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僕の友達

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「今日は楽しかったよ。フランスに帰る前に良い話が聞けてよかった。フランスに来る日が決まったら連絡してくれ。すぐにホテルの部屋を押さえるよ」

「ああ、ありがとう。友人に話をしたらすぐに連絡するから。きっと忙しいだろうから、電話じゃなくてメールにしとくからな」

「ふふっ。それはありがたいな。フランスに帰ったら、やるべきことが山積みだからな」

「ロレーヌ、彼と幸せに。弓弦くんも新しい生活は大変だろうが、どんなに些細なことでもロレーヌに相談するように。決して一人で悩んだりしたらダメだぞ」

綾城さんはエヴァンさんと話をした後、僕にも優しい言葉をかけてくれた。

「直己さん、大丈夫ですよ。弓弦くん、ロレーヌさんのことものすごく信頼してますから、なんでも話し合ういいカップルですよ。ねっ、弓弦くん」

にっこりと微笑む佳都さんに、

「はい。綾城さんも佳都さんも今日は本当にありがとうございました。僕、お二人とお話ができて本当に楽しかったです。エヴァンさんと幸せに暮らしている僕を見にフランスに来てくださるのを楽しみにしていますね」

というと、綾城さんは笑顔を向けてくれて佳都さんは

「フランスで会うの楽しみにしているね」

と言ってくれた。

「じゃあ、ユヅル。そろそろ帰ろうか」

「はい」

僕たちが立ちあがろうとしたその時、佳都さんに

「ねぇ、弓弦くん。ちょっと……」

と声をかけられた。

「メッセージアプリのID交換しようよ。電話よりやり取りしやすいし」

「わぁ、嬉しいです」

こうやってID聞かれるのが初めてで僕は嬉しくなってしまった。

久々にメッセージアプリを起動させると、一番上に

<Happy Birthday! 弓弦。
弓弦がいつも幸せでいられるようにお母さん頑張るね。生まれてきてくれてありがとう。お母さんより>

と母さんからのバースデーメッセージが目に入った。

そうだ。
母さんは僕が携帯を持つようになってから、誕生日当日の0時にメッセージを送ってくれていたんだ。
もらってメッセージを読んだ時は、今のこの未来は全く想像してなかったな。
母さんからの最後のメッセージ。

母さんはいなくなっちゃったけど……大丈夫。
僕は幸せだよ。

「弓弦くん、大丈夫?」

佳都さんの心配そうな声が聞こえる。
ああ、僕は母さんのメッセージを見て涙が出ちゃったみたいだ。
そりゃあ心配するよね、急に泣いたりしたら……。

「あの、だい――」
「ユヅル、無理しないでいい。私がついているし、彼らは友達だ。無理して笑顔を見せなくていいんだ」

僕を後ろから抱きしめてそう言ってくれた。

「エヴァンさん……僕、母さんからのメッセージが見えて……それで、」

「ああ、そうか。わかった。ユヅル、気にしないでいい」

そう言いながら、体勢を入れ替え僕を胸の中に閉じ込めてくれた。

「あの、ごめんなさい……ぼく、何か……」

「いや、ケイトくん。気にしないでくれ。ユヅルは母親からきたメッセージを見て少し思い出すことがあったようだ」

「ああ……お母さんのお話。あの……僕も聞いています。突然だったから、余計ですよね。よくわかります。僕も両親を亡くしているので……」

「えっ? 佳都さんも?」

僕が驚いて顔を上げると、佳都さんは涙を潤ませながら頷いていた。

「母さんは結構前に病気で亡くなって……父も少し前に。だから、一人になって寂しい気持ちはよくわかるよ。でもね、今は直己さんに出会えて、いっぱい友達ができて毎日が楽しいんだ。もちろん両親のことを忘れない日はないけど、二人がいてくれたおかげで僕が今、楽しく過ごせてるんだって思えるようになったから……。弓弦くんも毎日が楽しい日を過ごせるように前を向いていこうね。きっとご両親もその方が喜ぶはずだよ」

「佳都さん……はい。ありがとうございます。僕……本当に佳都さんとお話できてよかったです」

「ふふっ。僕もだよ。

僕に笑顔が戻ったところで、仕切り直してID交換しようと誘われ、僕は佳都さんのIDを手に入れることができた。

「このIDさっき見せた僕の友達にも教えていいかな? あの子たちは信用できる子達だから……」

「はい。いいですよ。楽しみにしています」

僕はメッセージアプリのトーク履歴の先頭に佳都さんのアイコンがあるのを何度も見て嬉しくなりながら、ポンとスタンプを送った。

可愛いうさぎとくまが手を握っているスタンプはまるで佳都さんと僕みたい。

佳都さんにそう言ったら、

「ふふっ。弓弦くんはクマっていうより、可愛いワンちゃんって感じだけどね」

と笑っていた。


それから数日後、フランスの僕の元に佳都さんから可愛い犬の白い着ぐるみパジャマが贈られてきて、驚く僕の横でエヴァンさんが目を輝かせてとんでもないことになっちゃうことを、その時の僕はまだ知らない。
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