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ピクニックに行こう!
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「おいしいっ!!」
「ふふっ。よかった。シャルルが喜ぶな」
「このサックサクのクロワッサンもここで焼いてるんですか?」
「ああ、もちろんだ。ユヅルがクロワッサンが好きだと話しておいたから、今日はいつにも増して気合が入っているみたいだな」
こんな美味しいパンを家で食べられるなんて!!
シャルルさんって本当にすごいな。
美味しいフルーツもいっぱい食べてすっかりお腹いっぱい。
大満足の朝食を食べ終わった。
「ユヅル、今日はこのままベッドでゆっくり過ごすが、明日はニコラのところに行こうか」
「わぁ、明日早速行けるんですか?」
「ああ、さっき朝食を取りに行ったときにジュールが話していたよ。ニコラの墓にアマネを埋葬する許可が出たと」
「ニコラさんのお墓ってどんな場所にあるんですか?」
「同じパリ市内にあってね、緑豊かで広い公園みたいだよ。あのとき、日本の墓も見たが日本の墓場とは雰囲気が全然違うからきっと驚くだろう」
「へぇ、公園みたいな場所……それなら、母さんも好きそう。僕、母さんとよく公園にピクニックに行ってたんですよ」
懐かしいな。
春のお花見はもちろん、小春日和には秋桜を見に行ったりしてたっけ。
「それは楽しそうだな。なら、明日もそこでピクニックをするとしよう」
「いいんですか?」
「ああ、シャルルに食事を作ってもらおう。ユヅルは知ってるか? 今、フランスでは日本の『ベントー』が流行っているんだぞ」
「お弁当って元々、フランスにはなかったんですか?」
「そうだな、昼食はシンプルにバゲットのサンドイッチとスープなんかで終わらせることが多いから、日本で初めてあの色とりどりのベントーを見た時は驚いたな」
「そうなんですね……あっ、じゃあ僕明日お弁当作りたいです!」
「えっ? ユヅルがベントーを作ってくれるのか?」
「そんな大したものは作れないですけど……あっ、キッチンをお借りするのは難しいですか?」
この部屋にもキッチンはあるけれど、お湯を沸かしたりする専用みたいだし、お弁当を作るならもっとしっかりしたところを借りたほうがいいよね。
「いや、それは構わないが……そうか、ユヅルが作ってくれるのか……それは、楽しみだな」
「じゃあ、いいんですか?」
「ああ、後でジュールからシャルルに伝えておいてもらおう。食材は揃っていると思うが、一応必要なものを教えてくれ」
「わかりました。ああ、楽しみ。でも久しぶりだから失敗しそう」
「そんなこと気にしなくていい。ユヅルが作ってくれるのが嬉しいのだから……」
その後すぐに、エヴァンさんは寝室にジュールさんを呼んで朝食の片付けてもらった後でさっきのお弁当作りの話をしてくれた。
「ユヅル、問題ない。ユヅルの必要な食材も全て揃えておくそうだ」
「わぁー、よかった。あ、あの『めるしー、ぱぴー』」
『Avec plaisir!』
ものすごい笑顔でそう返されて、なんだかとても嬉しかった。
「エヴァンさん、今ジュールさんはなんて言ったんですか?」
「ああ、『ユヅルのためなら喜んで』って、そう言ったんだよ」
「わぁ、嬉しいです! 『あゔぇく ぷれずぃーる』で合ってますか?」
「ああ。ユヅルは耳がいいな。これならすぐにフランス語も覚えられそうだな。あ、そうそうジュールに対しては呼びかける時だけじゃなくて全て『Papy』でいいぞ。ジュールさんと呼ばれるのは寂しいらしい」
「あっ、そうなんですね。わかりました。えっと『ぱぴー』」
ぱぴーを見上げながら、そう呼ぶとぱぴーは嬉しそうに笑った。
