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père noëlからの贈り物

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「わぁっ!」

真っ暗闇になった途端、僕は大きなものに包まれた。
その匂いにすぐにエヴァンさんだとわかる。

「大丈夫だよ、怖がらなくていい」

僕が真っ暗闇に怯えていると思ったのかもしれない。
確かに少し怖かったけれど、エヴァンさんがそばにいてくれるだけで僕は何も怖くなくなるんだ。

数分も経たないうちに大広間に電気が灯った。

「ついた!」

「あっ、サンタさんは?」

「あっ、いないっ!」

僕は理央くんと急いで庭の見える大きな窓に向かったけれど、そこにはあの橇もトナカイの姿もなく、あの大きな大きなクリスマスツリーだけがたくさんの飾り物と一緒に煌々と輝いていた。

「もう……帰っちゃったんだ……」

「そうだね、だってサンタさんは大忙しだもん。僕たちみたいにサンタさんに会いたがっている人のところに行かないとね!」

「あっ! そっか、そうだよね。僕たちだけのサンタさんじゃないもんね」

「うん。でも……会えて良かったね」

「うん!! 本当に嬉しかった!!」

理央くんはサンタさんからもらったプレゼントの箱を胸にぎゅっと抱きしめた。

僕と理央くんにとって、最初で最後のサンタさんからの贈り物。
僕……一生大切にする。

「ねぇ、弓弦くん! 理央くん! サンタさんからもらったプレゼント、開けてみようよ!!」

空良くんが目を輝かせて僕たちのそばに駆けてくる。

「うん、そうだね! 開けてみよう!」

僕たちはゆっくりと窓を閉め、暖炉の前に向かった。

「ユヅル、コートは脱いだほうがいい。汗をかくと風邪を引いてしまうぞ」

「あっ、ありがとうございます」

そっとコートを脱がしてもらっていたら、理央くんたちもみんな脱がしてもらっていた。
うん、やっぱりみんな一緒で優しいんだな。

「ユヅル、私にも『père noël』からの贈り物を見せてくれないか?」

「はい! やっぱりエヴァンさんも気になりますよね。サンタさんが何をくれたのかって」

「ははっ。まぁな」

暖炉の前に行くと

「ほら、こっちにおいで」

と、僕はエヴァンさんの胡座のなかに座るように言われて、後からぎゅっと抱きしめられて座った。
すると、理央くんや空良くん、佳都さんたちもみんな同じように後ろから抱きしめられて座っていた。

やっぱりみんなサンタさんからの贈り物が気になるから一緒にみたいんだろうな。

だって、エヴァンさんたちにはサンタさんからのプレゼントがなかったんだもんね。
あっ……そういえば、クリスマスツリーの下に置かれていたたくさんの贈り物もエヴァンさんたちのはなかった。

僕たちはプレゼント交換もして、いっぱいいろんな人たちからもらった上にサンタさんにまで貰ったっていうのに……。

「あの、エヴァンさん……」

「んっ? どうした?」

首を後ろに回して尋ねると、すぐ近くにエヴァンさんの顔が下りてくる。
このままキスでもしてしまいそうな距離感にドキドキしながら、

「あの……エヴァンさんは観月さんたちとプレゼント交換はしなくて良かったんですか?」

「はっ? えっ? ミヅキたちと? ど、どうして、そんなことを思ったんだ?」

「えっ? だって、僕たちばっかりプレゼント貰ってばかりだったなって……今更だけど、思ってしまって……」

「ふふっ。そうか。私たちがプレゼントを何ももらえてないと思って申し訳ないと思ったか?」

エヴァンさんの言葉に頷くと、エヴァンさんは笑って僕の頭を優しく撫でてくれた。

「プレゼントならもうたくさん貰っているから心配しなくていい」

「えっ? たくさん?」

「ああ、この屋敷ではもう何年もクリスパスパーティーなどしたことがなかったし、こうやって皆で集まることもなかった。クリスマスはただのんびりと過ごすだけの時間だったんだ。だが、今年はユヅルのおかげで、こんなにも楽しいパーティーができた。友人と酒を酌み交わし、ユヅルたちの嬉しそうな表情を見て、それにユヅルたちの演奏も聞けた。ユヅルのおかげで私の人生はこんなにも明るく幸せなものになったんだ。これ以上の贈り物はないだろう?」

「エヴァンさん……」

「贈り物は形あるものだけじゃない。こういう思い出の一つ一つが素晴らしい贈り物なんだよ。だから気にしなくていい」

エヴァンさんのいう通りだ。
たくさんの贈り物に囲まれてとっても嬉しかった。
その気持ちに嘘はない。
でも、それも全てお友達と楽しい時間を共有できたからこそだ。

「さぁ、素敵な思い出の一つ、père noëlからの贈り物を見せてくれ」

「はい」

サンタさんから貰った小さな箱の包装紙に手をかけると、理央くんもゆっくりと包装紙を開け始めた。

一体なんだろう?

ドキドキしながら、箱を開けると、

「わぁっ!! 綺麗っ!!!」

「ほぉっ、これは美しいな」

中には細くて綺麗な鎖に宝石が付いているアクセサリーだった。

「エヴァンさん、これ……」

「ああ、どうやらブレスレットのようだな。手を出してごらん、私がつけてあげよう」

「は、はい」

僕が左手を差し出すとエヴァンさんは嬉しそうにそれをつけてくれた。

「père noëlからの贈り物は一生物だ。これは肌身離さずつけておくんだぞ」

「はい、わかりました」

僕は左の手首にキラキラと輝くブレスレットを心ときめかせながらしばらく魅入っていた。
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