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エヴァンさんのお家

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すみません。予約投稿忘れてました汗


  *   *   *


僕たちが4人で話をしていると、周りがザワザワとしてきて集まってきた人たちが僕たちを見て何か言っている。
フランス語だから何を言っているのかはわからないけれど、きっと有名人のミシェルさんのことを話しているんだろう。

いや、もしかしたらカッコいいエヴァンさんに興味を持っているのかもしれない。
そう考えるとなんとなく面白くなくて、エヴァンさんの袖をクッと引っ張って見上げると、

「――っ、セルジュ。そろそろ車に行くぞ」

と突然僕を抱きかかえて元々乗る予定だった車に乗り込んだ。
あの場から離れてくれたのは嬉しかったけれど、エヴァンさんの突然の行動に驚いてしまった。

機内に載せていた荷物もすでに運ばれていていつでも出発できるらしい。
と言っても僕たちの乗る車と荷物は別々の車なんだって。
でも僕たちが今乗っている車、すごく長くて中は広々としたソファーみたいなのがあって、二人じゃ広すぎる。
荷物くらい余裕で入りそうだけどな。

フランスでは荷物と一緒に車に乗らないのが普通なのかな?
これからフランスでの一般常識もしっかりと勉強しないとな。

セルジュさんはミシェルさんがここまで乗ってきた車で一緒に帰るみたい。

「後ろから追いかけますのでどうぞお先に出発なさってください」

「ああ、じゃあ屋敷でな」

「ユヅル、またあとでね」

ミシェルさんに手を振られながら、僕たちの車は出発した。

「ミシェルさん、すごく素敵な人でしたね」

「ああ、だが今日のことでもわかったように思い立ったらすぐに行動してしまうから、セルジュはいつも手を焼いているようだ。ユヅルは私を心配させないでくれ。本当にユヅルが今日のミシェルのような行動をしたら、私の寿命が縮んでしまうよ」

少し大袈裟だなぁと思ったけれど、いつも冷静なセルジュさんがあんなにも取り乱していたのを見ると、エヴァンさんも同じようになってしまうのかも……と思ってしまう。

「ユヅル、約束してくれるか?」

手をぎゅっと握られて真剣な眼差しで見つめられて、断れるわけもない。
それにエヴァンさんを心配かけることなんてしたくないし。

「大丈夫です、約束します!」

「ユヅル! ありがとう」

僕の言葉にエヴァンさんは嬉しそうに僕を抱きしめた。

「あ、ほら。ユヅル、みてごらん。あれが凱旋門。そしてあっちがエッフェル塔だ」

「わぁーっ! すごいっ!! 思っていたよりすごく大きいです」

「ふふっ。今度ゆっくり観光に来よう」

「はい、楽しみです」

それからもずっと、エヴァンさんが車窓から見えるパリの街をガイドしてくれながら車は川に囲まれた中洲へと進んでいった。

「エヴァンさん、ここすごく素敵ですね」

「ああ、ここはパリ発祥の地と言われている場所で私の家ももうすぐそこだぞ」

そう話している間に、美しい緑の木々に囲まれたまるで絵葉書のような風景の中に聳え立つ大きなお屋敷の前で車は止まった。

大きくて広い門から中を覗きこんでも建物の入り口が見えないほど大きな家。
これがエヴァンさんのお家?

いやいや、家っていうかどうみたってお城みたいだけど。

確かにお城は持っていると言ってた。
今はホテルとして使ってるって。

でもこれはそれじゃないよね?
大きなお城みたいだけど、他に人っこ一人見当たらないからホテルでは無さそう。

「あ、の……エヴァンさん、ここ?」

「ああ、そうだよ。今日からユヅルと一緒に暮らす私の家だ。どうだ? 気に入ったか?」

「気に入った、というか……その大きくてびっくりしちゃって……っ」

「ふふっ。大丈夫、すぐに慣れるよ」

僕が驚いている間に、門が開けられ車が玄関へと走っていく。
ふぇー、玄関まで車で行くなんて……やっぱり広すぎだよね。

『おかえりなさいませ、旦那さま』

『ああ、留守の間変わりはないか?』

『はい。もちろんでございます』

『そうか、ならよかった。それより、セルジュから連絡させたが聞いているか?』

『はい。旦那さまがご伴侶さまをお連れになるとのことで、一同鶴首してお待ちしておりました。お隣にいらっしゃるのが旦那さまの大切なお方でいらっしゃいますか?』

玄関で待っててくれていた黒服の人はテレビでみたことある、執事の人みたい。
エヴァンさんを出迎えて話をしているけれどフランス語だからちっともわからない。
でもそれは仕方がないから終わるのを待っていないとね。

そう思っていると、黒服の人がににこやかな笑顔を浮かべながら僕を見ている。
もしかしたら、僕の話をしてくれているんだろうか?
それならちゃんと挨拶しないとね。

僕はエヴァンさんとその黒服の人の会話が途切れたタイミングを見て、

『ぼ、ぼんじゅーる、あんしゃんて!』

と必死に叫んだ僕の言葉にエヴァンさんも黒服の人も目を丸くして驚いていた。
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