「贈り物は形あるものだけじゃない。こういう思い出の一つ一つが素晴らしい贈り物なんだよ。だから気にしなくていい」
エヴァンさんのいう通りだ。
たくさんの贈り物に囲まれてとっても嬉しかった。
その気持ちに嘘はない。
でも、それも全てお友達と楽しい時間を共有できたからこそだ。
「さぁ、素敵な思い出の一つ、père noëlからの贈り物を見せてくれ」
「はい」
サンタさんから貰った小さな箱の包装紙に手をかけると、理央くんもゆっくりと包装紙を開け始めた。
一体なんだろう?
ドキドキしながら、箱を開けると、
「わぁっ!! 綺麗っ!!!」
「ほぉっ、これは美しいな」
中には細くて綺麗な鎖に宝石が付いているアクセサリーだった。
「エヴァンさん、これ……」
「ああ、どうやらブレスレットのようだな。手を出してごらん、私がつけてあげよう」
「は、はい」
僕が左手を差し出すとエヴァンさんは嬉しそうにそれをつけてくれた。
「père noëlからの贈り物は一生物だ。これは肌身離さずつけておくんだぞ」
「はい、わかりました」
僕は左の手首にキラキラと輝くブレスレットを心ときめかせながらしばらく魅入っていた。
149
お気に入りに追加
2,940
あなたにおすすめの小説
君への気持ちが冷めたと夫から言われたので家出をしたら、知らぬ間に懸賞金が掛けられていました
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【え? これってまさか私のこと?】
ソフィア・ヴァイロンは貧しい子爵家の令嬢だった。町の小さな雑貨店で働き、常連の男性客に密かに恋心を抱いていたある日のこと。父親から借金返済の為に結婚話を持ち掛けられる。断ることが出来ず、諦めて見合いをしようとした矢先、別の相手から結婚を申し込まれた。その相手こそ彼女が密かに思いを寄せていた青年だった。そこでソフィアは喜んで受け入れたのだが、望んでいたような結婚生活では無かった。そんなある日、「君への気持ちが冷めたと」と夫から告げられる。ショックを受けたソフィアは家出をして行方をくらませたのだが、夫から懸賞金を掛けられていたことを知る――
※他サイトでも投稿中
悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
*
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)

それ以上近づかないでください。
ぽぽ
BL
「誰がお前のことなんか好きになると思うの?」
地味で冴えない小鳥遊凪は、ある日、憧れの人である蓮見馨に不意に告白をしてしまい、2人は付き合うことになった。
まるで夢のような時間――しかし、その恋はある出来事をきっかけに儚くも終わりを迎える。
転校を機に、馨のことを全てを忘れようと決意した凪。もう二度と彼と会うことはないはずだった。
ところが、あることがきっかけで馨と再会することになる。
「本当に可愛い。」
「凪、俺以外のやつと話していいんだっけ?」
かつてとはまるで別人のような馨の様子に戸惑う凪。
「お願いだから、僕にもう近づかないで」
【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。
桜月夜
BL
前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。
思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。
夫から「用済み」と言われ追い出されましたけれども
神々廻
恋愛
2人でいつも通り朝食をとっていたら、「お前はもう用済みだ。門の前に最低限の荷物をまとめさせた。朝食をとったら出ていけ」
と言われてしまいました。夫とは恋愛結婚だと思っていたのですが違ったようです。
大人しく出ていきますが、後悔しないで下さいね。
文字数が少ないのでサクッと読めます。お気に入り登録、コメントください!


【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる