天涯孤独になった僕をイケメン外国人が甘やかしてくれます

波木真帆

文字の大きさ
上 下
47 / 205

ピクニックに行こう!

しおりを挟む
「おいしいっ!!」

「ふふっ。よかった。シャルルシェフが喜ぶな」

「このサックサクのクロワッサンもここで焼いてるんですか?」

「ああ、もちろんだ。ユヅルがクロワッサンが好きだと話しておいたから、今日はいつにも増して気合が入っているみたいだな」

こんな美味しいパンを家で食べられるなんて!!
シャルルさんって本当にすごいな。

美味しいフルーツもいっぱい食べてすっかりお腹いっぱい。
大満足の朝食を食べ終わった。

「ユヅル、今日はこのままベッドでゆっくり過ごすが、明日はニコラのところに行こうか」

「わぁ、明日早速行けるんですか?」

「ああ、さっき朝食を取りに行ったときにジュールが話していたよ。ニコラの墓にアマネを埋葬する許可が出たと」

「ニコラさんのお墓ってどんな場所にあるんですか?」

「同じパリ市内にあってね、緑豊かで広い公園みたいだよ。あのとき、日本の墓も見たが日本の墓場とは雰囲気が全然違うからきっと驚くだろう」

「へぇ、公園みたいな場所……それなら、母さんも好きそう。僕、母さんとよく公園にピクニックに行ってたんですよ」

懐かしいな。
春のお花見はもちろん、小春日和には秋桜を見に行ったりしてたっけ。

「それは楽しそうだな。なら、明日もそこでピクニックをするとしよう」

「いいんですか?」

「ああ、シャルルに食事を作ってもらおう。ユヅルは知ってるか? 今、フランスでは日本の『ベントー』が流行っているんだぞ」

「お弁当って元々、フランスにはなかったんですか?」

「そうだな、昼食はシンプルにバゲットのサンドイッチとスープなんかで終わらせることが多いから、日本で初めてあの色とりどりのベントーを見た時は驚いたな」

「そうなんですね……あっ、じゃあ僕明日お弁当作りたいです!」

「えっ? ユヅルがベントーを作ってくれるのか?」

「そんな大したものは作れないですけど……あっ、キッチンをお借りするのは難しいですか?」

この部屋にもキッチンはあるけれど、お湯を沸かしたりする専用みたいだし、お弁当を作るならもっとしっかりしたところを借りたほうがいいよね。

「いや、それは構わないが……そうか、ユヅルが作ってくれるのか……それは、楽しみだな」

「じゃあ、いいんですか?」

「ああ、後でジュールからシャルルに伝えておいてもらおう。食材は揃っていると思うが、一応必要なものを教えてくれ」

「わかりました。ああ、楽しみ。でも久しぶりだから失敗しそう」

「そんなこと気にしなくていい。ユヅルが作ってくれるのが嬉しいのだから……」


その後すぐに、エヴァンさんは寝室にジュールさんを呼んで朝食の片付けてもらった後でさっきのお弁当作りの話をしてくれた。

「ユヅル、問題ない。ユヅルの必要な食材も全て揃えておくそうだ」

「わぁー、よかった。あ、あの『めるしー、ぱぴー』」

『Avec plaisir!』

ものすごい笑顔でそう返されて、なんだかとても嬉しかった。

「エヴァンさん、今ジュールさんはなんて言ったんですか?」

「ああ、『ユヅルのためなら喜んで』って、そう言ったんだよ」

「わぁ、嬉しいです! 『あゔぇく ぷれずぃーる』で合ってますか?」

「ああ。ユヅルは耳がいいな。これならすぐにフランス語も覚えられそうだな。あ、そうそうジュールに対しては呼びかける時だけじゃなくて全て『Papy』でいいぞ。ジュールさんと呼ばれるのは寂しいらしい」

「あっ、そうなんですね。わかりました。えっと『ぱぴー』」

ぱぴーを見上げながら、そう呼ぶとぱぴーは嬉しそうに笑った。
まるで本当のおじいちゃんみたいな優しい微笑みだった。



翌日、朝からキッチン……というよりはレストランの厨房のようなキッチンを借りてお弁当作りを始めた。

厨房にはシェフのシャルルさんとぱぴー、そして、通訳兼保護者としてエヴァンさんがついててくれることになった。
だって、慣れないキッチンで言葉が通じないのは大変だもんね。

おにぎりを作りたくてお米をお願いしていたけれど、僕のうちでは買ったことのない高級な名前のお米が用意してあって驚いた。
流石に炊飯器はなかったけれど、お鍋で米を炊く方法は母さんに聞いてよく知っている。
おにぎりと卵焼きと唐揚げだけは上手に作れるようになっていて助かったな。
いつもは食事作りを母さんに任せてたけど、高校入ってお弁当だけは毎日作ってたんだよね。
って言ってもほとんどは夜ご飯の残りを詰めてたし、僕が作ってたのはおにぎりと卵焼きくらいだったけど……。

唐揚げだけは母さんの味を覚えたくて練習してた甲斐があったな。

まずはお米を研いで水に浸けている間に、唐揚げの下味をつけていく。

フランスでお醤油が使えるなんて思ってなかったけど、考えてみればこの時代、どこでも揃えられるのかな。
日本でだって、海外の食材とか調味料とか買えたりするもんね。

「ユヅル、手際がいいな」

「これは母さんに仕込まれたんで自信あるんです」

「そうか、アマネ仕込みか。それは楽しみだな」

エヴァンさんがぱぴーとシャルルさんにすぐにそれを通訳すると、2人も嬉しそうに笑ってくれた。

「ああ、揚げものはシャルルに任せよう。油が飛んだら危ないからな」

そう言って、エヴァンさんは揚げるだけの状態になったお肉をシャルルさんに手渡した。

いいのかな?
あんなすごいシェフさんに揚げ物をお願いしたりして……。
でも確かに油跳ねは怖いよね、僕もいっつもビビってたし。

そんなことを思っている間に、カラッと綺麗に揚がっていた。
すごい!
キラキラして美味しそう!
やっぱり揚げ方ひとつでも料理人さんってすごいんだな。
しおりを挟む
感想 169

あなたにおすすめの小説

私の庇護欲を掻き立てるのです

まめ
BL
ぼんやりとした受けが、よく分からないうちに攻めに囲われていく話。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが

五右衛門
BL
 月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。  しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

プリンなんだから食えばわかる

てぃきん南蛮
BL
海外で定食屋を開くことを夢見て、留学をした董哉。 留学先の紹介で軍事食堂の手伝いをしているが、 アジア人嫌いのオメガ嫌いであるフレッドという兵士から嫌がらせを受ける。 ある日、初めてメイン料理を提供した董哉だったが、フレッドに何癖を付けられる。 料理を貶された董哉は流石に腹が立ち、フレッドに対して────…… 後日、流石に後悔した董哉だったが、 何故かその日からフレッドの態度が軟化し始めて……? 最悪な印象から始まる、偏見持ち海外軍人のα×軍人食堂の日本人バイト留学生Ω

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

どうも。チートαの運命の番、やらせてもらってます。

Q.➽
BL
アラフォーおっさんΩの一人語りで話が進みます。 典型的、屑には天誅話。 突発的な手慰みショートショート。

紹介なんてされたくありません!

mahiro
BL
普通ならば「家族に紹介したい」と言われたら、嬉しいものなのだと思う。 けれど僕は男で目の前で平然と言ってのけたこの人物も男なわけで。 断りの言葉を言いかけた瞬間、来客を知らせるインターフォンが鳴り響き……?

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

処理中です...