38 / 178
星空の下で
しおりを挟む
「ユヅル、もうシートベルトを外していいぞ」
そう言って、椅子から下ろされて、ソファーへと移動する。
本当にここだけ見ると飛行機の中とは思えないな。
だけど、
「たまに気流の関係で揺れることがあるから、私から離れないようにな」
「はい。わかりました」
こういうのを聞くとやっぱり飛行機の中にいるんだと感じさせられる。
いつの間にかジャケットも脱いで、リラックスしたような服に着替えているエヴァンさんを観ると、やっぱり旅慣れているんだなと思う。
スーツ姿もかっこいいけど、こういうリラックスしたような格好も似合うなぁ……。
「映画でも観ようか。ユヅルはどういう映画が好き?」
「あ、僕あんまり観たことがなくて……エヴァンさんのおすすめが観たいです」
「そうだな、じゃあこれにしようか」
エヴァンさんがサクサクっと何かを操作すると、目の前に大きなスクリーンが降りてきた。
「わっ、すごいっ!!」
てっきりソファーの前にある大きなテレビで観るのかと思っていただけにびっくりしてしまう。
「あっ、セルジュさんも一緒に……」
「セルジュは隣の部屋で休んでいるから大丈夫だ」
そう言って、僕を隣に抱き寄せるとスタッフさん達が飲み物とポップコーンを運んできてくれた。
「わっ、映画館みたいだ!」
「少しでも雰囲気を味わおうかと思ってね」
「エヴァンさん! 僕、一度でいいから映画館に行ってみたかったんです! とっても嬉しいです!」
「ふふっ。ユヅルの夢はこれから私が何でも叶えてあげるよ。一緒にな」
にっこりと笑顔を見せてくれるエヴァンさんに抱きしめられながら可愛い動物の出てくる映画をいくつか堪能した。
時折、エヴァンさんがポップコーンを口に運んでくれて、僕も食べさせたり……本当に楽しい時間を過ごすことができた。
映画が終わると途端に眠くなってきた。
「ユヅル、少しベッドで休もうか」
「いいんですか?」
「ああ、もちろんだ。2時間ほどで起こしてあげるから、ゆっくり休むといい。私も一緒に休もう」
スッと抱きかかえられて寝室へと連れて行かれ、大きなベッドに横になるとエヴァンさんも一緒に横になってくれた。
ギュッと抱きしめられながら、僕はあっという間に夢の世界へと落ちてしまっていた。
「ユヅル……そろそろ起きようか」
エヴァンさんの声がして目を覚ますと、優しい笑顔に迎え入れられた。
「よく眠れたようだな」
「はい。エヴァンさんがあったかくて気持ちよかったです」
「――っ、ならよかった。そろそろ食事にしようか。それともお風呂にしようか?」
あ、あの星空の見えるお風呂か……。
素敵だろうな……なんて思っていたのに、僕のお腹はグゥーっと音を立ててしまった。
「ふふっ。じゃあ食事にしようか」
僕は恥ずかしさに頷き、エヴァンさんに抱きつくとエヴァンさんは僕を軽々と抱きかかえてダイニングルームへと連れて行ってくれた。
途中でセルジュさんの部屋の扉の前から
「セルジュ、食事にしよう」
と声をかけると、扉を開けて出てきたセルジュさんはエヴァンさんと一緒でかなりのリラックスモードな装いをしていた。
いつものかっちりとしたスーツ姿のセルジュさんとは違ってなんだかより近くに感じられる気がするな。
「美味しいっ!!」
まるでレストランにいるような豪華な食事が出てきてた。
もう何度目だろう……ここが飛行機の中とは思えないと思っちゃったのは……。
それくらい、エヴァンさんもセルジュさんも優雅に食事をしていて驚いてしまう。
柔らかいステーキや美味しいスープに舌鼓を打ちながらあっという間に食事を終えた。
「セルジュ、ミシェルは空港に迎えに来るのか?」
「来たいとは言ってくれているのですが、今の時期の空港は人が多いですからね。危ないので家に居させておこうと思っています」
「そうか、まぁそうだな。フランスに着いたらすぐにでもユヅルにミシェルを紹介してやろうと思っていたが、確かに危ないな」
そっか。
ミシェルさん、もうプロとして活躍していると言っていたし、熱狂的なファンの人とかに見つかっちゃったら大変だもんね。
「ユヅルも空港に着いたら絶対に私のそばから離れるんじゃないぞ」
えっ? なんで僕?
