天涯孤独になった僕をイケメン外国人が甘やかしてくれます

波木真帆

文字の大きさ
上 下
67 / 204

サプライズまでもう少し

しおりを挟む
「待たせちゃってごめんなさい」

「ふふっ。大丈夫。調弦してウォーミングアップしてたから」

「僕もすぐにやっちゃいますね」

「慌てなくていいよ」

ミシェルさんの言葉に安心しながら、ヴァイオリンケースからあのストラディヴァリウスを取り出した。
今朝も練習してたから大丈夫だと思うけど、弾く前に調弦するのは癖というより、ヴァイオリンを弾く時の大事なルーティーンの一つだ。
これをすることで緊張もほぐれるし、何よりも音の状態を確かめるのには大事なことだから。

僕の調弦とウォーミングアップが終わるのを待ってくれていたミシェルさんに

「お待たせしました」

と声をかけると、嬉しそうに笑顔を見せてくれた。

「ふふっ。やっぱりここでユヅルと弾けるって嬉しいね」

「はい。僕もすっごく楽しみです」

「じゃあ、はじめよっか」

リュカとパピーはすでに席に座って舞台に立つ僕たちを見守ってくれている。
それだけですっごくホッとするんだ。

今回、佳都さんから僕たちに指令があった演奏曲は

『Vive le venジングルベルt!』 と

『Douce nuiきよしt, sainte nuiこの夜t』 そして、

『Le Petit Renn赤鼻のe au nez rouトナカイge』 の三曲。

どれも日本ではクリスマスの定番曲。
クリスマスパーティーに縁がなかった僕でも耳にしていたくらいだから、きっと空良くんも理央くんも馴染みがあるはずだ。

知らない曲を聴くのも新たな感動があっていいものだけど、やっぱり最初は知っている曲の方がテンションも上がるし楽しいだろう。
それがわかっているからこそ、佳都さんはこれを指定したんだろうな。

エヴァンさんと知り合ってからヴァイオリンを演奏する機会が増えてきたとはいえ、高3になってからは勉強が忙しくて練習もサボり気味だった僕にもこの曲は聞き馴染みがあるからこそ弾きやすい。

きっと僕のことも考えてくれたんだと思うと、さすが佳都さんだなって思ってしまう。

プロのヴァイオリニストであるミシェルさんにはきっと物足りない演奏だろうけど、それでも嫌な顔ひとつしないで、僕に付き合って練習もしてくれて感謝しかない。

そんな思いを込めながら、ミシェルさんとの演奏を楽しんで三曲連続で弾き終わると、突然大きな拍手が鳴り響いた。

えっ?

驚きながらその拍手に視線を向けると、パピーとリュカがいた場所にいつの間にかエヴァンさんとセルジュさんがいるのが見えた。

Bravoブラヴォー!』

エヴァンさんとセルジュさんの口からその声が鳴り止まない。
気づけばパピーもリュカも叫んでる。

僕とミシェルさんは顔を見合わせながら、あまりの反響に驚いていると、

「本当に素晴らしい演奏だった。柔らかで優しい奥行きのある音を出すユヅルとまろやかな深みのある音を出すミシェルとの音が美しく重なって艶のある美しい音色を醸し出していたよ」

とエヴァンさんが嬉しそうに教えてくれた。

ああ、そうか……。
だからあんなにも心地よく弾けたんだ。

さすがプロのヴァイオリニストだな。
素人の僕を引き上げてくれるなんて……。

「こんなにエヴァンさんに褒めてもらえたのもミシェルさんのおかげです。ありがとうございます!」

嬉しくて興奮しながらお礼を伝えると、

「ふふっ。ユヅルのおかげだよ。僕も弾いててすっごく心地よくてずっと弾いていたいなって思ってたくらいだもん。きっと僕たちの音の相性がいいんだね」

と言ってくれた。

「音の相性……」

「うん。どんなに完璧な技巧を駆使しても、音がケンカしちゃう時ってあるんだよね。ユヅルにはそれがないからすごく楽しかったんだよ。ここにシュウゴが入るんだよね。どんな音になるのか楽しみだよ。多分きっといいマリアージュになるはずだよ」

「うん、そうだね。絶対そうだよ」

僕たちの演奏に佳都くんのピアノまで揃ったら一体どんなピアノ四重奏になるんだろう。
今からすっごく楽しみだ。

「ねぇ、ユヅル。エヴァンさんにあのこと・・・・は話してないよね?」

「もちろんだよ! だって、サプライズ、だもんね」

小声で話しかけられてそっと小声で返すと、

「ふふっ。リオくんとソラくんだけじゃなくて、エヴァンさんもセルジュもきっと驚くよ。それも楽しみだね」

といたずらっ子のような笑みを浮かべながら、パチンとウインクをしてみせた。

本番は明日の夜。
ああ、ドキドキしてきちゃったな。
しおりを挟む
感想 166

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

家族になろうか

わこ
BL
金持ち若社長に可愛がられる少年の話。 かつて自サイトに載せていたお話です。 表紙画像はぱくたそ様(www.pakutaso.com)よりお借りしています。

【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。

白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。 最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。 (同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!) (勘違いだよな? そうに決まってる!) 気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。

私の庇護欲を掻き立てるのです

まめ
BL
ぼんやりとした受けが、よく分からないうちに攻めに囲われていく話。

処理中です...