まるで本当のおじいちゃんみたいな優しい微笑みだった。
翌日、朝からキッチン……というよりはレストランの厨房のようなキッチンを借りてお弁当作りを始めた。
厨房にはシェフのシャルルさんとぱぴー、そして、通訳兼保護者としてエヴァンさんがついててくれることになった。
だって、慣れないキッチンで言葉が通じないのは大変だもんね。
おにぎりを作りたくてお米をお願いしていたけれど、僕のうちでは買ったことのない高級な名前のお米が用意してあって驚いた。
流石に炊飯器はなかったけれど、お鍋で米を炊く方法は母さんに聞いてよく知っている。
おにぎりと卵焼きと唐揚げだけは上手に作れるようになっていて助かったな。
いつもは食事作りを母さんに任せてたけど、高校入ってお弁当だけは毎日作ってたんだよね。
って言ってもほとんどは夜ご飯の残りを詰めてたし、僕が作ってたのはおにぎりと卵焼きくらいだったけど……。
唐揚げだけは母さんの味を覚えたくて練習してた甲斐があったな。
まずはお米を研いで水に浸けている間に、唐揚げの下味をつけていく。
フランスでお醤油が使えるなんて思ってなかったけど、考えてみればこの時代、どこでも揃えられるのかな。
日本でだって、海外の食材とか調味料とか買えたりするもんね。
「ユヅル、手際がいいな」
「これは母さんに仕込まれたんで自信あるんです」
「そうか、アマネ仕込みか。それは楽しみだな」
エヴァンさんがぱぴーとシャルルさんにすぐにそれを通訳すると、2人も嬉しそうに笑ってくれた。
「ああ、揚げものはシャルルに任せよう。油が飛んだら危ないからな」
そう言って、エヴァンさんは揚げるだけの状態になったお肉をシャルルさんに手渡した。
いいのかな?
あんなすごいシェフさんに揚げ物をお願いしたりして……。
でも確かに油跳ねは怖いよね、僕もいっつもビビってたし。
そんなことを思っている間に、カラッと綺麗に揚がっていた。
すごい!
キラキラして美味しそう!
やっぱり揚げ方ひとつでも料理人さんってすごいんだな。
「ふふっ。よかった。シャルルが喜ぶな」
「このサックサクのクロワッサンもここで焼いてるんですか?」
「ああ、もちろんだ。ユヅルがクロワッサンが好きだと話しておいたから、今日はいつにも増して気合が入っているみたいだな」
こんな美味しいパンを家で食べられるなんて!!
シャルルさんって本当にすごいな。
美味しいフルーツもいっぱい食べてすっかりお腹いっぱい。
大満足の朝食を食べ終わった。
「ユヅル、今日はこのままベッドでゆっくり過ごすが、明日はニコラのところに行こうか」
「わぁ、明日早速行けるんですか?」
「ああ、さっき朝食を取りに行ったときにジュールが話していたよ。ニコラの墓にアマネを埋葬する許可が出たと」
「ニコラさんのお墓ってどんな場所にあるんですか?」
「同じパリ市内にあってね、緑豊かで広い公園みたいだよ。あのとき、日本の墓も見たが日本の墓場とは雰囲気が全然違うからきっと驚くだろう」
「へぇ、公園みたいな場所……それなら、母さんも好きそう。僕、母さんとよく公園にピクニックに行ってたんですよ」
懐かしいな。
春のお花見はもちろん、小春日和には秋桜を見に行ったりしてたっけ。
「それは楽しそうだな。なら、明日もそこでピクニックをするとしよう」
「いいんですか?」
「ああ、シャルルに食事を作ってもらおう。ユヅルは知ってるか? 今、フランスでは日本の『ベントー』が流行っているんだぞ」
「お弁当って元々、フランスにはなかったんですか?」
「そうだな、昼食はシンプルにバゲットのサンドイッチとスープなんかで終わらせることが多いから、日本で初めてあの色とりどりのベントーを見た時は驚いたな」
「そうなんですね……あっ、じゃあ僕明日お弁当作りたいです!」
「えっ? ユヅルがベントーを作ってくれるのか?」
「そんな大したものは作れないですけど……あっ、キッチンをお借りするのは難しいですか?」
この部屋にもキッチンはあるけれど、お湯を沸かしたりする専用みたいだし、お弁当を作るならもっとしっかりしたところを借りたほうがいいよね。
「いや、それは構わないが……そうか、ユヅルが作ってくれるのか……それは、楽しみだな」
「じゃあ、いいんですか?」
「ああ、後でジュールからシャルルに伝えておいてもらおう。食材は揃っていると思うが、一応必要なものを教えてくれ」
「わかりました。ああ、楽しみ。でも久しぶりだから失敗しそう」
「そんなこと気にしなくていい。ユヅルが作ってくれるのが嬉しいのだから……」
その後すぐに、エヴァンさんは寝室にジュールさんを呼んで朝食の片付けてもらった後でさっきのお弁当作りの話をしてくれた。
「ユヅル、問題ない。ユヅルの必要な食材も全て揃えておくそうだ」
「わぁー、よかった。あ、あの『めるしー、ぱぴー』」
『Avec plaisir!』
ものすごい笑顔でそう返されて、なんだかとても嬉しかった。
「エヴァンさん、今ジュールさんはなんて言ったんですか?」
「ああ、『ユヅルのためなら喜んで』って、そう言ったんだよ」
「わぁ、嬉しいです! 『あゔぇく ぷれずぃーる』で合ってますか?」
「ああ。ユヅルは耳がいいな。これならすぐにフランス語も覚えられそうだな。あ、そうそうジュールに対しては呼びかける時だけじゃなくて全て『Papy』でいいぞ。ジュールさんと呼ばれるのは寂しいらしい」
「あっ、そうなんですね。わかりました。えっと『ぱぴー』」
ぱぴーを見上げながら、そう呼ぶとぱぴーは嬉しそうに笑った。
まるで本当のおじいちゃんみたいな優しい微笑みだった。
翌日、朝からキッチン……というよりはレストランの厨房のようなキッチンを借りてお弁当作りを始めた。
厨房にはシェフのシャルルさんとぱぴー、そして、通訳兼保護者としてエヴァンさんがついててくれることになった。
だって、慣れないキッチンで言葉が通じないのは大変だもんね。
おにぎりを作りたくてお米をお願いしていたけれど、僕のうちでは買ったことのない高級な名前のお米が用意してあって驚いた。
流石に炊飯器はなかったけれど、お鍋で米を炊く方法は母さんに聞いてよく知っている。
おにぎりと卵焼きと唐揚げだけは上手に作れるようになっていて助かったな。
いつもは食事作りを母さんに任せてたけど、高校入ってお弁当だけは毎日作ってたんだよね。
って言ってもほとんどは夜ご飯の残りを詰めてたし、僕が作ってたのはおにぎりと卵焼きくらいだったけど……。
唐揚げだけは母さんの味を覚えたくて練習してた甲斐があったな。
まずはお米を研いで水に浸けている間に、唐揚げの下味をつけていく。
フランスでお醤油が使えるなんて思ってなかったけど、考えてみればこの時代、どこでも揃えられるのかな。
日本でだって、海外の食材とか調味料とか買えたりするもんね。
「ユヅル、手際がいいな」
「これは母さんに仕込まれたんで自信あるんです」
「そうか、アマネ仕込みか。それは楽しみだな」
エヴァンさんがぱぴーとシャルルさんにすぐにそれを通訳すると、2人も嬉しそうに笑ってくれた。
「ああ、揚げものはシャルルに任せよう。油が飛んだら危ないからな」
そう言って、エヴァンさんは揚げるだけの状態になったお肉をシャルルさんに手渡した。
いいのかな?
あんなすごいシェフさんに揚げ物をお願いしたりして……。
でも確かに油跳ねは怖いよね、僕もいっつもビビってたし。
そんなことを思っている間に、カラッと綺麗に揚がっていた。
すごい!
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