ああ、もしかして空港が広いから迷子にならないようにってことかな。
人混みに流されて何処かにいっちゃわないようにってことか。
「はい。大丈夫です! 絶対に迷子になんてならないですから!」
胸をドーンと叩きながら自信満々に言ったけれど、なぜかエヴァンさんとセルジュさんは顔を見合わせて笑っているように見えた。
「ふふっ。それではエヴァンさま。ユヅルさま。私は部屋に下がっていますので、何かありましたらお声がけください」
「ああ、ゆっくり休んでくれ」
セルジュさんを見送って、僕はエヴァンさんに連れられてあのお風呂場へと向かった。
丸くて大きなお風呂にはもうお湯が溜まっていて温かそうな湯気が上がっているのが見える。
すごいよね、本当にここが一番飛行機の中らしく見えないかもしれない
考えても全くシステムがわからないけど、とりあえず楽しまなきゃもったいないよね。
「ユヅル、おいで」
とろけるような優しい声で呼び寄せられる。
僕がぼーっとお風呂場に見入っているうちに、服は脱がされてしまっていた。
その早業に驚きながらも、エヴァンさんの手を取り中へと入る。
流石にホテルのお風呂のようにゆったりざぶざぶと外で洗うわけにはいかないようで軽く髪と身体を洗い流すとすぐに湯船に浸かった。
やっぱりエヴァンさんはこういうところも慣れてるんだな。
「ユヅル、窓をみていて」
その声に窓を見ると、ピッとお風呂場の明かりが消されて、僕の目の前に満天の星が現れた。
自分が空の中に溶け込んでしまっているように、星が降り注いでくる。
「――っ!」
もう、言葉にならないってこういうことを言うんだ……。
僕がこんな素晴らしい景色を見られるようになるなんて……少し前の僕に教えてもきっと信じられないだろうな。
「ユヅル? 大丈夫か?」
「えっ?」
気づけば僕の目から涙が流れていた。
それくらいこの景色は僕の心に深く刻まれたんだ。
「こんな綺麗な景色を一緒に見るのがエヴァンさんですごく嬉しい」
エヴァンさんの胸にギュッと抱きつくと、
「――っ! ああ、私も嬉しいよ。ユヅル……愛してる」
真っ暗なお風呂場で満天の星に祝福されるように僕はエヴァンさんとキスをした。
大好きなエヴァンさんと星空の下でのキス……。
僕は一生忘れない。
そう言って、椅子から下ろされて、ソファーへと移動する。
本当にここだけ見ると飛行機の中とは思えないな。
だけど、
「たまに気流の関係で揺れることがあるから、私から離れないようにな」
「はい。わかりました」
こういうのを聞くとやっぱり飛行機の中にいるんだと感じさせられる。
いつの間にかジャケットも脱いで、リラックスしたような服に着替えているエヴァンさんを観ると、やっぱり旅慣れているんだなと思う。
スーツ姿もかっこいいけど、こういうリラックスしたような格好も似合うなぁ……。
「映画でも観ようか。ユヅルはどういう映画が好き?」
「あ、僕あんまり観たことがなくて……エヴァンさんのおすすめが観たいです」
「そうだな、じゃあこれにしようか」
エヴァンさんがサクサクっと何かを操作すると、目の前に大きなスクリーンが降りてきた。
「わっ、すごいっ!!」
てっきりソファーの前にある大きなテレビで観るのかと思っていただけにびっくりしてしまう。
「あっ、セルジュさんも一緒に……」
「セルジュは隣の部屋で休んでいるから大丈夫だ」
そう言って、僕を隣に抱き寄せるとスタッフさん達が飲み物とポップコーンを運んできてくれた。
「わっ、映画館みたいだ!」
「少しでも雰囲気を味わおうかと思ってね」
「エヴァンさん! 僕、一度でいいから映画館に行ってみたかったんです! とっても嬉しいです!」
「ふふっ。ユヅルの夢はこれから私が何でも叶えてあげるよ。一緒にな」
にっこりと笑顔を見せてくれるエヴァンさんに抱きしめられながら可愛い動物の出てくる映画をいくつか堪能した。
時折、エヴァンさんがポップコーンを口に運んでくれて、僕も食べさせたり……本当に楽しい時間を過ごすことができた。
映画が終わると途端に眠くなってきた。
「ユヅル、少しベッドで休もうか」
「いいんですか?」
「ああ、もちろんだ。2時間ほどで起こしてあげるから、ゆっくり休むといい。私も一緒に休もう」
スッと抱きかかえられて寝室へと連れて行かれ、大きなベッドに横になるとエヴァンさんも一緒に横になってくれた。
ギュッと抱きしめられながら、僕はあっという間に夢の世界へと落ちてしまっていた。
