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幸せになれる贈り物

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「シュウゴ、素晴らしい贈り物だね! 僕もニコラの演奏を聴くことができて嬉しいよ。しかも、ユヅルのママも一緒だなんて! ユヅルっ、ユヅルのママも素晴らしい演奏家だったんだね!」

ミシェルさんとセルジュさんが興奮した様子で近づいてきた。

そういえば、ミシェルさんがこの家に来た時にはお父さんはもう亡くなってたって言ってたもんね。
ロレーヌ家のことだから他にも映像はあるんだろうけど、母さんと一緒に演奏しているのが残っているのはきっとこれだけ。
それを秀吾さんのお母さんが持っていてくれたなんて……なんていう偶然……いや、運命なんだろう……。

「シュウゴの贈り物のおかげで、ほら、見てごらん。ジュールが涙を流して喜んでいるよ」

パピーに視線を向けるとスクリーンに目を向けたまま、ハンカチで涙を拭っている様子が見える。

すると、秀吾さんは急いでパピーの元に駆けて行って何やら話をし始めた。

少し遠くにいるから何を話しているかまでは聞き取れないけれど、パピーは本当に嬉しそうで僕もまた涙が滲んできた。

「ユヅル」

「あ、ありがとう。エヴァンさん」

出されたハンカチで涙を拭いながら、

「パピーがすごく嬉しそうで……」

というと、僕を優しく抱きしめてくれた。

「ああ、そうだな。ここにいる者の中でニコラとアマネが過ごした日々を一番長く知っているのはジュールだけだからな。その時の二人の思い出が甦ったのだろう。本当にシュウゴは素晴らしい贈り物をしてくれた」

「みんなが幸せになれる贈り物って、素敵ですね」

「ああ、そうだな。贈り物というのは値段が高ければいいというものではない。相手のことを思い浮かべて、相手が喜ぶ姿を想像する。そこからもう贈り物が始まってるんだ。きっと、ユヅルからの贈り物もみんな喜んでくれると思うぞ。ユヅルが一生懸命みんなのために選んでいたからな」

「――っ、エヴァンさん……はい、そうですね! 僕、みんなにプレゼントを渡してきます!!」

「ああ、行っておいで」

エヴァンさんは、僕がみんなへのプレゼントを渡すのに躊躇していたことを気づいていたんだ。

やっぱりエヴァンさんにはなんの隠し事もできないな。
それくらい僕のことを見てくれているというだけで、心の中がすごく暖かくなって嬉しくなる。

「みんな、今度は僕からのプレゼントを渡すよ!」

僕が声を上げると、みんなが集まってくれる。

「わぁー! 楽しみ!」

「これは理央くんと空良くん。色違いでお揃いにしたんだ」

「空良くんとお揃い? 嬉しいっ!!」

「ふふっ。僕も嬉しいっ!」

理央くんと空良くんは向かい合わせになって、ゆっくり包装紙を開けていく。
ふふっ。気に入ってくれるかな。

「これは佳都さん、こっちは秀吾さんの」

「ありがとう! なんだろう、なんかドキドキする」

やっぱり嬉しそうに包装紙を開けてくれるのを見るのって、こっちまで嬉しくなるなぁ。

「ミシェルさんのはこれだよ」

「あっ、これ。セルジュがいつもプレゼントしてくれるお店のだ!」

「そうなんです! 僕もこの馬車のマークがミシェルさんのだ! って思ってそこで選んじゃいました。持ってなかったらいいんですけど……」

「うわー、なんだろう。楽しみだな」

きっとミシェルさんは持ってないはずって、エヴァンさんが言ってくれたから大丈夫だとは思うけど、でもやっぱりドキドキしちゃうな。

「あと、これはリュカの。あの、僕が一番お世話になってるのがリュカで……リュカのおかげでパピーとも少しずつ話せるようになったし……本当にリュカがいてくれてよかった。いつもありがとう」

「ユヅルさま……」

「『さま』は無しでって言ったよ。僕たち、お友達だよね?」

「ユヅル……ええ、そうですね。私にとって大切な友人です」

「ふふっ。リュカ……好きっ!」

「ええ、私も、好きですよ」

ギュッと抱きしめられた感覚がエヴァンさんのものとは全然違っていたけれど、でも、すごく安心したのはいつも見守られているような感じがしたからかな。

「わっ!!」

そんなことを思っていると、突然リュカから離されて温かいものに抱きしめられた。
そのしっくりくる感覚にそれがすぐにエヴァンさんだと気づいた。

「え、エヴァンさん……びっくりした……どうしたんですか?」

「リュカに愛を囁いていただろう? しかも私の目の前で抱き合うなどもってのほかだな」

「えっ、愛を囁くって……いつものお礼を伝えただけで……」

「でも、好きと言っていただろう?」

あ、それは確かに言ってたけど……でもその好きはエヴァンさんに向ける好きとは全然違うんだけど……。

「あの、違いますよ。その好きは、好きじゃなくて……えっと……」

なんだか訳がわからなくなってきた。
でもとにかく言いたいことは一つだけ。

「好きなものはいっぱいあっても、僕がこの世で大好きなのはエヴァンさんだけですから!」

大声で叫ぶと、大広間中がしんと静まり返った。

一気に顔が赤くなる僕とは対照的にエヴァンさんは嬉しそうに僕にキスをした。
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