イケメンスパダリ医師は天涯孤独な彼を放っておけない

波木真帆

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番外編

お世話したい!  <前編>

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指を怪我しちゃったんでどこかのカップルにも痛みを分かち合ってもらおうと思ったんですが、にゃんこは怪我させるのは可哀想なので、彼にお願いしてみました!
長くなりそうですがなんとか三話で終わらせたい(笑)
楽しんでいただけると嬉しいです♡


  *   *   *



<side空良>

「空良くん! 先生がっ!」

もうすぐ診療時間も終わりかなと思いながらいつものように院長室で勉強していると、米田さんが青褪めた顔で院長室に飛び込んできた。

寛人さんに何かあった?

一気に不安になって診察室に行くと指に包帯を巻いている寛人さんの姿が見えた。

「寛人さん! 大丈夫ですか?」

「空良、ごめん。驚かせたな。ちょっと失敗しただけだ。心配しなくていいよ」

「でも……」

痛々しく包帯をつけている指が気になって仕方がない。
寛人さんは僕の視線に気がついたのか、

「こっちにおいで」

と僕を怪我をしていない方の手で手招きをしてくれた。

不安をまだ感じたまま近づくと、寛人さんはいつものように軽々と膝に乗せてくれて抱きしめてくれる。

「心配しなくていいよと言っても、空良は優しいから心配するよな。でも本当にそこまでの怪我じゃないんだ。ちょっと手術用のナイフの先で切っただけだからすぐに治るよ」

「でも、痛そう……」

「まぁ、指先は神経が多いから痛みは感じるけど、幸いスパッと切れたから治りも早いんだ。医療用のテープでくっつけておけば三日もあればくっつくよ。もう今日の診療は終わったし明日から三連休だし、問題ない」

「三日……それなら、寛人さんが治るまで僕が寛人さんのお世話をします!」

「えっ? 空良が? だが、大変じゃないか?」

「大丈夫です! 僕に任せてください! 安静にしていた方が傷だって早く治るはずですから!」

「わ、わかった。じゃあ、空良にお願いしようかな」

僕が寛人さんの役に立てる!
出会ってからずっと寛人さんのお世話になってるばっかりで、なんとか寛人さんの役に立てるようになりたいと思っていたから、今がいい機会だ!

寛人さんが痛い思いをしているのにいい機会だなんて思って申し訳ないけど、僕は本当に寛人さんの手の代わりになって頑張るぞ!!

まずは寛人さんの白衣を脱がせて、クリーニングに出す用にまとめている場所に持っていく。
そして、病院を閉める準備をして一緒に部屋に戻った。

「空良が動いてくれたから閉めるのも早かったな」

「いつも寛人さんがしているのをみているからです」

「そうか、それならこれからはいつでも頼めるな」

「はい!」

もう、寛人さんの役に立ててる! 嬉しい!!

「あ、夕食……どうしますか?」

僕が作れるのはあまりないけど……頑張ればなんとかなるかな?

「ああ、食事ならデリバリーを頼んだから気にしないでいい」

「えっ、でも……」

「空良まで怪我するようなことになったら困るからな」

寛人さんに言われて納得する。慣れない包丁を持って僕まで怪我しちゃったらお世話どころじゃなくなるもんな。
よーし! それ以外のお世話頑張るぞ!


<side寛人>

俺としたことがしくじった……。
指先を怪我するなんて医者としては最悪だが、幸い神経を傷つけたりはしていないようでホッとする。
利き手じゃなかったことも不幸中の幸いだろう。

だが、明日からの三連休を空良とベッドで楽しもうと思っていたのができないのが辛い。
ああ、こんな傷が俺と空良の楽しい時間を奪いやがる。最悪だ。

「はぁーーっ」

らしくない、大きなため息を吐くとそれを心配した米田師長が空良を呼びに行ってしまった。
あの分だとかなりの大怪我だと思われてそうだ。

とりあえず空良に心配させる前に包帯を巻いておこう。
ちょうど巻き終わったタイミングで空良が現れた。ギリギリセーフだったな。

空良は見慣れない俺の包帯姿にショックを受けている様子で心が痛んだ。

空良を膝に乗せてなるべく心配をかけないように話をしたんだが、空良はこれからの三連休を俺の世話をしてくれると言ってくれた。

それは嬉しい。だが、お世話はどこまでやってくれるのか……。
空良の可愛い姿を見たら我慢できなくなりそうな気がする。
だが、これだけやる気になっているのを止めることはできない。

これから三日間、欲望と理性の狭間で大変なことになりそうだが頑張るしかないか。

それでも嬉しそうな表情でテキパキと病院を閉めてくれる空良を頼もしく思いながら、一緒に自宅に戻るとまず先に心配してくれたのは食事の支度。
日々の食事を俺が作っているが、利き手じゃないとはいえこの状態で満足な食事を作るのは難しいだろう。

空良はそれをわかっているから悩んでいるようだったが、俺には空良にやらせる選択肢はない。
デリバリーを頼むというと空良は申し訳なさそうな表情をしていたが、それは空良を信じていないのではなく、空良が包丁を持ったり炒めたりなんてことを俺がさせたくないだけだ。俺のわがままなんだ。それだけはわかってほしい。

デリバリーで空良の好きな料理を頼むと、いそいそと皿に移し替えテーブルに運んでくれる。

両手でこぼさないように運ぶ姿を見ているだけで可愛すぎて興奮する。
ああ、こんなことで興奮している俺が三日間我慢できるか心配しかない。

料理が並べられ、空良の隣に腰を下ろすと

「今日は僕が全部食べさせてあげますね」

と笑顔で言われる。
いや、利き手は大丈夫だから食事はできるんだが……と思ったが、空良のやる気の邪魔はしたくない。

「ああ、頼むよ」

俺の返事に空良は満面の笑みを見せた。

「どれから食べますか?」

「こっちの肉から頼むよ」

「はーい、あーん」

俺の口に入れながら、空良の口も一緒に開いて動くのが可愛い。

「美味しいですか?」

「ああ。美味しいよ」

「僕が全部食べさせるので、なんでも言ってくださいね」

「ああ。わかった」

「あっ、唇にソースが付いてます」

「んっ? ん――っ!!」

嬉しそうに空良が近づいてきたと思ったら、チュッと唇が重なって小さな舌で付いていたソースを舐め取られる。
これは俺がいつもやっていたことだ。

「ふふっ、取れましたよ。このソース、すっごく美味しいですね」

「――っ!!」

空良は俺がいつもやっていることを真似しているだけなんだろうが、もうこの時点で我慢できそうにない。
ああ、このままベッドに連れ込みたい。
そんな欲望と必死に戦いながら、なんとか食事は終わった。
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