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楽しい時間
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「ねぇ、これ見て。僕の友達なんだけど、この子達……弓弦くんと同じ18歳なんだよ」
そう言って佳都さんはポケットからスマホを取り出し、画像を見せてくれた。
「わぁっ! 可愛いですね!」
「でしょう?」
佳都さんが得意げに見せてくれたのは、可愛いうさぎの着ぐるみを着た佳都さんと、可愛い猫の着ぐるみを着た2人の男の子の画像だった。
「こっちの子が理央くんで、こっちの子が空良くんって言うんだよ。今日、弓弦くんに会うって話して、写真見せてもいい? って聞いたら、いいよって言ってくれたんだ」
「へぇ、そうなんですね。どういう繋がりのお友達なんですか?」
「直己さんの親友の恋人くんなんだよ。二人とも事情があって高校に通えなくなったんだけど頑張って大検受かってね、今は大学受験に向けて頑張ってるんだ。きっと弓弦くんとも仲良くなれると思うんだよね。だから、今度来日した時はぜひみんなで会おう。その時には彼らも、弓弦くんも夢に向かって頑張ってるでしょう?」
そうか……。
佳都さんのお友達二人も大学行こうと頑張ってるんだな。
僕も次に会うときは自信持って頑張ってるって言えるようにならないとな。
「はい、僕……頑張ります! あの、もしよかったらフランスにも遊びに来てくれると嬉しいです! 僕、フランスでお友達になれそうな人がまだ一人しかいなくて……」
「えっ、まだ行ってもないのにお友達候補がいるってすごいよ! どんな人なの?」
「あの、エヴァンさんの秘書の方の恋人さんで、25歳のヴァイオリニストの方なんですけど、フランスに着いたら会わせてもらえることになってて……すごく楽しみなんです」
「へぇー、いいなぁ。楽しそう。その人の写真とかないの?」
「まだ僕も会ったことないので……」
「そっか……。じゃあ、会えるの楽しみだね、僕も絶対遊びに行くよ!! わぁーい、楽しみだな」
社交辞令でもなんでもない、優しげなその笑顔に僕は嬉しくなっていた。
「ユヅル、ケイトくんと話が盛り上がっているみたいだな」
「エヴァンさん、佳都さんがフランスに遊びに来てくれるって言ってくれたんです」
「フランスに? それは楽しみだな。もちろんその時はアヤシロも一緒なんだろう?」
「ああ、もちろんだよ。佳都一人で行かせたりはしないからな。実は、この前新婚旅行でフランスに行ったんだよ。その時、ロレーヌとも会いたかったんだけど、ちょうどその時期、アメリカかどこかに長期で行ってただろう?」
「あの時は、アヤシロが長期で休みを取っていたから変更して、先にアメリカに行ったんだよ。まさかこっちに来るとは思ってなかったからな。だが……よくよく考えてみればアヤシロのおかげだな、今回こんなに早くユヅルの元にいけたのは……。アメリカに行ってたら少なくとも半日は待たせただろうからな」
そう言いながら、エヴァンさんは僕を抱きしめてくれた。
あの時、エヴァンさんが2時間もしないうちに来てくれてすっごく心強かったんだ。
あれが、半日以上も一人であの家で待ってたら……僕は、辛すぎて、どうしていいかわからなくて……どうにかなっちゃってたかもしれない。
あの時すぐに駆けつけてくれて、たった一人の家族を失った僕に、すぐに家族だと言ってくれたから……僕は悲しみを乗り越えることができたんだ。
「へぇ、ロレーヌが彼と出会えたのが俺のおかげって言うんなら、ご褒美でも貰おうかな」
「ははっ。アヤシロが私にご褒美をねだるなんて珍しいな。いいよ、なんでも好きなものを言ってくれ」
「さすが、ロレーヌ。太っ腹だな。じゃあ、近いうちにフランス行くから、あのホテルに宿泊させてくれないか?」
「あのホテル? せっかくのご褒美がそんなのでいいのか?」
「ははっ。そんなのって……ロレーヌは知らないだろう? あのホテル、日本人が今、フランスで泊まりたいホテルランキングで1位って情報が流れてから、日本からの予約はかなり難しくなっててさ。俺は前もって予約したから、新婚旅行の時はなんとか泊まれたんだけど、今度友達もヨーロッパで挙式したいって言ってて、今、場所を探しているところなんだよ。せっかくなら、あのホテルで挙式してそのまま泊まれたら最高なんだけど、どうかな?」
「アヤシロの友達の挙式のためなら、ひと肌脱ごう。何部屋必要なんだ?」
「3部屋あればありがたいんだが……」
「なんだ、3部屋くらいなら問題ない。いつでもいいと伝えておいてくれ」
「本当かっ! さすが、ロレーヌ!! 佳都、観月と悠木に挙式できるホテルが見つかったって知らせてやろう」
「でも、ロレーヌさん……本当にいいんですか? あのホテル、かなり予約が難しいって……」
「ふふっ。心配いらないよ。あのホテルのオーナーは私の一族だからね。3部屋くらいならいつでも都合つくから問題ないんだよ」
「えーっ、すごいですね!! 弓弦くん、ロレーヌさんってすごい人なんだね」
「本当に……僕、知らなかった……そんなすごい人が僕の恋人だなんて……なんだか自信がなくなってきちゃったな……」
「ユヅル、何言ってるんだ? ユヅルはただの私を好きになってくれたのだろう? 私のことを捨てたりしないだろう? 私はユヅルがいないと生きていけないのだぞ」
こんなに地位も名誉も財産も何もかも手に入れている人が、僕のことでこんなにも不安げな表情を見せてくれるなんて……。
