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パーティーの始まり

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リュカとジョルジュさん。
秀吾さんと周防さん。
ミシェルさんとセルジュさん。

次々にコンサバトリーに集まってきたけれど、佳都さんと綾城さんだけがなかなか下りてこない。

「あいつら、疲れすぎて寝ているんじゃないか?」

「ああ、確かにそうかもしれないな」

「俺じゃなくて、あいつのほうが鬼畜だってこと、わかったろ?」

「いや、それはそうとは……」

「凌也さん、キチク、ってなんですか?」

「えっ? 理央は知らなくていいんだよ。おいっ、悠木。余計なこと言うな!」

悠木さんと観月さん、理央くんがそんな話をしているのを遠目で聞きながら、僕もキチクってどういう意味だろうと考えていたけれど、結局よくわからなかった。

後でエヴァンさんに聞いてみようかな。
もしかしたら英語とか、フランス語とかだったりするのかもしれないし。

「ユヅル、ぼーっとしてどうしたんだ? 疲れたか?」

「ううん。なんでもないです。大丈夫」

「そうか? アヤシロたちが揃ったらクリスマスパーティーを始めるからな。大広間の方に移動するぞ」

「わぁ! あの準備してた部屋にやっと入れるんですね。楽しみ!」

もう1ヶ月以上前から、お屋敷の奥にある広い大広間にクリスマスパーティーの準備が始められていて、僕は当日まで立ち入り禁止になっていたんだ。
パピーたちが白い布で隠したものを次々と部屋に運び入れていて、毎日ワクワクしていた

あの部屋の中がどんなふうになっているのか、全く想像もつかないけれど楽しみなんだ。


それからしばらくして、佳都さんと綾城さんがコンサバトリーにやってきた。

「悪い、待たせたか?」

「いや、大丈夫だ。ここでのんびりしてたから」

エヴァンさんがそういうと、綾城さんはほっとしたように笑っていた。

「佳都さん、これからクリスマスパーティーの会場に案内しますよ!」

「わぁ! 楽しみ!」

「空良くんたちも行こう!」

「わぁーいっ!」

「僕、ずっと楽しみにしてたんだ!!」

空良くんも理央くんも嬉しそう。
特に理央くんはクリスマス自体も知らないんだっけ。

初めてのクリスマスパーティー、楽しんでもらえるといいな。


『旦那さま。fête dクリスマスe Noëlパーティーの準備が整いました』

『そうか、ありがとう。じゃあ、みんなを大広間に案内してくれ』

『承知しました』

「みな、さま。おおひろま、に、ごあん、あい、します」

『わぁ! パピー、すごいっ!!』

今回のために日本語を覚えてくれたパピー。
それに僕がフランス語で返す逆転現象に思わず笑ってしまう。

辿々しい日本語だけど、すっごく嬉しく感じるから、僕がここにきた時一生懸命話してたフランス語も、きっとそう言うふうに思ってくれてたんだろうな。
ふふっ、本当に嬉しい。

『ふふっ。喜んでいただけて嬉しいです』

『Merci,papy』

僕がパピーと笑い合っていると、

『めるしぃ、ぱぴぃ』

と可愛らしい声が聞こえた。
理央くんと空良くんがパピーにお礼を言ってくれたんだ。

『おおっ、なんて可愛らしい。angeのようですね』

「あんじゅ?」

「理央、天使のことだよ。二人が天使みたいに可愛いって言ってるんだ」

知らなかったけど、観月さんもフランス語わかるんだ。
すごいなぁ。


「じゃあ、大広間に行こうか」

エヴァンさんの声で、みんなで大広間に移動する。
その間も僕は浮かれっぱなしだ。

一体どんなふうになってるんだろう。


大きな扉の前でドキドキしていると、パピーとジョルジュさんが扉を開けてくれた。

「わぁーーーーっ!!!!!! すごいっ、すごいっ!!!!!!」

目の前に広がるとんでもない光景になかなか一歩が踏み出せない。

「ふふっ。姫たちが中に入れないようだから、エスコートして入ろうか」

エヴァンさんがそう提案し、僕にさっと手を差し出した。

これ、本で読んだことある。

左手を置くんだっけ。
ドキドキしながら、エヴァンさんの右手にそっと左手を乗せると、エヴァンさんは嬉しそうに笑って中へ進んだ。
後ろから理央くんたちもエスコートされながら次々に進んでくる。
ふふっ、こういうの楽しいな。

大広間の奥にある大きな大きなクリスマスツリーの下にはとんでもない量の箱が重ねられている。
それもすごく気になるけれど、でそれよりも僕は、煌びやかに飾られたこの大きなツリーに釘付けだ。

「エヴァンさん、このおっきなツリー……本物の木?」

「ああ、もちろんそうだよ。本物でないクリスマスツリーなんてありえないだろう? 全部本物だよ」

あっ、そうなんだ。
知らなかった。

そうか……商店街とかに置いてあった、あのツリーも実は本物だったんだな。

「後でもう一つツリーが出てくるからな」

エヴァンさんに耳元でそう囁かれて驚いてしまう。

「えっ? まだあるの?」

「ああ。だけど、みんなには秘密だ。驚かせてやろう」

「わっ、楽しみ!」

僕は大きな大きなツリーを見上げながら、これから始まるクリスマスパーティーに興奮が止まらなかった。
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