「ユヅル……そろそろ起きようか」
エヴァンさんの声がして目を覚ますと、優しい笑顔に迎え入れられた。
「よく眠れたようだな」
「はい。エヴァンさんがあったかくて気持ちよかったです」
「――っ、ならよかった。そろそろ食事にしようか。それともお風呂にしようか?」
あ、あの星空の見えるお風呂か……。
素敵だろうな……なんて思っていたのに、僕のお腹はグゥーっと音を立ててしまった。
「ふふっ。じゃあ食事にしようか」
僕は恥ずかしさに頷き、エヴァンさんに抱きつくとエヴァンさんは僕を軽々と抱きかかえてダイニングルームへと連れて行ってくれた。
途中でセルジュさんの部屋の扉の前から
「セルジュ、食事にしよう」
と声をかけると、扉を開けて出てきたセルジュさんはエヴァンさんと一緒でかなりのリラックスモードな装いをしていた。
いつものかっちりとしたスーツ姿のセルジュさんとは違ってなんだかより近くに感じられる気がするな。
「美味しいっ!!」
まるでレストランにいるような豪華な食事が出てきてた。
もう何度目だろう……ここが飛行機の中とは思えないと思っちゃったのは……。
それくらい、エヴァンさんもセルジュさんも優雅に食事をしていて驚いてしまう。
柔らかいステーキや美味しいスープに舌鼓を打ちながらあっという間に食事を終えた。
「セルジュ、ミシェルは空港に迎えに来るのか?」
「来たいとは言ってくれているのですが、今の時期の空港は人が多いですからね。危ないので家に居させておこうと思っています」
「そうか、まぁそうだな。フランスに着いたらすぐにでもユヅルにミシェルを紹介してやろうと思っていたが、確かに危ないな」
そっか。
ミシェルさん、もうプロとして活躍していると言っていたし、熱狂的なファンの人とかに見つかっちゃったら大変だもんね。
「ユヅルも空港に着いたら絶対に私のそばから離れるんじゃないぞ」
えっ? なんで僕?
ああ、もしかして空港が広いから迷子にならないようにってことかな。
人混みに流されて何処かにいっちゃわないようにってことか。
「はい。大丈夫です! 絶対に迷子になんてならないですから!」
胸をドーンと叩きながら自信満々に言ったけれど、なぜかエヴァンさんとセルジュさんは顔を見合わせて笑っているように見えた。
「ふふっ。それではエヴァンさま。ユヅルさま。私は部屋に下がっていますので、何かありましたらお声がけください」
「ああ、ゆっくり休んでくれ」
セルジュさんを見送って、僕はエヴァンさんに連れられてあのお風呂場へと向かった。
丸くて大きなお風呂にはもうお湯が溜まっていて温かそうな湯気が上がっているのが見える。
すごいよね、本当にここが一番飛行機の中らしく見えないかもしれない
考えても全くシステムがわからないけど、とりあえず楽しまなきゃもったいないよね。
「ユヅル、おいで」
とろけるような優しい声で呼び寄せられる。
僕がぼーっとお風呂場に見入っているうちに、服は脱がされてしまっていた。
その早業に驚きながらも、エヴァンさんの手を取り中へと入る。
流石にホテルのお風呂のようにゆったりざぶざぶと外で洗うわけにはいかないようで軽く髪と身体を洗い流すとすぐに湯船に浸かった。
やっぱりエヴァンさんはこういうところも慣れてるんだな。
「ユヅル、窓をみていて」
その声に窓を見ると、ピッとお風呂場の明かりが消されて、僕の目の前に満天の星が現れた。
自分が空の中に溶け込んでしまっているように、星が降り注いでくる。
「――っ!」
もう、言葉にならないってこういうことを言うんだ……。
僕がこんな素晴らしい景色を見られるようになるなんて……少し前の僕に教えてもきっと信じられないだろうな。
「ユヅル? 大丈夫か?」
「えっ?」
気づけば僕の目から涙が流れていた。
それくらいこの景色は僕の心に深く刻まれたんだ。
「こんな綺麗な景色を一緒に見るのがエヴァンさんですごく嬉しい」
エヴァンさんの胸にギュッと抱きつくと、
「――っ! ああ、私も嬉しいよ。ユヅル……愛してる」
真っ暗なお風呂場で満天の星に祝福されるように僕はエヴァンさんとキスをした。
大好きなエヴァンさんと星空の下でのキス……。
僕は一生忘れない。
応援ありがとうございます!
58
お気に入りに追加
2,773
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる