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初恋 恭一郎side
手放したりしない
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それからどれくらい時間が経っただろうか。
知らない間に私も少し眠ってしまっていたようだ。
腕の中の葵がもぞもぞと身動いだことに気づき、私は目を覚ました。
葵はまだ眠っているようだ。
ああ。可愛い。本当に可愛い。
このまま寝かせておいてやりたいが、食事もさせてやりたいしこの後の予定もあるかもしれない。
それでも起こすのが憚られてしばらく葵の寝顔を見つめていると、『うーん』という可愛い声をあげてパチっと大きな目を開けた。
私は寝たふりをしてしばらく眺めていたが、葵は一瞬今の状態が分からなかったようだ。
自分が裸で私の腕の中にいることに気づき、色白の肌がみるみるうちに赤らんでいく。
私の腕が葵の腰にぎゅっと抱きついているのを解き放とうとしているが、外させるものか。
もう少し葵の温もりを感じていたいんだ。
眠ったふりをしていても葵の視線を感じる。
じっとみられながらも私は微動だにせず寝たふりを続けていた。
「はぁ……っ」
えっ? 溜め息? 私とこんな関係になったのをがっかりしているのか?
「眠っているのにこんなに格好良いなんてズルすぎる」
そう言いながら葵の指先が私の頬や瞼、唇をそっと撫でていく。
それがあまりにも心地よくて思わず『ふふっ』と笑ってしまった。
「わぁっ、お、起きてたんですか?」
「ふふっ。君があまりにも可愛いことをするから目が覚めたよ。おはよう。私の運命の人」
「う、運命?」
「ああ。君ほど私の心を捕らえた人はいないよ。愛してるよ」
葵の頬に唇を当てると、葵は真っ赤な顔をして布団に潜り込んだ。
「葵、その可愛い顔を隠さないで。私に見せてくれ」
布団ごと彼を抱きしめると、葵は綺麗な目だけをちょこんと出して
『恥ずかしい……』と呟いた。
私はそんな彼にずっと気になっていたことを尋ねてみた。
「葵……言いたくなければ言わなくてもいいが、君は最初、どんなつもりで私にあんなことを言ってきたんだ?」
「――っ」
私の言葉に葵は一瞬息を呑んだが、
「あの……実は……」
と理由を話してくれた。
そうか、そうだったんだ。
たとえそんな理由であったとしても、今の私には喜びしかない。
葵がそう思ってくれたからこそ、私たちは今こうして愛を育むことができたんだ。
そんな葵が愛おしくてさらにぎゅっと抱きしめると、葵から
『くぅぅーっ』と可愛らしい音が聞こえた。
葵はさらに恥ずかしそうにしていたが、ここまでお腹を空かせてしまったのは私のせいだ。
「遅くなったが、食事にしよう。ルームサービスにするか? それともレストランに行こうか?」
「えっ……僕はどちらでも」
「ふふっ。じゃあ、レストランにしよう。ここの鉄板焼きは最高だから」
ばさっと自分にかかっていた布団を剥ぎ取ると、葵が『うわぁっ』と声をあげ、また布団に潜り込んでしまった。
どうやら私の裸が見えてしまったらしい。
それ以上のこともした仲だというのに、なんとも初心な子だ。
私の用意した服に着替える葵を見ながら、私は彼と出会えたことの幸せを噛み締めていた。
最初の出会いが勘違いからだったとしても私の運命の人が葵だということには変わりない。
私はこれから全力で彼を囲い込んでいくつもりだ。
まずは美味しい料理で胃袋を掴むか。
私は誰にも取られないように葵の折れそうなほど細い腰に手を回し、このホテル自慢の鉄板焼きの店へと彼を誘った。
知らない間に私も少し眠ってしまっていたようだ。
腕の中の葵がもぞもぞと身動いだことに気づき、私は目を覚ました。
葵はまだ眠っているようだ。
ああ。可愛い。本当に可愛い。
このまま寝かせておいてやりたいが、食事もさせてやりたいしこの後の予定もあるかもしれない。
それでも起こすのが憚られてしばらく葵の寝顔を見つめていると、『うーん』という可愛い声をあげてパチっと大きな目を開けた。
私は寝たふりをしてしばらく眺めていたが、葵は一瞬今の状態が分からなかったようだ。
自分が裸で私の腕の中にいることに気づき、色白の肌がみるみるうちに赤らんでいく。
私の腕が葵の腰にぎゅっと抱きついているのを解き放とうとしているが、外させるものか。
もう少し葵の温もりを感じていたいんだ。
眠ったふりをしていても葵の視線を感じる。
じっとみられながらも私は微動だにせず寝たふりを続けていた。
「はぁ……っ」
えっ? 溜め息? 私とこんな関係になったのをがっかりしているのか?
「眠っているのにこんなに格好良いなんてズルすぎる」
そう言いながら葵の指先が私の頬や瞼、唇をそっと撫でていく。
それがあまりにも心地よくて思わず『ふふっ』と笑ってしまった。
「わぁっ、お、起きてたんですか?」
「ふふっ。君があまりにも可愛いことをするから目が覚めたよ。おはよう。私の運命の人」
「う、運命?」
「ああ。君ほど私の心を捕らえた人はいないよ。愛してるよ」
葵の頬に唇を当てると、葵は真っ赤な顔をして布団に潜り込んだ。
「葵、その可愛い顔を隠さないで。私に見せてくれ」
布団ごと彼を抱きしめると、葵は綺麗な目だけをちょこんと出して
『恥ずかしい……』と呟いた。
私はそんな彼にずっと気になっていたことを尋ねてみた。
「葵……言いたくなければ言わなくてもいいが、君は最初、どんなつもりで私にあんなことを言ってきたんだ?」
「――っ」
私の言葉に葵は一瞬息を呑んだが、
「あの……実は……」
と理由を話してくれた。
そうか、そうだったんだ。
たとえそんな理由であったとしても、今の私には喜びしかない。
葵がそう思ってくれたからこそ、私たちは今こうして愛を育むことができたんだ。
そんな葵が愛おしくてさらにぎゅっと抱きしめると、葵から
『くぅぅーっ』と可愛らしい音が聞こえた。
葵はさらに恥ずかしそうにしていたが、ここまでお腹を空かせてしまったのは私のせいだ。
「遅くなったが、食事にしよう。ルームサービスにするか? それともレストランに行こうか?」
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ばさっと自分にかかっていた布団を剥ぎ取ると、葵が『うわぁっ』と声をあげ、また布団に潜り込んでしまった。
どうやら私の裸が見えてしまったらしい。
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最初の出会いが勘違いからだったとしても私の運命の人が葵だということには変わりない。
私はこれから全力で彼を囲い込んでいくつもりだ。
まずは美味しい料理で胃袋を掴むか。
私は誰にも取られないように葵の折れそうなほど細い腰に手を回し、このホテル自慢の鉄板焼きの店へと彼を誘った。
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