エヴァンさんには悪いけど……何だか、すごく嬉しい。
そう言って佳都さんはポケットからスマホを取り出し、画像を見せてくれた。
「わぁっ! 可愛いですね!」
「でしょう?」
佳都さんが得意げに見せてくれたのは、可愛いうさぎの着ぐるみを着た佳都さんと、可愛い猫の着ぐるみを着た2人の男の子の画像だった。
「こっちの子が理央くんで、こっちの子が空良くんって言うんだよ。今日、弓弦くんに会うって話して、写真見せてもいい? って聞いたら、いいよって言ってくれたんだ」
「へぇ、そうなんですね。どういう繋がりのお友達なんですか?」
「直己さんの親友の恋人くんなんだよ。二人とも事情があって高校に通えなくなったんだけど頑張って大検受かってね、今は大学受験に向けて頑張ってるんだ。きっと弓弦くんとも仲良くなれると思うんだよね。だから、今度来日した時はぜひみんなで会おう。その時には彼らも、弓弦くんも夢に向かって頑張ってるでしょう?」
そうか……。
佳都さんのお友達二人も大学行こうと頑張ってるんだな。
僕も次に会うときは自信持って頑張ってるって言えるようにならないとな。
「はい、僕……頑張ります! あの、もしよかったらフランスにも遊びに来てくれると嬉しいです! 僕、フランスでお友達になれそうな人がまだ一人しかいなくて……」
「えっ、まだ行ってもないのにお友達候補がいるってすごいよ! どんな人なの?」
「あの、エヴァンさんの秘書の方の恋人さんで、25歳のヴァイオリニストの方なんですけど、フランスに着いたら会わせてもらえることになってて……すごく楽しみなんです」
「へぇー、いいなぁ。楽しそう。その人の写真とかないの?」
「まだ僕も会ったことないので……」
「そっか……。じゃあ、会えるの楽しみだね、僕も絶対遊びに行くよ!! わぁーい、楽しみだな」
社交辞令でもなんでもない、優しげなその笑顔に僕は嬉しくなっていた。
「ユヅル、ケイトくんと話が盛り上がっているみたいだな」
「エヴァンさん、佳都さんがフランスに遊びに来てくれるって言ってくれたんです」
「フランスに? それは楽しみだな。もちろんその時はアヤシロも一緒なんだろう?」
「ああ、もちろんだよ。佳都一人で行かせたりはしないからな。実は、この前新婚旅行でフランスに行ったんだよ。その時、ロレーヌとも会いたかったんだけど、ちょうどその時期、アメリカかどこかに長期で行ってただろう?」
「あの時は、アヤシロが長期で休みを取っていたから変更して、先にアメリカに行ったんだよ。まさかこっちに来るとは思ってなかったからな。だが……よくよく考えてみればアヤシロのおかげだな、今回こんなに早くユヅルの元にいけたのは……。アメリカに行ってたら少なくとも半日は待たせただろうからな」
そう言いながら、エヴァンさんは僕を抱きしめてくれた。
あの時、エヴァンさんが2時間もしないうちに来てくれてすっごく心強かったんだ。
あれが、半日以上も一人であの家で待ってたら……僕は、辛すぎて、どうしていいかわからなくて……どうにかなっちゃってたかもしれない。
あの時すぐに駆けつけてくれて、たった一人の家族を失った僕に、すぐに家族だと言ってくれたから……僕は悲しみを乗り越えることができたんだ。
「へぇ、ロレーヌが彼と出会えたのが俺のおかげって言うんなら、ご褒美でも貰おうかな」
「ははっ。アヤシロが私にご褒美をねだるなんて珍しいな。いいよ、なんでも好きなものを言ってくれ」
「さすが、ロレーヌ。太っ腹だな。じゃあ、近いうちにフランス行くから、あのホテルに宿泊させてくれないか?」
「あのホテル? せっかくのご褒美がそんなのでいいのか?」
「ははっ。そんなのって……ロレーヌは知らないだろう? あのホテル、日本人が今、フランスで泊まりたいホテルランキングで1位って情報が流れてから、日本からの予約はかなり難しくなっててさ。俺は前もって予約したから、新婚旅行の時はなんとか泊まれたんだけど、今度友達もヨーロッパで挙式したいって言ってて、今、場所を探しているところなんだよ。せっかくなら、あのホテルで挙式してそのまま泊まれたら最高なんだけど、どうかな?」
「アヤシロの友達の挙式のためなら、ひと肌脱ごう。何部屋必要なんだ?」
「3部屋あればありがたいんだが……」
「なんだ、3部屋くらいなら問題ない。いつでもいいと伝えておいてくれ」
「本当かっ! さすが、ロレーヌ!! 佳都、観月と悠木に挙式できるホテルが見つかったって知らせてやろう」
「でも、ロレーヌさん……本当にいいんですか? あのホテル、かなり予約が難しいって……」
「ふふっ。心配いらないよ。あのホテルのオーナーは私の一族だからね。3部屋くらいならいつでも都合つくから問題ないんだよ」
「えーっ、すごいですね!! 弓弦くん、ロレーヌさんってすごい人なんだね」
「本当に……僕、知らなかった……そんなすごい人が僕の恋人だなんて……なんだか自信がなくなってきちゃったな……」
「ユヅル、何言ってるんだ? ユヅルはただの私を好きになってくれたのだろう? 私のことを捨てたりしないだろう? 私はユヅルがいないと生きていけないのだぞ」
こんなに地位も名誉も財産も何もかも手に入れている人が、僕のことでこんなにも不安げな表情を見せてくれるなんて……。
エヴァンさんには悪いけど……何だか、すごく嬉しい。
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