26 / 205
特別な思いを一緒に
しおりを挟む ……全部、こいつが手配したのか?
二人は政略結婚である。
アルバートがなぜブラッドを結婚相手に指名したいのか、ブラッドは知らない。実家である伯爵家が背負うことになった借金を肩代わりし、伯爵家の地に落ちそうだった名誉を挽回する手助けをする見返りとして、ブラッドを指名してきたことは知っている。
しかし、その経緯は知らない。
両親によって侯爵家に売り飛ばされたようなものだった。
どのような経緯で行われたのか。アルバートに聞けば応えてくれるだろう。
それをわかっていながらも、ブラッドは頑なに興味のないふりをし続けていた。
……最初から仕組まれてたわけじゃねえよな。
そのようなことはありえないのだと自分自身に言い聞かせる。
これは伯爵家の為に奔走していた二週間の間に用意されたものであるはずだ。そうでなければ、アルバートがいつからブラッドと結婚をする計画を練っていたのか考えなくてはいけなくなってしまう。
「合ってるんじゃねえの。てっきり、実家から送られてきたものだと思ってたくらいだしな」
ブラッドは素っ気なく言いながら、脱衣場の扉に手を伸ばす。
「伯爵家から?」
アルバートはなぜそう思ったのか、理解ができないと言いたげな顔をしていた。
「当然だろうが。強引に結婚させておいて、なにも持たせねえような親じゃねえからな」
ブラッドの両親は貴族らしい貴族だ。
カザニア伯爵家そのものを誇りに思い、伯爵家の為に命を捧げてもおかしくはないほどに家門と領地を大切にしている。その為ならば、自分の子どもたちを駒のように扱うのは当然だと思っている人たちである。
伯爵家の名誉を大切にしている両親が、嫁に出した息子に花嫁道具を持たせないはずがない。伯爵家の人間として相応しいものを取り揃えたことだろう。
「そういえば送られてきていたな」
アルバートはようやく思い出したようだ。
……嫌な予感がする。
ブラッドは伯爵家から送られてきた荷物を確認していない。侯爵家で与えられるのはアルバートが厳選したものばかりであり、それを当然のように受け入れていた。
二人は政略結婚である。
アルバートがなぜブラッドを結婚相手に指名したいのか、ブラッドは知らない。実家である伯爵家が背負うことになった借金を肩代わりし、伯爵家の地に落ちそうだった名誉を挽回する手助けをする見返りとして、ブラッドを指名してきたことは知っている。
しかし、その経緯は知らない。
両親によって侯爵家に売り飛ばされたようなものだった。
どのような経緯で行われたのか。アルバートに聞けば応えてくれるだろう。
それをわかっていながらも、ブラッドは頑なに興味のないふりをし続けていた。
……最初から仕組まれてたわけじゃねえよな。
そのようなことはありえないのだと自分自身に言い聞かせる。
これは伯爵家の為に奔走していた二週間の間に用意されたものであるはずだ。そうでなければ、アルバートがいつからブラッドと結婚をする計画を練っていたのか考えなくてはいけなくなってしまう。
「合ってるんじゃねえの。てっきり、実家から送られてきたものだと思ってたくらいだしな」
ブラッドは素っ気なく言いながら、脱衣場の扉に手を伸ばす。
「伯爵家から?」
アルバートはなぜそう思ったのか、理解ができないと言いたげな顔をしていた。
「当然だろうが。強引に結婚させておいて、なにも持たせねえような親じゃねえからな」
ブラッドの両親は貴族らしい貴族だ。
カザニア伯爵家そのものを誇りに思い、伯爵家の為に命を捧げてもおかしくはないほどに家門と領地を大切にしている。その為ならば、自分の子どもたちを駒のように扱うのは当然だと思っている人たちである。
伯爵家の名誉を大切にしている両親が、嫁に出した息子に花嫁道具を持たせないはずがない。伯爵家の人間として相応しいものを取り揃えたことだろう。
「そういえば送られてきていたな」
アルバートはようやく思い出したようだ。
……嫌な予感がする。
ブラッドは伯爵家から送られてきた荷物を確認していない。侯爵家で与えられるのはアルバートが厳選したものばかりであり、それを当然のように受け入れていた。
228
お気に入りに追加
2,933
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

朝起きたら幼なじみと番になってた。
オクラ粥
BL
寝ぼけてるのかと思った。目が覚めて起き上がると全身が痛い。
隣には昨晩一緒に飲みにいった幼なじみがすやすや寝ていた
思いつきの書き殴り
オメガバースの設定をお借りしてます

飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが
五右衛門
BL
月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。
しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる