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ひとりが寂しくて……※
しおりを挟む「じゃあ、みんなには内緒だからね」
「うん、わかった。すっごく楽しみ!」
こういうの計画するのって、本当友達って感じがして楽しい。
あっちでは、文化祭とか僕以外の人たちで盛り上がってたもんな。
いつも僕は蚊帳の外だったっけ……。
「ユヅル、どうしたの?」
「ううん、なんでもないです。クリスマス……楽しみですね」
「うん、ここ最近、クリスマスにはセルジュと海外に行っていたから僕も久しぶりにフランスで過ごすんだよ」
「へぇー、そうなんですか。どこに行ったことあるんですか?」
「そうだなぁ……南の島が多いかな。フランスの冬は寒いから……」
「わぁーっ、素敵っ!」
きゃっきゃと話をしていると、
「なんだ? 相談は終わったのか?」
とエヴァンさんとセルジュさんが僕たちのそばにやってきた。
「ミシェルさんが南の島に行ったことがあるって……」
「ああ、その話か。ユヅルも行きたいなら連れて行くぞ」
サラリとそう言ってくれるエヴァンさんに驚いて、
「本当ですか?」
と聞き返すと、
「ああ、もちろん。南太平洋に我がロレーヌ家所有の島があるんだ。だから、いつでも行けるよ」
と笑顔で教えてくれた。
島を持ってるなんて……なんかもう異次元すぎて理解ができなくなってきちゃった。
茫然としていると、
「ユヅル、どうしたんだ?」
と心配そうに声をかけられる。
「島を持ってるなんて、びっくりしちゃって……」
「ああ、そんなことか。別に大したことはないよ。それよりもユヅルは泳げるのか?」
「あ、えっと海で泳いだことはないですけど……学校のプールでは泳げてました」
「学校に、プール?」
「はい。だいたい小学校や中学校には学校に一つプールがついてました」
「さすが島国だな。じゃあ、今度は南の島にでも遊びに行くか。暖かくて過ごしやすいぞ」
「わぁーっ! 嬉しいですっ!!」
日本のあの田舎に住んでいた僕が、今はフランスにいて、今度は南の島にも行けるなんて……。
毎日が楽しすぎておかしくなりそう。
ミシェルさんたちと別れ、部屋に戻るとすぐにエヴァンさんからのキスがきた。
「んんっ……んぅ……っ」
甘く柔らかなキスにすぐに力が抜けてしまう。
ゆっくりと唇が離され
「あの時の続きをしようか?」
と耳元で囁かれる。
その声にゾクゾクと身体を震わせながら頷くと、エヴァンさんは嬉しそうに笑って僕を寝室に連れて行った。
身体中にキスをされて、乳首を弄られて、昂ってしまったものをゆるゆると扱かれながら、エヴァンさんのおっきなモノに後ろを貫かれて……エヴァンさんの蜜を体内で受け止める。
お風呂場で身体を清められながら、また気持ちよくなってしまった僕の熱を放出するために、エヴァンさんがまた奥に挿入りこんでくる。
立ったまま後ろから抱きしめられて、僕が何度目かの蜜を放ったのを見て嬉しそうにエヴァンさんが僕の中に蜜を放つ。
ほぼ毎日同じようなことを繰り返しているけれど、慣れるどころか、毎回おかしくなりそうなほど気持ちが良くていつも立っていられなくなる。
いつかは意識を無くさずにいられたら……なんて、それが僕の目標だ。
ベッドで食事を摂り、歯磨きも何もかもお世話をしてもらっているうちにまた眠くなってきた。
お腹いっぱいになって眠くなるなんて、本当に子どもみたいだから必死に起きようとしていたんだけど
「ふふっ。ユヅル……そろそろ寝ようか」
と優しく声をかけられる。
「でも……もう少しエヴァンさんと話していたい……」
「ふふっ。かわいいな。じゃあ、私が物語でも話そうか」
「ふふっ。母さんみたいです。子どもの時はいつも絵本を読み聞かせしてくれて……懐かしいな」
「じゃあ、ユヅル。目を瞑って……私の声だけ耳を澄ませるんだ」
その言葉に僕はスーッと目を閉じた。
エヴァンさんの優しいフランス語が聞こえてくる。
『Il était une fois……ひとりの、青年がいました……。彼の名は、エヴァン・ロレーヌ。彼はお金も身分も何もかも手にしていましたが、ただ一つだけ持っていないものがありました。それは愛しい人。けれど彼は遠く離れた国でようやく本当の愛を手に入れたのです』
ああ、ずっと聞いていたいのに……。
我慢できないな。
僕はエヴァンさんの滑らかで美しいフランス語を聴きながら、眠ってしまっていた。
ふと目を覚ますと、いつも抱きしめてくれているはずのエヴァンさんの姿がない。
ベッドもエヴァンさんがいた場所は冷たくなっていて、もう離れて時間が経ってしまっているんだとわかった。
エヴァンさん……どこに行ったんだろう……。
目を覚ました時にエヴァンさんがいないのがこんなに寂しいとは思わなかった。
心にぽっかりと穴が空いてしまったような気持ちになって気づけば僕の目から涙がこぼれ落ちてしまっていた。
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