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番外編
悠木家の伝統
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日本編を前に、ここだけお着物を書き忘れていたなと思い出して慌てて書いてみました。
かなり短くて小話程度ですが楽しんでいただけると嬉しいです♡
日本編もどうぞお楽しみに♡
* * *
<side寛海>
「ねぇ、寛海さん。これ見て!」
「んっ? なになに? ほお、これはまた……可愛らしいな」
「でしょう?」
茜音が羨ましそうな表情をして見せてきたのは、久嗣と秋芳の愛しい妻たちとのグループメッセージ。
その画面には色鮮やかな着物の写真が載せられている。
てっきり和装でお出かけの誘いなのかと思ったが、そうではなかったようだ。
「麗花さん、初詣で理央くんに着物を着せようと思って、麗花さんの振袖を訪問着に仕立て直したんですって」
「ああ、なるほど。そういうことか。じゃあ、こっちは清佳さんの?」
「ええ、若い頃の小紋を探していいのが見つかったから、それに合う帯と小物を新しく揃えるんですって。それでつい、うちも着物を探すから一緒に初詣に行きましょうって誘ったんだけど……」
「ああ、いいじゃないか。茜音も何枚か着物を持っていただろう? その中から空良に似合うものを探すとしよう」
「でも私のものは……」
茜音は空良よりも身長が高く、持っているものもかなり大人っぽい柄のものが多い。
だから、空良には合わないのではないかと心配しているのだろう。
「大丈夫、私は茜音の着物はどれも覚えているが、確かあれなら空良に似合うんじゃないかな?」
「えっ? どれ?」
「ふふっ。おいで」
不安げな表情をしている茜音と一緒に着物の収納しているクローゼットに行き、
「確か、ここにあったはず」
と取り出して広げてみた。
たとう紙を広げて出てきたのは、淡い水色の地にベージュのボカシと、椿や撫子の雪輪、梅、桔梗、桜などが描かれた美しい訪問着。
ああ、やっぱり綺麗だな。
この色なら空良のイメージにもピッタリ合う。
「あっ!! これ……すっかり忘れていたわ。どうして、こんな綺麗な着物を忘れてしまっていたのかしら?」
「これを仕立ててすぐに寛人の妊娠が分かったんだよ。茜音は悪阻が妊娠後期まで続いて大変だったから着る機会がないまま仕舞っていたんだよ」
「ああ、そうだったわ……ごめんなさい。せっかく作ってもらったのに忘れてしまっていて……」
「何をいっているんだ。茜音は寛人を無事に産んでくれただけで十分だよ。それに空良が着てくれるなら無駄にはならないさ。私たちも明日にでも仕立て屋に持っていって、これに合う帯と小物を揃えよう」
「ええ、ありがとう。寛海さん」
「もちろん、初詣に出かけるその日は茜音も着物を着てくれるんだろう?」
「もちろんよ。空良と一緒に写真も撮りたいし、何より、私が着物を着たら寛海さんが喜んでくれるでしょう?」
「ああ、美しい茜音を見られるのも嬉しいし、脱がせるのもたまらなく幸せだからな」
私だけが見ることのできる茜音の姿だ。
興奮しないわけがない。
将来を見越して、高校生だった寛人にも着付けを学ばせておいたが、初詣のあとはあいつもきっと脱がせる楽しみを覚えるのだろうな。
それが悠木家の男に代々伝わる伝統のようなものだ。
きっと、観月家も綾城家も変わらないと思うがな。
かなり短くて小話程度ですが楽しんでいただけると嬉しいです♡
日本編もどうぞお楽しみに♡
* * *
<side寛海>
「ねぇ、寛海さん。これ見て!」
「んっ? なになに? ほお、これはまた……可愛らしいな」
「でしょう?」
茜音が羨ましそうな表情をして見せてきたのは、久嗣と秋芳の愛しい妻たちとのグループメッセージ。
その画面には色鮮やかな着物の写真が載せられている。
てっきり和装でお出かけの誘いなのかと思ったが、そうではなかったようだ。
「麗花さん、初詣で理央くんに着物を着せようと思って、麗花さんの振袖を訪問着に仕立て直したんですって」
「ああ、なるほど。そういうことか。じゃあ、こっちは清佳さんの?」
「ええ、若い頃の小紋を探していいのが見つかったから、それに合う帯と小物を新しく揃えるんですって。それでつい、うちも着物を探すから一緒に初詣に行きましょうって誘ったんだけど……」
「ああ、いいじゃないか。茜音も何枚か着物を持っていただろう? その中から空良に似合うものを探すとしよう」
「でも私のものは……」
茜音は空良よりも身長が高く、持っているものもかなり大人っぽい柄のものが多い。
だから、空良には合わないのではないかと心配しているのだろう。
「大丈夫、私は茜音の着物はどれも覚えているが、確かあれなら空良に似合うんじゃないかな?」
「えっ? どれ?」
「ふふっ。おいで」
不安げな表情をしている茜音と一緒に着物の収納しているクローゼットに行き、
「確か、ここにあったはず」
と取り出して広げてみた。
たとう紙を広げて出てきたのは、淡い水色の地にベージュのボカシと、椿や撫子の雪輪、梅、桔梗、桜などが描かれた美しい訪問着。
ああ、やっぱり綺麗だな。
この色なら空良のイメージにもピッタリ合う。
「あっ!! これ……すっかり忘れていたわ。どうして、こんな綺麗な着物を忘れてしまっていたのかしら?」
「これを仕立ててすぐに寛人の妊娠が分かったんだよ。茜音は悪阻が妊娠後期まで続いて大変だったから着る機会がないまま仕舞っていたんだよ」
「ああ、そうだったわ……ごめんなさい。せっかく作ってもらったのに忘れてしまっていて……」
「何をいっているんだ。茜音は寛人を無事に産んでくれただけで十分だよ。それに空良が着てくれるなら無駄にはならないさ。私たちも明日にでも仕立て屋に持っていって、これに合う帯と小物を揃えよう」
「ええ、ありがとう。寛海さん」
「もちろん、初詣に出かけるその日は茜音も着物を着てくれるんだろう?」
「もちろんよ。空良と一緒に写真も撮りたいし、何より、私が着物を着たら寛海さんが喜んでくれるでしょう?」
「ああ、美しい茜音を見られるのも嬉しいし、脱がせるのもたまらなく幸せだからな」
私だけが見ることのできる茜音の姿だ。
興奮しないわけがない。
将来を見越して、高校生だった寛人にも着付けを学ばせておいたが、初詣のあとはあいつもきっと脱がせる楽しみを覚えるのだろうな。
それが悠木家の男に代々伝わる伝統のようなものだ。
きっと、観月家も綾城家も変わらないと思うがな。
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